有機化合物の燃焼、つまり燃えるとき酸素が必要になりますが、最も多くの酸素を必要とする物質を選ぶ問題の解き方です。
特定の有機化合物の一定量が燃焼するときに必要な酸素の量は決まっていますので計算で求めることができます。
しかし、算数程度の暗算でも答を出す方法があります。
方法は簡単なので何をすべきか、確認しながら計算問題を解いて行くことにしましょう。

有機化合物の構成元素

有機化合物の構成元素は主に
 炭素 \(\mathrm{C}\) 水素 \( \mathrm{H}\) 酸素 \( \mathrm{O}\)
です。

硫黄やリンを含むものもありますが燃焼計算に出てくる元素はほとんどが上の3つだと考えておいても良いくらいです。

確認するまでもないことですが、
 一酸化炭素 \( \mathrm{CO}\) と二酸化炭素 \( \mathrm{CO_2}\) は無機物としてあつかいます。

有機化合物を構成する各元素の価数

これはあまり考えられていないことですが、
有機化合物の構成元素の結合に使える手の数(価数)は一定です。

炭素は4本、水素は1本、酸素は2本で、周期表通りです。

これを利用することで燃焼問題はものすごく単純に考えることができるで覚えておいてください。

もちろん結合も価数によって決まってくるので、構造式を書くときにも多いに役立ちますよ。

ただし、
有機化合物の計算問題はやっかいなものとされる理由があります。
燃焼する物質も発生する物質も気体であることもあり、
物質量も体積も増減(物質によって増えたり減ったり)するからです

なので、ここでは有機化合物の燃焼に慣れるためにも、
単純なものに限って問題を取り上げておきます。

有機化合物の燃焼例題

例題1

次の化合物 1 molを完全に燃焼させるのに必要な酸素の物質量が最も大きいのはどれか答よ。
 ①アセチレン ②エチレン ③エタン
 ④エタノール ⑤アセトアルデヒド ⑥酢酸

先ずは普通に計算してみます。
その後で、驚くほど簡単に答が見つかる方法をご覧ください。

反応式の係数を比較する方法

①アセチレン \( \mathrm{C_2H_2}\)
構造式は \( \mathrm{H-C\equiv C-H}\) で直線構造です。

構造式はともかく分子式が出てこなければ答はでません。
物質名と分子式はいくら有機化学が理論的に考えられるといっても暗記項目です。

完全に燃やします。
有機物を完全燃焼させると「二酸化炭素と水」が出てくることの説明はいりませんよね。

反応式は

 \mathrm{2C_2H_2+5O_2 \rightarrow 4CO_2+2H_2O}

ですが、1molを燃やしたときの酸素の物質量を比べるので、
燃やす物質の係数を1に変えておきます。
 
 \(\displaystyle\mathrm{C_2H_2+\underline{\color{red}{\frac{5}{2}}}\,O_2 \rightarrow 2CO_2+H_2O}\)

②エチレン \( \mathrm{C_2H_4}\)
これは平面構造をしています。
ここでは関係ありませんけど。笑

反応式は

 \( \mathrm{C_2H_4+\underline{\color{red}{3}}\,O_2\rightarrow 2CO_2+2H_2O}\)

これはこのままで良いですね。

③エタン \( \mathrm{C_2H_6}\)
これは C-C の単結合があるので自由回転します。
ここでは関係ありませんけど。笑笑

反応式は

 \mathrm{2C_2H_6+7O_2\rightarrow 4CO_2+6H_2O}

これはこのままで比べるにはダメですね。
 
 \(\displaystyle \mathrm{C_2H_6+\underline{\color{red}{\frac{7}{2}}}\,O_2\rightarrow 2CO_2+3H_2O}\)

④エタノール \( \mathrm{C_2H_6O}\)
示性式は \( \mathrm{C_2H_5OH}\) です。

反応式は

 \( \mathrm{C_2H_5OH+\underline{\color{red}{3}}\,O_2\rightarrow 2CO_2+3H_2O}\)

これはエタノールが酸素を1つ持っているので係数も整数で合います。

⑤アセトアルデヒド \(\mathrm{CH_3CHO}\)
逆に分子式は \(\mathrm{C_2H_4O}\) です。

反応式は

 \mathrm{2CH_3CHO+5\,O_2\rightarrow 4CO_2+4H_2O}

これはアセトアルデヒドの係数を1に変えます。

 \(\displaystyle \mathrm{CH_3CHO+\underline{\color{red}{\frac{5}{2}}}\,O_2\rightarrow 2CO_2+2H_2O}\)

⑥酢酸 \( \mathrm{CH_3COOH}\)
逆に分子式は \( \mathrm{C_2H_4O_2}\) です。

反応式は

 \( \mathrm{CH_3COOH+\underline{\color{red}{2}}\,O_2\rightarrow 2CO_2+2H_2O}\)

これは係数が整数で合います。

酸素の係数が1番大きい反応が酸素を最も必要とします。
答は③エタン。

と、ここまでは反応式を書いて係数を比較する方法です。
これが普通ですよ。
反応式はかけた方が何かと都合が良いです。

しかし、燃焼に関しては反応式がいらない方法もあるんですよ。

物質の分子式から燃焼に必要な酸素を比べる方法

燃焼させる有機化合物が炭素、水素、酸素で構成されている問題がほとんどなのでこの3つの元素に限って説明します。

炭素と水素だけでできている炭化水素でも、酸素を含んだ化合物でも同じです

炭素を+4、水素を+1,酸素を-2と数えます。
「いきなりなんだよ」、という声も聞こえそうなので少し説明しておきます。

炭素と酸素が二酸化炭素をつくるとき

 \mathrm{C+O_2\rightarrow CO_2\hspace{7pt}(\,O=C=O\,)}

になりますが、
炭素は手が4本、酸素は手が2本あると考えて、
酸素原子1つは炭素の手2つとつながります。

このときイオンのような考え方をすると、
 炭素は「+」として、
 酸素は「-」として、
します。

だから二酸化炭素は、
炭素1つの「+4」と酸素2つの「-2」で

 (+4)\times 1 +(-2)\times 2=4-4=0

のように電気的に中性でいられると考えるわけです。

水素も同様に「+1」です。

水は水素2つと酸素1つで

 (+1)\times 2+(-2)\times 1=2-2=0

これをどのように燃焼に利用するかというと、
分子式を全体で「0」になるようにすれば良いのです。

いっていることはグダグダだけど、やって見れば超簡単ですよ。

①アセチレン \( \mathrm{C_2H_2}\)
炭素2つ、水素2つなので分子全体の価数は

 (+4)\times 2+(+1)\times 2=8+2=+10

(「分子全体の価数」という表現はここだけの定義です。)

これを酸素の「-2」で0にするには

 \dfrac{10}{2}=5

の酸素原子が必要になります。

つまり、分子全体の価数を計算した時点で必要な酸素は決まるのですが、
④以降の酸素を含む分子の場合もあるので先に進みます。

②エチレン \( \mathrm{C_2H_4}\)
炭素2つ、水素4つなので分子全体の価数は

 (+4)\times 2+(+1)\times 4=8+4=12

完全燃焼に必要な酸素原子は

 \dfrac{12}{2}=6

③エタン \( \mathrm{C_2H_6}\)
炭素2つ、水素6つなので分子全体の価数は

 (+4)\times 2+(+1)\times 6=8+6=14

完全燃焼に必要な酸素原子は

 \dfrac{14}{2}=7

ここまでは炭化水素、つまり分子が酸素を持っていない場合です。

次からは分子が酸素を持っているのですが最初から酸素を持っているならその分燃焼に必要な酸素は少なくて済む、と考えれば考え方は同じです。

どういうことかと言うと、分子内にある酸素は、
すでに「分子全体の「+」の価数」である炭素と水素の手を、
酸素1つで2つ抜き取っている(「-2」)、
と考えるのです。

④エタノール \( \mathrm{C_2H_5OH}\)
炭素2つ、水素6つ、酸素1つです。
炭素と水素からは

 (+4)\times 2+(+1)\times 6=8+6=+14

ですが、酸素が1つあるので

 +14+(-2)\times 1=14-2=+12

が分子全体の価数と考えるのです。
よって燃焼に必要な酸素は

 \dfrac{12}{2}=6

ここまで来れば後は簡単に済ませましょう。

⑤アセトアルデヒド \( \mathrm{CH_3CHO}\)
炭素2つ、水素4つ、酸素1つなので

 (+4)\times 2+(+1)\times 4+(-2)\times 1\\ \\  =8+4-2=+10

完全燃焼に必要な酸素原子は

 \dfrac{10}{2}=5

⑥酢酸 \( \mathrm{CH_3COOH}\)
炭素2つ、水素4つ、酸素2つなので

 (+4)\times 2+(+1)\times 4+(-2)\times 2\\ \\  =8+4-4=+8

完全燃焼に必要な酸素原子は
 
 \dfrac{8}{2}=4

すべて、必要な酸素原子を出すときには2で割ることになるので計算する必要もありませんよね。

「分子全体の価数」を \( \langle x \rangle\) などと表すことにすると
 ① \(\mathrm{\langle \,C_2H_2\, \rangle}=+10\)
 ② \(\mathrm{\langle \,C_2H_4\, \rangle}=+12\)
 ③ \(\mathrm{\langle \,C_2H_6\, \rangle}=+14\)
 ④ \(\mathrm{\langle \,C_2H_5OH\, \rangle}=+12\)
 ⑤ \(\mathrm{\langle \,CH_3CHO\, \rangle}=+10\)
 ⑥ \(\mathrm{\langle \,CH_3COOH\, \rangle}=+8\)
と算数できた時点で答はでています。③です。

長い説明でしたけど、やることは簡単なのです。
使って良いですよ。

有機化学で大切な第一歩は物質名と

⇒ 有機化合物の官能基の種類

ですよ。