合成速度と相対速度とは、動くものが2つあるときの速度の見方です。
合成についてここでは平面的な合成ではなく、同一直線上の運動に限定して考えておきます。
相対速度は正の数、負の数の意味がわかっていれば理解できます。
求め方を練習問題、例題を通じて見ておきましょう。

合成速度とは?

速度の合成です。
つまり足したり引いたりするのですが平面で考える場合はベクトルの知識が必要になるので、先ずは直線的な運動だけで理解すると良いです。
直線上で考えるなら、足し算引き算で済みます。

水泳は得意ですか?
川で泳いだことあります?

川の流れに沿って下流に向けて泳ぐときはすいすい泳げているような気がします。
これは自分が泳ぐ速度に、川の流れの速度が加わるからです。

逆に、上流に、川上に向けて泳ぐときは泳いでも泳いでも進みません。
これは自分が泳ぐ速度が、川の速度の分だけ引かれるからです。

これが合成速度を考えるとき1番わかりやすいです。
川で泳いだことの無い人は教科書通り船で川を上り下りして下さい。

50mを25秒で泳げるとすると、(泳ぐ方向に向けて正の方向とする)
泳ぐ速度は

 \( v_1=\mathrm{\displaystyle \frac{50\,m}{25\,s}=+2(m/s)}\)

速さは速度の大きさなので

 \( |v_1|=\mathrm{2(m/s)}\)

としておきましょう。

ここで川の流れる「速さ(大きさ)」を \( v_2\) とすると、
下流に向かって泳ぐとき、速さは増します。

泳ぐ方向、下流に向いて正の方向をとると、
 泳ぐ人の速度は \( +v_1\)
 川の流れの速度は \( +v_2\)
なので人の泳ぐ速度は「川岸から見る」と

 \( v=v_1+v_2\)

となります。

ところが上流に向かって泳ぐ場合、
泳ぐ方向、上流に向けて正の方向とすると、
 人の泳ぐ速度は \( +v_1\)
ですが正の方向は「上流に向けて」なので
 川の流れの速度は \( \color{red}{-v_2}\)
です。
このときの泳ぐ人の速度は減ります。

 \( v=+v_1+(\color{red}{-v_2})=v_1\color{red}{-v_2}\)

このように2つの動きが合わさるとき、
物体の速度は

 \( \large{\color{red}{v=v_1+v_2}}\)

となります。
これを速度の合成といい、
 \(v\) のことを『合成速度』といいます。

速度には方向があるので、マイナスになる場合でも、

 \( v=v_1+v_2\)

で表されることになります。

合成速度の求め方練習問題

例題1

川の流れの速さが 1m/s のまっすぐな川を、速さ 2m/s で人が泳ぐ場合を考える。
下流に向かって泳ぐとき、上流に向かって泳ぐときのそれぞれの速度と速さを求めよ。

人が泳ぐ方向を正の方向とします。

下流に向かって泳ぐとき「速度」は増します。

 \( v=v_1+v_2\\ \\
=\mathrm{+2+(+3)=+5(m/s)}\)

「速さ」はこの大きさなので

 \( |v|=5\mathrm{(m/s)}\)

上流に向かって泳ぐときは川の流れが逆方向になるので、
川の流れの速度はマイナスです。

 \( v=v_1+v_2\\ \\
=\mathrm{+2+(-3)=-1(m/s)}\)

つまり、進んでるのではなくて泳いでいる方向とは逆に戻されているということです。
速さは大きさなので

 \( |v|=|-1|=1\mathrm{(m/s)}\)

となります。

相対速度とは?

「相対」という言葉は2つのものが無いと存在しません
だから「相対速度」は2つの物体どうしを見比べた場合の速度です。

例えば、
同じ速度で並んでいる自動車同士は実際には動いていますが、
自動車どうしは、片方から見るともう片方は動いていないように見えます。

逆に、すれ違う自動車どうしは速く感じます。

これが相対速度です。

同じ方向に進んでいる場合、差が小さくなるので相対的な速さは小さくなり、
逆方向に進んでいる場合、差が大きくなるので相対的な速さは大きくなります。

一般に、物体Aから物体を見たときの速度を、
 「Aに対するBの相対速度
といいます。
見ている主体はAです。

式で表しておきます。
 Aの速度を \( v_A\)
 Bの速度を \( v_B\)
とすると、Aに対するBの相対速度

 \( \color{red}{v_{AB}=v_B-v_A}\)

となります。
主体となるAの速度分、速さは小さく見えると言うことです。

相対速度を求める例題と練習問題

例題2

Aは 3.0m/s で自転車に乗っている。
Bは 4.0m/s で自転車に乗っている。
AとBがすれ違うとき、Aに対するBの相対速度を求めよ。

「Aに対するBの相対速度」
なのでAから見たBの速度ということです。
Aの進行方向を正の向きとすると

 Aの速度は \( v_A=+3.0\mathrm{(m/s)}\)
 Bの速度は \( v_B=-4.0\mathrm{(m/s)}\)

よってAの進行方向に対して

 \( v_{AB}=v_B-v_A\\ \\
=-4.0-(+3.0)=-7.0\mathrm{(m/s)}\)

「速度」を答えるときは、「正の方向と符号」を忘れないでくださいね。

⇒ 速さと速度の違いとは?

ところで、地球上にいて1番気がつかないことですが
地球の自転だけを考えれば赤道上の人は1日におよそ 40000km 動いています。
これって、速さ 1667(km/h) ですよ。
相対的に動いていないように見えるだけです。