水溶液の沸点上昇・凝固点降下とは質量モル濃度と理論的に結びついています。
普通に使うモル濃度を表す体積モル濃度ではありませんので注意してください。
ここでは質量モル濃度と沸点上昇、凝固点降下とを結びつける公式の確認と計算問題を少しやっておきましょう。
といっても例のごとくセンター程度あれば満点レベルの問題も含まれているかもしれません。
質量モル濃度とは
質量モル濃度は溶媒 1kg 中に含まれる溶質の物質量で表された濃度で単位は(mol/kg)です。
※
普通にモル濃度とされるのは体積モル濃度のことで単位は(mol/L)なので間違えないで下さい。
この質量モル濃度から物質量を計算して出すのは、体積モル濃度のときと同様にすればいいだけです。
モル濃度の(L)を(kg)に、(mL)を(g)に置きかえればよいのです。
溶媒の質量を \(W\) (g)、溶液の質量モル濃度を \(C_w\) (mol/kg)とすると
\(\displaystyle \color{red}{n=C_w\times \frac{W}{1000}}\)
となります。
単位だけ見ると
\( \mathrm{(mol/kg)\times \displaystyle \frac{(g)}{(g/kg)}=mol}\)
となっていて出てくるのは物質量であることもわかります。
これを今までの公式につなげておきましょう。
ただ、この式では溶媒の単位が(g)なので間違えないようにしましょう。
\(\displaystyle \color{red}{n=\frac{w}{M}=\frac{dv}{M}=\frac{N}{6.0\times 10^{23}}=C\times \frac{v}{1000}=C_w\times \frac{W(\mathrm{g})}{1000(\mathrm{g})}}\)
全ては物質量を表しています。
公式の使い方は下にあるの沸点上昇度と凝固点降下度との組合せも出てくるので、そのときにまとめることにします。
質量モル濃度はあまり慣れていない単位なので少し練習しておきましょう。
水 300g に尿素 \(\mathrm{CO(NH_2)_2}\) 3.6g を溶かした溶液のの質量モル濃度を求めよ。
\( \mathrm{H=1,C=12,N=14,O=16}\)
\( \mathrm{CO(NH_2)_2=60}\)
この計算はしましょうね。
公式
\(\displaystyle \color{red}{\frac{w}{M}=C_w\times \frac{W}{1000}}\)
の部分を使えばそのまま代入して出てきます。
求める質量モル濃度を \(x\) とすると
\( \displaystyle \frac{3.6}{60}=x\times \displaystyle \frac{300}{1000}\)
これから \( x=0.20\) (mol/L)
2 mol/Lの希硫酸の質量モル濃度を求めよ。
ただし、この希硫酸の比重は 1.12 とする。
\( \mathrm{H_2SO_4=98}\)
モル濃度の換算ですね。
体積モル濃度で与えられた濃度を質量モル濃度に変えます。
\(\displaystyle \color{red}{C\times \frac{v}{1000}=C_w\times \frac{W(\mathrm{g})}{1000(\mathrm{g})}}\)
溶液の質量がわかりませんので一般の文字でもいいですが、
質量は関係無しに成り立つはずなので溶液 1000 mLで考えます。
比重が 1.12 なので溶液の質量は \(1.12\times 1000\) ですが
溶媒の質量はモル濃度が 2 mol/Lなので、
溶質 2 mol分を溶液から引いておく必要があります。
求める質量モル濃度を \(x\) とすると
\( 2\times \displaystyle \frac{1000}{1000}=x\times \displaystyle \frac{1.12\times 1000-98\times 2}{1000}\)
答えは \( x\,≒\,2.16\) (mol/kg)
これくらいの単位換算はできないと後が苦しいですよ。
沸点上昇と凝固点降下
沸点上昇と凝固点降下については
⇒ 希薄溶液の蒸気圧降下と沸点上昇と凝固点降下
で確認できます。
ここでは、沸点上昇と凝固点降下の計算で注意しておきたいことをまず言っておきます。
希薄溶液、つまり濃度の薄い溶液において、
溶液の沸点上昇度や凝固点降下度はその溶液の質量モル濃度に比例します。
これは電解質溶液の場合には、溶質の一部または全てが水溶液中で電離するので、
電離したイオンを含む全ての溶質粒子の質量モル濃度に比例する、ということです。
例えばブドウ糖は電離しませんが塩化カルシウムは電離して3つのイオン粒子になるので3倍になります。
\( \mathrm{CaCl_2 \rightarrow Ca^{2+}+2Cl^-}\)
質量モル濃度と沸点上昇・凝固点降下とを結びつける公式
ある溶媒の溶液における沸点上昇度や凝固点降下度を \(\Delta T\)、
質量モル濃度を \(C_w\) とすると、これらは比例関係にあるので
\( \displaystyle \frac{\Delta T_1}{C_{w1}}=\displaystyle \frac{\Delta T_2}{C_{w2}}=\cdots=\displaystyle \frac{\Delta T}{C_w}=K\)
と常に一定になります。
そこで基準になる値を溶媒 1kg に換算した値を代表し
\(\displaystyle \color{red}{\frac{\Delta T}{C_w}=K}\)
にして、この \(\color{red}{K}\) をモル沸点上昇、モル凝固点降下と呼びます。
※
モル凝固点降下度やモル沸点上昇度は「溶媒によって決まっている値」ですので忘れないで下さいね。
ほとんどの問題が水を溶媒としているので
水のモル沸点上昇は \(K_b=0.52\)
水のモル凝固点降下は \(K_f=1.85\)
というのはだいたいの数値を覚えておいても良いくらいです。
問題に与えられるので覚えなくても良いですけど、
「水のモル凝固点降下は 1.86 」と与えられることもあるのでそのときは問題に従って下さい。
これからはこの \(K\) を使って計算することになるので沸点上昇、凝固点降下ともに単に \(K\) と表すことにします。
\(\displaystyle \color{red}{\frac{\Delta T}{C_w}=K}\) これから質量モル濃度は \(\displaystyle \color{red}{C_w=\frac{\Delta T}{K}}\)
このとき物質量は
\(\displaystyle \color{red}{n=C_w\times \frac{W}{1000}=\frac{\Delta T}{K}\times \frac{W}{1000}}\)
と公式につながります。
物質量を表す公式は増えてきましたが、ここで使うのは
\( \displaystyle \frac{w}{M}=\displaystyle \frac{\Delta T}{K}\times \displaystyle \frac{W}{1000}\)
の部分が多いです。
沸点上昇度・凝固点降下度の練習問題
では練習問題で慣れていきましょう。
一定量の水にショ糖1gを溶かした溶液の沸点上昇度と同じ沸点上昇度を得るためには同量の水にブドウ糖を何g溶かせばよいか求めよ。
\( \mathrm{C_{12}H_{22}O_{11}=342\,,\,C_6H_{12}O_6=342}\)
ショ糖もブドウ糖も電離はしないので、要はショ糖 1g の物質量と同じ物質量のブドウ糖は何gか?
という問題ですので沸点上昇度を求める必要はありません。
公式を使えば
\( n=\displaystyle \frac{w}{M}=\displaystyle \frac{w’}{M’}\)
を使うことになります。
求めるブドウ糖の質量を \(x\) とすると
\( \displaystyle \frac{1}{342}=\displaystyle \frac{x}{180}\)
これから \( x,≒\,0.526\) (g)
これは沸点上昇度は質量モル濃度に比例するということの確認問題でした。
溶媒が同じ量なら物質量が同じだということですね。
濃度 0.1 mol/Lのブドウ糖水溶液と等しい沸点を示す塩化カルシウム水溶液がある。
この溶液10mLに含まれる \(\mathrm{Ca^{2+}}\) の数はおよそいくらか求めよ。
アボガドロ定数は \(6.0\times 10^{23}\) とする。
塩化カルシウム \(\mathrm{CaCl_2}\) からはイオンが3つ発生するから、非電荷質であるブドウ糖の3分の1の物質量で同じ沸点になるとわかります。
\( \mathrm{CaCl_2 \rightarrow Ca^{2+}+2Cl^-}\)
関係式は
\((ブドウ糖の物質量)\,=\,( \mathrm{Ca^{2+}} の物質量 )\times 3\)
公式を選ぶとすれば( \(m\) を物質量の倍数とする)
\( n=C\times \displaystyle \frac{v}{1000}=\displaystyle \frac{N}{6.0\times 10^{23}}\times m\)
これに数値をあてはめて
\( 0.1\times \displaystyle \frac{10}{1000}=\displaystyle \frac{x}{6.0\times 10^{23}}\times 3\)
これを解いて \(x=2\times 10^{20}\)
電解質は電離した後の粒子(イオン)の総物質量を考える必要がありますね。
次は沸点を求めます。
1000 gの水に 0.2 molの尿素を溶解した溶液の沸点は何℃か求めよ。
ただし、水のモル沸点上昇を 0.52 とする。
モル沸点上昇が 0.52 なので 0.2 molでは \(0.52\times 0.2=0.104\) ℃上昇するから、水の沸点 100 ℃に足してもいいです。
ここでは物質量の公式を使い続ける練習をしましょう。
\( n=\displaystyle \frac{\Delta T}{K}\times \displaystyle \frac{W}{1000}\)
から沸点上昇 \(\Delta T\) を計算してからでもいいですが、
求める沸点を \(x\) とすると沸点上昇は \(x-100\) と表せるので
\( 0.2=\displaystyle \frac{x-100}{0.52}\times \displaystyle \frac{1000}{1000}\)
これから求めると沸点は \(x=100.104\) ℃
水が溶媒のときは沸点(100℃)、凝固点(0℃)ともに覚えておかなければなりません。
他の溶媒のときには問題に与えられますのでご安心ください。
次は凝固点降下の問題です。
水 1000 gにある非電解質 50 gを溶解した溶液の凝固点は \(-0.30\) ℃であった。
この物質の分子量はいくらか求めよ。
ただし、水のモル凝固点降下を 1.86 とする。
普通モル凝固点降下は 1.85 で与えられることが多いですが、答えをきれいにするために 1.86 としました。笑
物質量の公式の一部を利用します。
\( \displaystyle \frac{w}{M}=\displaystyle \frac{\Delta T}{K}\times \displaystyle \frac{W}{1000}\)
凝固点降下が 0.30 なので求める分子量を \(x\) とすると
\( \displaystyle \frac{50}{x}=\displaystyle \frac{0.30}{1.86}\times \displaystyle \frac{1000}{1000}\)
が成り立ちますので \(x=310\)
溶媒は水だけでもいいと思うのですが少しだけ違う溶媒でも練習しておきましょう。
ある不揮発性の有機化合物 1. 6gを 50 gのベンゼンに溶かした溶液の凝固点は 4.25 ℃であった。
この有機化合物の分子量を求めよ。
純なベンゼンの凝固点は 5.50 ℃、モル凝固点降下は 5.00 である。
使う公式は水の場合と同じです。
\( n=\displaystyle \frac{w}{M}=\displaystyle \frac{\Delta T}{K}\times \displaystyle \frac{W}{1000}\)
ここで凝固点降下度は \(\Delta T=5.50-4.25\) なので
有機化合物の分子量を \(x\) とすると
\( \displaystyle \frac{1.6}{x}=\displaystyle \frac{5.50-4.25}{5.00}\times \displaystyle \frac{50}{1000}\)
これを解いて \(x=128\)
物質量で方程式を立てているのはずっと変わっていませんよ。
次は水溶液の凝固点を求めてみましょう。
塩化ナトリウム 0.585 gを水 100 gに溶解した。
水溶液中では塩化ナトリウムが完全に電離しているものとしてこの溶液の凝固点を求めよ。
ただし、水のモル凝固点降下は 1.86 とする。
\( \mathrm{NaCl=58.5}\)
電解質は電離した後の粒子(イオン)の総物質量で凝固点降下度は考えなくてはなりません。
\( \mathrm{NaCl\rightarrow Na^++Cl^-}\)
塩化ナトリウム 0.585 gが溶解して発生するイオン粒子の物質量は
\( n=\displaystyle \frac{0.585}{58.5}\times 2\)
となっているのでこの溶液の凝固点を \(x\) とすると
\( n=\displaystyle \frac{w}{M}=\displaystyle \frac{\Delta T}{K}\times \displaystyle \frac{W}{1000}\)
において \(\Delta T=0-x\) となるので
\( \displaystyle \frac{0.585}{58.5}\times 2=\displaystyle \frac{0-x}{1.86}\times \displaystyle \frac{1000}{1000}\)
これを解いて \(x=-0.372\) (℃)
次は最もポピュラーな問題かもしれませんがちょっと複雑です。
混合物の沸点上昇から物質の量を求める問題です。
ブドウ糖とショ糖の混合物 52.2 gを 400 gの水に溶かした溶液は 100.26 ℃で不等する。
この混合物にはブドウ糖が何g含まれているか求めよ。
ただし、水のモル沸点上昇を 0.52 とする。
\( \mathrm{C_6H_{12}O_6=180\,,\,C_{12}H_{22}O_{11}=342}\)
純水の沸点は 100 ℃なので沸点上昇は \(\Delta T=100.26-100.00\)
これを公式である
\( \displaystyle \frac{w}{M}=\displaystyle \frac{\Delta T}{K}\times \displaystyle \frac{W}{1000}\)
にあてはめていけばいいのですが、混合物 52.2 g中のブドウ糖の質量を \(x\) とすると
ショ糖の質量が \(52.2-x\) となることから総質量数 \(n\) は
\( n=\displaystyle \frac{w}{M}=\displaystyle \frac{w’}{M’}+\displaystyle \frac{w”}{M”}\)
と変形して
\( \displaystyle \frac{w’}{M’}+\displaystyle \frac{w”}{M”}=\displaystyle \frac{\Delta T}{K}\times \displaystyle \frac{W}{1000}\)
に代入することで
\( \displaystyle \frac{x}{180}+\displaystyle \frac{52.2-x}{342}=\displaystyle \frac{100.26-100.00}{0.52}\times \displaystyle \frac{400}{1000}\)
これを解いて \(x=18\)
混合物では全ての溶質や粒子が沸点上昇に影響するので、求めたい物質とそれ以外の物質も含めた状態で方程式に組み込む必要があります。
次からは状態が2つある場合です。
考え方のよっては簡単になる問題もありますが、あえて方針を1つにして進めていきます。
自分で解法が見つかる場合、はやいと思うならそちらでかまいませんよ。
エチルアルコールの沸点は 78.30 ℃である。
エチルアルコール 500 gにある不揮発性の化合物 0.05 molを溶かした溶液の沸点は 78.42 ℃であった。
分子量 128 の不揮発性の化合物 12.8 gを 400 gのエチルアルコールに溶かした溶液の沸点は何℃か求めよ。
これは最初の条件から沸点上昇度 \(K\) が求まりますので、
それを利用して2つ目の条件にあてはめる方法もあります。
\( n=\displaystyle \frac{w}{M}=\displaystyle \frac{\Delta T}{K}\times \displaystyle \frac{W}{1000}\)
この問題では物質量が与えられていますので直接
\( 0.05=\displaystyle \frac{78.42-78.30}{K}\times \displaystyle \frac{500}{1000}\)
これを変形すれば
\( K=\displaystyle \frac{78.42-78.30}{0.05}\times \displaystyle \frac{500}{1000}=1.200\)
これを2つ目の条件に入れます。
求める沸点を \(x\) とすると
\( \displaystyle \frac{12.8}{128}=\displaystyle \frac{x-78.30}{1.200}\times \displaystyle \frac{400}{1000}\)
これを解いて \(x=78.60\) (℃)
普通はこういう解き方をするのでは無いかと思います。
物質量を方程式にしているので、
2段階の計算していること以外は方針としては今までと同じで間違いではありません。
割と簡単に出せますからね。
しかし、「物質量」で2つの状態を両方方程式にすると沸点上昇度は求めなくてもよくなります。
ただし、計算に慣れていない場合は非常に難しく感じる感じるかもしれません。
最初の条件から
\(\displaystyle 0.05=\frac{78.41-78.30}{K}\times \frac{500}{1000}\) ・・・①
後の条件から
\(\displaystyle \frac{12.8}{128}=\frac{x-78.30}{K}\times \frac{400}{1000}\) ・・・②
これらの辺々で②÷①の割り算をすると
\( \displaystyle \frac{12.8}{0.05\times 128}=\displaystyle \frac{x-78.30}{78.42-78.30} \times \displaystyle \frac{400}{500}\)
これを解いて \(x=78.60\) (℃)と出すこともできます。
これだと途中の計算はしていません。
計算しないことがいいとは言いません。かっこよく見えるだけで答えは同じですからね。
答えが出せるなら部分部分で計算して良いですよ。
わかることだけでも処理してみる、そこから始まるのですから。
割り算の処理のところで計算が飛んでいますが、割り算は逆数のかけ算であることから
\( \displaystyle \frac{12.8}{128}\times \displaystyle \frac{1}{0.05}=\displaystyle \frac{x-78.30}{K}\times \displaystyle \frac{K}{78.42-78.30} \times \displaystyle \frac{400}{1000}\times \displaystyle \frac{1000}{500}\)
という処理をしています。ここは自分でやるところです。
もちろん①÷②でも同じ結果が出ます。
次も2つの条件を利用する問題です。
ショ糖 8.55 gを水 100 gに溶解したものの凝固点降下度を測定したところ 0.472 Kであった。
またある物質 7.42 gを水 100 gに溶解したものの凝固点降下度は 0.930 Kであった。
この物質の分子量を求めよ。
\( \mathrm{C_{12}H_{22}O_{11}}=342\)
2つ方程式を立てますが、使う公式は物質量の等式です。
\( n=\displaystyle \frac{w}{M}=\displaystyle \frac{\Delta T}{K}\times \displaystyle \frac{W}{1000}\)
最初の条件から
\(\displaystyle \frac{8.55}{342}=\frac{0.472}{K}\times \frac{100}{1000}\) ・・・③
後の条件から求める分子量を \(x\) とすると
\(\displaystyle \frac{7.42}{x}=\frac{0.930}{K}\times \frac{100}{1000}\) ・・・④
凝固点降下度 \(K\) を求めず直接処理すると③÷④から
\( \displaystyle \frac{8.55\times x}{342\times 7.42}=\displaystyle \frac{0.472}{0.930}\)
練習8と割り方が逆なのは分子に \(x\) を持っていくようにしているだけです。
どちらでもかまいません。
これを解いて \(x≒151\)
③から凝固点降下度 \(K\) を求めて見ます。
\(\displaystyle \frac{8.55}{342}=\frac{0.472}{K}\times \frac{100}{1000}\) ・・・③
\(\displaystyle K=\frac{342\times 0.472}{8.55}\times \frac{100}{1000}=1.888\)
これを④に代入すると
\( \displaystyle \frac{7.42}{x}=\displaystyle \frac{0.930}{1.888}\times \displaystyle \frac{100}{1000}\)
この方程式を解くと
\( x=\displaystyle \frac{7.42\times 1.888}{0.930}\times \displaystyle \frac{1000}{100}≒ 151\)
と同じ答えがもちろん出てきます。
答えが出せるならどちらでもかまいませんよ。人によっては時間的にも大した差はないかもしれませんしね。
分かり易い方で溶いてください。
水の凝固点降下度は 1.85 か 1.86 で問題に与えられることが多いですが、この問題での凝固点降下度は計算すると 1.88 です。
この違いは実験の精度と誤差の問題ですね。
これを計算せずに凝固点降下度を 1.85 などとして計算すると求める分子量は変わってきますからね。
マーク模試であれば似た値は答えの中に出てくるとは思いますけど。笑
最後に、凝固点降下度も与えられていない、物質も2種類という問題をやって終わりにしましょう。
ここまでついて来られているならセンター試験や共通テストは十分問題ありませんよ。
ただの念押しです。
1000 gの水に 10 gのブドウ糖を溶かした溶液の凝固点は -0.103 ℃である。
1000 gの水に 2 gの塩化ナトリウムを溶かした溶液の凝固点は何℃か求めよ。
\( \mathrm{C_6H_{12}O_6=180\,,\,NaCl=58.5}\)
まず頭に浮かぶのは塩化ナトリウムは電離して2倍の物質量のイオンになるということですね。
\( \mathrm{NaCl\rightarrow Na^++Cl^-}\)
同じ物質量なら2倍の凝固点降下を示します。
ブドウ糖の物質量と塩化ナトリウムの物質量を求めてもいいですが、2つの方程式を立てていきましょう。
ブドウ糖の水溶液について
\(\displaystyle \frac{10}{180}=\frac{0.103}{K}\times \frac{1000}{1000}\) ・・・⑤
塩化ナトリウムの水溶液についてこの溶液の凝固点を \(x\) (℃)とすると
\(\displaystyle \frac{2}{58.5}\times 2=\frac{0-x}{K}\times \frac{1000}{1000}\) ・・・⑥
\(x\) が分子に残るように⑥÷⑤で両辺どうしを割り算すると
\( \displaystyle \frac{2\times2}{58.5}\times \displaystyle \frac{180}{10}=\displaystyle \frac{-x}{0.103}\)
これを解くと \(x=-0.127\) (℃)
物質量の比から求めて見ます。
ブドウ糖 10 gは分子量が 180 なので \(\displaystyle \frac{10}{180}\) (mol)
塩化ナトリウム 2 gは式量が 58.5 なので \(\displaystyle \frac{2}{58.5}\) (mol)
これは電離するので、
イオン粒子の物質量は2倍の \(\displaystyle \frac{2}{58.5}\times 2\) (mol)
なので塩化ナトリウムによる凝固点降下度はブドウ糖の
\(\displaystyle \frac{2\times2}{58.5} \div \frac{10}{180}\) 倍になります。
ブドウ糖による凝固点降下度は 0.103 だったので
\( 0.103\times \displaystyle \frac{2\times2}{58.5} \div \displaystyle \frac{10}{180}\\ \\
=\displaystyle \frac{0.103\times2\times 2\times 180}{58.5\times 10}\\ \\
≒ 0.127\)
これが塩化ナトリウムの凝固点降下度なので、
求める凝固点は \(-0.127 \) ℃。
ここまで来れば求めやすい方で求めていいでしょう。
ただ、ずっと使える物質量の公式は化学計算では非常につかえる公式になりますよ。
この比の取り方をマスターすれば計算は楽です。