最大公約数や最小公倍数は小学校の算数からなじみがあるので説明はいらないかもしれません。
整式の場合も同じ考え方で大丈夫ですが、単なる数ではなく式で見ると分かりにくい点もありますのでもう一度基本的なことから確認しておきましょう。
そもそも整式とは何か?そこからはじめましょう。

整式とは

整式の定義から説明します。

 【定義】

 \( P(x)\) が \( x\) の整式であるとは、

 \( P(x)=a_0x^n+a_1x^{n-1}+\cdots +a_{n-1}x+a_n\)

と書けることである。
ただし、\( a_0,a_1,\cdots,a_{n-1},a_n\) は \( x\) によらない定数で、
 \( n\) は負でない整数である。

 \( a_0\neq 0\) のとき \( P(x)\) は\(n\)次の整式( \(n次式\) )で、
 \( a_0=0\) でも良いとすれば \( P(x)\) は\(n\)次以下の整式となります。

また、\( a_0=a_1=\cdots=a_n=0\) のときは、\( P(x)\) は恒等的に0の整式と呼ばれ、
 \( P(x)\equiv 0\) と書きます。

整式 \(P(x)\) において \(x\) のことを変数といい、
\(P(x)\) に \(x=\alpha\) を代入して得られる数を \(P(\alpha)\) で表します。

これは関数と同じだと考えて良いですね。

整式の倍数と約数

2つの整式 \(f\,,\,g\) において、\(f\) が \(g\) で割り切れるとき

 「 \(f\) は \(g\) の倍数である。」
 「 \(g\) は \(f\) の約数である。」

といいます。

式に「倍数」「約数」というのは変な感じがしますが、もともとの「訳しかた」がおかしかったからです。
「何倍かされたもの(multiple)」を「倍数」と、
「わるもの(divisor)」を「約数」と、
『数』付きで日本語に訳したからで、数に限った意味ではないのです。

因数分解というのは、整式を約数の積の形に表しているということです。

整式の最小公倍数と最大公約数

2つの整式 \(f,g\) の公倍数とは、
 \(f\) の倍数でもあり、
 \(g\) の倍数でもある、
整式のことです。

 \(f,g\) の公倍数のうちで次数が最小のものを
 \( f\) と \( g\) の最小公倍数といいます。

一方、
2つの整式 \(f,g\) の公約数とは
 \(f\) の約数でもあり、
 \(g\) の約数でもある、
整式のことをいいます。

 \(f,g\) の公約数のうちで次数が最大のものを
 \(f\) と \(g\) の最大公約数といいます。

 \(k\neq 0\) とすると、
 \( f,g\) に対し、その最小公倍数、最大公約数を \( k\) 倍した整式も最小公倍数、最大公約数です。

このことから
「最小公倍数」「最大公約数」を求めよ、という問題では、
 最高次の係数が1とか、係数が整数であるもの
などのように、見た目がきれいなものを選んで答えるのが普通です。

2つの整式に1次以上の公約数がないとき
つまり、最大公約数が定数であるとき、
この2つの整式は「 互いに素 」であるといいます。

この後は整式の割り算や因数定理になります。
計算練習問題をたくさんやってきたでしょうから忘れないように復習はしておきましょう。

⇒ 高次式の割り算のやり方と値を求める方法

整式の最小公倍数と最大公約数を求める練習問題

例題

ともに最高次係数が1の2次式があり、これらの
 最小公倍数が \( x^3+x^2-5x+3\)
 最大公約数が \( x-1\)
であるとき、これらの整式を求めよ。

整式 \( X\) と \( Y\) が最大公約数 \( \color{red}{g}\) をもつとき、

 \( X=a\color{red}{g}\hspace{5pt},\hspace{5pt} Y=b\color{red}{g}\)
( \( a,b\) は互いに素な因数:互いに約数をもたない)

とおけて、最小公倍数(L.C.M) \( L\) は、
 \( L=ab\color{red}{g}\)

関係式はこれくらいです。
この問題では最小公倍数が与えられていて、

 \( x^3+x^2-5x+3\\ \\
=\color{red}{(x-1)}(x^2+2x-3)\\ \\
=\color{red}{(x-1)}(x-1)(x+3)\)

と因数分解出来て(因数定理でも利用してください)、
もとの整式は最高次数の係数が1の2次式なので、

 \( X=\color{red}{(x-1)}(x-1)=x^2-2x+1\)
 \( Y=\color{red}{(x-1)}(x+3)=x^2+2x-3\)

となります。

2次式という条件がなければ、

 \( X=(x-1)\)
 \( Y=(x-1)(x-1)(x+3)\)

ということも考えられますが、条件により絞られているということですね。

 \( L=abg\) が理解出来ていれば、整式の因数分解でほとんど終わりますのでそれほど難しいわけではありませんが、
因数定理や整式の割算はしっかり復習しておきましょう。

⇒ 高次式の割り算のやり方と値を求める方法

次は恒等式について見ておきましょう。

⇒ 恒等式の定義と方程式との違いおよび係数決定問題の解き方

恒等式と方程式の違いもはっきり説明できるようになります。