酸と塩基は中学では酸性とアルカリ性という分け方をしていましたが定義の幅が広がります。酸の性質と塩基の性質をどう見分けるのか先ずはアレニウスの定義と、後に定義の幅を広げたブレンステッドの定義の違いを見てみましょう。

酸性とアルカリ性という言葉は中学生でも聞いたことがあるでしょう。
これは水溶液に用いられている酸と塩基の一部を示したものですので、もっと広い範囲で酸と塩基とに分けた性質の違いを示しておきます。

酸の性質

塩酸(\(\mathrm {HCl}\))、硫酸(\(\mathrm {H_2SO_4}\))、硝酸(\(\mathrm {HNO_3}\))や酢酸(\(\mathrm {CH_3COOH}\))のように、

・薄い水溶液が酸味をもつ。
・水溶液は青色リトマス紙を赤色に変化させる。
・金属と反応して(金属を溶かして)水素を発生する。
・BTB溶液を黄色に変化させる。

などの、酸のもつ性質を酸性といいます。

塩酸は塩化水素が水に溶け込んだ水溶液をいいます。
塩酸という物質名ではありません。
BTBは「ブロモチモールブルー」の略です。

塩基の性質

水酸化ナトリウム(\(\mathrm {NaOH}\))、水酸化カルシウム(\(\mathrm {Ca(OH)_2}\))、アンモニア(\(\mathrm {NH_3}\))のように、

・薄い水溶液が苦みを持つ。
・水溶液は赤色リトマス紙を青色に変化させる。
・フェノールフタレイン溶液を赤色に変化させる。
・BTB溶液を青色に変化させる。

などの、塩基の持つ性質を塩基性といいます。
塩基性物質は手につけるとぬるぬるするのも特徴です。

塩基が水に溶けてその水溶液の示す性質をアルカリ性といます。
「アルカリ」は塩基のうち水に溶けやすいものをいいますので水溶液に対しての塩基性をアルカリ性と限定的に使います。

酸と塩基の性質のうち、色を変える性質は特に覚えておいた方が良いです。
 リトマス紙を赤色は酸性青色が塩基性
 BTB溶液を黄色は酸性青色が塩基性
などです。

酸と塩基の定義

スウェーデンのアレニウスは、(1887年)
水に溶けて水素イオン(\(\mathrm {\color{red}{H^+}}\))を出す物質
例えば
 塩酸(\(\mathrm {HCl}\))は
 \( \mathrm {HCl} → \mathrm {\color{red}{H^+}} + \mathrm {Cl^-}\)

 硫酸(\( \mathrm {H_2SO_4}\))は
 \( \mathrm {H_2SO_4} → 2\mathrm {\color{red}{H^+}} + \mathrm {SO_4^{2-}}\)

 硝酸(\(\mathrm {HNO_3}\))は
 \( \mathrm {HNO_3} → \mathrm {\color{red}{H^+}} + \mathrm {NO_3^-}\)

のような物質を

水に溶けて水酸化物イオン(\(\mathrm {\color{blue}{OH^-}}\))を出す物質
例えば、
 水酸化ナトリウム(\(\mathrm {NaOH}\))は
 \( \mathrm {NaOH} → \mathrm {Na}^+ + \mathrm {\color{blue}{OH^-}}\)

 水酸化カルシウム(\(\mathrm {Ca(OH)_2}\))は
 \( \mathrm {Ca(OH)_2} → \mathrm {Ca}^+ + 2\mathrm {\color{blue}{OH^-}}\)

のような物質を塩基
と定義しました。

これらの性質は水溶液中での性質となります。

水溶液中に限らない酸と塩基を、
デンマークのブレンステッドとイギリスのローリーは、(1923年)

水素イオンを与えることのできる物質
例えば
 \(\mathrm {\color{red}{H}Cl} + \mathrm {H_2O} → \mathrm {Cl^-} + \mathrm {H_3O^+}\)
の塩酸のような物質を「

 \(\mathrm {H_3O^+}\) をオキソニウムイオンといいます。
水溶液中では水素イオンはオキソニウムイオンとして存在していますが、
 \(\mathrm {H^+}\) と略して書くのが普通です。

それを受け取ることができる物質
例えば
 \(\mathrm {HCl} + \mathrm {\color{blue}{NH_3}} → \mathrm {NH_4Cl}\)
のアンモニアのような物質を「塩基

と、2人別々にですが定義しました。

何が違うかというと水に溶けにくい水酸化銅(\(\mathrm {Cu(OH)_2}\))のような物質は水酸化物イオンを出しにくい。
しかし、水素イオンは受け取ることができる物質もあるのでこれも塩基と定義できるようになったわけです。
上の塩基の例でいうとアンモニアは水酸化物イオンを出していませんよね。
でも水素イオン(プロトン)を受け取っています。
これも塩基と定義の幅が広がったのです。

他にももっと広い定義の仕方を1938年にルイスがしていますが、
現在の高校化学ではそこまで考えなくていいようです。笑

ここでは酸と塩基の定義の名前をお伝えしました。
名前よりももっと大事なことがありますので、別にお伝えしようと思います。

⇒ 酸と塩基の価数と強弱と電離度の関係

また、酸と塩基の反応ではイオン式が大切になります。

⇒ イオン反応とイオン反応式の書き方

は確認しておきましょう。