文字が2つのときと、3つのときの対称式では基本対称式が少し違っています。
解と係数の関係でも見慣れた形をしているので覚えやすいですが、問題を見ながら解き方を見ておきましょう。
使う関係が3つになるのでちょっと難しく思うかもしれませんがどれも同じような方法で解けます。

文字が3つの場合の対称式

文字が3つの式で、
 \( a^2+b^2+c^2\) や \( a^3+b^3+c^3\) などのように、
どの2つを入れかえても」元の式と同じ値になる式のことを対称式(対称整式)いいます。

このときの基本対称式は

 \( \begin{cases}
\hspace{7pt}\color{red}{a+b+c} \\ \\
\hspace{7pt}\color{red}{ab+bc+ca}\\ \\
\hspace{7pt}\color{red}{abc}
\end{cases}\)

の3つとなります。

3次方程式 \( ax^3+bx^2+cx+d=0\) の解と係数の関係

 \( \begin{cases}
\hspace{7pt}\alpha+\beta+\gamma=-\displaystyle \frac{b}{a} \\ \\
\hspace{7pt}\alpha \beta+\beta \gamma+\gamma \alpha=\displaystyle \frac{c}{a}\\ \\
\hspace{7pt}\alpha \beta \gamma=-\displaystyle \frac{d}{a}
\end{cases}\)

と左辺は同じに見えるでしょう?

⇒ 解と係数の関係 2次方程式と3次方程式

覚えておきましょう!

展開公式や因数分解公式をしっかり覚えておけば、考え方、使い方は文字2つの場合と同じなので細かい説明は必要無いでしょう。

対称式の問題は、基本対称式の値は先に求めておいた方が後の処理が早くなるので、基本対称式を値とともにすべて書き出しておくと良いです。

文字が3つの対称式計算問題

使い方ですが簡単な問題の中で見ていきましょう。

例題

 \(a+b+c=6 , a^2+b^2+c^2=16 , abc=4\) のとき、

 \(\displaystyle \frac{1}{a}+\frac{1}{b}+\frac{1}{c}\) の値を求めよ。

基本対称式で条件式にないものは、\(ab+bc+ca\) の値です。

この形は展開公式にありましたよね?

 \( (a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2(ab+bc+ca)\)

これを変形すると

 \( ab+bc+ca\\ \\
=\displaystyle \frac{(a+b+c)^2-(a^2+b^2+c^)}{2}\\ \\
=\displaystyle \frac{(6)^2-(16)}{2}=10\)

これで基本対称式はすべてそろいました。
後は与式を変形すれば値はすぐに求めることができるはず!

与式を見れば通分したくなりますよね?

 \( \displaystyle \frac{1}{a}+\displaystyle \frac{1}{b}+\displaystyle \frac{1}{c}=\displaystyle \frac{ab+bc+ca}{abc}\)

これは基本対称式だけでできていますので答えに直結します。
 \((与式)\displaystyle=\frac{ab+bc+ca}{abc}\\ \\
\displaystyle\hspace{32pt}=\frac{10}{4}=\frac{5}{2}\)

対称式(対称整式)、交代式(交代整式)をいろいろと見てきました。
よく見かける問題が多いでしょう?
用語は聞かないけど問題にはしばしば出てきているのです。

対称式・交代式まとめ問題

まとめとしてもう1問復習しておきましょう。
文字は2つにしておきます。

例題2

 \(\displaystyle x=\frac{2+\sqrt{3}}{2-\sqrt{3}} , y=\frac{2-\sqrt{3}}{2+\sqrt{3}}\) のとき、
次の式の値を求めよ。

(1) \( x^2+xy+y^2\)

(2) \( x^3+x^2y+xy^2+y^3\)

(3) \( x^3-y^3\)

パッと見て、
(1)対称式
(2)対称式
(3)交代式
なので、\( x+y\,,\,xy\,,\,x-y\) を先に計算しておくと最後までスンナリといけそうです。

 \( x+y\\ \\
=\displaystyle \frac{2+\sqrt{3}}{2-\sqrt{3}}+\displaystyle \frac{2-\sqrt{3}}{2+\sqrt{3}}\\ \\
=\displaystyle \frac{(2+\sqrt{3})^2+(2-\sqrt{3})^2}{(2-\sqrt{3})(2+\sqrt{3})}=\cdots=14\)

 \( xy\\ \\
=\displaystyle \frac{2+\sqrt{3}}{2-\sqrt{3}} \times \displaystyle \frac{2-\sqrt{3}}{2+\sqrt{3}}=\cdots=1\)

 \( x-y\\ \\
=\displaystyle \frac{2+\sqrt{3}}{2-\sqrt{3}}-\displaystyle \frac{2-\sqrt{3}}{2+\sqrt{3}}\\ \\
=\displaystyle \frac{(2+\sqrt{3})^2-(2-\sqrt{3})^2}{(2-\sqrt{3})(2+\sqrt{3})}=\cdots=8\sqrt{3}\)

ここまで来れば後は楽なはず、です。

(1)基本対称式 \( x+y , xy\) で表すことができます。

 \( x^2+xy+y^2\\ \\
=(x+y)^2-xy\\ \\
=14^2-1\\ \\
=196-1=195\)

(2)これも(1)と同じですが変形の仕方は人によって変わるかもしれません。
 \( x^3+y^3\) 部分を先に基本対称式変形すると

 \( x^3+x^2y+xy^2+y^3\\ \\
=x^3+y^3+x^2y+xy^2\\ \\
=\{(x+y)^3-3xy(x+y)\}+\{xy(x+y)\}\\ \\
=(x+y)^3-3xy(x+y)+xy(x+y)\\ \\
=(x+y)\{(x+y)^2-3xy+xy\}\\ \\
=(x+y)\{(x+y)^2-2xy\}\\ \\
=(14)(14^2-2\cdot 1)=2716\)

となります。
また、この式が対称式の積になっているということに気がつけば、

 \( x^3+x^2y+xy^2+y^3\\ \\
=(x+y)(x^2+y^2)\\ \\
=(x+y)\{(x+y)^2-2xy\}\\ \\
=(14)(14^2-2\cdot1)=2716\)

のように簡単に同じ結果が得られます。
ただ、こちらを試験場で利用出来るようになるには訓練していないと難しいかもしれません。
それほど時間はかかりませんので、上の解法のように、気がついたところから変形していく、でいいと思います。

(3)は交代式なので \( x-y\) も使いますがすでに求めています。
式変形も使えるものは使いましょう。楽です。

 \( x^3-y^3=(x-y)(x^2+xy+y^2)\)

と因数分化した後、

 \( (x-y)\{(x+y)^2-xy\}\)

と変形するまでもなく、(1)の \(x^2+xy+y^2=195\) を利用すれば、

 \( x^3-y^3\\ \\
=(x-y)(x^2+xy+y^2)\\ \\
=(8\sqrt{3})\times (195)\\ \\
=1560\sqrt{3}\)

対称式、交代式が使えるようになると、少しは数学で強くなれます。

⇒ 対称式の値を求める問題と解き方

対称式よりも交代式のときの手順は覚えておかないとなかなか思いつくものでもありません。

⇒ 交代式の値を求める問題の解き方と式変形のやり方

確認しておきましょう。