平面ベクトル、空間ベクトル、どちらの問題でも外せないのは内積とその際に必要になる2つのベクトルのなす角度です。
もちろんベクトルの大きさを求められることはその前提です。
面積を求める際にも大切になるので定義や定理を利用する基本的なことを確認しておきましょう。


ベクトルでは外せない内積と大きさ

共通テストやセンター試験の数学\(\,\mathrm{ⅡB}\,\)では選択問題となるベクトルですが、ほとんどの受験生はベクトルを選択することになるでしょう。
統計はほとんどの高校でも履修しないので必然的に、数列、ベクトルを選択することになるからですね。
だとしたら、大きさを求めることと内積を求められることは必須です。

ベクトルの内積 定義と定理となす角

ベクトルの内積の定義、定理をもう一度確認しておきます。

ベクトル \(\vec{a}\) と \(\vec{b}\) のなす角を \( \theta\) とすると

 \(\hspace{10pt}\color{red}{ \vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| \cdot |\vec{b}| \cos \theta}\) ・・・①

これが平面ベクトルと空間ベクトル共通の内積の定義です。

空間座標が
 \(\hspace{10pt} \vec{a} = (x_1\,,\, y_1\,,\, z_1) \)
 \(\hspace{10pt} \vec{a} = (x_2\,,\, y_2\,,\, z_2)\)
と与えられた場合、

 \(\hspace{10pt}\color{red}{  \vec{a} \cdot \vec{b} = x_1\cdot x_2 + y_1\cdot y_2 + z_1\cdot z_2}\) ・・・②

という定理が成り立ちます。

内積\(\,\vec{a} \color{red}{\cdot} \vec{b}\,\)で使う「\(\,\color{red}{\cdot}\,\)」と、
掛け算\(\, x_1\color{blue}{\cdot} x_2\,\)として使う「\(\,\color{blue}{\cdot}\,\)」は意味が違いますよ。

平面の場合は、\(z\) 成分がなくなるだけなので形は同じです。

 \(\hspace{10pt}\color{red}{\vec{a} \cdot \vec{b} = x_1\cdot x_2 + y_1\cdot y_2}\)

これらをどのように使うかを例題を通して見てみましょう。

内積の定義と定理の連立

例題
 ベクトル \( \vec{p} = (1\,,\,0\,,\,1)\) と \( \vec{q} = (1\,,\,1\,,\,0)\) とのなす角を求めよ。

前の記事で説明を補足しておいたので、ここは問題ないでしょう。

⇒ ベクトルの大きさと内積の注意点

上の内積の定義①と定理②を連立すれば良いのです。

わかることを求めておくと、

 \(\hspace{10pt} \vec{a} = (x_1\,,\, y_1\,,\, z_1)\)

の大きさは

 \(\hspace{10pt} |\vec{a}| = \sqrt{x_1^2 + y_1^2 + z_1^2}\)

です。(忘れている人がたまに(多く?)います。)

 \( \vec{p} = (1,0,1)\) から
 \(\hspace{10pt} |\vec{p}| = \sqrt{1^2 + 0^2 +1^2} = \sqrt{2}\)

 \(\vec{q} = (1,1,0)\) から
 \(\hspace{10pt} |\vec{q}| = \sqrt{1^2 + 1^2 +0^2} = \sqrt{2}\)

また内積は定理②から

 \(\hspace{10pt} \vec{p} \cdot \vec{q} = 1\cdot 1 + 0\cdot 1 + 1\cdot 0 = 1 \)

と求めておくことが出来ます。

これらを \(\color{red}{ \vec{p} \cdot \vec{q} = |\vec{p}| \cdot |\vec{q}| \cos \theta}\) に代入すると、

 \(\hspace{10pt} 1 = \sqrt{2} \sqrt{2} \cos \theta \)

これを解くと、(解くというのは \( \theta \) を求めること)

 \( \displaystyle \cos \theta = \frac{1}{2}\) から \(\displaystyle \underline{ \theta = \frac{\pi}{3} }\)

ベクトルを利用した面積の求め方

ベクトルのなす角の求め方は上の例題のように、
定義と定理を連立することで求まります。

その際、\(  \cos \theta \) が求まっていますよね。

ということは
 \(\hspace{10pt}\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1 \)
から \( \sin \theta\) も求まります。

これを面積の公式

 \(\hspace{10pt}\color{red}{ \displaystyle S = \frac{1}{2} |\vec{p}||\vec{q}| \sin \theta} \)

に利用すれば面積が求まるんです。
これは三角比の問題と似たようなものなのですぐにわかるでしょう。

ただ、この問題に関してはなす角が有名角で出ていますので、
 \( \sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1 \)
を使う必要はありません。

 \(\displaystyle \theta = \frac{\pi}{3}\,\)なので\(\hspace{10pt}\displaystyle \sin \theta = \frac{\sqrt{3}}{2}\)
と簡単に出せますので、計算が楽ですね。

 \(\hspace{10pt}\displaystyle S = \frac{1}{2} |\vec{p}||\vec{q}| \sin \theta \)

 \(\hspace{10pt} |\vec{p}| = \sqrt{2}\,,\, |\vec{q}| = \sqrt{2}\,,,\,\displaystyle \sin \theta = \frac{\sqrt{3}}{2}\)
を代入して

 \(\hspace{10pt}\displaystyle S = \frac{1}{2}\cdot \sqrt{2}\cdot \sqrt{2}\cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{\sqrt{3}}{2}\)

これが普通の面積の求め方です。

実は \( \vec{p} = (1,0,1)\) と \( \vec{q} = (1,1,0)\) から、
ダイレクトに面積は求めることは出来るのですが、
高校の範囲ではなくなりますし、
基本が出来ていない受験生にとっては余計な情報になりますから控えます。

ただ、教科書の片隅?に記憶しておくと価値がある公式もあります。

⇒ ベクトルで表す面積の公式と内積との関係

共通テストよりちょっと数学の問題レベルが高い私立大学受験生向けかもしれません。
必要無いけど、覚えておく価値はある、という公式です。

断っておきますけど数学の問題レベルで大学のレベルが決まるわけではありません。
共通テスト以上に時間的にきびしい問題がずらりと並ぶ大学があるということです。

内積となす角や面積を求める方法まとめ

ベクトルの内積を利用した面積の求め方は、
三角形の面積を求める方法として1つ引き出しが増えることになります。

ここに上げた方法は基本ですが内積そのものを使って面積を求める公式などもあります。

基本となる

  • ベクトルの大きさ
  • 内積の定義と定理
  • 2つのベクトルのなす角

これらは素早く求められるようになっておきましょう。

なす角を求めるときは
 定義と定理の連立
ですね。

⇒ ベクトルの大きさと内積、最小値問題の基本

最大値最小値を求める場合、平方完成を使うことが多いですが2次関数を利用することは融合とはいいません。
どの分野でも使えて当たり前、の事実ですよ。

⇒ 平面ベクトルの要点

空間ベクトルでも平面ベクトルでも要点は同じです。