等加速度直線運動で使う公式は3つあります。逆に言えば、3つしかありません。
いくつかのおきまりパターンの練習問題と公式の使い方を説明しておきます。
自由落下や鉛直投射(鉛直投げ上げ)も同じ公式で解けますが、ここではもっと基本的な問題に限定しておきます。


通常は問題に「等加速度直線運動の問題」と書いてあるわけではありません。
だから問題文の中から見抜く必要があるのですが、
初速度、加速度、距離などの用語が出てくるので気がつくようになっておきましょう。

加速度が正の時の等加速度直線運動

例題1

 \(x\) 軸上を運動する物体を考える。
原点0から初速度 \(6.0\,\mathrm{m/s}\) , 加速度 \(2.0\,\mathrm{m/s^2}\) で出発した。
(1)出発してから3.0秒後の物体の速度を求めよ。
(2)出発してから3.0秒後の物体の位置を求めよ。

\(x\)軸上を正の方向に進んでいるということは問題には書いていませんが、
加速度が正の値で与えられているので、
正の方向に進んでいると判断します。

「原点での初速度が \(6.0\mathrm{m/s}\) 」
なので斜面を球が転がる場合で、

 原点の手前から転がっていたか、(観測は原点から)
 力を加えて初速度をつけて転がし始めたか、

をイメージしておけば良いでしょう。

加速度がプラスなので時間が立てば速度が増す、ということはわかりますね。

 1秒間に \(\color{red}{2.0 \mathrm{m/s}}\) 速度が増えます。
 3秒間では \( \color{red}{2.0\times 3=6.0\mathrm{m/s}}\) 速度は増えます。

よって
(1)この物体の3秒後の速度は、初速度に増えた速度を加えて、
 \( v=6.0+6.0=\underline{12.0 \mathrm{(m/s)}}\)

これを公式
 \( \color{red}{v=v_0+at}\)
を使うと、
 初速度 \(v_0=6.0\)
 加速度 \(a=2.0\)
 時間(時刻) \(t=3\)
より
 \( v=6.0+2.0\times 3\\ =6.0+6.0=12.0\mathrm{(m/s)}\)
とすぐに求まります。

公式を利用する場合は、どの文字が何を表しているかを忘れないことです
問題には条件が与えられるようにできているので、
公式を覚えておけば代入することで解ける様になっているのです。

ここで等加速度直線運動の公式3つを確認しておきましょう。

 \( \Large{\color{red}{v\,=\,v_0\,+\,at}}\)
 \( \Large{\color{red}{x\,=\,v_0t\,+\frac{1}{2}\,at^2}}\)
 \( \Large{\color{red}{v^2\,-\,v_0^2\,=\,2\,ax}}\)

⇒ 等加速度直線運動の問題を解く公式とグラフの使い方

それぞれの文字が何を表しているかは復習しておきましょう。

(2)です。

「3秒後の位置」つまり、
 公式の \( x\) を求めよ。
ということですね。

使える公式は2つ考えられます。
 \(x\) を含んでいる公式
 \(\color{red}{x=v_0t+\frac{1}{2}at^2}\)
 \(\color{red}{v^2-v_0^2=2ax}\)
の2つです。

これをすぐに見抜けといっているのではありませんよ。
使えるならどちらでも良いんです。

 \( x=v_0t+\displaystyle \frac{1}{2}at^2\)
を使って見ると、
 \( x=6.0\times 3+\displaystyle \frac{1}{2}\times 2.0\times (3.0)^2\\ \\ =18.0+9.0=\underline{27(\mathrm{m})}\)

では
 \( v^2-v_0^2=2ax\)
は使えないのか?

やってみれば良いんですよ。

求めやすいように公式の両辺を入れかえておきましょう。

 \( 2ax= v^2-v_0^2 \)

ここでわかっているのは、(単位はいらない)
 加速度 \(a=2.0\) , 初速度 \(v_0=6.0 \)
と思うでしょう?
でも(1)で求めています。
 速度 \(v=12.0\)
です。

これらを公式にあてはめてみましょう。

 \( 2\times 2.0\times x=12.0^2-6.0^2\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} 4.0x=144.0-36.0=108.0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} x=27(\mathrm{m})\)

どちらじゃないといけない、なんてことはありません。
どれが使えるか試す、それだけで公式暗記で終わるのが物理基礎です。笑

加速度がマイナスの時も同じですよ。

では次はどうでしょう?

加速度が負のときの等加速度直線運動

例題2

自動車が10m/sで直線運動している。
ブレーキをかけて止まるまで5.0m動いたとき、この自動車の加速度の大きさを求めよ。

問題に与えられているのは、
 初速度 \(v_0=10\) , 移動距離(変位)\(x=5.0 \)
だけです。

求めるのは加速度の大きさなので
 \( \color{red}{2ax=v^2-v_0^2}\)
が使えそうです。

代入していきましょう。

止まったときの自動車の速度は0であることに注意して、
(ブレーキをかける前の速度が初速度\(v_0\)です。)

 \( 2a\times 5.0=0^2-10^2\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} 10a=-100\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} a=-10\)

これは進行方向に対してマイナスの加速度(減速)ということですが、
ここでは「加速度の大きさ」を求めるので
答は、絶対値をとって

 \( a=\underline{10\,(\mathrm{m/s^2})}\)

「これはこの公式しか使えないのか?」
という疑問が出てきましたか?
だとしたらあなたはもう大丈夫です。

「何が?」
問題集にあるおきまりの方法だけじゃなくて、
自分で解こうという姿勢ができてきているということです。
必ず伸びてきますよ。

公式は3つあります。

 \( v=v_0+at\)
 \( x=v_0t+\displaystyle \frac{1}{2}at^2\)
 \( 2ax=v^2-v_0^2\)

この三つ目を使って解きましたが、上の2つで解けないかやってみましょう。

問題に与えられているのは、
 初速度 \(v_0=10\) , 移動距離(変位)\(x=5.0\)
だけでした。

 \( v=v_0+at\)
の公式において速度は止まったとき0になっているので、

 \( 0=10+at\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt}at=-10\)
加速度と時間はわかっていません。

もう一つの公式はどうでしょう?

 \( x=v_0t+\displaystyle \frac{1}{2}at^2\)
これにわかっていることを代入すると、
 \( 5.0=10\times t+\displaystyle \frac{1}{2}at^2\)

ここでも時間と加速度はわかっていませんが、
 \( at=-10\)
ということはもう一つの公式に代入してわかっています。

これを後の式に代入すると、

 \( 5.0=10\times t+\displaystyle \frac{1}{2}at^2\\ \\ =10t+\displaystyle \frac{1}{2}(at)t\\ \\ =10t+\displaystyle \frac{1}{2}(-10)t\\ \\ =10t-5t=5t\)

つまり \( 5.0=5t\) なのでブレーキをかけて止まるまでの時間は、

 \( t=1.0\,(\mathrm{s})\)

これは問題で聞かれていないのですが出てきます。

そして、加速度は \( at=-10\) から

 \( a\times 1.0=-10\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt}a=-10\,\mathrm{(m/s^2)}\)

加速度の大きさは

 \( |a|=\underline{10\,\mathrm{(m/s^2)}}\)

時間が与えられていない場合でも2つの公式があれば求まりますよ。

このように状況や理屈がわからなくても求まるのが公式の便利さですが、
少しは状況を確認しながら、イメージしながら解くともっと良いですね。

例えば秒速10mで走る自動車の時速は、
 \( v=\mathrm{10\,(m/s)=10\times 3600\,(m/h)=36\,(km/h)}\)
です。
この速度だと1秒で止まることは可能のようです。
ただし、実際には危険に気がついてブレーキを踏むまでの空白があるので、
「車は急に止まれない!」
というのはわかってもらえるでしょうか。

大切なのは、
 「自分でいろいろやってみる
ということですが、最低限の公式は覚えておきましょう。

⇒ 加速度直線運動の問題を解く公式とグラフの使い方

公式は「3つだけ」です。

自由落下でも成り立つ公式は同じです。

⇒ 自由落下する物体の速度と加速度と変位(移動距離)

横の動き、縦の動き、どちらも等加速度直線運動では公式は3つで通用するのです。