強酸と強塩基を混合した後の溶液のpHの計算問題は簡単です。
中和しているとは限りませんが、価数に気をつけて溶液中の水素イオンか水酸化物イオンの多い方が残っているだけと考えれば良いので、引き算すれば答が出てきます。
通常のpH計算同様に水素イオン濃度が主役となることには変わりません。
強酸と強塩基の混合
強酸と強塩基はすべて電離して反応しますので、
溶液中に水素イオンと水酸化物イオンのどちらが多く残っているかを考えれば良いだけです。
注意するのは酸と塩基の価数だけですね。
0.1 mol/Lの塩酸 1 Lに水酸化ナトリウム 3.6 gを溶解した水溶液のpHはいくらか求めよ。
\( \mathrm{NaOH=40}\)
反応します。
\( \mathrm{HCl+NaOH \rightarrow NaCl+H_O}\)
残るのは水素イオンと水酸化物イオンの多い方なので、それぞれの物質量を計算すれば良いのです。
イオン濃度はその後です。
0.1 mol/Lの塩酸 1 Lには
\(\displaystyle 0.1\times \frac{1000}{1000}=\color{red}{0.1}\) (mol)
の水素イオンがあります。
水酸化ナトリウム 3.6 gからは
\( \mathrm{NaOH}=40\) なので
\(\displaystyle \frac{3.6}{40}=\color{red}{0.09}\) (mol)
の水酸化物イオンが出てきます。
\( \mathrm{HCl}\) | \( \mathrm{NaOH}\) | 全体の体積 | |
反応前 | 0.1 mol | 0.09 mol | 1L |
反応後 | 0.01 mol | 0 | 1L |
これを溶解させると残るのは塩酸の水素イオンで
\( 0.1-0.09=0.01=10^{-2}\) (mol)
となりますが、これは 1 Lのままなので水素イオン濃度は
\( \mathrm{[H^+]=10^{-2}}\)
よって求めるphは
\( \mathrm{pH}=-\log_{10}10^{-2}=2\)
次は溶液どうしを混ぜます。
強酸と強塩基水溶液の混合pH
0.003 mol/Lの硫酸 150 mLに、0.002 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液 250 mLを加えた溶液のpHを求めよ。
今度は価数が違うので慎重にいってみましょう。
水素イオン濃度を主役にするのは変わりませんが、
「水素イオンと水酸化物イオン」
どちらが残るのでしょう。
反応式は
\( \mathrm{H_2SO_4+2NaOH \rightarrow Na_2SO_4 +2H_2O}\)
で反応は1:2で起こります。
ただし、水素イオンの数と水酸化物イオンの数は同じではありません。
0.003 mol/Lの硫酸 150 mL中には
\(\displaystyle 0.003\times \frac{150}{1000}=0.00045\) (mol)
の硫酸があります。
硫酸は2価なので、この中に存在する水素イオンは
\( 0.00045\times 2=\color{red}{0.0009}\) (mol)
となります。
一方、
0.002 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液 250 mL中には
\(\displaystyle 0.002\times \frac{250}{1000}=\color{red}{0.0005}\) (mol)
の水酸化ナトリウムがあって1価なので、水酸化物イオンも同じ数になります。
水素イオンの数 | 水酸化物イオンの数 | 溶液の量 | |
反応前 | 0.0009 | 0.0005 | 150+250 (mL) |
反応後 | 0.0004 | 0 | 400 (mL) |
反応した残りの水素イオンの数が 400 mL中にあるので、
1 Lに換算した水素イオン濃度 (mol/L) は
\(\displaystyle \mathrm{[H^+]}=0.0004\times \frac{1000}{400}=0.001=10^{-3}\) (mol/L)
よって
\( \mathrm{pH}=-\log_{10}10^{-3}=3\)
次も酸と塩基の溶液を混合しますが微妙な量です。
混ぜる強酸と強塩基の量が少し違う場合
1 moLというのはものすごく多い、というのが実感できます。
0.08 mol/Lの塩酸 70 mLと、0.04 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液 130 mLを混合した。
この溶液のphはいくらか求めよ。
ただし、\( \log_{10}2=0.3\) とする。
反応式は
\( \mathrm{HCl+NaOH\rightarrow NaCl+H_2O}\)
酸も塩基も1価なので溶液中の物質量がイオンの物質量になります。
0.08 mol/Lの塩酸 70 mL中に、
水素イオンは
\(\displaystyle 0.08\times \frac{70}{1000}=\color{red}{0.0056}\) (mol)
0.04 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液 130 mL中に、
水酸化物イオンは
\(\displaystyle 0.04 \times \frac{130}{1000}=\color{red}{0.0052}\) (mol)
反応して残るのは水素イオンです。
\( 0.0056-0.0052=0.0004\) (mol)
水素イオンの数 | 水酸化物イオンの数 | 溶液の量 | |
反応前 | 0.0056 | 0.0052 | 70+130 |
反応後 | 0.0004 | 0 | 200 |
溶液は合わせて 200 mLになるのでこれを 1 Lのモル濃度に換算します。
水素イオン濃度は
\(\displaystyle \mathrm{[H^+]}=0.0004\times \frac{1000}{200}=0.002=2\times 10^{-3}\) (mol/L)
なので求めるpHは
\( \mathrm{pH}=-\log_{10}(2\times 10^{-3})\\ \\
=-(\log_{10}2+\log_{10}10^{-3})\\ \\
=-0.3+3=2.7\)
ちょっとしか変わらないような量でも酸性強いですね。
次は塩基が多い場合ですが求め方は同じです。
強塩基が多い場合
0.1 mol/Lの塩酸 120 mLに 0.2 mol/Lの水酸化ナトリウム溶液 80 mLを加えた溶液のpHを求めよ。
ただし、\( \log_{10}2=0.3\) とする。
反応式
\( \mathrm{HCl+NaOH\rightarrow NaCl+H_2O}\)
酸も塩基も1価です。
0.1 mol/Lの塩酸 120 mL中の水素イオンの数は
\(\displaystyle 0.1\times \frac{120}{1000}=\color{red}{0.012}\) (mol)
0.2 mol/Lの水酸化ナトリウム溶液 80 mL中の水酸化物イオンの数は
\(\displaystyle 0.2\times \frac{80}{1000}=\color{red}{0.016}\) (mol)
塩酸の水素イオン分は反応するので、
\( 0.016-0.012=0.004\) (mol)
の水酸化物イオンが残ります。
溶液は加えた後は 200 mLになっているので、
1 Lに換算した水酸化物イオン濃度は、
\(\displaystyle \mathrm{[OH^-]=0.004\times \frac{1000}{200}}=0.02=2\times 10^{-2}\) (mol/L)
よってpOHは
\( \mathrm{pOH}=-\log_{10}(2\times 10^{-2})\\ \\ =-(\log_{10}2+\log_{10}10^{-2})\\ \\ =-\log_{10}2+2\\ \\ =-0.3+2=1.7\)
求めたいのはpHなので
\( \mathrm{pH=14-pOH}=14-1.7=12.3\)
この計算を水素イオン濃度を出して求めて見ると、
\( \mathrm{[OH^-]}=2\times 10^{-2}\)
なので水のイオン積
\( \mathrm{[H^+][OH^-]}=10^{-14}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} \mathrm{[H^+]}=\displaystyle \frac{10^{-14}}{\mathrm{[OH^-]}}\)
に代入して、
\( \mathrm{[H^+]}=\displaystyle \frac{10^{-14}}{2\times 10^{-2}}=\displaystyle \frac{1}{2}\times 10^{-12}\)
よって求めるpHは
\( \mathrm{pH}=-\log_{10}\left(\displaystyle \frac{1}{2}\times 10^{-12}\right)\\ \\
=-\log_{10}(2^{-1}\times 10^{-12})\\ \\
=-(\log_{10}2^{-1}+\log_{10}10^{-12})\\ \\
=\log_{10}2+12\\ \\
=0.3+12=12.3\)
ちなみに、
\( \mathrm{[H^+]}=\displaystyle \frac{10^{-14}}{2\times 10^{-2}}=0.5\times 10^{-12}\)
と処理してしまうと、真数を2に戻すのに時間がかかりますよ。
1つ中和の問題を解いておきましょう。
PH 2 の塩酸 50 mLを完全に中和するには、pH 13 の水酸化ナトリウム何mLを必要とするか求めよ。
反応式は
\( \mathrm{HCl+NaOH \rightarrow NaCl+H_2O}\)
で1:1で反応します。
中和するとき、
「水素イオンと水酸化物イオンの数は同じ」
なので計算はなれましたよね。
⇒ 中和の計算問題(溶液の濃度と量の関係)
水素イオンの数(mol数)と水酸化物イオンの数(モル数)をそれぞれ計算しましょう。
PH 2 の塩酸 50 mL中の水素イオンの数は
pH=2 なので
\( \mathrm{[H^+]}=10^{-2}\) (mol/L)
これは1L中のモル数で、
50mLだと
\(\displaystyle 10^{-2}\times \frac{50}{1000}\)
水酸化ナトリウム水溶液はpH=13 なので
\( \mathrm{pOH}=14-13=1\)
だから水酸化ナトリウムのモル濃度は
\( \mathrm{[OH^-]}=10^{-1}\) (mol/L)
pH 13 の水酸化ナトリウム \( x\) mL中の水酸化物イオンの数は
\( 10^{-1}\times \displaystyle \frac{x}{1000}\)
ここのpHから水酸化物イオンの数を出すときに注意が必要ですね。
\( \mathrm{pH+pOH=14}\)
です。
中和するので
\( 10^{-2}\times \displaystyle \frac{50}{1000}=10^{-1}\displaystyle \frac{x}{1000}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} 10^{-2}\times 50=10^{-1}\times x\)
\(∴ x=5\) (mL)
ここまでの溶液のpH計算ができれば弱酸のpHもやりかた、考え方は同じで良いので楽に求められるようになります。
酸と塩基のそれぞれのイオン濃度、またはイオンの数が分かれば良いのです。