2019年(平成31年)度に行われたセンター試験化学の第4問と第5問の解説です。
第4問は有機化学分野の基本問題ですが理論的に解く問題はありません。
脂肪族、芳香族、付加反応、置換反応など全般的に問われるのは例年と同じでです。
第5問は高分子化合物の設問ですが、算数のような平均と物質の性質だけです。

正解は大学入試センターにあります。

⇒ 2019年度センター試験化学の問題

各問題付近にある(⇒ リンクはこのサイト内の解説です。)

第\(\,4\,\)問

問\(\,1\,\)

ベンゼン\(\,\mathrm{(C_6H_6)}\,\)の性質と反応性の問題です。

⇒ 芳香族炭化水素 ベンゼンの構造と構造異性体

ケクレ構造の説明です。

⇒ ベンゼンの置換反応と付加反応

反応性についての説明です。

ベンゼンは鉄粉や\(\,\mathrm{FeCl_3}\,\)を触媒にしても塩化ベンゼンに置換されるだけです。

 \(\,\mathrm{C_6H_5-H+Cl-Cl \rightarrow C_6H_5-Cl+HCl}\,\)

ヘキサクロロシクロヘキサンまで付加反応させるときは、
光、つまり紫外線の力を利用しラジカル反応させないとできません。

 \(\,\mathrm{C_6H_6+3Cl_2 \overset{ 光 }\longrightarrow C_6H_6Cl_6}\,\)

答え \(\color{black}{\fbox{ ⑤ }}\)
 
問\(\,2\,\)

水素が発生するのはアルコールです。

 \(\,\mathrm{2C_4H_9-OH+2Na \rightarrow 2C_4H_9-ONa+H_2\uparrow}\,\)

\(\,\mathrm{2\,mol}\,\)のアルコールから\(\,\mathrm{1\,mol}\,\)の水素が発生します。

水素が\(\,\mathrm{0.015\,mol}\,\)発生したということは、
\(\,1\,\)-ブタノールが\(\,\mathrm{0.030\,mol}\,\)あったということです。

\(\,\mathrm{0.030\,mol}\,\)の\(\,\mathrm{C_4H_9OH(=74)}\,\)は

 \( 74\times 0.030=2.220\mathrm{\,g}\)

よって
 \(\displaystyle \frac{2.220}{3.7}\times 100=\underline{ 60 } %\)

答え \(\color{black}{\fbox{ ④ }}\)

これは質量を求めなくても答えは出ます。

 \(\,\mathrm{3.7\,g}\,\)の\(\,\mathrm{C_4H_{10}O(=74)}\,\)は\(\,\mathrm{0.05\,mol}\,\)

これがすべてアルコールだとすると\(\,\mathrm{0.025\,mol}\,\)の水素が発生するはずですが、
実際には\(\,\mathrm{0.015\,mol}\,\)発生しています。

比例式でも良いですが、比例計算なので簡単に

 \(\displaystyle 100\times \frac{0.15}{0.25}=\underline{ 60 } %\)

と求まります。

問\(\,3\,\)

還元反応の生成物を答えます。

トルエン\(\,\mathrm{C_6H_5CH_3}\,\)を徐々に酸化していくと
ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、安息香酸と酸化が進みます。

⇒ 芳香族カルボン酸 安息香酸とフタル酸とサリチル酸

 \(\,\mathrm{C_6H_5-CH_3\\
 \rightarrow C_6H_5-CH_2OH\\
  \rightarrow C_6H_5-CHO\\
   \rightarrow C_6H_5-COOH}\,\)

逆に\(\,\mathrm{C_6H_5CHO}\,\)を還元すれば\(\,\mathrm{C_6H_5CH_2OH}\,\)になるので、
\(\,\mathrm{C_6H_5CHO}\,\)還元反応の生成物として\(\,\mathrm{\color{blue}{C_6H_5CH_2OH}}\,\)があります。

また、
 ニトロベンゼン\(\,\mathrm{C_6H_5NO_2}\,\)を還元するとアニリン\(\,\mathrm{\color{blue}{C_6H_5NH_2}}\,\)になります。

⇒ 芳香族アミン アニリンのアミドとジアゾ化とカップリング

答え \(\color{black}{\fbox{ ① }}\) \(\color{black}{\fbox{ ③ }}\)

問\(\,4\,\)

環状のエーテルが化合物\(\,\mathrm{A}\,\)として書かれていますが関係ありません。

分子式は\(\,\mathrm{C_4H_8O}\,\)の化合物の中でカルボニル基
 
 \(\,\mathrm{R-\color{red}{\overset{\overset{\displaystyle O}{||}}{C}}-R’}\,\)

を持つものを考えれば良いだけです。

化合物\(\,\mathrm{A}\,\)の結合は飽和しているので、
環状のままでは二重結合は持てないので環状の異性体は考えなくて良いです。

炭素が4つなので炭素骨格だけで異性体は2つあります。

 \(\,\mathrm{C-C-C-C}\,\)

 \(\displaystyle \mathrm{C-\overset{\overset{\displaystyle C}{|}}{C}-C}\,\)

これらのどの炭素に\(\,\mathrm{\color{red}{=O}}\,\)をつけるかを考えれば、

 \(\,\mathrm{C-C-C-\color{red}{C}}\,\)

 \(\,\mathrm{C-C-\color{red}{C}-C}\,\)

 \(\displaystyle \mathrm{C-\overset{\overset{\displaystyle C}{|}}{C}-\color{red}{C}}\,\)

つまり

 \(\,\mathrm{CH_3-CH_2-CH_2-\color{red}{\overset{\overset{\displaystyle O}{||}}{C}}-H}\,\)

 \(\,\mathrm{CH_3-CH_2-\color{red}{\overset{\overset{\displaystyle O}{||}}{C}}-CH_3}\,\)

 \(\displaystyle \mathrm{CH_3-\overset{\overset{\displaystyle CH_3}{|}}{CH}-\color{red}{\overset{\overset{\displaystyle O}{||}}{C}}-H}\,\)

の\(\,3\,\)種類しかありません。

アルデヒド\(\,\color{red}{2}\,\)つとケトン\(\,\color{red}{1}\,\)つの合計\(\,\color{red}{3}\,\)つ。

答え \(\color{black}{\fbox{ ③ }}\) 

問\(\,5\,\)

酢酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを混ぜて加熱するとメタンが発生します。

 \(\,\mathrm{CH_3COONa+NaOH \rightarrow \color{red}{CH_4}\,\uparrow+Na_2CO_3}\,\)

脱炭酸反応です。

メタンは水に溶けず軽い気体なので水上置換で捕集すればいい。

答え \(\color{black}{\fbox{ ④ }}\)

第\(\,5\,\)問

問\(\,1\,\)

合成高分子の平均分子量です。

合成高分子は均一な分子量ではなく、分子量の小さいものから大きいものまで混ざっています。
その平均が平均分子量です。

分子量分布で見れば、
 分布を示す曲線と横軸とで囲む面積を半分にするところ
が平均分子量と考えれば良いです。

合成高分子化合物\(\,\color{blue}{\mathrm{A}}\,\)では最も分子数が多い\(\,M\,\)より左の方が面積が広いので、

 \(\,\color{blue}{M_\mathrm{A}}\,\)は\(\,M\,\)より左

合成高分子化合物\(\,\color{red}{\mathrm{B}}\,\)では最も分子数が多い\(\,M\,\)より右の方が面積が広いので、

 \(\,\color{red}{M_\mathrm{B}}\,\)は\(\,M\,\)より右

になるので、

 \(\color{blue}{\,M_\mathrm{A}}\,<\,M\,<\color{red}{\,M_\mathrm{B}}\,\)

答え \(\color{black}{\fbox{ ⑥ }}\)

問\(\,2\,\)

高分子の生成方法と構成成分です。

溶媒に解けにくいトリアセチルセルロースに水を加えエステル結合の一部を加水分解し、
アセトンに解けるジアセチルセルロースとします。

 \([\mathrm{C_6H_7O_2\color{red}{(OCOCH_3)_3}}]_n+n\mathrm{H_2O}\\
  \rightarrow [\mathrm{C_6H_7O_2(\color{magenta}{OH})\color{blue}{(OCOCH_3)_2}}]_n+n\mathrm{CH_3COOH}\)

このジアセチルセルロースのアセトン溶液を小さな穴から空気中に押し出し、
アセトンを蒸発させるとアセテート繊維が得られます。

ビスコースを、凝固液としての希硫酸と硫酸ナトリウムの混合溶液に押し出すとビスコレーヨンという繊維ができます。
ビスコースを細長いすき間から凝固液に押し出すと透明なセロハンが得られます。

綿はセルロースでできた繊維です。
タンパク質でできた繊維はあのさらさらの肌に良い絹(シルク)ですね。

ラテックスにギ酸や酢酸を加えると凝固します。
それを水洗いし乾燥させたもの天然ゴムです。

⇒ 天然ゴムと合成ゴムの重合方法と特徴

答え \(\color{black}{\fbox{ ③ }}\)

誤りを含むものを選べば良いので、
綿はセルロース、絹はタンパク質、ということを知っていれば良かったのです。

必答問題はこれで終わりです。

⇒ 2019年度センター試験化学の第6問第7問(高分子と糖類)の解説

第\(\,6\,\)問と第\(\,7\,\)問は選択問題です。
共通テストから選択問題はなくなります。

⇒ 2019年度センター試験化学の第1問の解説(共通テスト対策)

物質の性質です。

⇒ 2019年度センター試験化学の第2問の解説

物質の状態です。

⇒ 2019年度センター試験化学の第3問(無機化学)の解説

無機分野です。

第\(\,1\,\)問から見直してみて下さい。
細かいことを聞いているようで、基本的なことを幅広くおさえておくことがポイントだと分かります。