化学の試験でも計算問題が出ます。しかし化学には化学の計算方法があるのではなく簡単な比例計算で済むことが多いです。比の取り方に慣れてしまえば多くの問題が解けるようになりますので少し練習しておきましょう。もちろん化学の用語は基本となります。
化学の計算問題の出題率
化学の試験において計算問題の出題率は試験の種類によって大きく変わります。
例えばセンター試験のように「化学」の基礎習得を確認する試験では計算問題の比率は低いです。
基本用語を広く問われる問題構成となっていますので計算問題は数問程度ですよね。
しかし、本試験では1つの大問に計算問題が必ず付いてくる、というくらい比率は高くなります。
しかも割とやっかいな計算問題となり全体の問題数も多くはありませんので配点も高かったりします。
アボガドロ定数や気体定数などからもわかるように指数の付いたややこしそうに見えるものが多いので解けていない人が多い(正答率の低い)のも計算問題です。
ただ、知っておいてもらいたいのは中には中学生でも解けるような問題もあって、全部の問題が難しいものでは無いということです。
しかし、いきなり全ての問題を解けるようになるものでもありませんので、少しずつレベルアップして行くしかありませんね。
中でも、計算問題全ての基本となる「比の取り方」の練習から始めましょう。
もっともっと高いレベルになれば違った方法も使えるようになりますが、1つひとつ処理していく方法で十分です。
比の取り方の基本と練習問題
化学の計算問題は「比」が主役です。
多くは比例で、少し反比例がありますが比を使えないと解けない問題ばかりですので比の取り方の練習をしておきましょう。
比例や反比例で活躍する計算方法はありますが慣れていないと最初からつまずくので、中学校の数学で習う「比例式」を使って説明していきます。
必要無いとは思いますが、
比例式 \(\color{red}{a:b=c:d}\) において
「内項の積=外項の積」なので \(\color{red}{bc=ad}\) です。
物質中に含まれる割合問題
比例式の立て方は復習になりますが練習問題の中で観ていきましょう。
炭酸ナトリウムの結晶( \(\mathrm{Na_2CO_3\cdot10H_2O}\) )57.2gの中には,
何gの炭酸ナトリウム( \(\mathrm{Na_2CO_3}\) )が含まれるか求めよ。
\(\mathrm{Na=23\,,\,C=12\,,\,O=16}\)
これは57.2という数字だけしか与えられていないように見えますが、
分子量や組成式量は自分で計算する、という前提があります。
\( \mathrm{Na_2CO_3\cdot10H_2O=286}\)
\( \mathrm{Na_2CO_3=106}\)
なので286gの結晶(水和物)中に106gの炭酸ナトリウムがある、ということになります。
この比は変わりません。
この変わらない比を「=」で結んだものが比例式です。
\( \mathrm{Na_2CO_3\cdot10H_2O:Na_2CO_3}\\ \\
=286:106=57.2:x\)
これを計算すると \(x=21.2\)
まずやることは
\( \mathrm{Na_2CO_3\cdot10H_2O=286}\)
\( \mathrm{Na_2CO_3=106}\)
を計算して書き出すことですよ。
結晶水を持つ物質を0.416gをとり、加熱して完全に結晶水を除いたら0.244gになった。
この化合物は結晶水を何%含んでいたか求めよ。
この問題では物質名はわかっていませんが必要ありません。
物質と結晶水を合わせて全体の質量を示しています。
その構成はどうなっているかを考えれば良いだけです。
全体が0.416gで結晶水を取り除いたら0.244gになったのだから、
結晶水は0.416-0.244=0.172g含まれていたということになります。
さて「比」ですが、全体の0.416gが100%です。
では、0.172gは何%?という問題と同じです。
\( 0.416:0.172=100:x\)
これを計算して \(x=41.3\)(%)
一部酸化されている金属試料があります。
この金属試料1.000gを一定質量になるまで空気中で加熱したところ、1.225gになった。
次にこれを水素中で完全に還元したところ0.975gになった。
加熱する前の金属試料では何%が酸化されていたか求めよ。
先ずは問題を読み取ります。
「一定質量になるまで加熱」
というのは完全に(100%)酸化させるということです。
「水素で還元した」
というのは酸化していた酸素を全て取り除いたということです。
つまり1.000gの酸化物中に0.975gの金属、0.025gの酸素が付いていたということです。
さて、比を出したいわけですが100%の酸化で酸素はどれだけ付くか?
完全に酸化させたら1.225gになって、その中の金属は0.975gで変わりません。
つまり、1.225-0.975=0.250gの酸素が付けば100%の酸化ですね。
比例式は \(0.250:0.025=100:x\)
よって \( x=10\) (%)となります。
失われる結晶水の分子数
硫酸銅5水和物( \(\mathrm{CuSO_4\cdot5H_2O}\) )の5.00gを100℃に加熱したところ結晶水の一部が失われ3.56gとなった。
\(\mathrm{CuSO_4\cdot5H_2O}\) の1分子から水が何分子失われたか求めよ。
\(\mathrm{Cu=64\,,\,S=32\,,\,H=1\,,\,O=16}\)
こういった測定した質量だけで出される問題はわかりにくいですよね。
与えられた数値だけでは答えが出ないので自分で出さなければならない数値があるからです。
なのでわかることから見ていきましょう。
変化しているものを見比べると少しは見えてきます。
\( \mathrm{CuSO_4\cdot5H_2O \rightarrow CuSO_4\cdot aH_2O}\)
ここでの結晶水のaは答えではありませんよ。
水が減るという変化です。硫酸銅は変化しません。
で、もとの結晶に5分子の水が付いているので、「何分子失う?」と聞かれているので1~5分子のうちどれかです。
しかし、勘で答えるわけにもいきませんので計算します。
他にわかることは式量です。
\( \mathrm{CuSO_4\cdot5H_2O=250 }\)
\( \mathrm{CuSO_4=160}\)
\( \mathrm{H_2O=18}\)
問題に与えられた数値ではなくこの分かり易い量で見ると、
水分子1つ失うと
\( \mathrm{CuSO_4\cdot5H_2O}\)
250g から 18g 減ります。
5.00g からは \(x\)g を失うとします。
ここで比例計算してみると、
\( 250:5.00=18:x\)
から5.00gの硫酸銅5水和物から水1分子を失うと
\(\displaystyle \frac{5.00\times 18}{250}=\frac{90}{250}=0.36\)g 減ることになります。
(まだ計算が続くので実際計算するときは分数で残しておきます。)
では、実際にはどのくらい減っていたかというと問題から
\(5.00-3.56=1.44g\) 減っているので
\( 1.44\div \displaystyle \frac{90}{250}=1.44\div 0.36=4\)
水4分子と答えが出せます。
これは 5.00g の硫酸銅水和物から水1分子を失うと 0.36g 減る。
実際には 1.44g 減っているからそれを割って4分子失っていると計算したのです。
では何分子失ったか?とダイレクトに答えを出す比例計算をしてみましょう。
水を \(x\) 分子失ったとしましょう。
水1分子は 18g なので \(x\) 分子失ったとすると \(18x\) g 減ります。
これは \(\mathrm{CuSO_4\cdot5H_2O}\) が 250g あったときの量です。
問題では加熱前にあった \(\mathrm{CuSO_4\cdot5H_2O}\) は5.00g で、
減った水は 5.00-3.56=1.44g だったので比例式を立てると、
\( 250:5.00=18x:1.44\)
と答えを求めることもできます。
問題集の解答で注意することと計算問題への対策
もちろん本来変化していないのはもとの硫酸銅水和物の全体の質量なので、
(加熱前の結晶の質量)=(加熱後の結晶の質量)+(失った水の質量)
という等式から求めるのが綺麗な解答かもしれませんが、
部分的に比例を使って求める、で良いのです。
問題集などでは綺麗な解答だけが書かれている事が多く、
「難しい」
と計算問題を捨ててしまいたくなることがあるかもしれません。
そんなときは、
「わかることだけでも書き出して見る」
ということと
「比例関係にあるのはどれとどれ?」
と探ってみると解ける問題も増えてきます。
慣れてくれば、ある程度の計算問題は解けるようになってきますよ。
最初は時間かかるだろうけど、中学の数学を使うだけです。
わかることだけでも書き出して見ましょうね。
比例式を利用する比例計算ができるようになったら
に進んで1つずつ解ける計算問題も増やして行きましょう。