3次方程式は複素数の範囲で3つの解を持ちます。実数解を必ず1つは持ちますが、虚数解を持つ場合は虚数解2つ、実数解1つとなります。
その虚数解のうちの1つが問題に与えられ、方程式の係数を求める問題がよくでますが方法がいくつかありますので紹介しておきます。

方程式は関数とグラフを合わせて考えた方が早い場合が多いですが、
虚数解を持つ場合はグラフ上で表せないので違ってきます。

3次方程式が複素数の解を持つとき

例題を見ておきましょう。

例題
 \( x\) の3次方程式
 \( x^3-x^2+ax+b=0\)
の解の1つが \( 2+i\) であるとき、
実数の係数 \( a\,,\,b\) の値を求めよ。

この手の問題には「他の解を求めよ」はセットでついてくるのですが、
何度も同じ答を書いても意味が無いので今回は省いています。
解説の中で一度は求めておきます。

さて、
パッと思いつくだけでもいくつか解法が思い浮かびますが、
教科書的には「代入法」でしょうか。

代入法

「解」は方程式に代入してなり立つものなので、
 \( x=2+i\) を方程式 \( x^3-x^2+ax+b=0\) に代入してしまいましょう。

 \(\hspace{10pt} (2+i)^3-(2+i)^2+a(2+i)+b=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (8+12i+6i^2+i^3)-(4+4i+i^2)+a(2+i)+b=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (2+11i)-(3+4i)+a(2+i)+b=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (2a+b-1)+(a+7)i=0\)

\(\color{red}{\fbox{複素数の相等定理}}\)
 \( a+bi=0 \hspace{7pt}\Leftrightarrow \hspace{10pt} a=b=0\)
によって実数 \( a\,,\,b\) の関係式は

 \( \begin{cases}
\hspace{5pt} 2a+b-1=0 \\
\hspace{5pt} a+7=0
\end{cases}\)

これを解いて、\( \underline{a=-7\,,\,b=15}\)

ここで他の解も求めておきましょう。

 \( a=-7\,,\,b=15\) のとき、
元の方程式 \( x^3-x^2+ax+b=0\) は、

 \(\hspace{10pt} x^3-x^2-7x+15=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (x+3)(x^2-4x+5)=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} x=-3\,,\,2\pm i\)

これから他の解は \( \underline{-3\,,\,2-i}\)
と因数定理を使って求めることができます。

しかし、この因数定理を使うやり方は因数分解しなくてはならない分だけ余計です。

第1の手法では代入法に複素数の相等定理を使いましたが、
次はもう一つの定理を使って見ましょう。

共役複素数と解と係数の関係を使った解法

[定理]
 \( x\) の3次方程式 \( x^3+ax^2+bx+c=0\) の係数がすべて実数であり、
 \( p\,,\,q\) を実数として複素数 \( \alpha=p+qi\) が解であるなら、
 \( \alpha\) の共役複素数 \( \overline{\alpha}=p-qi\) も解である。 

⇒ 解と係数の関係 2次方程式と3次方程式
でも少し説明していますので確認しておいてください。
使って良いです。

簡単にいうと、\( x^3-x^2+ax+b=0\) において
 \( x=2+i\) が方程式の解なら \( x=2-i\) も解だということです。

これで3つの解のうち2つが分かりました。

三つ目の解を \( \alpha\) とすると解と係数の関係から

 \(\begin{cases}
\hspace{5pt} (2+i)+(2-i)+\alpha=1\\
\hspace{5pt} (2+i)(2-i)+(2-i)\alpha+\alpha(2+i)=a\\
\hspace{5pt} (2+i)(2-i)\alpha=-b
\end{cases}\)

第1の式から \( \alpha=-3\) が求まり、
これを第2、第3の式に代入して \( \underline{a=-7\hspace{5pt},\hspace{5pt}b=15}\)

解を直接代入する方法よりは随分すっきりします。
定理は成り立つから定理なんです。
バンバン使って良いですよ。

無理数や虚数を含んだ方程式の解をあつかうときのおすすめ手法

常套手段(じょうとうしゅだん)、つまりおきまりパターンです。
おきまりといっても教科書や参考書が勧めているのではなく、筆者だけがいっていることですが、、、。w

 \( x=2+i\) というように無理数や虚数を含んだ解や関係式があれば、
無理数や虚数部分を消すように移項して2乗する
何も考えずこれをやるんです。笑笑

これはこの問題だけではなく2次方程式でも活躍してくれる手法で、
何か難しいことを考えなくても良いところが筆者のような凡人には向いています。

この場合、\( x=2+i \hspace{5pt}\Leftrightarrow x-2=i\) と移項して、両辺を2乗します。

 \(\begin{eqnarray} (x-2)^2&=&i^2 \\
x^2-4x+4&=&-1\\
x^2-4x+5&=&0
\end{eqnarray}\)

この方程式は \( x=2+i\,,\,2-i\) を解に持ちます。

このことから、
3次方程式 \( x^3-x^2+ax+b=0\) の左辺は

 \(\color{red}{ x^2-4x+5 を因数に持ちます。}\) ・・・①

残りの因数を \( x^3\) の項の係数が1であることから
 \( x-\alpha\) とすると \( \alpha\) は三つ目の解で

 \( (x^2-4x+5)(x-\alpha)=0\)

この方程式は \( x^3-x^2+ax+b=0\) と同じものなので係数を比較します。

 \(\hspace{10pt} (x^2-4x+5)(x-\alpha)\\ \\
=x^3-(\alpha+4)x^2+(4\alpha+5)x-5\alpha\\ \\
=x^3\hspace{30pt} -x^2\hspace{30pt}+ax\hspace{20pt}+b\)

だから

 \(\hspace{10pt} \begin{cases}
\hspace{5pt} \alpha+4=1\\
\hspace{5pt} 4\alpha+5=a\\
\hspace{5pt} 5\alpha=-b
\end{cases}\)

よって
 \( \underline{\alpha=-3\hspace{5pt},\hspace{5pt}a=-7\hspace{5pt},\hspace{5pt}b=15}\)

①を利用すると割算をすることによって解くこともできます。

整式の割り算を利用する方法

 \( x^3-x^2+ax+b\) を \(x^2-4x+5\) で実際に割り算すると
商が \( (x+3)\) 余りが \( (a+7)x+(b-15)\) となるので

 \(\hspace{10pt} x^3-x^2+ax+b\\ \\
=(x^2-4x+5)(x+3)+(a+7)x+(b-15)\)

ここで左辺は \( x^2-4x+5\) で割り切れるはずなので、
(余りが\(\,0\,\)になります。)

 \(\hspace{10pt} a+7=0\hspace{5pt},\hspace{5pt}b-15=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{10pt} \underline{a=-7\hspace{5pt},\hspace{5pt}b=15}\)

他の解を求めなくて良いならここまでです。
 \( (x+3)=0\) から他の解は出てきます。

ここの割り算は自分でやって見た方が良いですよ。
センター試験とかはこの割算大好きですからね。
基本中の基本ですから共通テストになっても変わらないのではないでしょうか。

⇒ 高次式の割り算のやり方と値を求める方法

と、いろいろな方法があります。
どれでも使えるようになっておくことが引き出しの数を増やし、
得点を安定させてくれるのですが、
試験中に迷うくらいならどれかで突っ走って良いですよ。
大した時間の差にはなりません。

マーク試験で誘導がある場合は誘導に乗れば良いだけです。

⇒ 複素数と方程式の要点

おさえておくべき基本は他にもたくさんあります。