高校の数学Ⅱで扱う文字式の展開の基本問題から応用問題までの練習です。
主に変形に利用するのは3次式の展開公式です。
展開は乗法公式を使わなくても必ずできますが、手順によっては処理が早くなる問題も少なくありません。
ある程度力が着くような問題を取り上げておきますのでどのような形でも変形できるようになっておきましょう。
3次式の展開公式と練習問題
\(\,3\,\)次の展開公式で覚えておくのは大きく分けると2つだけです。
3次式の展開公式
\(①\hspace{4pt}(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\)
\(②\hspace{4pt}(a+b)(a^2-ab+b^2)=a^3+b^3\)
この公式\(\,①\,\)において、\(\,b\,\)の代わりに\(\,(\color{red}{-b})\,\)を置き換えると
\(\begin{eqnarray}\{a+(\color{red}{-b})\}^3&=&a^3+3a^2(\color{red}{-b})+3a(\color{red}{-b})^2+(\color{red}{-b})^3\\
(a-b)^3&=&a^3-3a^b+3ab^2-b^3
\end{eqnarray}\)
また、公式\(\,②\,\)において、\(\,b\,\)の代わりに\(\,(\color{red}{-b})\,\)を置き換えると
\(\begin{eqnarray}\{a+(\color{red}{-b})\}\{a^2-a(\color{red}{-b})+(\color{red}{-b})^2\}&=&a^2+(-b)^3\\
(a-b)(a^2+ab+b^2)&=&a^3-b^3
\end{eqnarray}\)
これら4つの展開公式を覚えることにしましょう。
\(\color{red}{\fbox{ 展開公式 }}\)
\(\hspace{4pt}\color{red}{(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3}\)
\(\hspace{4pt}\color{red}{(a-b)^3=a^3-3a^b+3ab^2-b^3}\)
\(\hspace{4pt}\color{red}{(a+b)(a^2-ab+b^2)=a^3+b^3}\)
\(\hspace{4pt}\color{red}{(a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3}\)
覚えるためにも練習問題をやっておきましょう。
3次式の展開公式利用①の練習問題
問題と結果を示しますが、自分でやっておかないと意味ありませんよ。
人の計算を見て自分でやった気にならないことが大切です。
(1)\(\hspace{4pt}(x+1)^3\)
(2)\(\hspace{4pt}(x+4)^3\)
(3)\(\hspace{4pt}(x-1)^3\)
(4)\(\hspace{4pt}(x-3)^3\)
(5)\(\hspace{4pt}(3a+b)^3\)
(6)\(\hspace{4pt}(10a+b)^3\)
(7)\(\hspace{4pt}(x-2y)^3\)
(8)\(\hspace{4pt}(4x-5y)^3\)
公式\(\,①\,\)を利用する問題です。
慣れてくればそれぞれ以下の計算過程の\(\,2\,\)行目を省けるようにはなりますが、
計算ミスが多いと自覚のある人は飛ばさない方が良いです。
(1)
\(\hspace{10pt}(x+1)^3\\
=x^3+3x^2(1)+3x(1)^2+1^3\\
=\underline{ x^3+3x^2+3x+1 }\)
ちなみに、地道に展開しても答えは出ますが、
\(\hspace{10pt}(x+1)(x+1)(x+1)\\
=(x^2+2x+1)(x+1)\\
=x^3+x^2+2x^2+2x+x+1\\
=x^3+3x^2+3x+1\)
高校の数学では時間がかかりすぎて他の問題を解く時間が無くなります。
(2)
\(\hspace{10pt}(x+4)^3\\
=x^3+3x^2(4)+3x(4)^2+4^3\\
=\underline{ x^3+12x^2+48x+64 }\)
(3)
\(\hspace{10pt}(x-1)^3\\
=x^3-3x^2(1)+3x(1)^2-1^3\\
=\underline{ x^3-3x^2+3x-1 }\)
または
\(\hspace{10pt}(x-1)^3\\
=x^3+3x^2(-1)+3x(-1)^2+(-1)^3\\
=\underline{ x^3-3x^2+3x-1 }\)
でも良いですよ。
(4)
\(\hspace{10pt}(x-3)^3\\
=x^3-3x^2(3)+3x(3)^2-3^3\\
=\underline{ x^3-9x^2+27x-27 }\)
または
\(\hspace{10pt}(x-3)^3\\
=x^3+3x^2(-3)+3x(-3)^2+(-3)^3\\
=\underline{ x^3-9x^2+27x-27 }\)
(5)
\(\hspace{10pt}(3a+b)^3\\
=(3a)^3+3(3a)^2b+3(3a)(b)^2+b^3\\
=\underline{ 27a^3+27a^2b+9ab^2+b^3 }\)
(6)
\(\hspace{10pt}(10a+b)^3\\
=(10a)^3+3(10a)^2b+3(10a)b^2+b^3\\
=\underline{ 1000a^3+300a^2b+30ab^2+b^3 }\)
これは\(\,10\,\)進法で表された\(\,2\,\)桁の整数の\(\,3\,\)乗計算ですが、
実際には筆算した方が早いでしょう。笑
整数としての意味だけ読み取れれば良いです。
(7)
\(\hspace{10pt}(x-2y)^3\\
=x^3-3x^2(2y)+3x(2y)^2-(2y)^3\\
=\underline{ x^3-6x^2y+12xy^2-8y^3 }\)
または
\(\hspace{10pt}(x-2y)^3\\
=x^3+3x^2(-2y)+3x(-2y)^2+(-2y)^3\\
=\underline{ x^3-6x^2y+12xy^2-8y^3 }\)
(8)
\(\hspace{10pt}(4x-5y)^3\\
=(4x)^3-3(4x)^2(5y)+3(4x)(5y)^2-(5y)^3\\
=\underline{ 64x^3-240x^2y+300xy^2-125y^3 }\)
または
\(\hspace{10pt}(4x-5y)^3\\
=(4x)^3+3(4x)^2(-5y)+3(4x)(-5y)^2+(-5y)^3\\
=\underline{ 64x^3-240x^2y+300xy^2-125y^3 }\)
\(\,2\,\)行目が割と大切なのは分かるでしょう。
展開公式②を利用する練習問題
次は公式\(\,②\,\)
\(\hspace{10pt}(\color{red}{a}+\color{blue}{b})(\color{red}{a}^2-\color{red}{a}\color{blue}{b}+\color{blue}{b}^2)\)
を利用する練習問題です。
(1)\(\hspace{4pt}(x+1)(x^2-x+1)\)
(2)\(\hspace{4pt}(a+3)(a^2-3a+9)\)
(3)\(\hspace{4pt}(x-2)(x^2+2x+4)\)
(4)\(\hspace{4pt}(a-3)(a^2+3a+9)\)
(5)\(\hspace{4pt}(2a+b)(4a^2-2ab+b^2)\)
(6)\(\hspace{4pt}(3x+y)(9x^2-3xy+y^2)\)
(7)\(\hspace{4pt}(x-2y)(x^2+2xy+4y^2)\)
(8)\(\hspace{4pt}(2a-y)(4a^2+2ay+y^2)\)
公式に当てはまるか\(\,2\,\)行目で確認しますが、
実際の計算では必要ありません。
ただし、公式が使えるかを見分ける練習でもあるので一応見ておいてください。
(1)
\(\hspace{10pt}(x+1)(x^2-x+1)\\
=(\color{red}{x}+\color{blue}{1})\left\{(\color{red}{x})^2-(\color{red}{x})(\color{blue}{1})+(\color{blue}{1})^2\right\}\\
=x^3+1^3\\
=\underline{ x^3+1 }\)
この公式って見分けにくいでしょう?
\(\hspace{10pt}(x+1)(x^2-x+1)\\
=x^3-x^2+x+x^2-x+1\\
=x^3+1\)
と地道に展開してもそれほど時間はかかりませんので、
わかりにくいときは展開してもいいです。
ただ、その分他の問題で時間を稼げるようになっていきましょう。
(2)
\(\hspace{10pt}(a+3)(a^2-3a+9)\\
=(\color{red}{a}+\color{blue}{3})\left\{(\color{red}{a})^2-(\color{red}{a})(\color{blue}{3})+(\color{blue}{3})^2\right\}\\
=a^3+3^3\\
=\underline{ a^3+27 }\)
因数\(\,(a^2-3a+9)\,\)の第\(\,1,3\,\)項は平方数であればすぐに気がつきますので、
第\(\,2\,\)項に注意が必要です。
(3)
\(\hspace{10pt}(x-2)(x^2+2x+4)\\
=(\color{red}{x}-\color{blue}{2})\left\{(\color{red}{x})^2+(\color{red}{x})(\color{blue}{2})+(\color{blue}{2})^2\right\}\\
=x^3-2^3\\
=\underline{ x^3-8 }\)
(4)
\(\hspace{10pt}(a-3)(a^2+3a+9)\\
=(\color{red}{a}-\color{blue}{3})\left\{(\color{red}{a})^2+(\color{red}{a})(\color{blue}{3})+(\color{blue}{3})^2\right\}\\
=a^3-3^3\\
=\underline{ a^3-27 }\)
(5)
\(\hspace{10pt}(2a+b)(4a^2-2ab+b^2)\\
=(\color{red}{2a}+\color{blue}{b})\left\{(\color{red}{2a})^2-(\color{red}{2a})(\color{blue}{b})+(\color{blue}{b})^2\right\}\\
=(2a)^3+b^3\\
=\underline{ 8a^3+b^3 }\)
(6)
\(\hspace{10pt}(3x+y)(9x^2-3xy+y^2)\\
=(\color{red}{3x}+\color{blue}{y})\left\{(\color{red}{3x})^2-(\color{red}{3x})(\color{blue}{y})+(\color{blue}{y})^2\right\}\\
=(3x)^3+y^3\\
=\underline{ 27x^3+y^3 }\)
(7)
\(\hspace{4pt}(x-2y)(x^2+2xy+4y^2)\\
=(\color{red}{x}-\color{blue}{2y})\left\{(\color{red}{x})^2+(\color{red}{x})(\color{blue}{2y})+(\color{blue}{2y})^2\right\}\\
=x^3-(2y)^3\\
=\underline{ x^3-8y^3 }\)
(8)
\(\hspace{10pt}(2a-y)(4a^2+2ay+y^2)\\
=(\color{red}{2a}-\color{blue}{y})\left\{(\color{red}{2a})^2+(\color{red}{2a})(\color{blue}{y})+(\color{blue}{y})^2\right\}\\
=(2a)^3-y^3\\
=\underline{ 8a^3-y^3 }\)
気がつけば一気に答えなので便利な公式ではありますが、
展開よりは因数分解で活用する公式です。
その他の展開公式と応用問題
展開公式は\(\,①\,\)\(\,②\,\)だけではありません。
展開の逆演算が因数分解なので、因数分解の数だけ展開公式があります。
因数分解の公式の一覧は別のページにありますので、
ここでは展開の練習問題に集中します。
展開は分配法則を用いて必ず計算できるので、
覚える必要は無いといえばそれまでです。
しかし、計算順序を工夫することや公式を利用することで、
展開がずいぶん楽になることがあるので練習しておきましょう。
公式を利用する展開の応用問題
公式\(\,①\,\)\(\,②\,\)に加え
\(\hspace{4pt}\color{red}{(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca}\)
は覚えているものとして進めます。
(1)\(\hspace{4pt}(2a-b+3)^2\)
(2)\(\hspace{4pt}(x-y)(x+y)(x^2+y^2)(x^4+y^4)\)
(3)\(\hspace{4pt}(a+3)^2(a^2-3a+9)^2\)
(4)\(\hspace{4pt}(x-y)(x+y)(x^2+xy+y^2)(x^2-xy+y^2)\)
(5)\(\hspace{4pt}(a+2b-3c-4d)(a-2b-3c+4d)\)
(6)\(\hspace{4pt}(x+2)(x-3)(x-4)(x-9)\)
(7)\(\hspace{4pt}(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)\)
(8)\(\hspace{4pt}(a+b+c)^3-(-a+b+c)^3\\
\hspace{20pt}-(a-b+c)^3-(a+b-c)^3\)
展開の順序によって時間が大きく変わる問題です。
(1)
\(\hspace{4pt}(2a-b+3)^2\)
公式に当てはめましょう。
\(\hspace{10pt}(2a-b+3)^2\\
=\left\{(\color{red}{2a})+(\color{blue}{-b})+(\color{magenta}{3})\right\}^2\\
=(\color{red}{2a})^2+(\color{blue}{-b})^2+(\color{magenta}{3})^2+2(\color{red}{2a})(\color{blue}{-b})+2(\color{blue}{-b})(\color{magenta}{3})+2(\color{magenta}{3})(\color{red}{2a})\\
=4a^2+b^2+9-4ab-6b+12a\\
=\underline{ 4a^2-4ab+b^2+12a-6b+9 }\)
慣れれば\(\,2,3\,\)行目は必要ありません。
(2)
\(\hspace{10pt}(x-y)(x+y)(x^2+y^2)(x^4+y^4)\\
=(x^2-y^2)(x^2+y^2)(x^4+y^4)\\
=(x^4-y^4)(x^4+y^4)\\
=\underline{ x^8-y^8 }\)
和と差の積
\(\hspace{4pt}(a+b)(a-b)=a^2-b^2\,\)
を左から順に繰り返しています。
(3)
\(\hspace{10pt}(a+3)^2(a^2-3a+9)^2\\
=\left\{(a+3)(a^2-3a+9)\right\}^2\\
=(a^3+3^3)^2\\
=a^6+2\cdot a^3\cdot 27+27^2\\
=\underline{ a^6+54a^3+729 }\)
\(\,2,3\,\)行目の展開を思いつかないと大変な計算が待っています。
\(\hspace{4pt}a^2\,b^2=(a\,b)^2\)
です。
地道に展開することを要求されるような算数は数学の問題では少ないです。
(4)
\(\hspace{10pt}\color{red}{(x-y)}\color{blue}{(x+y)}\color{red}{(x^2+xy+y^2)}\color{blue}{(x^2-xy+y^2)}\\
=\color{red}{(x-y)(x^2+xy+y^2)}\color{blue}{(x+y)(x^2-xy+y^2)}\\
=(x^3-y^3)(x^3+y^3)\\
=\underline{ x^6-y^6 }\)
順番を入れかえただけで展開公式がうまく使えます。
(5)
\(\hspace{10pt}(a+2b-3c-4d)(a-2b-3c+4d)\\
=\left\{(\color{red}{a-3c})+(\color{blue}{2b-4d})\right\}\left\{(\color{red}{a-3c})-(\color{blue}{2b-4d})\right\}\\
=(\color{red}{a-3c})^2-(\color{blue}{2b-4d})^2\\
=a^2-6ac+9c^2-(4b^2-16bd+16d^2)\\
=a^2-6ac+9c^2-4b^2+16bd-16d^2\\
=\underline{ a^2-4b^2+9c^2-16d^2-6ac+16bd }\)
\(\,2\,\)行目の和と差の積に変形するところがポイントです。
特に右の因数の「マイナスでくくって(かっこ)の中を同じにする」というのはよく使います。
(6)
\(\hspace{10pt}\color{red}{(x+2)}\color{blue}{(x-3)(x-4)}\color{red}{(x-9)}\\
=(\color{magenta}{x^2-7x}-18)(\color{magenta}{x^2-7x}+12)\\
=(\color{magenta}{x^2-7x})^2-6(\color{magenta}{x^2-7x})-216\\
=x^4-14x^3+49x^2-6x^2+42x-216\\
=\underline{ x^4-14x^3+43x^2+42x-216 }\)
これは同じ部分ができるように組合わせて展開します。
どれとどれを組合わせれば同じ部分ができるか試すしかありません。
(7)
\(\hspace{10pt}(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)\\
=\color{red}{-}(a+b+c)(\color{red}{a-b-c})(a-b+c)(a+b-c)\\
=-\left\{a+(\color{blue}{b+c})\right\}\left\{a-(\color{blue}{b+c})\right\}\left\{a-(\color{magenta}{b-c})\right\}\left\{a+(\color{magenta}{b-c})\right\}\\
=-\left\{a^2-(\color{blue}{b+c})^2\right\}\left\{a^2-(\color{magenta}{b-c})^2\right\}\)
どの文字でも良いのですが、
\(\,a\,\)についての係数を全て正として、
和と差の積を利用して展開を試みました。
これをこのまま展開すると
\(\hspace{10pt}-\left\{a^2-(\color{blue}{b+c})^2\right\}\left\{a^2-(\color{magenta}{b-c})^2\right\}\\
=-\left\{a^4-2(b^2+c^2)a^2+(b^2-c^2)^2\right\}\)
となります。
ここまでできるようになると良いですが、
かなりの練習を積まないと難しいでしょう。
そこで
\(\,\color{blue}{b+c}=\mathrm{\color{blue}{A}}\,,\,\color{magenta}{b-c}=\mathrm{\color{magenta}{B}}\,\)
とでもおいて展開してみましょう。
\(\hspace{10pt}-\left\{a^2-(\color{blue}{b+c})^2\right\}\left\{a^2-(\color{magenta}{b-c})^2\right\}\\
=-(a^2-\color{blue}{\mathrm{A}}^2)(a^2-\color{magenta}{\mathrm{B}}^2)\\
=-\left\{a^4-(\mathrm{\color{blue}{A}^2+\color{magenta}{B}^2})a^2+\mathrm{\color{blue}{A}^2\color{magenta}{B}^2}\right\}\)
ここで部分的に計算します。
\(\hspace{10pt}\mathrm{\color{blue}{A}^2+\color{magenta}{B}^2}\\
=(\color{blue}{b+c})^2+(\color{magenta}{b-c})^2\\
=b^2+2bc+c^2+b^2-2bc+c^2\\
=2b^2+2c^2\)
\(\hspace{10pt}\mathrm{\color{blue}{A}^2\color{magenta}{B}^2}\\
=(b+c)^2(b-c)^2\\
=(b^2-c^2)^2\)
これを与式にもどすと
\(\hspace{10pt}-\left\{a^2-(\color{blue}{b+c})^2\right\}\left\{a^2-(\color{magenta}{b-c})^2\right\}\\
=-\left\{a^4-2(b^2+c^2)a^2+(b^2-c^2)^2\right\}\\
=-a^4+2(b^+c^2)a^2-(b^2-c^2)^2\\
=-a^4+2b^2a^2+2c^2a^2-(b^4-2b^2c^2+c^4)\\
=\underline{ -a^4-b^4-c^42a^2b^2+2b^2c^2+2c^2a^2 }\)
展開をやり始めた頃であれば計算量が多いと感じるかもしれませんが、
これくらいの文字処理はできておいた方が良いですよ。
今の内にこれが通常だと感じるほど練習できていれば、
数学の成績は普通以上にはなれます。
文字式の処理能力は、計算スピードと勘違いされるくらい大切なのです。
次は\(\,3\,\)通りの計算方法で処理してみます。
(8)
\(\hspace{10pt}(a+b+c)^3\underline{\color{red}{-(-a+b+c)^3}}\\
\hspace{20pt}\color{blue}{-(a-b+c)^3}\color{magenta}{-(a+b-c)^3}\\
=(a+b+c)^3\underline{\color{red}{+(a-b-c)^3}}\\
\hspace{20pt}\color{blue}{-(a-b+c)^3}\color{magenta}{-(a+b-c)^3}\\
=\left\{a+(b+c)^3\right\}\color{red}{+\left\{a-(b+c)\right\}^3}\\
\hspace{20pt}\color{blue}{-\left\{a-(b-c)\right\}^3}\color{magenta}{-\left\{a+(b-c)\right\}^3}\\
=a^3+3a^2(b+c)+3a(b+c)^2+(b+c)^3\\
\hspace{4pt}\color{red}{+a^3-3a^2(b+c)+3a(b+c)^2-(b+c)^3}\\
\hspace{4pt}\color{blue}{-\left\{a^3-3a^2(b-c)+3a(b-c)^2-(b-c)^3\right\}}\\
\hspace{4pt}\color{magenta}{-\left\{a^3+3a^2(b-c)+3a(b-c)^2+(b-c)^3\right\}}\\
=a^3+3a^2(b+c)+\color{black}{\fbox{\(\,3a(b+c)^2\,\)}}+(b+c)^3\\
\hspace{4pt}\color{red}{+a^3-3a^2(b+c)+\color{red}{\fbox{\(\,3a(b+c)^2\,\)}}-(b+c)^3}\\
\hspace{4pt}\color{blue}{-a^3+3a^2(b-c)-\color{blue}{\fbox{\(\,3a(b-c)^2\,\)}}+(b-c)^3}\\
\hspace{4pt}\color{magenta}{-a^3-3a^2(b-c)-\color{magenta}{\fbox{\(\,3a(b-c)^2\,\)}}-(b-c)^3}\\
=6a(b+c)^2-6a(b-c)^2\\
=6a\left\{(b^2+2bc+c^2)-(b^2-2bc+c^2)\right\}\\
=\underline{ 24abc }\)
展開すると残る項は4つだけだと気がつくのは展開した後です。
ながめているだけでは何も変わりません。
または、
\(\hspace{10pt}(a+b+c)^3-\color{red}{(-a+b+c)^3}\\
\hspace{20pt}\color{blue}{-(a-b+c)^3}\color{magenta}{-(a+b-c)^3}\\
=\left\{(b+c)+a\right\}^3-\color{red}{\left\{(b+c)-a\right\}^3}\\
\hspace{20pt}-\color{blue}{\left\{a-(b-c)\right\}^3}-\color{magenta}{\left\{a+(b-c)^3\right\}}\)
先ほどのようにこのまま展開しても良いです。
ちょっとした展開公式の組み合わせを考えて見ましょう。
\(\hspace{10pt}(x+y)^3+(x-y)^3\\
=(x^3+3x^2y+3xy^2+y^3)\\
\hspace{6pt}+(x^3-3x^2y+3xy^2-y^3)\\
=2x^3+6xy^2\)
\(\hspace{10pt}(x+y)^3-(x-y)^3\\
=(x^3+3x^2y+3xy^2+y^3)\\
\hspace{6pt}-(x^3-3x^2y+3xy^2-y^3)\\
=6x^2y+2y^3\)
これを利用すると
\(\hspace{10pt}\left\{(b+c)+a\right\}^3-\color{red}{\left\{(b+c)-a\right\}^3}\\
\hspace{20pt}-\color{blue}{\left\{a-(b-c)\right\}^3}-\color{magenta}{\left\{a+(b-c)^3\right\}}\\
=\left\{(b+c)+a\right\}^3-\color{red}{\left\{(b+c)-a\right\}^3}\\
\hspace{20pt}-\left[\color{blue}{\left\{a-(b-c)\right\}^3}+\color{magenta}{\left\{a+(b-c)^3\right\}}\right]\\
=\left\{6(b+c)^2a+2a^3\right\}-\left\{2a^3+6a(b-c)^2\right\}\\
=6a(b+c)^2-6a(b-c)^2\\
=6a\left\{(b+c)^2-(b-c)^2\right\}\\
=6a(b^2+2bc+c^2-b^2+2bc-c^2)\\
=\underline{ 24abc }\)
自力でここまでできれば展開は十分です。
ただ、いろいろな変形をしている途中で気がついた人がいるかもしれませんが、
第\(\,2\,\)項以降の(かっこ)の中を
\(\,\mathrm{A}=-a+b+c\,\)
\(\,\mathrm{B}=a-b+c\,\)
\(\,\mathrm{C}=a+b-c\,\)
とおくと
\(\,\mathrm{A+B+C}=a+b+c\,\)
なので、与式は
\(\hspace{10pt}\mathrm{(A+B+C)^3-A^3-B^3-C^3}\\
=\mathrm{(A+B)^3+3(A+B)^2C+3(A+B)C^2+C^3}\\
\hspace{10pt}\mathrm{-A^3-B^3-C^3}\\
=\mathrm{3A^2B+3AB^2+3(A+B)^2C+3(A+B)C^2}\\
=\mathrm{3AB(A+B)+3(A+B)^2C+3(A+B)C^2}\\
=3\mathrm{(A+B)\{AB+(A+B)C+C^2\}}\\
=3\mathrm{(A+B)(B+C)(C+A)}\\
=3\cdot 2c\cdot 2a\cdot 2b\\
=\underline{ 24abc }\)
のように
\(\hspace{10pt}(x+y+z)^3-x^3-y^3-z^3\\
=3(x+y)(y+z)(z+x)\)
を使うこともできます。
この因数分解公式は覚えているものではないのでなかなか使えないですけど、
(8)は結果まで自分で出せれば確実に文字式の処理力は上がっています。
因数分解の練習問題は多くなるので分けることにしました。
数学\(\,Ⅰ\,\)からの展開の確認です。
数学\(\,Ⅱ\,\)の範囲の展開も入れてありますが、数学\(\,Ⅱ\,\)に回すほどのことでもありません。
⇒ 式と証明の要点
数学\(\,Ⅱ\,\)の式と証明のまとめです。
全体を見通しながら総復習しておきましょう。