ヘンリーの法則とはどういう法則なのか、わかりやすく定義しておきます。
気体は固体や液体ほどではありませんが溶媒に溶けます。
この気体の溶解度について温度と圧力との関係を表したものがヘンリーの法則です。
また、混合気体の溶解度はどうなるのかについても説明しておきます。

ヘンリーの法則とは

気体の溶解度は圧力が大きくなると物質差はありますが大きくなります。
逆に圧力が小さくなると溶解度も下がって気体となって出てくるということです。
例えば、炭酸飲料の栓を開けるとシュワーと泡が出ますよね?あれは栓を開けたことで圧力が下がり溶けていた炭酸ガスが気体となって発生したものです。

溶解度の小さな気体では、一定温度で一定量の溶媒に溶ける気体の物質量はその気体の圧力に比例します。
この関係を「ヘンリーの法則」といいますが、
溶解度の大きい気体であるアンモニア( \(\mathrm{NH_3}\) )や塩化水素( \(\mathrm{HCl}\) )などは水に溶けると電離して水和するのでヘンリーの法則は成り立ちません。
水和しない気体について成り立つ法則だということを忘れないでください。

ヘンリーの法則を体積を用いて言い換えると、
「一定温度で、一定量の溶媒に溶ける気体の体積は
 圧力に関係なく一定である。」
ということにもなります。

どういうことかと言えば、
圧力を2倍にすると体積は半分になりますよね?
でもその半分の体積の気体にはもとの気体と同じ物質量が含まれているということです。

ヘンリーの法則によれば圧力を2倍にすれば溶ける気体も2倍の「物質量」になるので、
Aという圧力でBリットル溶けるとすると、
2Aという圧力でもBリットル溶けるということです。
このBという体積にはもとの圧力時の2倍の気体が含まれているということが重要です。

気体の溶解度と温度の関係

気体の溶解度は圧力を一定にすると、高温になればなるほど小さくなります。
気体の溶解度は気体の圧力が \(\mathrm{1.0\times 10^5Pa}\) のとき、
溶媒1Lに溶け込む気体の体積を標準状態での体積に換算した値で示すことが多いです。

例えば、水を熱すると沸騰する前に気泡が出ていることに気がつくと思いますが、これは水に溶けた空気の溶解度が小さくなり気体となって出てきたものです。
空気の成分である窒素や酸素は、0℃のときと比べると40℃では溶解度は50%程度まで小さくなります。

混合気体の溶解度と圧力の関係

混合気体の溶解度は、各成分気体の分圧のみに比例します。

⇒ 混合気体の全圧と分圧(ドルトンの分圧の法則)

例えば空気で考えた場合、窒素と酸素が4:1の混合気体だとします。
20℃、1気圧( \(\mathrm{1atm=1.0\times 10^5Pa}\) )では純水1000mLに酸素は0.0475g、窒素は0.0201g溶けます。
このとき、20℃の純水に溶けている空気の窒素と酸素のモル比を考えると、
窒素の分圧は、

 \( \displaystyle \mathrm{1atm\times \frac{4}{5}=0.8atm}\)

酸素の分圧は、

 \( \displaystyle \mathrm{1atm\times \frac{1}{5}=0.2atm}\)

窒素の分子量28、酸素の分子量32として、
窒素と窒素の溶けているモル比は、

 \(\displaystyle \mathrm{\frac{0.0201}{28}\times \frac{0.8}{1}:\frac{0.0475}{32}\times {0.2}{1}}\\ \\
≒ 2\,:\,1\)
(このサイトの読者は計算は度外視していて良いですよ。)
となります。

これは空気であろうとどのような混合気体であろうと、各気体の溶解度を考えるときはその気体の分圧だけを考えればよく、他の気体の種類には影響されない、ということです。

ただし、
気体の溶解度はそれぞれの気体で違いますので、空気の体積比が4:1の混合気体だからといって、各気体の溶解度を考えずに、酸素が0.01mol水に溶けているなら窒素は0.04mol溶けている、ということにはなりません。

もう一つ、ヘンリーの法則が成り立つのは、
「溶解した気体が溶媒分子と反応を起こさず単に混合するだけ」
かつ、
「溶解度の小さい気体のみ」
であることは覚えておきましょう。

これを踏まえて「溶解」という言葉を無視すれば、「気体の溶解」という現象は、単なる気体の(溶媒への)拡散である、といった高校時代の恩師の言葉は的確ですね。
おまけですけど紹介しておきます。

つまり我我は、次のように発想を転換することが可能である。
『ここに「液体」という名の容器があるとする。
気体が液体に溶解するという現象はこの「液体」という真空容器に気体が拡散する変化である。
そしてこの「液体」容器の大きさは拡散する物質ごとに異なっており、その容積がその物質の溶解度である。
このように考えると、気体の溶解度の計算は単なる気体の拡散の計算に過ぎないことになる。・・・(続く)

まあ、何が言いたいかというと、気体の種類が違う場合は気体ごとに計算すればいいということで、分圧と与えられる基準になっている圧力の比で溶けている気体の量は計算すればいいよ、ということです。

先ずは基本をおさえようということなので、簡単に下の例題でおおよその感覚をつかんでおけば良いです。
いくらでも応用問題はありますから、もっと先で練習してください。

問題では溶ける気体の量は体積で与えられます。
この換算も練習しておいた方が良いですよ。

例題
0℃の水5Lに \(\mathrm{4.0\times 10^5Pa}\) の空気が接しているとき、溶けている酸素は何gか求めよ。
空気は体積比が窒素:酸素=4:1の混合気体とし、酸素は標準状態で水1Lに49mL溶けるものとする。
分子量は \(\mathrm{O_2=32}\)

気体の溶解度は全圧ではなく、分圧に比例するので注意しましょう。
空気の圧力は\(\mathrm{4.0\times 10^5Pa}\)ですが、
酸素は全体の5分の1の圧力になるので酸素の分圧は、

 \( \displaystyle \mathrm{4.0\times 10^5Pa \times \frac{1}{5}=8.0\times 10^4Pa}\)

となっています。
標準状態49mLの酸素は、

 \( \displaystyle \frac{0.049}{22.4}\,(\mathrm{mol})\)

なので、水5Lに溶ける酸素の質量は分子量32より、

 \( \displaystyle \frac{0.049}{22.4}\times \frac{8.0\times 10^4}{1.0\times 10^5}\times 5 \times 32\)

となります。

 \( \displaystyle \frac{0.049}{22.4}\times \frac{8.0\times 10^4}{1.0\times 10^5}\)

の部分は標準状態で1Lに溶けるモル数に酸素の分圧 \(\mathrm{8.0\times 10^4}\) でいくら溶けるかを計算したもの。
それの5倍の水なので5をかけて分子量32をかけて質量を出しています。

この比例計算は気体の状態方程式や比例式が理解できていれば問題ありませんが、
別にいくつか練習問題が必要でしょうね。

⇒ ヘンリーの法則にもとづく気体の溶解度に関する計算問題の解き方

先ずはヘンリーの法則を覚えて、それから計算問題に取り組んでおきましょう。