条件付き確率の公式は定理そのものなので問題の解き方として利用するのは難しいかもしれません。
また、条件付き確率そのものが確率の乗法定理と見分けにくいということもあります。
分かりやすい見分け方がありますので参考にして下さい。

条件付き確率の定義

 【定義】

ある試行にともなう2つの事象A,Bに関し、Aが起こったときにBが起こる確率を、
Aが起こったときのBの起こる条件付き確率 といい、
 \( P_A(B)\)
で表す。

これは「Bの起こる確率」のことです。
「AかつBの起こる確率」は後の「確率の乗法定理」で説明します。

例えば、10本のくじがあり、2本が当たりだとします。
2人が続けてくじを引くとき、

 1人目が当たりを引く事象をA、
 2人目が当たりを引く事象をB、

とするとBが起こるのは、

 「1人目が当たりを引いて、Bが起こる」
 「1人目が外れを引いて、Bが起こる」

のふた通りが考えられます。

このときに「Bが起こる確率は?」と聞かれると紛らわしいですよね。
単に「Bが起こる確率は?」と問われたら両方の確率の和になります。

ただ、ここでは条件付き確率について考えるので、条件をつけます。

「Aが起こったときのBの起こる条件付き確率」は
Aが起こった時点でくじそのものと、当たりくじは1本減っているので、

 \(\displaystyle P_A(B)=\frac{1}{9}\)

Aが起こった「後に」Bが起こる確率なので、
「Aが起こったときにBが起こる確率は?」
と聞かれてもBが起こる条件付き確率のことです。

同じBが起こる確率でも、
「Aが起こらなかったときのBの起こる条件付き確率」
Aが起こらなかった時点でくじそのものは1本減り、当たりくじはそのままで、

 \(\displaystyle P_{\bar{A}}(B)=\frac{2}{9}\)

は違いますよね?

同じBが起こる確率でもその前の条件で違う値になります。
これが条件付き確率です。

次に確率の乗法定理を見てみましょう。
ここで見分けがつかなくなるのですが、先ずは定理を見ておきましょう。

確率の乗法定理

 【定理】

一般に2つの事象A,Bについて、A,Bのいずれもが起こる事象、
すなわち、A,Bの積事象 \( A\cap B\) の確率 \( P(A\cap B)\) と、
 \( P(A) ,  P_{A}(B)\) との間には

 \( \large{\color{red}{P(A\cap B)=P(A)\cdot P_A(B)}}\)

が成り立つ。

この定理は「AとBがともに起こる確率」です。
 (Aが起こる確率)×(Aが起こったときのBの起こる条件付き確率)
という意味なので間違えないで下さい。

10本中当たりが2本入っているくじを引くとき、
2人とも当たりを引く確率は、
「1人目が当たりを引き、さらに、2人目も当たりを引く」

 \( P(A\cap B)=P(A)\cdot P_A (B)=\displaystyle \frac{1}{5}\cdot \displaystyle \frac{1}{9}=\displaystyle \frac{1}{45}\)

ということで条件付き確率とは違うのが分かるでしょう。

2つの試行A,Bが独立なときは

 \( P(A\cap B)=P(A)\cdot P(B)\)

という「独立試行の乗法定理」が成り立ちます。

条件付き確率を求める公式

確率の乗法定理

 \( P(A\cap B)=P(A)\cdot P_A(B)\)

において、

 \( P(A\cap B)\) はA,Bがともに起こる確率
 \( P(A)\) はAが起こる確率
 \( P_A(B)\) はAが起こったときのBの起こる条件付き確率

を表していて、

 \(\displaystyle \color{red}{P_A(B)=\frac{P(A\cap B)}{P(A)}} \hspace{5pt} (P(A)\neq 0)\)

という公式が成り立ちます。
これは「Bの起こる確率」で、条件付き確率を求めるときはこの公式を使います。
(後で説明しますが、ベン図を使えるようになればこの公式は必要ありません。)

確率の乗法定理の式と同じものと考えて良いのでどちらかを覚えておけば良いのですが、
「乗法定理」を使う問題か「条件付き確率」を求める問題なのか、
の見分けができていないようです。

確かに問題文の読み方によっては難しいかもしれませんが、目安になる言葉があるので見ておきましょう。

条件付き確率の見分け方

おおよその問題では「条件付き確率を求めよ。」と書いてくれているので分かりやすいです。
条件付き確率の求め方は後で簡単な方法を教えますので、ちょっとだけ問題文から見分けられるようになっておきましょう。

今までの説明でだいたい見当がついているかもしれませんが、
「さらに」とか「かつ」を問題文に加えても意味が通じる場合は「乗法定理」です。

「Aが起こり、さらに、Bが起こる確率を求めよ。」
「AかつBが起こる確率を求めよ。」

などの場合はBだけが起こる確率を聞いているのではないので、条件付き確率ではありません

一方で、

「Aが起こった『ときの』Bの起こる確率を求めよ。」

の『ときの』は、『後に』または『Aが起こった中で』と置きかえることができます
さらに、「Bだけが起こる確率」と読み取れるので「条件付き確率」です。

つまりは、2つの事象の積事象の確率か、1つの事象の確率かを問題文から読み取るということです。

条件付き確率を求める問題には
「Aが起こった『ときの』Bの起こる確率」
分かりやすい問題では
「Aが起こったときのBの起こる『条件付き確率』」
となっているので「かつ」や「さらに」が入らないことを確認して条件付き確率を求めれば良いのです。

問題の中で見分け見ましょう。

例題

白玉3個と赤球2個が入っている袋から、球を1個ずつもとに戻さないで取り出すことを繰り返すとき、次の確率を求めよ。

 (1)1回目も2回目も白玉を取り出す確率
 (2)2回目に白玉を取り出したとき、1回目も白玉を取り出していた確率
 (3)2回目に白玉を取り出したとき、3回目に赤球を取り出す確率

この問題、答は後回しにして、
「確率の乗法定理」か「条件付き確率」かだけを見分けておきましょう。

(1)は「1回目も2回目も」なので乗法定理です。
いいかえると「1回目『かつ』2回目が白玉」となります。

(2)は「2回目に白玉を取り出した『とき』」という条件がついた、「1回目に白玉を取り出していた確率」です。
順番が逆のように見えますが、
「2回目白を取り出す」というのは、
 「1回目白⇒2回目白」
 「1回目赤⇒2回目白」
の場合がありますが、
 「2回目が白の『中で』、1回目も白」
という条件付き確率になります。

(3)は「2回目に白玉を取り出した『とき』」という条件がついた、「3回目に赤球を取り出す確率」です。
「2回目白の『後で』、3回目赤球を取り出す確率」
と読み取ることができます。

答を出す方法は次で詳しく説明します。
計算過程も見ると乗法公式が必要無いことも分かりますので見ておいてください。

⇒ 条件付き確率の公式を使う問題と公式を使わない計算の方法

公式とベン図を使った簡単な条件付き確率の計算方法、求め方の説明です。
場合分けをしっかりすれば、確率計算はできるようになりますよ。