整式の因数分解は別のページでも説明していますがもう一度練習問題で確認しておきます。
タスキガケ因数分解は公式そのものを覚えても時間がかかって使えないものなので、何度も練習しておかないと意味がありません。
特殊な因数分解もあるので少し練習しておきましょう。

タスキガケ因数分解の練習問題

さっそく例題をあげて進めますが、解答を読むのではなく、メモ書きでも良いので自分で解いてみることをお勧めします。
人の解答を見て自分で「解いたつもり」になっているといつまで経っても力がつきませんよ。

置換することができる場合

例題
次の式を因数分解せよ。
(1)\( x^2+4xy+4y^2-2x-4y-3\)

 \((与式)\\
=(x^2+4xy+4y^2)-2(x+2y)-3\\
=(x+2y)^2-2(x+2y)-3\)

と前の3項が因数分解出来ると気がついて、
「\(\hspace{4pt} x+2y=A\hspace{4pt}\)」とでも一旦置けば、

 \((与式)\\
=A^2-2A-3\\
=(A-3)(A+1)\\
=(x+2y-3)(x+2y+1)\)

と因数分解出来ますが、これではいつでも通用するとは言えません。
(この解き方が悪いのではありません。)

因数分解の手順を思い出して下さい。

⇒ 高校の因数分解公式一覧 たすき掛けや手順(やり方)

 ①共通因数の抜き出し
 ②公式利用
 ③最低次数の文字で整理
 ④特殊な変形

が大まかな手順です。
特に③のタイプは計算力も必要としてくるので重要で、練習を重ねておいた方が良いですね。

この(1)では上のように因数分解出来ますが③のタイプに持ち込みます。

因数分解の手順通りで解く場合

計算力は不要でタスキガケの簡単なものとなっています。

 \((与式)\\
=x^2+(4y-2)x+4y^2-4y-3\\
=x^2+(4y-2)x+(2y-3)(2y+1)\)
(定数項をタスキガケ因数分解しました。)

このように最低次数について整理したとき、ほとんどの場合、
定数(と見なした)部分が因数分解出来るようになっています。

出来ないときはそのもの(定数部分全体)と1との積とみますがここではスルーしましょう。
続けます。

 \((与式)\\
=x^2+(4y-2)x+(2y-3)(2y+1)\\
=(x+2y-3)(x+2y+1)\)
(今度は全体でタスキガケ)

定数のタスキガケ因数分解は出来るものとして説明しています。
因数分解一覧のページに説明があるので参考にして下さい。
また、教科書や参考書などで基本的な問題を自分で練習しておいて下さい。

次に行きます。

例題
 次の式を因数分解せよ。
(2)\( x^2+xy-6y^2-x+7y-2\)

これは(1)と同じです。
\(\,A\,\)と置換できるようなところはないので、
(というよりあったとしても探す方が時間がかかる)

最低次数の文字について整理しましょう。

\(\hspace{4pt}x\hspace{4pt}\)も\(\hspace{4pt}y\hspace{4pt}\)も2次なのでどちらでも良いですが、
後のタスキガケを考えると、
係数が1の\(\hspace{4pt}x\hspace{4pt}\)について整理した方が計算が楽になります。

 \((与式)\\
=x^2+(y-1)x-6y^2+7y-2\\
=x^2+(y-1)x-(6y^2-7y+2)\\
=x^2+(y-1)x-(2y-1)(3y-2)\\
=\{x-(2y-1)\}\{x+(3y-29\}\\
=(x-2y+1)(x+3y-2)\)

「定数項のタスキガケ」→「全体のタスキガケ」です。
下から2行目の式は符号ミスを減らすためにも書いた方が良いですね。

ここは見るだけじゃなく、自分で出来るか実際に書いて確認しておいて下さい。
解答にたどり着くまでにもタスキガケなどの表に出てこない計算を、
別紙でしていることは理解しておいて下さい。
いきなり解答に行き着いているわけではありません

例題
次の式を因数分解せよ。
(3)\( 8x^3-y^3\)

 \(\hspace{4pt} 8x^3=(2x)^3\)
に気がつけば、公式
 \(\hspace{4pt} \color{red}{a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)}\)
が利用できます。

 \((与式)\\
=(2x)^3-y^3\\
=(2x-y)(4x^2+2xy+y^2)\)

後の項は整式としてこれ以上因数分解できませんのでここまでです。

因数分解は共通因数の抜き出しから

例題
次の式を因数分解せよ。
(4)\( 81x^3+192y^3\)

これは因数分解の最初にすべき共通因数の抜き出しからです。

共通因数\(\,3\,\)でくくれれば後は公式
 \(\hspace{10pt} \color{red}{a^3+b^3=(a+b)(a^2-ab+b^2)}\)
が利用できます。

 \((与式)\\
= 3(27x^3+64y^3)\\
=3\{(3x)^3+(4y)^3\}\\
=3(3x+4y)(9x^2-12xy+16y^2)\)

特殊な変形から公式利用する因数分解

例題
次の式を因数分解せよ。
(5)\( x^4+4\)

各項が偶関数だけで出来ていることから、
 \(\hspace{10pt} \color{red}{a^2-b^2=(a+b)(a-b)}\)
を利用出来る形に変形しますが、
この変形は記憶しておいて欲しいですね。

 \(\hspace{10pt} (x^2+2)^2\\
=x^4+4x^2+4\)
となるので\(\hspace{4pt}-4x^2\hspace{4pt}\)を加えて

 \((与式)\\
=(x^2+2)^2-4x^2\\
=(x^2+2)^2-(2x)^2\\
=(x^2+2+2x)(x^2+2-2x)\\
=(x^2+2x+2)(x^2-2x+2)\)

この変形ですが、
 \(\hspace{4pt} (x^2-2)^2\\
=x^4-4x^2+4\)
とすると\(\hspace{4pt}x^4+4\hspace{4pt}\)は出てきますが、
 \((与式)\\
=(x^2-2)^2+4x^2\)
となるので公式利用出来ません。

すぐに正解の変形はできないことがありますので、
いろいろと「実験」をして確認すると良いです。

例題
次の式を因数分解せよ。
(6)\( x^4+x^2+1\)

これも前問と同様ですが、\( x^4+1\) を出すために、
\(\hspace{4pt}(x^2+1)^2\hspace{4pt}\)か\(\hspace{4pt}(x^2-1)^2\hspace{4pt}\)と検討がつきますが、
 \(\hspace{10pt} x^4+x^2+1=(x^2+1)^2-x^2\)
または
 \(\hspace{10pt} x^4+x^2+1=(x^2-1)^2+3x^2\)
となるので、上の変形だと分かります。

 \((与式)\\
=(x^2+1)^2-x^2\\
=(x^2+x+1)(x^2-x+1)\)

例題
次の式を因数分解せよ。
(7)\( (x^2+7x+9)(x^2+7x+11)+1\)

あれこれ考えるより展開してという手もあるのですが、
算数をやっているわけではなく、
数学の問題は何か簡単になる方法が隠されているはずなんです。

 \( (x^2+7x)\) という共通部分を見つけて文字で一旦置き換えましょう。

 \(\hspace{10pt} x^2+7x=A\)
とおくと、(「置換する」といいます。)
 \((与式)\\
=(A+9)(A+11)+1\\
=A^2+20A+99+1\\
=A^2+20A+100\\
=(A+10)^2\)

置換した部分をもとに戻すと、(ここで終わらせたらかっこ悪い)
 \((与式)\\
=(x^2+7x+10)^2\\
=\{(x+2)(x+5)\}^2\\
=(x+2)^2(x+5)^2\)
(下から3行目の因数分解を忘れないように!)

例題
次の式を因数分解せよ。
(8)\( (x+1)(x+2)(x+9)(x+10)-180\)

これは(7)の形にしたいのですが展開順序によっては上手くいきません。

そこで展開の順序をいろいろ試して見ると、
 \( (x+1)(x+10)=x^2+11x+10\)
および
 \( (x+2)(x+9)=x^2+11x+18\)
とすれば\(\hspace{4pt}x^2+11x\hspace{4pt}\)が共通部分として出てきます。
後は前問と同じです。

 \((与式)\\
=(x^2+11x+10)(x^2+11x+18)-180\\
=(x^2+11x)^2+28(x^2+11x)+180-180\\
=(x^2+11x)(x^2+11x+28)\\
=x(x+11)(x+4)(x+7)\)

ここではわざと置換をやっていませんので変形がややこしく見えると思います。
この問題でも置換して確実に計算すると、式変形がすっきりします。

ここまで\(\hspace{4pt} x\,,\,y\hspace{4pt}\)の整式の範囲でできる因数分解を見てきましたが、
他の文字や文字数が多くなっても使える公式が増えるだけでやることは同じことです。

どの分野においても利用することになりますので、

⇒ 高校の因数分解公式一覧 たすき掛けや手順(やり方)

因数分解の手順はしっかり復習しておきましょう。

⇒ オイラーの分数式による因数分解の練習

これができれば因数分解はおおよそできる様になっていますのでチャレンジしてみてください。

⇒ 数と式(高校数学Ⅰ)の要点

数と式の基本は割と多いですが乗り切れば後が楽になります。
逆に、ここで手を抜くと後々きつくなりますよ。