電解質を水に溶かすと電離平衡に達します。ここでは電離定数と電離度と水素イオン濃度の関係を探ってみましょう。電離平衡も質量作用の法則が成り立ちますが電離度が関わってきますので少しややこしい式が登場します。「導く」ではなく「覚える」でも構いません。

電解質と電離平衡

電解質には水に溶けてほぼすべてが電離するものと、少ししか電離しないものがあります。
塩化水素などの強酸や水酸化ナトリウムなどの強塩基のようにほぼ完全に電離する物質を「強電解質」といいます。
酢酸などの弱酸やアンモニアなどの弱塩基のように溶けた一部しか電離しない物質を「弱電解質」といいます。

弱電解質を水に溶かすと一部が電離しイオンになりますが、生じたイオンと電離していない分子とは平衡状態となっています。
このように電離して平衡状態になっている状態を「電離平衡」といいます。

また、溶けている電解質全体に対し電離している電解質の割合を電離度といい、
ギリシア文字の「\(\alpha\)」で表します。
溶けた電解質の物質量を\(c\,\mathrm{(mol)}\)、電離した物質量を\(c’\,\mathrm{(mol)}\)とすると、
電離度 \(\alpha\) は \(\displaystyle \alpha=\frac{c’}{c}\) となり、
 \(0\,≦\,\alpha\,≦\,1\) の範囲にあります。

強電解質では \(\alpha \,≒\,1\)、弱電改質では \(\alpha \ll 1\) となります。
(「 \(≒\) 」は「ほぼ等しい」、「 \(\ll\) 」は「左は右より非常に小さい」を意味します。)

例えば、25℃0.1mol/L水溶液の電離度は、
 塩酸:0.94、水酸化ナトリウム:0.91、
 酢酸:0.016、アンモニア:0.013、
程度です。

酢酸の電離平衡

弱電解質である酢酸を水に溶かすとその一部が電離して

 \( \mathrm{CH_3COOH+H_2O \,\rightleftharpoons \,CH_3COO^- +H_3O^+}\)

という電離平衡の状態になりますが、
普通は \(\mathrm{H_2O}\) を省略し、\(\mathrm{H_3O^+}\) を \(\mathrm{H^+}\) と表して

 \( \mathrm{CH_3COOH \rightleftharpoons CH_3COO^- +H^+}\)

と書くことが多いです。
これに質量作用の法則(化学平衡の法則)を適用すると

 \( K_\mathrm{a}=\displaystyle \mathrm{\frac{[CH_3COO^-][H^+]}{[CH_3COOH]}}\)

が成り立ちます。
この \(K_\mathrm{a}\) を酢酸の電離定数といい、温度が一定なら酢酸の濃度によらず一定となります。

 \(K\) の右下にある添字の「a」は「asid」(酸)を意味し、後で出てくる「b」は「base」(塩基)を意味します。

ここまでは化学平衡と同じなので慣れてきたと思います。
ここから少しややこしい式になりますが、平衡時の濃度を文字を使って表せるようになればそれほど難しくはありません。
電離度を理解して、平衡時の濃度を「しっかり書き出す」ことをすれば関係式は出せるようになります。

酢酸の最初の濃度を\(c\) [mol/L]、電離度を \(\alpha\) とすると電離平衡

 \( \mathrm{CH_3COOH \rightleftharpoons CH_3COO^- +H^+}\)

に達したときの濃度はそれぞれ、

\(\mathrm{CH_3COOH}\)\(\mathrm{CH_3COO^-}\)\(\mathrm{H^+}\)
\( c(1-\alpha)\)\( c\alpha\)\( c\alpha\)

となっているので

 \( K\mathrm{a}=\displaystyle \mathrm{\frac{[CH_3COO^-][H^+]}{[CH_3COOH]}}\)

に代入すると

 \( K\mathrm{a}=\displaystyle \mathrm{\frac{c\alpha\times c\alpha}{c(1-\alpha)}=\frac{c\alpha^2}{(1-\alpha)}}\)

このように弱電解質においても気体の平衡定数と同じように質量作用の法則が適用できることを
 「\(\color{red}{オストワルトの希釈律}\)」
といいます。

ここで酢酸は弱酸で、\(\alpha \,\ll \,1\) なので分母が \(1-\alpha \,≒\, 1\) と見なせるので

 \( K\mathrm{a}=c\alpha^2\)

この式から求めれば良いですが公式化したいなら、

 \(\color{red}{\alpha=\displaystyle \sqrt{\frac{K_a}{c}}}\)

また、水素イオン濃度 \(\mathrm{[H^+]}\) は \(c\alpha\) なので

 \(\color{red}{\mathrm{[H^+]}}=c\alpha=c\times \sqrt{\frac{K_a}{c}}=\color{red}{\sqrt{cK_a}}\)

となりますね。

電離度の式を見ると、濃度( \(c\) )が小さくなるほど電離度は大きくなるというのが分かります。

ついでに弱塩基の電離平衡も見ておきます。

アンモニアの電離平衡

アンモニア( \(\mathrm{NH_3}\) )を水に溶かすと

 \( \mathrm{NH_3+H_2O \rightleftharpoons NH_4^+ +OH^-}\)

の電離平衡の状態になります。
これに化学平衡の法則を適用して、

 \( K=\displaystyle \mathrm{\frac{[NH_4^+][OH^-]}{[NH_3][H_2O]}}\)

となりますが、希薄水溶液では水( \(\mathrm{[H_2O]}\) )は多量にあり平衡に関係しない定数と見なせるので、

 \( K\times \mathrm{[H_2O]}=\displaystyle \mathrm{\frac{[NH_4^+][OH^-]}{[NH_3]}}\)

の \(K\times \mathrm{[H_2O]}\) を \(K_b\) と改めて定数とし、

 \( K_b=\displaystyle \mathrm{\frac{[NH_4^+][OH^-]}{[NH_3]}}\)

これをアンモニアの電離定数といいます。

質量作用(化学平衡)の法則で大切なのは、
弱酸、弱塩基に限らず平衡時における各物質の濃度を書き出すこと。

だといえますよね。

平衡にはいろいろなものがあります。

⇒ 平衡定数の求め方と化学平衡の法則(質量作用の法則)

平衡定数の求め方からでも良いので復習しておいて下さい。
イオン濃度などの計算問題はその後です。

⇒ 水のイオン積(水素イオン濃度とpHの関係)

計算問題として出題されやすい項目の1つです。