タンパク質は細胞の構成成分の比率よりも、機能面で重要な役割を持っています。
細胞の中で合成されるアミノ酸からタンパク質の四次構造までのつくりと、機能性を失う変性や失活の要因までを見ておきましょう。
遺伝情報に大きく関わるタンパク質無しでは生命は維持できないのです。

細胞とタンパク質のはたらき

動物細胞の構成成分の中でタンパク質は水の次に多い物質で、15%程度を占めています。
髪の毛や爪などの構成成分であるケラチンのように生体構造をつくるものや、アクチンやミオシンのように運動に関するもの、デンプンを分解するアミラーゼのように酵素としてはたらくものもあります。
あと、血液中の酸素を運ぶ赤血球の色素となるヘモグロビンや、免疫システムの抗体としてはたらくものもタンパク質でできています。

ちなみにですが生体の構成成分を示しておきます。
覚える必要はありませんが、動物細胞については我々人類の構成ですので健康や栄養を考えるときには必要になりますよ。

動物細胞の構成物質
 水:67%
 タンパク質:15%
 脂質:13%
 無機物:3%
 その他(炭水化物や核酸):2%

植物細胞の構成物質
 水:75%
 炭水化物:20%
 タンパク質:2%
 無機物:2%
 その他(脂質や核酸):1%

大まかな数字ではありますが、人は体内の成分が大きく狂うとその成分を必要とする機能が低下するので体調不良をおこし病気になりやすくなります。

アミノ酸の構造

アミノ酸は炭素原子 \(\mathrm{C}\) に、
 水素原子 \(\mathrm{H}\)
 アミノ基 \(\color{red}{\mathrm{-NH_2}}\)
 カルボキシ基 \(\color{red}{\mathrm{-COOH}}\)
 側鎖としてのアルキル基 \(\mathrm{-R}\)
が結合したもののことで、タンパク質はアミノ酸が鎖状にずらずらと数百個結合した分子です。
(少ないものでアミノ酸数十個、多いものだと1000個くらいの数のアミノ酸が結合しています。)
アミノ酸には20種類ありますが違いは側鎖の種類によるものです。

アミノ酸については(化学としての基本ですが)
⇒ 両性化合物であるアミノ酸の種類と構造と性質(ニンヒドリン反応と等電点)
を参考にして下さい。

ペプチド結合

2分子のアミノ酸の一方のカルボキシ基と、もう一つのアミノ酸のアミノ基から水を1分子脱水させ結合をペプチド結合といいます。

 \(\mathrm{R_1CH(NH_2)CO-\color{red}{OH}\,+\,\color{red}{H}_2N-(COOH)HCR_2} \\ \\
\rightarrow \hspace{7pt}\mathrm{R_1CH(NH_2)\color{red}{-CO-NH-}(COOH)HCR_2}\)

このペプチド結合が繰り返されて多数のアミノ酸が結合したペプチド鎖をポリペプチドといいます。
タンパク質はこのペプチド鎖の組合せでできていて、組み合わされる数、構造からいろいろなタンパク質が出来上がるのです。

タンパク質の構造

一次構造

タンパク質はポリペプチド鎖からできている高分子化合物で、DNAの塩基配列を型につくられます。
ポリペプチド鎖をつくるアミノ酸の配列をタンパク質の一次構造といいます。

二次構造

ポリペプチド鎖は、アミノ酸配列の内外の水素結合などによって、
部分的にねじれたらせん構造をとる「 \(\alpha\) ヘリックス構造」と、
びょうぶ状の曲がりくねった(縦にならんだような)「 \(\beta\) シート構造」などの立体的な構造をとります。
このような部分的な立体構造を二次構造といいます。
つまり、一次構造でできた鎖が水素結合で曲がったり、並んでできる構造です。

三次構造

二次構造となったペプチド鎖が集まって複雑な立体になることが多く、規則性のないペプチド鎖のかたまりになります。
これがタンパク質の三次構造(ミオグロビン)です。
この三次構造となったペプチド鎖のかたまりが1つのユニットとして機能性を持ったタンパク質を構成することになります。

四次構造

三次構造の複数のポリペプチド鎖がつくる構造を四次構造といいます。
1つのユニットがいくつか集まって機能性を持つかたまりです。
例えば、赤血球の成分であるヘモグロビンは、2本の \(\alpha\) 鎖と2本の \(\beta\) 鎖の合計4本のポリペプチド鎖がセットになったタンパク質分子です。
ヘモグロビンの構造のような四次構造をつくる三次構造を「サブユニット」といいます。

ちょっと例えが変かもしれませんが、
繊維1本1本が一次構造で、
繊維をより合わせた毛糸が二次構造、
毛糸のかたまりの毛糸玉が三次構造、
毛糸玉いくつかで編んだセーターやマフラーが四次構造、
と見てみると少しイメージできませんかね。
タンパク質の場合、三次構造でも機能を発揮しないわけではありませんが複雑に機能するということから言えば四次構造は別次元です。
これを完全コピーする細胞の遺伝情報はすごいとしかいいようがありません。

ジスルフィド結合したタンパク質

硫黄 \(S\) を側鎖に含むアミノ酸どうしがつくる橋渡し構造を \(S-S\) 結合(ジスルフィド結合)といい、ペプチド鎖中やペプチド鎖間の橋渡しをして、タンパク質の立体構造の保持に重要なはたらきをします。

化学を選択していない人にはあまりなじみがないことですが、
このジスルフィド結合は、ゴムなどの架橋と同じなので化学の合成高分子と関連づけて見ると立体的な強度を増す結合であることが分かり易いです。
⇒ 天然ゴムと合成ゴムの重合方法と特徴

タンパク質の変性と失活

タンパク質は熱(およそ60℃~70℃)が加わることや、酸やアルカリ(Ph変化)によっても立体構造が変化します。
立体構造が変わることでタンパク質自体の性質が変化するのですがこれを「変性」といいます。
また、変性によって酵素タンパク質が活性を失うことを「失活」といいます。

酵素は活性にピークを持っていて、要因として温度とpHがありますが詳しくは酵素のところで説明します。

細胞の内部(リボソーム)でタンパク質は合成されます。
⇒ 細胞(原核細胞と真核細胞)の内部構造と細胞小器官の名称および機能
確認しておいてください。

次は酵素のはたらきです。

⇒ 生体内で触媒としてはたらく酵素の構造と種類と代謝のしくみ

酵素はタンパク質でできているんですよ。