ベクトルの問題で良く出てくるのが大きさから内積、最大値、最小値に続く問題です。
特にセンター試験では良く出題されていて、ベクトルの性質の定着を確認する共通テストでも聞かれないことは先ずありません。
ボリュームのある計算を含んでいたりするので、
ベクトルの基本としてしっかり取り組んでおくといいでしょう。
ベクトルの大きさ
「ベクトルの大きさって何?」
という状態では少し基本の基本である数学の単語が足りていないようですが、
簡単に言うと
\(\hspace{10pt} |\,\vec{a}+3\,t \,\vec{b}\,|\)
のように| |でくくられたベクトルのことです。
ベクトルの大きさは線分の長さということも出来ます。
図形問題として図形上での長さを扱うより、
ベクトルを利用すれば、線分の長さの求め方としては便利なので活用したいところです。
ここで \(\,-\vec{a}\,\) のように
「 -のベクトルの長さってあるの?」
と疑問が出てこないとも限りませんので説明しておくと、
\( \color{red}{ ベクトルの「-」は、\\
方向が逆というだけで \vec{a} と大きさは同じです。}\)
まあ、絶対値\(\,|\,-5\,|\,\)は\(\,5\,\)となることと同じだと思っていて良いです。
これも原点からの距離という絶対値の定義から考えればすぐわかることですが、
ベクトルでも「始点から終点までの距離」とみれば同じことが言えると理解しておいて下さい。
ベクトルが成分で表されているときの大きさ
ベクトルが成分表示されているときの始点は原点と考えて良いです。
このとき表された \((\,x\,,\,y\,)\) 座標が終点です。
ベクトル \(\vec{a}=(\,x\,,\,y\,)\) の大きさは
\(\hspace{10pt}\large{\color{red}{|\vec{a}|=\sqrt{x^2+y^2}}}\)
空間ベクトルは成分が1つ増えて、
ベクトル \(\vec{a}=(\,x\,,\,y\,,\,z\,)\) の大きさは
\(\hspace{10pt}\large{\color{red}{|\vec{a}|=\sqrt{x^2+y^2+z^2}}}\)
と二点間の距離を表す式と同じ形です。
ベクトルの大きさを見たらやるべきこと
後で例題を交えて説明しますが、
\(\hspace{10pt}\large{\color{red}{ \hspace{7pt}ベクトルの大きさを見たら2乗する}}\)
というのを基本作業にしておきましょう。
何故2乗するのか?
そんなこと考える前に2乗する、
そうすれば見ていない次にやるべきことが見えてくるようになりますから、
理論的にどうのこうのより先ずは2乗してみて下さい。
「訳もわからず2乗するなんて出来ない」
という人は自分で好きなようにやってもらって良いですが、
先ずベクトルでの得点はあきらめた方が良いです。
あり得ませんが、大きさや内積が出ないことを願っていて下さい。w
ある程度ベクトルになれてきたら、もう一度定義、定理に戻って見てください。
少しは\(\,2\,\)乗する理由が分かってきているでしょう。
それでは簡単な例題の中で説明します。
(空間ベクトルで申し訳ないけど。)
\(\hspace{7pt} |\,\vec{a}-t \vec{b}\,|\) を最小にする\(\,t\,\)を求めよ。
ベクトルで \(\,|\vec{a}-t \vec{b}|\,\) などを見たらとにかく2乗して下さい。
対称式・交代式でも同じように2乗することがありましたが、
大きさ(絶対値)については一旦2乗する、
という作業は四の五の言わず実行することをお勧めします。
理由も何も、実際それで片付く問題が圧倒的に多いからです。
意味は後からでもついてきます。
先ずは得点出来るようになって、
自信を持って数学に取り組めるようになってからで構いません。
私は数学者でも何でもないので(科学者だけど)堅いことは言いません。w
共通テスト、センター対策でも同じことを言います。
それが過去にずっと問われているという事実があるからでもあるけど、
共通テストやセンター試験に限らず、ベクトルの基本的なことだからですよ。
成分(座標)で与えられても、
矢印(アローベクトル)として図形がらみで出題されても、
後に出てくる「内積」と合わせて2乗することは忘れないで下さいね。
『ベクトル』「大きさ」「最大」「最小」 ⇒ 2乗
です。
そうすれば後は条件が与えられているのでそれを使うだけ、となりますよ。
では、実際2乗してみましょう。
\(\hspace{10pt} |\,\vec{a}-t \,\vec{b}\,|^2\\
= |\,\vec{a}\,|^2 – 2\,t\, \vec{a} \cdot \vec{b} + t^2\, |\,\vec{b}\,|^2\)
すると、
\(\hspace{10pt} \vec{a} = (\,0\,,\,2\,,\,4\,)\hspace{7pt},\hspace{7pt}\vec{b} = (\,1\,,\,0\,,\,1\,)\)
という条件があるので、
\(\hspace{10pt} |\,\vec{a}\,|^2 \,= 0^2 + 2^2 + 4^2 \,= 20\)
\(\hspace{10pt} \vec{a} \cdot \vec{b} = 0\cdot 1 + 2\cdot 0 + 4\cdot 1 = 8\)
\(\hspace{10pt} |\,\vec{b}\,|^2\, = 1^2 + 0^2 + 1^2 \,= 2\)
これらから、
\(\hspace{10pt} |\,\vec{a}-t\,\vec{b}\,|^2 \,= 2t^2 -8t + 20\)
となります。
これはもう2次関数の最小問題になっていますので、
『平方完成』 ⇒ 『頂点が最小』
ですね。
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
|\,\vec{a}-t\,\vec{b}\,|^2 \,&=& 2t^2 -8t + 20\\
&=&2(t^2-4t)+20\\
&=&2(t-2)^2-8+20\\
&=&2(t-2)^2+12
\end{eqnarray}\)
これから\(\,t = 2\,\)のとき最小値\(\,12\,\)となりますが、
これは2乗したものの最小値です。
絶対値のついた大きさだから正の平方根をとれば良いだけなので、
\(\hspace{10pt} t = 2 のとき最小値 \underline{ \sqrt{12} }\)
ところで、
\(\hspace{10pt} |\,\vec{a}-t \,\vec{b}\,|^2\\
=|\,\vec{a}\,|^2 – 2t\,\vec{a} \cdot \vec{b} + t^2 \,|\,\vec{b}\,|^2\)
を計算するときですが、
\(\hspace{10pt} \vec{a}-t \vec{b} \\
= ( \,0\,,\,2\,,\,4\,)- t\,(\,1\,,\, 0\,,\, 1\,)\\
=(\,-t\,,\,2\,,\,4-t\,)\)
と中(成分)を先に計算して、
\(\hspace{10pt} |\,\vec{a}-t \vec{b}\,|^2\\
= (-t)^2 + 2^2 + (4-t)^2\\
= 2t^2 – 8t + 20\)
のように単にベクトルの大きさの2乗を成分で計算しても同じですね。
どちらでも構いません。
ベクトルの内積の定義と定理の確認
試験前の確認です。
やることが多いからか忘れている人が多いですので確認しておきましょう。
ベクトルの内積の定義は、
\(\hspace{10pt}\Large{\color{red}{ \vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| \cdot |\vec{b}| \cos \theta}} \)
各ベクトルの成分が、
\(\hspace{10pt}\vec{a} = (x_1, y_1, z_1) , \vec{a} = (x_2, y_2, z_2)\)
と与えられているときの定理として、
\(\hspace{10pt}\Large{\color{red}{ \vec{a} \cdot \vec{b} = x_1\cdot x_2 + y_1\cdot y_2 + z_1\cdot z_2}} \)
の2つがあります。
連立することで解決する問題も多いので必ず覚えておきましょう。
まとめ
ベクトルは覚える事は多いようで少ないです。
(要点が多いのは新しい概念として登場するからです。)
でも応用範囲は広いのでぜひ使いこなせるようになっておきましょう。
ベクトルの基本(平行編)でもお伝えしたように、
「始点をそろえる。」
ことや今回の様に、
「大きさを見たら2乗する。」
など基本的なことをやれば、それほどややこしい事をするわけではありません。
まだ基本が少し残っていますが、
少なくともこれらの基本をしっかりやれるようにはなっておきたいですね。
内積はベクトルには必ずついてきます。
注意点もあるので確認しておきましょう。
もちろん、平面ベクトルの定義、定理の確認が先ですよ。