交代式も対称式と同じように大切な項目です。
対称式についてはすでにまとめておきましたので、今回は交代式とは何か、から始めて式の値を求める方法を問題をあげて見ておきましょう。
式変形のやり方1つで答えまでの時間も変わりますので手順を見ておいて下さい。

交代式とは?

何度も出てきた用語なので簡単に済ませますが、
交代式とは文字式\(\,x^2-y^2\,\)において、
文字\(\,x\,\)と\(\,y\,\)を入れかえると、
 \(\hspace{10pt}y^2-x^2=\color{red}{-}(x^2-y^2)\)
のように、元の式と符号(\(\,\pm\,\))が変わる式のことをいます。

⇒ 数学Ⅰ式の変形 因数分解と対称式、基本対称式

2つの文字を入れかえても符号が変わらないのが対称式です。

2つの文字の交代式

例題1

次の式の値を求めよ。

 \(\displaystyle x-\frac{1}{x}=2\) のとき \(\displaystyle x^3-\frac{1}{x^3}\)

与式を変形すると、
 \(\hspace{10pt} x^3-\displaystyle \frac{1}{x^3}\\
=\left(x-\displaystyle \frac{1}{x}\right)^3+3x\cdot \displaystyle \frac{1}{x}\left(x-\displaystyle \frac{1}{x}\right)\)

となります。
これは、
 \(\hspace{10pt} x^3+y^3=(x+y)^3-3xy(x+y)\)
と同様の変形で、
 \(\hspace{10pt} x^3-y^3=(x-y)^3+3xy(x-y)\)
を利用しました。

 \(\color{red}{y\,を\,(\,-y\,)\,で置き換えたもの}\)
なので式の変形を覚えて下さい。

分数(逆数)では(\(\,y\,\)が\(\,x\,\)の逆数の形の条件式)では、
積\(\,xy\,\)部分が約分され定数になるところがポイントです。

 \(\hspace{10pt} x^3-\displaystyle \frac{1}{x^3}\\
=\left(x-\displaystyle \frac{1}{x}\right)^3+3x\cdot \displaystyle \frac{1}{x}\left(x-\displaystyle \frac{1}{x}\right)\\
=\left(x-\displaystyle \frac{1}{x}\right)^3+3\left(x-\displaystyle \frac{1}{x}\right)\\
=(2)^3+3(2)\\
=8+6\\
=\underline{ 14 }\)

因数分解型の変形をしても答えは出ますが、条件式を2乗する必要が出てきますので、対称式(交代式)変形を利用した方が早いです。

次の問題で条件式を2乗する方法を使いますが、
この問でも自分でやってみると良いですね。

まずは与式を因数分解して、条件式を2乗したものから使える部分を代入して見ればすぐ答えはでます。

例題2

次の式の値を求めよ。

 \(\displaystyle x+\frac{1}{x}=3\) のとき

 \(\displaystyle x-\frac{1}{x}\) および \(\displaystyle x^4-\frac{1}{x^4}\)

条件式から\(\,\displaystyle x-\frac{1}{x}\,\)の値は求まりそうもありません。

条件式を2次方程式にして解を求めるということもできますが、
少しやっかいな計算が待っていますのでやめておきましょう。
どのくらいやっかいなのかはやって見ればわかります。w

交代式を2乗すると見えてくるもの

ここも1つの定石として覚えておくと良いでしょう。

 \(\hspace{10pt}\displaystyle x-\frac{1}{x}\)
の値を聞かれたら何も考えず一旦2乗するのです。

問題としては絶対値が付いている場合が多いですが気にせず2乗してください。

 \(\hspace{10pt} \left(x-\displaystyle \frac{1}{x}\right)^2\\
=x^2-2x\cdot \displaystyle \frac{1}{x}+\displaystyle \frac{1}{x^2}\\
=x^2-2+\displaystyle \frac{1}{x^2}\)

ここまでは変形しておくとして、
文字式\(\hspace{4pt}\displaystyle x^2+\frac{1}{x^2}\hspace{4pt}\)部分の値がわかればいいので条件式の変形です。

条件式
 \(\hspace{10pt}\displaystyle x+\frac{1}{x}=3\)
から
 \(\hspace{10pt}\left(x+\displaystyle \frac{1}{x}\right)^2=3^2\\
\Leftrightarrow \hspace{7pt}x^2+2+\displaystyle \frac{1}{x^2}=9\)
なので
 \(\hspace{10pt} x^2+\displaystyle \frac{1}{x^2}=7\)

この値を利用すると

 \(\hspace{10pt} \left(x-\displaystyle \frac{1}{x}\right)^2\\
=x^2+\displaystyle \frac{1}{x^2}-2\\
=7-2\\
=5\)

ここで求めたいのはこの平方根なので
 \(\hspace{10pt} x-\displaystyle \frac{1}{x}=\pm \sqrt{5}\)

絶対値を聞かれているわけではないので「 \(\pm\) 」の両方が答えになります。

問題集の解答によっては、条件式の2乗が先に来ているものもありますが、解答を書く際にはどちらを先にやっても構いません。
与式を変形する前に、条件式でいえることを行っておくのも方針を立てる1つの方法です。

条件式の処理を分けずに一度で処理できるようになるとはやいです。

 \(\hspace{10pt} \color{red}{\displaystyle\left(x-\frac{1}{x}\right)^2}\\ \\
\displaystyle=x^2+\frac{1}{x^2}-2\\ \\
\displaystyle=\color{red}{\left(x+\frac{1}{x}\right)^2-4}\\ \\
=9-5\\
=4\)

何度か出会えば覚えることもできるでしょう。

もう一つの\(\hspace{6pt}\displaystyle x^4-\frac{1}{x^4}\hspace{6pt}\)ですが、
これは\(\hspace{6pt}\displaystyle x-\frac{1}{x}\hspace{6pt}\)を4乗しても出てきません。

因数分解です。

 \(\hspace{10pt} x^4-\displaystyle \frac{1}{x^4}\\
=\left(x^2+\displaystyle \frac{1}{x^2}\right)\left(x^2-\displaystyle \frac{1}{x^2}\right)\\
=\left(x^2+\displaystyle \frac{1}{x^2}\right)\left(x+\displaystyle \frac{1}{x}\right)\left(x-\displaystyle \frac{1}{x}\right)\\
=3\times (\pm \sqrt{5})\times 7\\
=\underline{ \pm \,21\,\sqrt{5} }\)

この逆数タイプはよく出題されます。
絶対値が付いたものもありますのでいろいろな問題を、自分の手を動かしてやって見てください。
同じやり方でできますよ。

対称式も同様な式変形をします。

⇒ 対称式の値を求める問題と解き方

どちらもセットで問題になることも多いので確認しておいてください。

利用する機会の多くは数学\(\,\mathrm{Ⅱ}\,\)の範囲になりますが、3つの文字の対称式も見ておきましょう。

⇒ 文字が3つの場合の対称式の値を求める問題の解き方

3次方程式の解と係数の関係で使います。

⇒ 数と式(高校数学Ⅰ)の要点

数学\(\,Ⅰ\,\)が先でも良いですが、数学\(\,Ⅱ\,\)まで見ておくと頭の中での整理がつきやすいです。