連立方程式の人数の増減問題(昨年と今年の比較など)の解き方です。
文章問題では分からないもの、求めたいものを文字でおくというのが作業の最初になります。
人数の問題はよく出るので何度も解いているかもしれませんが、ここでは増減問題で大切になる基準を決める方法をお伝えします。
連立方程式で文字にするもの
連立方程式では2つ文字が使えます。
基本問題はほとんどが求めたい答えとなるものそのものを文字でおいて大丈夫ですが、
ちょっとした実力テストや入試では一ひねりされた問題が多いので、比較を加えた問題を取り上げます。
今年は昨年と比べると,男子が\(\,5\,\)%減り,女子が\(\,6\,\)%減って,全体として\(\,27\,\)人減った。
今年の男子,女子の生徒数を求めよ。
問題3(2)まではこのページにはありません。
別のページにありますので気にしないでください。
⇒ 連立方程式(食塩水の濃度と食塩水を混ぜる文章問題の立式方法と解き方)
基準になるものを文字でおく
今までは、『求めたいもの』をそのまま文字にしてきました。
しかし、この問題のように『増減』『比較』に関する問題は違うのです。
求めたいのは、今年の男子と女子の生徒数なのですが、
この問題は、今年の男子と女子を \( x , y\) などとおくとものすごくややこしい式になります。
『増減』『比較』に関する問題では、
基準となるものを先ず \(x , y\) とおいて式を立てます。
「今年は去年と比べると」とある場合、基準になっているのは「去年」です。
何故「今年」を \( x , y\) とおいたらややこしいか説明します。
例えば、
「\(\,1000\,\)円の\(\,20\,\)%増」は\(\,1200\,\)円ですが、
「\(\,1200\,\)円の\(\,20\,\)%減」は\(\,960\,\)円で、
もとの\(\,1000\,\)円には戻りません。
仕入れに\(\,2\,\)割の利益をのせた定価で売ろうとしたけど売れないので、
原価で処分しようとして\(\,2\,\)割引で売ったら、
実は損をしていることになるのです。
仕入れで売ろうとするなら、\(\,2\,\)割のせた定価の\(\,2\,\)割引ではなく、\(\,1.6666\cdots\,\)割引にしないと原価には戻りません。
\(\,1.6666\cdots\,\)割、という数字は \(1-1\div 1.2\) という計算から出てきますが気にしなくて良いです。
分かりにくいとだけ思ってください。w
このややこしさの原因は仕入れを基準としているか、定価を基準としているか違っているからです。
「今年」を \( x , y\) とすると問題にある\(\,5\,\)%や\(\,6\,\)%という数字が使いにくく、
ものすごくややこしくなるので、この手の問題では一旦、
基準となる「去年」の人数を \(x , y\) とおいて
去年の人数を求めてから、最後に今年の人数に計算し直したものを答えとするという2段階の計算をした方が楽なのです。
問題によっては「去年の男子、女子を求めよ。」と基準になる方を聞いてくる親切な問題もありますが、普通は基準となっていない「今年の男子、女子」を聞いてきます。
この問題は?「今年の男子、女子」ですよね。
普通です。
では、基準となる『去年』の男子、女子をそれぞれ \(x , y\) とおきましょう。
関係式を2つ組み立てるのは同じ
去年の、男子の生徒数を \( x\) , 女子の生徒数を \( y\) とすると、
『昨年の生徒数は\(\,490\,\)人』らしいので、
\(x+y=490 ・・・①\)
となります。
『今年』は、男子が『昨年より\(\,5\,\)%減り』、女子は『昨年より\(\,6\,\)%減り』ということは、
\(\,5\,\)%は\(\,0.05\,\),\(\,6\,\)%は\(\,0.06\,\)なので
『今年の男子』は、\(0.05x\) 減り
『今年の女子』は、\(0.06y\) 減ったことになります。
これから『全体で\(\,27\,\)人減った』ので
\(0.05x+0.06y=27 ・・・②\)
と式が立てられます。
分数でも同じです。
\(\,5\,\)%は、\(\displaystyle \frac{5}{100}\)
\(\,6\,\)%は、\(\displaystyle \frac{6}{100}\)
と表せるから、減った人数の関係式は、
\(\displaystyle \frac{5}{100}x+\frac{6}{100}y=27 ・・・②’\)
となります。
①②を連立させるか、①②’を連立させるか、結果は同じです。
②や②’は減った人数の関係式を立てましたが『男子が減り、女子は増える』などと逆の符号になることも多いので、
「生徒数」の方程式を立てた方がいろいろな場合で通用します。
例えば、この問題だと、
『今年の男子』は \( (1-0.05)x=0.95x\)
『今年の女子』は \( (1-0.06)y=0.94y\)
と表すことができ、その合計は、去年の\(\,490\,\)人より\(\,27\,\)人少ないので
\( 0.95x+0.94y=(490-27)=463\)
と式が立てられます。
\(\displaystyle \frac{95}{100}x+\frac{94}{100}=463\)
でももちろん良いです。分数の方がやりやすい気はします。
どっちで解いても \( x , y\) は同じです。
ですが、増加したり、減少したり、混じる場合、
生徒数で考えた方が簡単で、符号のミスが少なくなる場合が多いです。
例えば、男子が\(\,5\,\)%減り、女子が\(\,6\,\)%増える場合、増減の合計は、
\(-0.05x+0.06y\) ですが、
生徒数の合計は、\( 0.95x+1.06y\) と+だけで表すことができます。
問題に戻りましょう。
\(x , y\) を求めると \( x=240 , y=250\) とでます。
しかしこれは答えではありません。
答えるものを確認しないと0点
\(x , y\) は昨年の男子と女子の人数で、
求めるのは今年の男子,女子の人数です。
今年の男子は昨年より\(\,5\,\)%少ないので、
\(240 \times 0.95=228\)
または
\(\displaystyle 240\times \frac{95}{100}=228\)
今年の女子は昨年より\(\,6\,\)%少ないので、
\(250\times 0.94=235\)
または
\(\displaystyle 250\times \frac{94}{100}=235\)
これが答えです。
もし、整数で答が出ていなければそれは計算ミスをしています。
人数の答えに整数じゃない答え?あり得ないでしょう。
今年の
\(\underline{\,男子\,228\,人\,}\)
\(\underline{\,女子\,235\,人\,}\)
\(\,5\,\)%や\(\,6\,\)%というのは「昨年」に対しての数字だということを忘れないようにしましょう。
そして、文章題では何を文字でおくか、何が等しいか、を図を利用しながら式を立てていく。
後は連立方程式を解いて答えをしっかり確認して書く。
それだけです。
方程式の処理ができるようになったら、文章題では式を立てるところまででやめて、数多くの文章題を練習した方がいいですよ。
学校の宿題ではありませんので、時間がもったいない。
たまに答えまでしっかり出すだけで、計算練習は大丈夫です。
連立方程式の基本的な増減問題を説明しましたが、応用されても同じです。
先ずはこちらを参考に連立方程式をしっかり解けるようになっておくことです。
それと1次関数や2次関数で交点を出すときに便利な
これが解けないと関数の入試問題は解けません。
間違えた問題や分からなかった問題は、何度もやり直して復習するのはいうまでもないですけど、人数の問題なのに答えが分数というのはあり得ません。
文章問題では何を答えるのか、確認は必ずしましょう。
ここまでくれば連立方程式の基本はできています。
問題が長い場合が多いので問題のなかから必要な条件を読み取る練習はしておいた方が良いですよ。
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