オイラーの分数式自体に意味を持たせて理解しようというのではなく、
因数分解の練習をかねていくつか計算してみようというところです。
因数分解や式の処理を苦手にしている人は、この式を何度も計算することである程度までの計算処理ならできるようになりますよ。
オイラーの分数式とは
オイラーというのは人の名前ですが、
この名前がついた分数式があります。
\( F_n=\displaystyle \frac{a^n}{(a-b)(a-c)}+\displaystyle \frac{b^n}{(b-c)(b-a)}+\displaystyle \frac{c^n}{(c-a)(c-b)}\)
という通分するとややこしそうな分数です。
このオイラーの分数式の \(n\) に数値を変えて代入すると答えが変わりますが、
それをいくつか計算してみましょう。
ものすごく良い計算練習になりますよ。
n=0 のとき
\(a^0=b^0=c^0=1\) なので
\( F_0=\displaystyle \frac{a^0}{(a-b)(a-c)}+\displaystyle \frac{b^0}{(b-c)(b-a)}+\displaystyle \frac{c^0}{(c-a)(c-b)}\\ \\
=\displaystyle \frac{1}{(a-b)(a-c)}+\displaystyle \frac{1}{(b-c)(b-a)}+\displaystyle \frac{1}{(c-a)(c-b)}\)
(通分して分母を1つにすると)
\( =\displaystyle \frac{-(b-c)-(c-a)-(a-b)}{(a-b)(b-c)(c-a)}\\ \\
=\displaystyle \frac{-b+c-c+a-a+b}{(a-b)(b-c)(c-a)}\\ \\
=0\)
分子が0になり、\( F_0=0\) となります。
これは分母を通分するとき
\( (a-b)(b-c)(c-a)\)
とすることに慣れていれば分子が一次式ですべて消えるので簡単です。
n=1 のとき
\( F_1=\displaystyle \frac{a}{(a-b)(a-c)}+\displaystyle \frac{b}{(b-c)(b-a)}+\displaystyle \frac{c}{(c-a)(c-b)}\\ \\
=\displaystyle \frac{-a(b-c)-b(c-a)-c(a-b)}{(a-b)(b-c)(c-a)}\\ \\
=\displaystyle \frac{-ab+ac-bc+ab-ac+bc}{(a-b)(b-c)(c-a)}\\ \\=0\)
ここまで見て、「分母は同じ」ということに気がついたでしょうか?
そうなのです。
だから具体的な数値を入れる前に一般的に通分しておくと後の計算が楽になるのです。
\( F_n=\displaystyle \frac{a^n}{(a-b)(a-c)}+\displaystyle \frac{b^n}{(b-c)(b-a)}+\displaystyle \frac{c^n}{(c-a)(c-b)}\)
をこのまま通分してしまいましょう。
\( F_n=\displaystyle \frac{a^n}{(a-b)(a-c)}+\displaystyle \frac{b^n}{(b-c)(b-a)}+\displaystyle \frac{c^n}{(c-a)(c-b)}\\ \\
=\displaystyle \frac{-\{a^n(b-c)+b^n(c-a)+c^n(a-b)\}}{(a-b)(b-c)(c-a)}\)
分子の「-」(マイナス)が気にある人は、
中学の数学を一通りやり直した方が良いかもしれません。
分母の因数をそれぞれ
\( a-c=-(c-a),b-a=-(a-b),c-b=-(b-c)\)
と書き換えているのですべての項に(-)が出てきているのです。
通分した後の分子を \(\color{red}{f_n}\) としましょう。
\( f_n=-\{a^n(b-c)+b^n(c-a)+c^n(a-b)\}\)
これから \(n=0\,,\,1\) のときの分子計算をすると
\( f_0=-\{(b-c+(c-a)+(a-b)\}=0\)
\( f_1=-\{a(b-c)+b(c-a)+c(a-b)\}\\ \\
=-(ab-ac+bc-ab+ac-bc)=0\)
となるので
\( F_0=F_1=0\)
としても同じ結果です。
\( n=2\,,\,n=3\) までやっておきましょう。
ここまでやれば十分に力は着きます。
n=2 のとき
\( f_2=-\{a^2(b-c)+b^2(c-a)+c^2(a-b)\}\\ \\
=-\{(b-c)a^2-(b^2-c^2)a+(b^2c-bc^2)\}\\ \\
=-\{(b-c)a^2-(b+c)(b-c)a+bc(b-c)\}\\ \\
=-(b-c)\{a^2-(b+c)a+bc\}\\ \\
=-(b-c)(a-b)(a-c)\\ \\
=(a-b)(b-c)(c-a)\)
どう進めたかわかりますか?
\(a\) について整理したのです。
最低次数の文字で整理したいのですがどれも同じ次数です。
だからどれでも良いので \( a\) で整理したあと、
共通因数が出てきたので抜き出し、
タスキガケをして、最後に符号を調整した、ということです。
結果として
\( F_2=\displaystyle \frac{(a-b)(b-c)(c-a)}{(a-b)(b-c)(c-a)}=1\)
となります。
これは自分でできるようにならなければここで取り上げている意味はありません。
やって見てください。
n=3 のとき
(ここまではやっておきましょう)
\(f_3=-\{a^3(b-c)+b^3(c-a)+c^3(a-b)\}\\ \\
=-\{(b-c)\color{red}{a^3}-(b^3-c^3)\color{red}{a}+(b^3c-bc^3)\}\\ \\
=-\{(b-c)a^3-(b-c)(b^2+bc+c^2)a+bc(b^2-c^2)\}\\ \\
=-\{(b-c)a^3-(b-c)(b^2+bc+c^2)a+bc(b-c)(b+c)\}\\ \\
=-(b-c)\{a^3-(b^2+bc+c^2)a+bc(b+c)\}\)
ものすごく丁寧に変形しているのですが、
ここまではいいですか?
\( a\) について整理し、
共通因数を抜き出したところです。
次に{中括弧}の中を因数分解します。
次数が1番低いのは \( b\) か \( c\) なので \( b\) について整理します。
この切り替えが必要です。
\(f_3=-(b-c)\{a^3-(b^2+bc+c^2)a+bc(b+c)\}\\ \\
=-(b-c)(a^3-ab^2-abc-ac^2+b^2c+bc^2)\\ \\
=-(b-c)\{(c-a)\color{red}{b^2}+(c^2-ac)\color{red}{b}+a^3-ac^2)\}\\ \\
=-(b-c)\{(c-a)b^2+(c-a)cb+a(a^2-c^2)\}\\ \\
=-(b-c)\{(c-a)b^2+(c-a)cb-a(c^2-a^2)\}\\ \\
=-(b-c)\{(c-a)b^2+(c-a)cb-a(c-a)(c+a)\}\\ \\
=-(b-c)(c-a)\{b^2+cb-a(a+c)\}\)
ここはタスキガケでもできますが、
次数の最低文字にこだわると、
{中括弧}の中は \( c\) が最低次数になるので
\( f_3=-(b-c)(c-a)\{b^2+cb-a(a+c)\}\\ \\
=-(b-c)(c-a)(b^2+cb-a^2-ac)\\ \\
=-(b-c)(c-a)\{(b-a)\color{red}{c}+(b^2-a^2)\}\\ \\
=-(b-c)(c-a)\{(b-a)c+(b-a)(b+a)\}\\ \\
=-(b-c)(c-a)(b-a)(c+b+a)\\ \\
=(a-b)(b-c)(c-a)(a+b+c)\)
よって
\( F_3=\displaystyle \frac{(a-b)(b-c)(c-a)(a+b+c)}{(a-b)(b-c)(c-a)}\\ \\
=a+b+c\)
となります。
ものすごく丁寧に変形したつもりですが、
自分でやって見ないと単なる「ややこしい式」にしか見えないでしょう。
1行1行自分でやって見てください。
本当に良い計算練習になりますから。
もちろん、
因数分解の手順がわかっていなければ意味はありませんよ。
このページの計算がちんぷんかんぷんだという人は復習必須です。