過去問となる2018年(平成30年)度センター試験の化学基礎の解説です。
前年度に比べても難易度が変わったということはありませんし、出題内容も基礎を幅広く聞いているのも同じです。
来年度に向けての対策も、基本をしっかりおさえておくことになるので教科書の反復が一番です。
2018年(平成30年)センター試験化学基礎の問題
問題は大学入試センターにもあります。
2018年センター試験化学基礎の解説
第1問
問1
a「1価の陽イオンになりやすい原子」
1価の陽イオンとは電子を1つ放出してイオンになったものです。
電子( \(e^-\) )を1つだけ放出しやすいのは、1族ですね。
放出した後は「-」を1つ失うので「+」になります。
原子番号20までの周期表は覚えておく必要があります。
試験が始まったら書き出しとておくと全体を通じて使えますよ。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 0 |
H | He | ||||||
Li | Be | B | C | N | O | F | Ne |
Na | Mg | Al | Si | P | S | Cl | Ar |
K | Ca |
答は簡単で \(\mathrm{Li}\) の③です。
b 「共有結合の結晶であるものの組合せ」
これは結合の種類を聞いています。
分子結合や金属結合でもなくイオン結合でもない、組成式で表されているダイヤモンド( \(\mathrm{C}\) )や \(\mathrm{Si}\) の結晶です。
答は①です。
問2
ホウ素の電子配置です。
原子番号5の原子だということが分かれば問題ありませんね。
答は③
問3
分子式 \(\mathrm{N_2}\) と「電子の総数が同じ分子はまたはイオンはどれか?」
\(\mathrm{N_2}\) は電子を14個持っています。
イオンになる前の分子は「各原子の原子番号の和」と同じ数だけ電子を持っていますので足し算して、
イオンの場合は価数の分だけ陽イオンの場合マイナス、陰イオンの場合プラスすれば電子の数はわかります。
原子番号は問1の周期表を見ればわかります。
水素は1、炭素は6、酸素は8、マグネシウムは12なので
一酸化炭素( \(\mathrm{CO}\) )の「6+8=14」が同じ電子数になります。
答は②
問4
計算問題ですが求値問題ではなく関係式にするのでややこしく見えています。
よく見れば比例計算の基本的なものです。
化学式が \(X_2Z_3\) で各原子のモル質量を違う文字でややこしそうな \(M_X\,,\,M_Z\) とおいているからややこしい気がしますが、
モル質量を \(X\,,\,Z\) のままにすればもう少し見やすいですよ。
\(X_2Z_3\) の全体の質量を \(2X+3Z\) とすると、
この中にある \(X\) の質量は \(2X\) です。
これはいつでも成り立つ比例関係にあります。
「 \(X_2Z_3\) の全体質量が「 5g 」のとき、\(X\) の質量は?」
という計算と同じなので、
全体が \(2X+3Z\) のとき \(2X\) なら
全体が 5g のとき \(x\)
これを比例式にして \(x\) を求めれば良いだけです。
\( 2X+3Z\hspace{5pt}:\hspace{5pt}2X\hspace{5pt}=\hspace{5pt}5\hspace{5pt}:\hspace{5pt}x\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} (2X+3Z)\times x=2X\times 5\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} x=\displaystyle \frac{10X}{2X+3Z}\)
問題では \(X=M_X\,,\,Z=M_Z\) となっているので
\( \displaystyle \frac{10M_X}{2M_X+3M_Z}\)
の③が答です。
ちなみに当サイトで比例計算になれた人なら、
\( 2M_X\times \displaystyle \frac{5}{2M_X+3M_Z}\)
と、即座に答が出ていたはずです。
問5
物質2つの名前を答える問題です。
物質ア:水に溶ける。炎色反応で黄色い炎。硝酸銀で白色沈澱。
物質イ:水に溶けない。塩酸に溶けて気体を発生。
水の温度が書いていないということは「かなり溶けにくい」と考えて良いのでしょう。
アは炎色反応の黄色からナトリウムを含んでいるのはわかります。
硝酸ナトリウムか塩化ナトリウムと絞れて、硝酸銀を加えて白色沈澱は塩化ナトリウムの⑥。
イは水に溶けなかったのは溶解度の小さい炭酸カルシウムか硫酸バリウム。
塩酸で気体(二酸化炭素)を発生するのは炭酸カルシウムの③。
問6
水の状態変化で「誤りを含むものを選べ」、という問題です。
1つ以外は正しいということです。
冬に氷点下になると水道管が破裂することがあります。
ペットボトルの水を冷凍庫で凍らすとふくれます。
水は4度で密度が最大になり、それ以下の温度では体積は増えるということです。
「水をすべて氷にしたら体積は小さくなった」
というのは誤りで答は⑤。
問7
また「誤りを含むもの」を探せば良いのです。
塩素系漂白剤の主成分は次亜塩素酸ナトリウムなどで塩化ナトリウム(塩)ではありません。
①が違います。
ポリエチレンテレフタラート(PET)はペットボトルのPETです。
メタンは都市ガスの主成分で体積では9割近くを占めます。
第2問
問1
水 180 gつまり水 10 molについて「誤りを含むもの」を選びます。
水の分子式は \(\mathrm{H_2O}\) です。
\( \mathrm{H-O-H}\)
水素原子2つに対し、酸素1つの構成です。
アボガドロ数を \(N\) としているので、
水 10 molでは水分子が \(10N\) 個あるということです。
①水素原子は分子の2倍になるので \(20N\) 個
②原子核は水素と酸素の原子の数だけあるので、\(20N\,+\,10N\,=\,30N\) 個
③共有結合に使われている電子は、
\(\mathrm{H:O:H}\) で1分子に4個、10 molでは \(40N\) 個
④非共有電子対の数は、
1つの分子について酸素が2つの「非共有電子対」を持っているので \(20N\) 個
よって誤りを含んでいるのは①。
問2
標準状態での気体の質量を求める問題ですが、これも比例です。
標準状態 \(\mathrm{0^\circ\,,\,1.013\times 10^5Pa}\) では 22.4 Lで 1 molです。
\(\mathrm {CH_4:CO_2=2:1}\) なので 3 molを考えても良いです。
この混合気体 3 molがあるとしましょう。
このとき、
2 molがメタン( \(\mathrm{CH_4=16}\) )でその質量は、
\( 16\times2 =32\)
1molが二酸化炭素( \(\mathrm{CO_2=44}\) )でその質量は、
\( 44\times 1=44\)
合わせると
\( 32+44=76\)
これは3mol分で \(22.4\times 3=67.2L\) の質量です。
これから1.0Lの質量は、
\( 76\div 67.2=\displaystyle \frac{76}{67.2} ≒ \underline{1.1}\)
答は②です。
問3
モル濃度の高いものを選ぶのですが、濃度の種類を確認しておきましょう。
モル濃度は溶液1L中の溶質の物質量(モル量)で、単位はmol/Lです。
質量パーセント濃度は溶液の重さに対する溶けている物質の割合(%)です。
密度は \(1\mathrm{cm^3}\) 当たりの溶液の重さです。
例えば、
塩酸の密度は 1.2 なので 1L( \(1000 \mathrm{m^3}\) )の重さは
\(1.2\times 1000=1200 \)(g)
この中に塩酸は 36.5 %含まれているので
\(\displaystyle 1.2\times 1000\times \frac{36.5}{100}=\frac{12}{36.5}=438\) (g)
塩酸のモル質量(1molの質量)は 36.5 なので、
溶液中の塩酸の質量をモル質量で割ればモル濃度が出ます。
\(\mathrm{438\div 36.5=12 (mol/L)}\)
この計算をつなげてみると塩酸1L中の物質量は、
\( 1.2\times 1000\times \displaystyle \frac{36.5}{100}\div 36.5\\ \\
=1.2\times 1000\times \displaystyle \frac{36.5}{100}\times \displaystyle \frac{1}{36.5}\\ \\
=12\,(\mathrm{mol/L})\)
となっていて計算しなくても消えるところがあります。
同様に、
水酸化ナトリウムのモル濃度は
\( 1.4\times 1000\times \displaystyle \frac{40.0}{100}\times \displaystyle \frac{1}{40.0}\\ \\
=14\,(\mathrm{mol/L})\)
水酸化カリウムのモル濃度は
\( 1.5\times 1000\times \displaystyle \frac{56.0}{100}\times \displaystyle \frac{1}{56.0}\\ \\
=\underline{15}\,(\mathrm{mol/L})\)
硝酸のモル濃度は
\( 1.4\times 1000\times \displaystyle \frac{63.0}{100}\times \displaystyle \frac{1}{63.0}\\ \\
=14\,(\mathrm{mol/L})\)
と具体的にモル濃度を求めても大した計算にはならないことがわかります。
ただし、途中で密度の大きさでモル濃度の高さがわかることに気がつけば、
密度だけ見て答えても良いですけど、突っ走って計算する方が試験会場では確実でしょう。
答は③です。
問4
\(\,\mathrm{pH}\,\)についての記述で「誤りを含むもの」を選びます。
基準となるのは中性のpH=7です。
酸っぱい、苦いの判別がしにくいものが混じっていますね。
セッケンは苦いか、酸っぱいかといわれれば苦いです。
セッケンはナトリウムやカリウム(強塩基)と脂肪酸などの弱酸との塩なので塩基性です。
塩基性(アルカリ性)ということはpHが7より大きいということなので④が誤りです。
問5
滴定曲線の読み取りです。
スタート時点では \(\mathrm{NaHCO_3}\) だけなので弱塩基性です。
中和するまでの \(\mathrm{HCl}\) の滴下量はすべて同じなので問題なし。
弱塩基+強酸の滴定なので中和点では酸性になっているはずで、⑤ですね。
問6
酸化還元反応です。
各原子の酸化数を見れば解決します。
ア:単なる中和反応ですべての原子の酸化数は変化しません。
イ:一酸化炭素の酸化です。炭素が+2→+4に酸化されています。
ウ:銅の酸化数も+2で変化していません。他の元素も同じです。
エ:これは明らかにマグネシウムは酸化数が変わっています。0→+2
オ:硝酸アンモニウム塩ができる中和で酸化数の変化はありません。
イとオが酸化還元反応で答は②
問7
電池の中身まで覚えていない人が多いと思いますが、
充電できる電池は二次電池です。
リチウムイオン電池は携帯電話、スマホ、ノートPCなどのバッテリーに使用されている電池で充電できます。
④が誤りです。
以上です。
まとめと対策
全体を通して問題構成が変に偏ったりしていませんし、例年通りの問題レベルなのであまり言うことはありません。
センター試験の化学基礎や化学は幅広く聞いてきますので、
かたよりの無いように基本的なことを繰り返すことが一番の対策です。
⇒ 共通テスト(センター試験~)の化学と化学基礎の過去問解説
毎年同じことをいっていますね。