ゴムはゴムゴムの実からできるのではなくゴムの木の樹液からできる天然ゴムと人工的につくられる合成ゴムがあります。ゴムにもいろいろな特徴をもつものがありますが代表的なゴム(SBRやNBRやシリコンゴムなど)について重合方法と特徴をチェックしておきましょう。
天然ゴム
パラゴムの木の幹から得られるコロイド状の樹液をラテックスといいます。
このラテックスに酢酸などの有機酸を加えると凝固します。(凝析)
この沈澱した物質を水洗い乾燥させると黄褐色の半透明物質ができます。
これが天然ゴム(生ゴム)です。
この生ゴムを空気を遮断して加熱する乾留を行うとイソプレンという無色の液体が得られます。
イソプレンは \( \mathrm{CH_2=CH-C(CH_3)=CH_2}\) という示性式で表されます。
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イソプレンは単結合を間にはさむ二重結合を2つもつ共役二重結合と呼ばれる結合をもち付加重合を起こしやすい構造になっています。
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イソプレンにが二重結合が2つありますが両端の1,4位の炭素が付加に関与しやすいです。
天然ゴムはこのイソプレンが付加重合したポリイソプレンでできていて、
二重結合部分はすべてシス形をしています。
シス形のゴム分子はその形が変化しやすいので特有の弾性を示しますがこれをゴム弾性といいます。
二重結合部分がトランス形のポリイソプレンにグッタベルカという物質がありますが弾性はなく硬いプラスティック状の物質です。
加硫
生ゴムに硫黄を少し(数%)加え加熱することを加硫といい、
加硫されることによりゴムは弾性を増し、強度も大きくなり、耐久性もよくなります。
これは鎖状のイソプレン分子間に硫黄が入り橋かけ構造をつくり分子全体が網目構造となるからです。
この橋かけ構造を架橋構造といいます。
この加硫されたゴムを弾性ゴムと呼びますが、
硫黄を30%以上加えて加熱しすぎるとエポナイトと呼ばれるプラスティック状の黒くて硬い物質になります。
生ゴムは炭素間に二重結合を多数もちますが時間が経つと空気中で酸化されて弾性を失う「ゴムの老化」が起こります。
しかし、硫黄による架橋構造をつくると酸化される二重結合が減り、網目構造をもつことにより弾性も強くなるので安定したゴムができる事になるのです。
合成ゴム
単量体でイソプレンに似た構造の物質を付加重合させると弾性のある合成ゴムが得られます。
ただし、合成ゴムの分子中には炭素-炭素間の二重結合がシス形とトランス形が混在しています。
ゴムの弾性をもつのはシス形なので合成ゴムの弾性は天然ゴムほどはありません。
合成ゴムの例
ブタジエンゴム
1.3-ブタジエン (\(\mathrm{CH_2=CH-CH=CH_2}\))を付加重合させて得られる合成ゴムをブタジエンゴムといい、
耐摩耗性、耐寒性に優れています。
\( n\mathrm{CH_2=CH-CH=CH_2}\,\rightarrow \, -\mathrm{(CH_2CH=CH-CH_2)}_n-\)
クロロプレンゴム
クロロプレン(\(\mathrm{CH_2=CCl-CH=CH_2}\))を付加重合させてできる合成ゴムをクロロプレンゴムといい、
耐候性、耐油性、耐熱性に優れ、またオゾンなどに対する抵抗力も大きいので屋外でのベルトなどの素材として使われます。
\( n\mathrm{CH_2=CCl-CH=CH_2}\,\rightarrow \,\mathrm{-(CH_2-CCl=CH-CH_2)}_n-\)
これらは付加重合で得られる合成ゴムです。
ここからは共重合で得られる合成ゴムです。
性質的には付加重合で得られる合成ゴムよりも機能性の高い合成ゴムが多いです。
スチレン-ブタジエンゴム
1,3-ブタジエンとスチレンの共重合で得られます。
SBRとも呼ばれベンゼン環を含むので摩耗性、耐熱性、機械的な強度に優れ自動車のタイヤなどに使われます。
\( \mathrm{CH_2=CH-CH=CH_2}\,+\,\mathrm{C_6H_5-CH=CH_2}\\ \\
\rightarrow \,\mathrm{-\left\{CH_2-CH=CH-CH_2-CH(C_6H_5)-CH_2\right\}}_n-\)
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「スチレン」という名前と構造式を忘れがちです。注意しましょう。
アクリロニトリル-ブタジエンゴム
1,3-ブタジエンとアクリロニトリルの共重合によって得られます。
NBRとも呼ばれシアノ基(\(\mathrm{-CN}\))をもつので耐油性が非常に強く石油系のホースなどに使われます。
\( \mathrm{CH_2=CH-CH=CH_2}\,+\, \mathrm{CH_2=CH(CN)}\\ \\
\rightarrow \, \mathrm{-\left\{CH_2-CH=CH-CH_2-CH_2-CH(CN)\right\}}_n-\)
シリコーンゴム
その他のゴムとしてシリコーンゴムがあります。
分子中にケイ素-酸素結合を含んでいて、ゴムの弾性になる炭素間の二重結合をもちません。
性質として耐久性、耐熱性、耐寒性、耐薬品性に優れています。
シリコーンゴムは、ジクロロジメチルシランを塩基を触媒として、加水分解してから重合されます。
シリコーンゴムは硫黄で架橋するのでなく過酸化ベンゾイルなどの重合開始剤を使い架橋構造をつくります。
このように硫黄でなく過酸化物や放射線を利用して架橋する反応も加硫と総称されます。
シリコーンゴムは高価ですが性能は素晴らしいものがありますので、理化学器具にも用いられるし、医療用として人工血管などにも使われています。
天然ゴムや合成ゴムは良く出題されます。
特に合成ゴムは用途が広いので実際に使うものが多く重要ですよ。
合成高分子の重要性はこれからますます増えてくるでしょう。
もちろん、入試にも出てくる機会が増えるということです。
⇒ 天然繊維と化学繊維(ナイロンなどの合成繊維)の種類と化学合成
から復習し直しておきましょう。