エーテル結合している物質はアルコールの構造異性体ともいえますが性質は違います。沸点だけを見ても大きく違います。エーテル分子とアルコールの性質の違いは何が原因なのか?構造が違うと何が変わって来るのか少し見ておきましょう。

エーテルとは

アルコール2分子から水1分子がとれて脱水縮合したものをエーテルといいます。
酸素をはさみ2つの炭化水素基(アルキル基)で結合していて、このような結合をエーテル結合といいます。

一般的には \(\mathrm {R-O-R’}\) となっていますが両端が同じアルキル基の場合もあります。
例 エタノール2分子から水1分子がとれてジエチルエーテルが生成します。

 \(\mathrm {C_2H_5OH}\,+\,\mathrm {HOC_2H_5} → \mathrm{C_2H_5-O-C_2H_5}\,+\,\mathrm{H_2O}\)

 \(\mathrm{R-O-R}\) 型のエーテル(対称エーテル)は脱水縮合で生成しますが、
 \(\mathrm{R-O-R’}\) 型のエーテル(非対称エーテル)はちょっと違った合成法を用います。
理由とともに説明します。

 \(\mathrm{\color{red}{R}-OH}\) と \(\mathrm {\color{blue}{R’}-OH}\) で脱水縮合させると、
 \(\mathrm{\color{red}{R}-O-\color{red}{R}}\) , \(\mathrm{\color{red}{R}-O-\color{blue}{R’}}\) , \(\mathrm{\color{blue}{R’}-O-\color{blue}{R’}}\)
の3種類のエーテルが生成しますが揮発性のあるエーテルが多いので分離するのが困難です。

そこで、(ハロゲン原子を \(\mathrm{X}\) として)
ナトリウムアルコキシド \(\mathrm{\color{red}{R}-O^-Na^+}\)
と、ハロゲン化アルキル \(\mathrm{\color{blue}{R’}-X}\)
を無水の状態で加熱して、\(\mathrm{\color{red}{R}-O-\color{blue}{R’}}\) を得る方法がとられます。
この合成方法を「ウィリアムソンのエーテル合成法」といいます。


ジエチルエーテル( \(\mathrm{C_2H_5-O-C_2H_5}\) )は単に「エーテル」とも呼ばれ特有の臭いのある液体です。
かなり引火性が強く麻酔効果も持っています。
水とほとんど混ざらないので有機溶媒として広く利用されます。

エーテルの性質

エーテルは水に溶けず水よりも軽いです。
常温で液体のものが多いですが、ジメチルエーテルは常温で気体です。

アルコールとくらべると沸点がかなり低いですが、
これはエーテル結合の酸素は水素結合しないからです。

アルコールの分子間には水素結合が形成されますが、
エーテルの分子間では水素結合が形成されませんので沸点が低くなっているのです。

例えば、
 水( \(\mathrm {H_2O}\) )の沸点は100℃
 エタノール( \(\mathrm {C_2H_5OH}\) )の沸点は78℃
 ジメチルエーテル( \(\mathrm {CH_3OCH_3}\) )の沸点は-25℃
 ジエチルエーテル( \(\mathrm {C_2H_5OC_2H_5}\) )の沸点は34℃
とエーテルは分子量の割に沸点が低いのが分かるでしょう。

同じ分子量のアルコールとエーテルの沸点をくらべても、
 n-プロパノール( \(\mathrm {CH_3CH_2CH_2OH}\) )は97℃
 エチルメチルエーテル( \(\mathrm {C_2H_5OCH_3}\) )は7℃
でかなり違っています。

エーテルとアルコールとの違いはまだあります。
アルコールはナトリウムと反応してナトリウムアルコキシドを形成していましたが、エーテルは金属ナトリウムと反応しません。

エーテルまで考えると異性体の数もかなり増えてきますよね。
順序よく見ていれば異性体にもだいぶ慣れたとは思いますが、名前の付け方は大切です。
⇒ アルコールの価数と級数の違いと種類 名前の付け方は?
もちろん官能基の名前は覚えておかないといけません。
⇒ 有機化合物の官能基の種類と構造式の書き方
これがないと異性体も書き出せませんからね。

⇒ アルデヒド基の性質 銀鏡反応とフェーリング反応

次は反応性の高いアルデヒドの性質です。