ノーベル賞は知っていると思いますが化学の教科書に出てくる人がみんなノーベル化学賞を受賞しているわけではありません。よく見かける科学者のうち化学でノーベル賞を受賞した人と受賞の理由となった功績を、必ず受験にでるというわけではありませんが見ておきましょう。

ノーベル賞とは

ダイナマイトの発明者として知られるアルフレッド・ノーベルの莫大な遺産をもとにつくられた世界的に最も権威があるといわれている賞です。
「物理学」、「化学」、「生理学・医学」、「文学」、「平和」と「経済学」の6分野があります。
ただし、経済学賞はノーベルの遺言にはないらしく、ノーベル財団は経済学賞だけはノーベル賞ではないといっています。
経済学賞の正式名称は「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」という長い名前らしいです。

ノーベルは300以上の特許を持っているので財源は大きいですね。
ノーベル賞の賞金が遺産の利子だけで配分され1つの分野に1億円くらい出る事からもわかります。

ノーベル賞は1人の人物に対して与えられるものではなく、功績に対する賞なので受賞者が1人というわけではありません。
同一テーマに貢献した人3人まで対象となりますが、貢献度に応じて賞金も変わるようですね。
文学賞は対象者は1人だけです。
逆に平和賞は団体の場合もあり、「国境なき医師団」などが受賞しています。

年齢に制限はありません。

「前年に人類のために最も貢献をした人々に分配」
というノーベルの遺言によるものなのでノーベル以前に活躍していた科学者の名前がないのは当然ともいえますよね。

ちなみにノーベル賞は結果に対する功績ではないので、取り消されることはないそうですが生きていることが条件になります。
審査は厳しいでしょうね。

高校生でも知ってるノーベル化学賞受賞者と功績

高校生でも「聞いたことがある」程度の範囲です。

1901年にファントホッフが第1回の受賞者となりました。
ファントホッフといえば、浸透圧に関する法則が有名ですね。

 \( \Pi V=nRT\)

1902年第2回はエミール・フィッシャー
高校生は生物で聞くことの方が多いかもしれませんが酵素の基質特異性について鍵と錠に例えた人です。
タンパク質の構造を推定する有力方法を考えました。
(1930年の受賞者ハンス・フィッシャーとは当然別人です。)

1903年第3回はアレニウス
電解質に関して教科書でもいろいろと目にしますね。
反応速度式や活性化エネルギーで見かけます。

ちょっと飛んで1911年はマリ・キュリー
『キュリー夫人』です。放射能という言葉を残しました。
ちなみにノーベル物理学賞(1903年)も受賞しています。
しかし、長い間の研究期間、放射線被曝していたため病気になりました。
放射性物質をポケットに入れて持ち歩いていたとか。
(本人は放射線被曝による健康被害を認めていなかったようですが、、、)

1918年はフリッツ・ハーバー。
窒素からアンモニアを合成する「ハーバー・ボッシュ法」で有名ですね。

⇒ アンモニアの製法ハーバーボッシュ法

一方、毒ガスを兵器に使うことを目的に開発していた「化学兵器の父」とも呼ばれています。

1931年は2人います。
その1人がハーバー・ボッシュ法のもう1人の研究者カール・ボッシュ

この後は教科書ではほとんど見ない人達になります。

日本のノーベル化学賞受賞者

日本人初のノーベル化学賞受賞は1981年京都大学の福井健一(ふくい けんいち)先生です。
「フロンティア軌道理論」という高校ではなじみのない理論を発表しました。
福井先生の
「科学者を目指す若者に中等教育で最も励んで欲しいのは数学、特に平面幾何学である。」
というセリフは中学生に平面幾何(図形)を中心に指導しようとする私の後押しになった、かどうかは関係ない。笑

次に2000年、筑波大学の白川 英樹(しらかわ ひでき)先生が受賞。
非金属である高分子化合物による伝導体(半導体)の発見と開発ですね。
携帯のリチウムイオンバッテリーの電極やATMの指で操作できるパネルなどにも利用されているので身近にあるのですが知りませんよね。

その次は翌年2001年の野依 良治(のより りょうじ)先生
高校生の有機化学でははっきりと理解するのはむずかしいですが、カルボニル化合物に対する広い範囲で不斉合成に使うことができる触媒を開発し、医薬品などの有機合成に貢献しました。

さらに翌年の2002年、田中耕一(たなか こういち)さん。
「ソフトレーザー脱離イオン化法」というレーザーでタンパク質を気化させて質量分析を行うことに成功しました。

2008年下村 脩(しもむら おさむ)さん。
緑色蛍光タンパク質(りょくしょくけいこうタンパクしつ)をオワンクラゲから発見し医療などに利用することに貢献したことでアメリカの2人とともに受賞しました。

2010年は日本人が2人います。
北海道大学の鈴木 章(すずき あきら)先生とパデュー大学(アメリカ)の根岸 英一(ねぎし えいいち)先生(国籍は日本)。
アメリカのリチャード・ヘックと3人で受賞しています。
受賞理由としての功績は、「パラジウム触媒によるカップリング」

教科書の内容に受賞者の研究内容がない理由

ノーベルが遺言で残した
「前年に人類のために最も貢献をした人々に分配」
がノーベル賞なのでノーベル以前に活躍していた科学者の名前はないのですが、
受賞者が教科書に登場してこないのは役に立たないからではありません。

高校の化学の教科書で習うことはもっと以前からある「化学の基本的なこと」、ということに尽きます。
ノーベル賞を取るほどの研究内容を高校の化学の知識で理解するのはまず無理なのでのらないのです。

化学だけじゃないけど

長い年月研究されてきた化学ですが、この100年の発達は素晴らしいものがあるといえます。
私たちは単に便利になったなあ、と感じていれば良いことです。

ただ、
ノーベルのダイナマイトにしてもハーバーの毒ガスにしても「戦争を早く終わらせるため」につくったということです。
圧倒的な武器を持てば戦争は終わるだろう、と考えてのことらしい。

しかし、当時は核兵器がなくても戦争が終わっていますよね?
本当に強力な兵器がないと戦争は終わらないのでしょうか。

力任せの人間っていなくならない。
原始人並のまま、知能は進化しないのか?

さすがに直接聞くことも、当時の関係者に聞くこともできませんが、
兵器として売って儲けたお金でノーベル財団ができているという事実は替わりません。
そのことでノーベル賞を否定する人もいます。

しかし、ノーベル賞があることで科学全体が発展速度を増しているということもいえるかもしれない。
「将来ノーベル賞を取れるような科学者になりたい」
という子どもが次々に出てくればもっと進化ははやくなるでしょう。

公害などの環境問題も解決される日がはやく来るかもしれない。
エネルギー問題がはやく解決されるかもしれない。
食糧問題については足りないということはなく、あるところとないところの差が激しい、というだけでしょう。
これを解決できたら「平和賞」受賞でしょうね。

科学者の励みになるなら、
実際なっているし否定することはないのではないか、
と思います。

また日本から受賞者が出てくれるとうれしいですね。

今思うのは、
鎖国がなくなって日本は発展し、便利な世の中になった。
閉鎖的というのは、進化を妨げる大きな要因なのだな、ということです。

ノーベル賞受賞の最近の傾向としては、
単独受賞が少ないということと、
分野がはっきりと分かれていない、
ということでしょうか。

「これは化学」、「これは医学」と区別がつけられにくい、
融合された研究がなされるほどの進化をしているということですね。

ところで、
ノーベル賞に数学がないのは、ノーベルと仲が悪かった数学者がいるから、というのは本当なのでしょうかね。

今では数学にはアーベル賞がありますが、「受賞者の功績」というところを見ても、
たぶん、
普通の人は(私も含めて)「何がすごいのかわからない」というのが感想になると思います。w

高校生なら、

⇒ センター試験化学の過去問 2018年度第1問の解説 

こちらの攻略が先ですよね。