等比数列には和を求める公式がありますが、和がシグマで表される場合もありますので関係を見分けることができるようになっておきましょう。
もちろん等比数列の和がシグマで表されているときはシグマの計算公式は使えませんので注意が必要です。
等比数列の和の求め方でもやはりシグマ計算のコツは1つですね。

シグマの計算方法については等差数列編の引き続きとなります。

等比数列のシグマの計算方法

等比数列の和にはシグマの計算公式が使えない

シグマ(Σ)は和を表す記号で、公式では無いということは何度も言ってきたのでわかっていると思いますが、
計算公式も3つだけはあるというのも知っていますよね。

 \( \displaystyle \sum_{k=1}^n k=\frac{1}{2}n(n+1)\)

 \( \displaystyle \sum_{k=1}^n k^2=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\)

 \( \displaystyle \sum_{k=1}^n k^3=\left\{\frac{1}{2}n(n+1)\right\}^2\)

の3つです。

等比数列の和についてはこの公式は使えません。
 \(\Sigma\) で表されたものを等比数列の和の公式

 \( \displaystyle S=\frac{a(r^n-1)}{r-1}\)

を使って計算することになります。
もちろん分母が0とはできないので \( \color{red}{r\neq1}\) の場合です。

わからなくなったら『Σの使い方』を見直しておいてくださいね。

練習7

 「初項8、公比2の等比数列の第 \( n\) 項までの和を求めよ。」

ここからは等比数列の和が続きます。
しかし、等比数列の和を求めるにはΣの計算公式は使えません。
 \(\Sigma\)で表すことはできるけど、和の計算は等比数列の和の公式を使うのです。

 \(\Sigma\)は「和を表す記号」であることを忘れずに。

問題だけを見ればおそらく和を求めることはできるだろうけど、\(\Sigma\)になれるために表しておきます。

 \( \displaystyle S=8+8\cdot2+8\cdot2^2+\cdots+8\cdot2^{n-1}\\ \\
\displaystyle =\sum_{k=1}^n 8\cdot 2^{k-1}\\ \\
\displaystyle =\frac{8(2^n-1)}{2-1}\\ \\
=8(2^n-1)\)  

このままでも答えとしては十分だと思いますが、

 \( S=8(2^n-1)\\ \\
=8\cdot2^n-8\\ \\
=2^3\cdot2^n-8\\ \\
=2^{n+3}-8\)

と展開しても良いです。

この問題が

 「\(\displaystyle S\displaystyle =\sum_{k=1}^n 8\cdot 2^{k-1}\) を求めよ。」

という問題であっても(『等比数列の和』と書いていなくとも)等比数列の和であることを見抜くことが大切です。

練習8

「初項8、公比2の等比数列の初項から第 \( 2n\) 項までの和を求めよ。」

これも問題の答えは出せると思いますが、

 \( \displaystyle S\displaystyle =\sum_{k=1}^{2n} 8\cdot2^{k-1}\)

を見て逆に、
「等比数列の初項から第 \( 2n\) 項までの和」
であることを見抜く練習です。

 \( \displaystyle S=8+8\cdot2+8\cdot2^2+\cdots+8\cdot2^{2n-1}\\ \\
\displaystyle =\sum_{k=1}^{2n} 8\cdot 2^{k-1}\\ \\
\displaystyle =\frac{8(2^{2n}-1)}{2-1}\\ \\
=8\cdot(4^n-1)\)

マーク式の場合問題に合わせて答えの調整が必要です。

 \( \displaystyle S=8\cdot(4^n-1)\\ \\
=2^3(2^{2n}-1)\\ \\
=2^{2n+3}-8\)

 \( \displaystyle S\displaystyle =\sum_{k=1}^{2n} 8\cdot2^{k-1}\)

を計算せよ。
という問題であっても意味が取れるようになっておきましょう。

シグマ(Σ)で表された意味を見抜くポイント

練習9

 \(\displaystyle S\displaystyle =\sum_{k=1}^{n-1} 8\cdot2^{k-1}\) を計算せよ。

これも練習7や8と同じ、\(\Sigma\)の形から逆に第 \(n-1\) 項までの和であることを見抜きましょう、という問題です。
使い方でも説明してますがシグマは「具体的に書き出す」ことが基本です。

 \( \displaystyle S\displaystyle =\sum_{k=1}^{n-1} 8\cdot2^{k-1}\\ \\
=8+8\cdot2+8\cdot2^2+\cdots+8\cdot2^{n-2}\)

これを見れば
「初項8、公比2である等比数列の初項から第 \( n-1\) 項までの和。」
ということがはっきりします。

え? \(\Sigma\)だとわかるけど、並べると \( n-1\) 項までがはっきりしない?

 \( \displaystyle 8+8\cdot2+8\cdot2^2+\cdots+8\cdot2^{n-2}+8\cdot2^{n-1}\)

が「第 \(n\) 項までの和」でしょう?
ならば、1つ減っている

 \( \displaystyle 8+8\cdot2+8\cdot2^2+\cdots+8\cdot2^{n-2}\)

は「第 \( n-1\) 項までの和」ですね。

それを\(\Sigma\)を使えばはっきりと上限に表せるということなのです。
少し\(\Sigma\)の便利さわかってもらえましたか?

 \( \displaystyle S=\frac{8(2^{n-1}-1)}{2-1}\\ \\
=8(2^{n-1}-1)\\ \\
=2^{n+2}-8\)

練習10

 \( \displaystyle S\displaystyle =\sum_{k=1}^{n+1} 8\cdot2^{k-1}\) を計算せよ。

これは練習9と上限が変わっているだけなので
「初項8、公比2の等比数列の初項から第 \( n+1\) 項までの和。」
ということはわかると思いますが、練習として続けます。

項数が増えること以外は前の問題と同じです。
第 \(n+1\) 項までの和です。

 \( \displaystyle S\displaystyle =\sum_{k=1}^{n+1} 8\cdot2^{k-1}\\ \\
=8+8\cdot2+8\cdot2^2+\cdots+8\cdot2^{n-1}+8\cdot2^n\)

この「具体的に書き出す」、というのは良いですね。
 
 \( \displaystyle S=\frac{8(2^{n+1}-1)}{2-1}\\ \\
=8(2^{n+1}-1)\\ \\
=2^{n+4}-8\)

もちろん、第 \(n+1\) 項までの和なので、
第 \( n\) 項までの和 \( S_n\) に \(a_{n+1}\) を加えても良いです。

 \( \displaystyle S=(a_1+a_2+\cdots+a_n)+a_{n+1}\\ \\
=S_n+a_{n+1}\\ \\
\displaystyle =\sum_{k=1}^n 8\cdot2^{k-1}+8\cdot2^n\\ \\
=8(2^n-1)+8\cdot2^n\)

ここでこのあとですが、

 \( S=8(2^n-1)+8\cdot2^n\\ \\
=2^{n+4}-8\)

となるか自分で計算してみてくれませんか?

人の計算見て、自分でやった気になってはダメですよ。

ちょっとした工夫で使える和の公式

練習11

「初項8、公比2の等比数列の第11項から第 \( n\) 項までの和を求めよ。」

これは初項からの和ではないので等比数列の和の公式もそのままでは使えませんが、
等差数列のときと同じように初項からの和を考えれば良いだけですね。
\(\Sigma\)を使って表せば

 \( \displaystyle S\displaystyle =\sum_{k=11}^n 8\cdot2^{k-1}\)

具体的に書き並べれば

 \( S=8\cdot2^{10}+8\cdot2^{11}+\cdots+8\cdot2^n\)

ということです。
さて、どうやって変形しますか?

等差数列のときに用いた方法ですが、
第 \(n\) 項までの和を \( S_n\) とすると、

 \( S=(a_1+a_2+\cdots+a_{10})+a_{11}+a_{12}+\cdots+a_n-(a_1+a_2+\cdots+a_{10})\\ \\
=S_n-S_{10}\)

と、同じものを足して、引けば、0を足していることと同じなので、
等比数列でも同じように利用すれば良いのです。

 \( \displaystyle S\displaystyle =\sum_{k={11}}^n 8\cdot2^{k-1}\\ \\
=S_n-S_{10}\\ \\
\displaystyle =\sum_{k={1}}^n 8\cdot2^{k-1}-\sum_{k={1}}^{10} 8\cdot2^{k-1}\)

練習7の結果を利用すると、

 \( S=(2^{n+3}-8)-(2^{10+3}-8)\\ \\
=2^{n+3}-2^{13}\\ \\
=8(2^n-2^{10})\)

ややこしい形になりましたが答えです。
これくらいの数値には慣れておきましょう。
(ちなみに、\( 2^{10}=1024\) は覚えておくと2の累乗計算が少し楽になります。)

練習12

「初項8、公比2の等比数列の第 \( n+1\) 項から第 \(2n\) 項までの和を求めよ。」

ここまで来ればもう大丈夫でしょう。
等比数列第 \( n+1\) 項から第 \(2n\) 項までの \( n\) 項分の和です。
(第 \( n+1\) から \( 2n\) までは \( 2n-(n+1)+1=n\) 項ありますよ。)

第 \( 2n\) 項までの和 \( S_{2n}\) から第 \(n\) 項までの和 \(S_n\) を引けば良いのです。

 \( \displaystyle S=S_{2n}-S_n\\ \\
\displaystyle =\sum_{k=1}^{2n} 8\cdot2^{k-1}-\sum_{k=1}^n 8\cdot2^{k-1}\\ \\
=(8\cdot2^{2n}-8)-(8\cdot2^n-8)\\ \\
=2^{2n+3}-2^{n+3}\\ \\
=2^{n+3}\cdot2^n-2^{n+3}\\ \\
=2^{n+3}(2^n-1)\)

共通因数の \(2^{n+3}\) をくくり出すところが指数になれていないとむずかしく感じるかもしれませんが、一気にではなくても因数としてくくり出せるように練習してください。

 \( 2^{2n+3}-2^{n+3}\\ \\
=2^3\cdot 2^n-2^3\cdot 2^n\\ \\
=2^3(2^{2n}-2^n)\\ \\
=2^3\cdot 2^n(2^n-1)\\ \\
=2^{n+3}(2^n-1)\)

と変形していっても良いですよ。

どうです?
これで等比数列もばっちり!

ですか?笑

何だかこのページだけ見ているとわかりにくいような気もします。
段階的に理解できるようになっていますので、「?」となったら前の記事に戻って下さいね。

⇒ 等差数列の和とシグマ

次はシグマ(Σ)の計算公式を使って見ましょう。

⇒ シグマ(Σ)の計算公式が使える数列の和の求め方

問題として良く出ますが、\(\Sigma\)公式が使えるのはごく一部ですからね。