アミノ基をもつ炭化水素をアミンといますが炭化水素が芳香族の物質が芳香族アミンです。
代表的な芳香族アミンであるアニリンとアゾ基をもつアゾ化合物の性質と反応を見ておきましょう。
アニリンのアミドとジアゾ化およびカップリングまで反応をつなげておきますので流れに加えて下さい。
芳香族アミンとは
アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した物質をアミンといい、
\( R-\color{red}{\mathrm{NH_2}}\)
炭化水素基が芳香族のモノを芳香族アミンといいます。
芳香族の官能基なのでベンゼン環に直接アミノ基がついている物質です。
アミンは塩基性を示しますが、脂肪族のアミンに比べると芳香族アミンは塩基性が弱いです。
アニリンの製法
アニリン \(\mathrm{C_6H_5\color{red}{NH_2}}\)
ニトロベンゼンをスズか鉄と濃塩酸で還元すると塩が得られ、
\(\mathrm{2C_6H_5NO_2} + \mathrm{3Sn} + \mathrm{14HCl}\\ \\
\rightarrow \mathrm{2C_6H_5\color{green}{NH_3Cl}} + \mathrm{3SnCl_4} + \mathrm{4H_2O}\)
これに水酸化ナトリウム水溶液を加えるとアニリンが遊離します。
\(\mathrm{2C_6H_5\color{green}{NH_3Cl}} + \mathrm{NaOH}\\ \\
→ \mathrm{2C_6H_5\color{red}{NH_2}} + \mathrm{NaCl} + \mathrm{H_2O}\)
アニリンは無色の油状の液体ですが、酸化されやすいので空気中では褐色に着色します。
水には溶けにくいですが塩酸と反応してアニリン塩酸塩をつくり水に溶けるようになります。
\(\mathrm{C_6H_5NH_2} + \mathrm{HCl} → \mathrm{C_6H_5\color{green}{NH_3Cl}}\)
アニリンの反応
さらし粉(塩化カルシウムと次亜塩素酸カルシウムとの複塩)水溶液を加えると、
赤紫色を呈するのでさらし粉はアニリンの検出に用いられます。
硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液を加えて加熱すると、
黒色染料として使われるアニリンブラックを生じます。
アニリンは無水酢酸と反応しアセトアニリドを生じます。(アニリンのアセチル化)
\(\mathrm{C_6H_5NH_2} + \mathrm{(CH_3CO)_2O}\\ \\
→ \mathrm{\color{green}{C_6H_5NHCOCH_3}} + \mathrm{CH_3COOH}\)
※
\(\mathrm{C_6H_5NHCOCH_3}\) の \(\mathrm{-NHCO-}\) 結合をアミド結合といいます。
アミド結合を持つ化合物を総称して「アミド」と呼びますので覚えておくと良いでしょう。
アセトアニリドは以前は解熱剤として使われていましたが副作用が強いので現在は使われていません。
アゾ化合物とは
アゾ基(\(\mathrm{-N=N-}\))をもつ化合物をアゾ化合物といいます。
アゾ基の生成には「ジアゾ化」が関係していますので先に書いておきます。
ジアゾ化
アニリンの希塩酸溶液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加えると塩化ベンゼンジアゾニウムが生成します。
\(\mathrm{C_6H_5NH_2} + \mathrm{2HCl} + \mathrm{NaNO_2}\\ \\
→ \mathrm{\color{red}{C_6H_5N^+ \equiv NCl^-}} + \mathrm{NaCl} + \mathrm{H_2O}\)
塩化ベンゼンジアゾニウムは5度以下で反応させます。
室温では不安定ですぐにフェノールと窒素に分解されるからです。
※
塩化ベンゼンジアゾニウムの「+」はベンゼン還寄りの\(N\)です。
カップリング
塩化ベンゼンジアゾニウム水溶液にナトリウムフェノキシド水溶液を加えると、
橙赤色の \(\color{red}{p-}\)ヒドロキシアゾベンゼンが生じます。
\(\mathrm{C_6H_5N^+ \equiv NCl^-}\,+\,\mathrm{C_6H_5ONa}\\ \\
\rightarrow \,p-\mathrm{C_6H_5-N=N-C_6H_4OH}\,+\, \mathrm{NaCl}\)
この反応がカップリングです。
このカップリングによりアゾ基が発生し、アゾ化合物が生成するということですね。
アミンについては芳香族でしか取り上げていません。
ここでしっかり復習しておいてください。
もちろん脂肪族でもアミンはあります。
確認しておいてください。