センター試験化学2018年(平成30年)度化学の続き第4問有機化学分野の解説です。
アルカン、アルケン、アセトン、アルコール、アセチルサリチル酸の合成と聞かれていることはいろいろとありますが基本的なことばかりです。
示性式ではなく組成式で与えられていたので計算問題で答が合わなくて少し考えました。

2018年センター試験化学の問題第4問の問題

第4問は有機化学分野の問題です。
問題はこちら(大学入試センターにもあります。)

⇒ 2018平成30年度センター試験化学第4問の問題

有機分野なので物質名と分子式、構造式が重要になってきますが、
今回は一般的に考えても通じる設問になっている感じでした。

2018年センター試験化学の問題第4問の解説

第4問は問1から問5まであります。

問1

この問題のやっかいなところは、
「指定する原子」がそれぞれで違っていることです。
こういう指定のされ方をする問題には注意しておきましょう。


「1-プロパノール」( \(n-プロパノール\) )

 \( \mathrm{ CH_3-CH_2-CH_2-OH }\)


「2-メチル-2プロパノール」( \(t-ブタノール\) )

 \( \mathrm{ CH_3-C(CH_3)(OH)-CH_3 }\)

の「炭素原子」の数が同じか?
違います。

「1-ブタノール」( \(n-ブタノール\) )

 \( \mathrm{ CH_3-CH_2-CH_2-CH_2-OH }\)


「2-ブタノール」

 \( \mathrm{ CH_3-C^*H(OH)-CH_2-CH_3 }\)

の「不斉炭素原子」の数は同じか?
ノーマルなブタノールには不斉炭素はありません。
違います。

不斉炭素とは炭素の手4本すべてに違う原子団がついている炭素のことです。
不斉炭素を表す炭素に「*」をつけて表すことが多いです。

「1,3-ブタジエン」

 \( \mathrm{CH_2=CH-CH=CH_2}\)


「シクロヘキセン」

の「不飽和結合を形成する炭素の原子数」は、違います。

ジエン」とはモノ、ジ、トリ、テトラ、の「ジ」に「エン」で「2つの二重結合」を意味します。
DHA(ドコサヘキサエン酸)を良く耳にすると思いますが、
「ヘキサエン」は「6つの二重結合」を意味していて「塩酸」ではありませんよ。笑

「1-ペンテン」

 \( \mathrm{CH_2=CH-CH_2-CH_2-CH_3}\)

は二重結合1つ持った鎖状の炭化水素です。
「シクロペンタン」
は二重結合を持っていませんが環状の炭化水素で、
「水素原子」の数は同じです。

 1:④

問2

幾何異性体が存在するかどうかです。
問題に書いてくれていますが「シス」「トランス」があるかどうかなので、
二重結合への結合の仕方で同じ側か反対側かの違いがあるかどうかですね。

どれも炭素は2つなので、先ずは二重結合を持つものを探しますが③④⑤は飽和していてダメです。
二重結合はありません。

①は塩素 \(\mathrm{Cl}\) が多すぎてシストランスが存在しません。
②は塩素2つが二重結合の同じ側にあるか反対側にあるか、異性体が存在します。

「1つ選ぶ」ので順番に見れば2つ目で終わってはやかったです。

 2:②

問3

アセトン \(\mathrm{CH_3-CO-CH_3}\) の特長について「誤りを含む」ものを探します。

揮発性が高いですが常温で液体で、極性が高いので有機物だけど水といくらでも混ざります。
「フェーリング液」から「赤色沈澱」は還元性を示すアルデヒド基の検出です。
アセトンにはカルボニル炭素 \(\mathrm{C=O}\) はありますが、
アルデヒド基 \(\mathrm{-CHO}\) はありません。

 3:④

問4

デカン(Decane)は炭素が主鎖に10個あるので不飽和の炭素があってもおかしくはありません。
ただ、二重結合をもつと \(-ane\) が \(-ene\) になるので
「デケン」ではなく「デセン」と読みます。
英語の発音は「decane デェケイン」と「decene デェシ-ン」って感じです。
読みが出る事はないので受験生にはどうでも良いことですけどね。笑

ところでこの問題では「不飽和結合をもつ直鎖状のアルコール」とだけ書かれているので、
二重結合か三重結合かさえわかりません。

ただ、酸素は1つなので \(\mathrm{-OH}\) 基は1つ、一価のアルコールです。

発生した水素 \(\mathrm{H_2}\) と付加させた水素 \(\mathrm{H_2}\) の量から判断します。

 \( \mathrm{2R-O-H +2Na \hspace{10pt} \rightarrow \hspace{10pt}2R-O-Na +H_2}\)

発生した水素が 0.125 molなので水素原子は 0.250 molあって、
これはアルコールAの物質量となります。

二重結合が開いて水素が付加するとすると、

 \( \mathrm{RC=CR’ \hspace{10pt} \rightarrow \hspace{10pt}H-RC-CR’-H}\)

1つの二重結合に対し、1molの水素 \(\mathrm{H_2}\) が付加します。
アルコールA 0.250 molに水素が 0.500 mol付加したということは、
アルコールAは2つの二重結合か、
1つの三重結合をもっていたことになるので、
アルカンの式で表すと

 \( \mathrm{C_mH_{2m-2}}\)

ですが水素の1つが \(\mathrm{-OH}\) 基に変わっているので、

 \( \mathrm{C_nH_{2n-3}OH}\)

となっているはずです。
炭素数は \(m=10\) とわかっているので

 \( 2m-3=2\times 10-3=17\)

となって「あれ?答にない!」ってちょっとだけ
「えー!えっ?、えっ??」
と不安になったんですけど、
示性式にしたので \(\mathrm{-OH}\) 基の1つを忘れていました。

 \( \mathrm{C_{10}H_{17}OH=C_{10}H_{18}O}\)

勝手に示性式で考えたからです。
選択肢に「17」があれば即ミスしてたでしょうね。笑

 \( n=\underline{18}\)

問5

サリチル酸からアセチルサリチル酸を合成し、その生成物の確認です。

サリチル酸

  \( \mathrm{C_6H_4(COOH)(OH)}\)

アセチルサリチル酸

  \( \mathrm{C_6H_4(COOH)(OCOCH_3)}\)

を見比べると
 ヒドロキシ基 \(\mathrm{\color{red}{-OH}}\) の水素が、
 アセチル基 \(\mathrm{\color{red}{-CO-CH_3}}\) に変わっているので、
化合物Aはアセチル基を持つと推測できます。

エステル化ともいえるこの反応はアセチル化として有名なので説明も必要無いでしょう。
サリチル酸からの反応は2つ覚えておくと良いです。
1つはメタノールとのエステル化

 \( \mathrm{ C_6H_4(COOH)(OH)+CH_3OH \rightarrow C_6H_4(COOCH_3)(OH)+H_2O}\)

サリチル酸メチルの生成反応です。
カルボン酸の方が酸性度が高いのでカルボキシ基のエステル化が進みます。

もう一つは無水酢酸によるアセチル化

 \( \mathrm{ C_6H_4(COOH)(OH)+(CH_3CO)_2O \rightarrow C_6H_4(COOH)(OCOCH_3)+CH_3COOH}\)

アセチルサリチル酸の生成反応です。
ヒドロキシ基の水素をアセチル基で置換した形です。

サリチル酸の検出は塩化鉄(Ⅲ)の水溶液で赤紫色に呈色することを用います。
サリチル酸にあって、アセチルサリチル酸に無いもの、\(\color{red}{\mathrm{-OH}}\) の検出ですね。
フェノール類は塩化鉄(Ⅲ)を加えると紫系の呈色をします。

 5:⑤  6:①

第4問の有機分野は配点が19点です。
有機分野は理論的にやろうと思うと大学の知識が必要な部分があります。
代表的な反応は覚えておいた方がはやいでしょうね。

ここまでで90点分あります。
全国の平均点は60+\(\alpha\) でしょうか。

第5問と残りの選択問題も説明しておきます。

⇒ センター試験化学の過去問 2018年度第5,6,7問(選択問題)の解説

第5問は必答、第6問第7問は選択になります。

⇒ 共通テスト(センター試験~)の化学と化学基礎の過去問解説

共通テストになると選択問題が無くなるようです。