普段耳にするアルコールはエタノールのことです。アルコールにはヒドロキシ基の数で価数も変わりヒドロキシ基がつく炭素の位置によっても級数がかわります。いろいろな名前のアルコールがありますので分類できるようになっておきましょう。
アルコールの分類
炭化水素の水素原子1個がヒドロキシ基( \(\mathrm{-OH}\) )で置き換わった(置換された)化合物をアルコールといいます。
一般的に表現するときは \(\mathrm {R-\color{red}{OH}}\) と表します。
アルコールの価数
1分子中のヒドロキシ基の数によってアルコールは分類できます。
ヒドロキシ基が1個のアルコールは「1価アルコール」と呼ばれます。
普通にアルコールといえばこれのことです。
例えば、メタノール \(\mathrm {CH_3OH}\) やエタノール \(\mathrm {CH_3CH_2OH}\) がそうです。
ヒドロキシ基が2個あるアルコールは「2価のアルコール」と呼ばれます。
例えば、エチレングリコール \(\mathrm {C_2H_4(OH)_2}\) があります。
アルコールは炭化水素の末尾に「-ol(オール)」をつけて呼ぶので、
2価のアルコールは「ジオール」(2つのヒドロキシ基をもつ)と呼ぶこともあります。
エチレングリコールの場合は「1,2-エタンジオール」です。
ヒドロキシ基が3個あるアルコールは「3価アルコール」と呼ばれます。
例えば、グリセリン \(\mathrm {C_3H_5(OH)_3}\) があります。
3価のアルコールは「トリオール」(3つのヒドロキシ基をもつ)と呼ぶこともあります。
グリセリンの場合は「1,2,3-プロパントリオール」です。
2価以上のアルコールは「多価アルコール」と総称されこともあるので覚えておいてください。
このようにヒドロキシ基の数で分類されるのが価数です。
アルコールの級数
アルコールはヒドロキシ基のつく位置によって級数がかわります。
第1級アルコール
ヒドロキシ基( \(\mathrm{OH}\) )が炭素鎖の末端の炭素原子についたとき、
いいかえればヒドロキシ基が結合した炭素原子が他の炭素原子と1個だけ結合しているアルコールのことをいいます。
ヒドロキシ基がついている炭素に水素が2つ残っている、と考えてください。
第2級アルコール
ヒドロキシ基がついた炭素原子が他の炭素原子2個と結合しているアルコールです。
ヒドロキシ基がついている炭素に水素が1つ残っている、と考えてください。
第3級アルコール
ヒドロキシ基がついた炭素原子が他の炭素原子3個と結合しているアルコールです。
ヒドロキシ基がついている炭素に水素がひとつもない、と考えてください。
アルコールの「価数」と間違えやすいのでしっかり覚えておいてください。
級数は第3級までしかありません。
※
お酒の特級とか1級とか特選とかは全く関係ありませんから。笑
この級数はアルコールを酸化するときに、
アルデヒドやカルボン酸になるか、ケトンになるか、酸化されないか、
非常に重要なポイントになります。
炭素鎖の短い(炭素数の少ない)低分子のアルコールを低級アルコール、
炭素鎖の長い(炭素数の多い)高分子のアルコール高級アルコールといいます。
※
これもお酒の高級なものとは関係ありません。w
アルコールの誘導体(アルコールから生成される化合物)はものすごく多いですし、ヒドロキシ基がつくことで異性体の数も炭化水素よりもかなり多くなります。
アルコールの性質は別途書きますが分類はできるようになっておいてください。
アルコールの例を異性体を含めいくつか並べておきますので構造式がかけるかチャレンジしてみてください。
アルコールの読み方
1-ブタノール(第1級)(\(n\)-ブタノールです。)
\(\mathrm {CH_3CH_2CH_2CH_2OH}\)
(1番目の炭素に \(\mathrm{OH}\) がついています。)
2-ブタノール(第2級)
\(\mathrm {CH_3CH_2C^*H(CH_3)OH}\)
(2番目の炭素に \(\mathrm{OH}\) がついています。*がついている炭素は不斉炭素です。)
2-メチル-2-プロパノール(第3級)
\(\mathrm {(CH_3)_3COH}\)
(2番目の炭素に \(\mathrm{OH}\) がついていますが \(\mathrm {CH_3}\) も3つついています。)
1-ペンタノール(第1級)
\(\mathrm {CH_3CH_2CH_2CH_2CH_2OH}\)
2-ペンタノール(第2級)
\(\mathrm {CH_3CH_2CH_2C^*H(CH_3)OH}\)
3-ペンタノール(第2級)
\(\mathrm {(CH_3CH_2)_2CHOH}\)
(不斉炭素がなくなっていることに注意して!)
2-メチル-1-ブタノール(第1級)
\(\mathrm {CH_3CH_2C^*H(CH_3)CH_2OH}\)
(不斉炭素復活!)
2-メチル-2-ブタノール(第3級)
\(\mathrm {CH_3CH_2C(CH_3)_2OH}\)
3-メチル-2-ブタノール(第2級)
\(\mathrm {CH_3CH(CH_3)C^*H(CH_3)OH}\)
3-メチル-1-ブタノール(第1級)
\(\mathrm {CH_3CH(CH_3)CH_2CH_2OH}\)
2,2-ジメチルプロパノール(第1級)
\(\mathrm {CH_3C(CH_3)_2CH_2OH}\)
構造式かけましたか?
これくらいが書ければ後は官能基を覚えてしまえば構造式は大丈夫だと思いますよ。
官能基は
⇒ 有機化合物の官能基の種類と構造式の書き方
で復習しておきましょう。
⇒ アルコールの製法と酸化生成するアルデヒド、カルボン酸とケトン
アルコールの製造方法と誘導体を少しお伝えします。