乗法公式や因数分解を利用した数値計算問題の解き方です。
中学3年で覚えることになる展開公式や因数分解は暗記するためにあるのではありません。
いろいろな計算を楽にするためにあるので利用方法を解説しておきます。
基本問題しか扱いませんがここでしっかり使い方を身につけておけば高校でも活かせます。


計算方法は1つではない。

保護者の方と話をしていて二桁の暗算の話が出てきました。
「インド式ってすごいですよね」とか、いろいろと話は出てきますが暗算出来なくても筆算が出来ればそれで良いです。

暗算できる人はすれば良いですよ。
余裕のある人は習得すればいいし、どんな方法でも出てくる結果は同じですから。

でもちょっと数学を利用するともう少し簡単に計算できるんですよ。
これからやっていこうとしているのは数学であることを忘れないでください。

暗算ができる人が数学が得意かというとそうではないでしょう?
もしそうなら分厚い参考書や問題集はいらないからひたすら暗算練習していれば大学受験数学も余裕でしょうね。

数学者も必要無くて、パソコンの処理スピードだけ上げていけばいい。
そんな訳ありません。

問題3
次の計算をせよ。

(1)\( 81\times 79\)
(2)\(79^2\)
(3)\(53^2-47^2\)


問題3となっていますがここには問題2まではありません。

展開公式や因数分解を利用すると計算が楽になる。

(1)\( 81\times 79\)
今までの計算公式を利用する問題の1つですが、
項が一つなのか、二つ以上なのかで方法が変わってきます。

これは式の途中に + や - がありませんので項が一つと考えます。
この場合は、展開公式を利用します。

\(\,81\,\)と\(\,79\,\)が、
 \(\,80\,\)を中心に\(\,+1\,\),\(\,-1\,\)ずつずれている
ことに気がつけば、
 \( \color{red}{(a+b)(a-b)=a^2-b^2}\)
が使えます。

 \(\hspace{10pt} 81\times 79\\
=(80+1)(80-1)\\
=80^2-1^2\\
=6400-1\\
=6399\)

筆算でやっても答えは出ます。
時間の差だけですが、のんびり解いている余裕はあるんですか?

(2)\(79^2\)
これも項が一つなので、展開公式を利用します。
 \(\color{red}{(a-b)^2=a^2-2ab+b^2}\)
ですね。

 \(\hspace{10pt} 79^2\\
=(80-1)^2\\
=80^2-2(80)(1)+1^2\\
=6400-160+1\\
=6241\)

\(\,3\,\)行目はもう省略しても良いくらいの練習はしてきているでしょう?
なくても良いですよ。

ただし、\(\,4\,\)行目の計算を暗算して間違えないようにしましょう。
ここは確実に筆算しても良いくらいです。

(3)\(53^2-47^2\)
これは項が二つあるので、展開公式では無くて、因数分解を利用します。
(1)(2)の勢いから、

 \(\hspace{10pt}53^2-47^2\\
=(50+3)^2-(50-3)^2 ・・・ ①\) 

と、してしまいがちだけど、答えは出るけどこれは時間のムダなんです。
(実際の入試で並ぶ問題ではありませんけど、定期テストだとあります。)

項が一つのときと、二つ以上のときでは、
公式の使い方によって答えを出す時間に差が出てくるんです。

因数分解公式
 \(\color{red}{ x^2-a^2=(x+a)(x-a)}\)
を利用すると、

 \(\hspace{10pt} 53^2-47^2\\
=(53+47)(53-47)\\
=100\times 6\\
=600\)   

このようにあっという間に答えがでます。
というか、きれいな数字が出てくるように問題がつくられているのです。

実際に、上の展開公式利用して①の方法で計算してみると、

 \(\hspace{10pt} (50+3)^2-(50-3)^2\\
=50^2+300+9-(50^2-300+9)\\
=50^2+300+9-50^2+300-9\\
=2500+300+9-2500+300-9\\
=600\)

となります。

この程度なら大した差はありませんが、要領よく計算すればどちらでも良いです。

でも、筆算だけで答えが出るからといって、算数の延長みたいにひたすら計算するのでなく数学使って楽に計算しましょうよ。

そのための数学なのです。

数学の利用範囲は広い。

1つの方針でひたすら計算するのもときには有効です。
計算が速い人は中学生の間はそれでも差はつきにくいでしょう。

しかし、
高校生になると少し方針を変えて進めると大きく違って来る問題が多くなります。
いつでも方針をあれやこれやと考える必要もありませんが、単なる計算問題が数学の問題になることはあまりありません。

ちょっとした工夫ができないか、違った計算方法で進められないか、少し考えてみると簡単な計算で答えまで出せることが多いことに気がつきますよ。

社会に出ても数学を利用しているところはあちこちにあります。
仕事に活かすこともしばしばです。
いつか気がつけると良いですね。

もう一度復習しておきましょう。

 \(\,103^2\,\)を計算する場合\(\,103=100+3\,\)と見れば
 \(\color{red}{ (a+b)^2=a^2+2ab+b^2}\)
を利用して

 \(\hspace{10pt}103^2\\
=(100+3)^2 \\
=\hspace{4pt}100^2\hspace{2pt}+2\times100 \times 3+3^2 \\
=10000+\hspace{15pt}600\hspace{15pt}+\hspace{4pt}9\\
=10609\)

 \( 59\times 61\) の場合は\(\,59\,\)と\(\,61\,\)は\(\,60\,\)の前後の数とみることができるので
 \(\color{red}{ (a-b)(a+b)=a^2-b^2}\)
を利用することができて

 \(\hspace{10pt} 59\times 61 \\
=(60-1)(60+1) \\
=60^2-1^2 \\
=3600-1 \\
=3599\)

 \( 62^2-38^2\) の場合、項が\(\,2\,\)つなので
展開ではなく因数分解利用することを考えながら
 \(\color{red}{ a^2-b^2=(a-b)(a+b)}\)
を使えば、

 \(\hspace{10pt} 62^2-38^2\\
=(62+38)(62-38)\\
=100\times 24\\
=2400\)

とほぼ暗算で答えが出せます。
多くの問題では前の項の\(\,100\,\)のようにきれいな数字になるように親切に問題は作成されています。

どの計算も展開公式や因数分解公式を利用しています。

これから先に進めばあちこちで必要な公式なので覚えておきましょう。

⇒ 因数分解とは?公式がいらなくなる問題の解き方のポイント(中学3年)

単なる計算ではないことが分かって来ますので何度も見ておくと良いです。

「ちょっとした工夫」
これを考えて問題に取り組むか、答えが出るからといつまでもゴリゴリ計算で進めるか、いずれ大きな差が出てくるのは間違いありません。

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