無理数で使う近似値とは、ルートのついた循環しない無限小数に区切りをつけてあつかう小数のことです。
ここでは分母の有理化と近似値の使い方を練習問題の中で解説します。
入試では分母を有理化した形で答えるという指定がありますので普段から答えとなる計算の最終的な形は有理化したものにしておきましょう。

近似値とは

近似値とは、例えば、\( \sqrt{2}\,\)は
 \(\sqrt{2}=\,1.41421356\cdots\,\)
と永遠に続く小数です。無限小数といいます。

しかし、これをず~と書いていたらきりがありません。
なにせ永遠に続くのですから、終わりがないのです。

そこで、ある程度のところで切ってしまって、それを‘近い値’として採用するのです。
それを近似値といいます。

早速ですが問題をあげておきます。

問題6

(2)\( \sqrt 5=2.236 , \sqrt{50}=7.071\) として、次の数の近似値を求めよ。

 ① \( \sqrt {5000000}\)
 ② \( \sqrt{0.005}\)
 ③ \( \sqrt{125}\)
 ④ \( \displaystyle \frac{30\sqrt{3}}{\sqrt{6}}\)

「近似値って何?」と疑問を持つ人がいるかもしれませんが、無視してかまいません。
「次の数の値を求めよ。」でいいんです。

この問題では、\( \sqrt5\) と \( \sqrt{50}\) の値は既に近似値として与えられているので、
問題の①~④を求めるときは、その近似値を利用した値を求めることです。
だから、問題が「近似値を求めよ。」としていますが、「次の数の値を求めよ。」でいいんです。

後は、①~④が \(\sqrt5\) と \( \sqrt{50}\) のどちらの値を利用できるか見つければいいのです。
ただし、
 \(\,\sqrt{50}\,\)は\(\,\sqrt{5}\,\)の\(\,10\,\)倍ではないので注意してください。

基本的には\(\,\sqrt{(ルート)}\,\)の中身を素因数分解して、
 \(\sqrt{5}\) か \( \sqrt{50}\) が残るように変形すれば出てきます。

① \( \sqrt {5000000}\)

 \(\hspace{10pt} 5000000\\
=5\times 1000000\\
=5\times 100\times 100\times 100\\
=5\times 10^2\times 10^2\times 10^2\\
=5\times 1000^2\)

となるので、

 \(\hspace{10pt} \sqrt{5000000}\\
=\sqrt{5\times{1000^2}}\\
=1000\color{red}{\sqrt{5}}\\
=1000\times \color{red}{2.236}\\
=2236\)

と \(\sqrt5\) の値が利用できます。

素因数分解は小さい素数から割っていくというのが基本ですが、
\(\,5000000\,\)のように\(\,0\,\)がたくさん並んでいるときは\(\,\sqrt{100}=10\,\)になることから\(\,100\,\)で割っていくとはやいです。
 \(100\underline{)\hspace{2pt}5000000}\\
100\underline{)\hspace{12pt}50000}\\
100\underline{)\hspace{22pt}500}\\
\hspace{50pt}5\)

素因数分解するときは
 \(\begin{eqnarray}
100&=&10\times 10\\
&=&2\times 5\times 2\times 5\\
&=&2^2\times5^2\,\end{eqnarray}\)
なので
 \(\hspace{10pt}5000000\\
=5\times (\color{red}{100})^3\\
=5\times (\color{red}{2^2\times 5^2})\times (\color{red}{2^2\times 5^2})\times (\color{red}{2^2\times 5^2})\\
=2^6\times5^7\)

十数回の割り算をしてももちろん良いですけど、少し要領よくすれば楽になる、それも数学です。
地道に割り算が先で良いです。何が何でも解くという泥臭さは好感が持てます。
しかし、時間制限があるのも受験なので少しずつでも楽できるように数学をしていきましょう。

② \(\sqrt{0.005}\)

これは小数なので素因数分解出来ません。
しかし、分数にしたら分母と分子がそれぞれ素因数分解できるようになります。

 \(\hspace{10pt} \sqrt{0.005}\\
\displaystyle =\sqrt{\frac{5}{1000}}\\
\displaystyle =\sqrt{\color{red}{\frac{50}{10000}}}\\
\displaystyle =\sqrt{\frac{50}{100^2}}\\
\displaystyle =\frac{\sqrt{50}}{100}\\
\displaystyle =\frac{7.071}{100}=0.07071\)

分母を\(\,\sqrt{1000}\,\)のままにしていないのはルートが外しにくいからです。
分母を\(\,\sqrt{1000}\,\)のまま分母分子のルートの中を簡単にしても

 \(\hspace{10pt} \displaystyle \sqrt{\frac{5}{1000}}\\
\displaystyle =\sqrt{\frac{5}{10^2\times 10}}\\
\displaystyle =\frac{\sqrt{5}\color{blue}{\times \sqrt{10}}}{10\sqrt{10}\color{blue}{\times\sqrt{10}}}\\
\displaystyle =\frac{\sqrt{50}}{10\times 10}\\
\displaystyle =\frac{\sqrt{50}}{100}\)

となるのでどちらにしても分母を有理化すれば同じ結果にはなります。
有理化についてはこの後に説明します。

分母の有理化とは

例えば、\(\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}}\) は分母に根号が付いた数があります。

このまま答えにすれば、中学校の間は、×にされます。
答えは分母には\(\,\sqrt{(ルート)}\,\)の無い数にしなければなりません

どうすればいいかというと、分母と分子に分母と同じ数をかけてやればいいのです。
すると、
 \(\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}}=\frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}}\color{red}{\times \frac{\sqrt{3}}{\sqrt{3}}}=\frac{\sqrt{6}}{3}\)
となり分母に√のついた数が無くなります。

これが、『分母の有理化』といわれるものです。
「有理化」というのは、‘有理数’にするということで、簡単に言うと√(ルート)が付いていない数にするということです。

有理化は簡単で、分母と分子に、分母と同じ√の数をかければいいだけですよ。
 \( \color{red}{(\sqrt{a} )^2=a}\) となることを利用しているだけです。

さっきの問題も、分母を\(\,10000\,\)とできなかった場合は、

 \(\hspace{10pt} \displaystyle \sqrt{\frac{5}{1000}}\\ \\
\displaystyle =\sqrt{\frac{5}{10^2\times 10}}\\ \\
\displaystyle =\frac{\sqrt{5}}{10\sqrt{10}}\\ \\
\displaystyle =\frac{\sqrt{5}}{10\sqrt{10}}\times {\frac{\sqrt{10}}{\sqrt10}}\\ \\
\displaystyle =\frac{\sqrt{50}}{100}\)

と『分母の有理化』をすれば同じことです。
やはり \( \sqrt{5}\) ではなく \(\sqrt{50}\) の値を使うことになります。

 ③ \(\sqrt{125}\)

 \( 125\) は素因数分解すると \( 125=5^3\) なので、

 \(\hspace{10pt} \sqrt{125}\\
=\sqrt{5^2\times5}\\
=5\color{red}{\sqrt{5}}\\
=5\times \color{red}{2.236}\\
=11.18\)

と簡単に出てきます。

 ④ \( \displaystyle \frac{30\sqrt{3}}{\sqrt{6}}\)

この問題では \( \sqrt{3}\) や \( \sqrt{6}\) の値は与えられていないので、
基本通り分母の有理化やルートの中を簡単にするということから始めましょう。

分からないからといって作業を止めたらそこから先には進みませんよ。

ここでは分数になっているので、ルートの中どうしで約分しましょう。
その後、分母の有理化です。

 \(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{30\sqrt{3}}{\sqrt{6}}\\
\displaystyle =\frac{30}{\sqrt{2}}\\
\displaystyle =\frac{30}{\sqrt{2}}\times \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{2}}\\
\displaystyle =\frac{30\sqrt{2}}{2}\\
=15\sqrt{2}\)

ここまでは手探りでも変形しておきましょう。
先が見えない問題を解く場合はこの手探り状態は必ずありますよ。
これがやれるようになれば偏差値もぐんと伸びます。

さて、\( 15\sqrt{2}\) に \(\sqrt{5}\) や \( \sqrt{50}\) の値を代入したいのですが直接はできませんので変形が必要です。

\(\,2\,\)と\(\,5\,\)と\(\,50\,\)を関連づける数字といえば、どんな組み合わせが考えられるか?です。
ただし、
 \( 100\) という数字は \( 10^2\) でルートの中に入ると外に\(\,10\,\)として出てくるというのを覚えておかなければなりません。

 \( \displaystyle 2=\frac{10}{5}=\frac{100}{50}\)

なので 

 \( \displaystyle \sqrt{2}=\frac{\sqrt{10}}{\sqrt{5}}\)

 \( \displaystyle \sqrt{2}=\frac{\sqrt{100}}{\sqrt{50}}\)

を利用します。
どちらを使っても有理化すれば結果は同じで、

 \(\hspace{10pt} \color{red}{\sqrt{2}}\\ \\
\displaystyle =\frac{\sqrt{10}}{\sqrt{5}}\\ \\
\displaystyle =\frac{\sqrt{10}}{\sqrt{5}}\color{blue}{\times \frac{\sqrt{5}}{\sqrt{5}}}\\ \\
\displaystyle =\color{red}{\frac{\sqrt{50}}{5}}\)

となります。
したがって、

 \(\hspace{10pt} 15\color{red}{\sqrt{2}}\\ \\
\displaystyle =15\times \color{red}{\frac{\sqrt{50}}{5}}\\ \\
\displaystyle =3\sqrt{50}\\
=3\times 7.071\\
=21.213\)

ここまでできれば十分です。
近似値の問題は与えられた数値を使えるように変形するときのコツが少しありますが、
先ずは基本的なことを覚えてやることをやってからですね。
ルートの中を簡単にしたり、有理化したりがその基本作業です。

次はちょっとした応用になります。

⇒ ルートのついた無理数の代入の応用問題と使い方のポイント

ですが、先ずは素因数分解のやり方使い方は

⇒ 素数とは?素因数分解の方法と平方根の求め方(ルートの使い方準備) 

で復習しておきましょう。
素因数分解が根号をあつかうときの基本です。

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