剰余の定理は余りの定理ともいいます。
基本になる「割り算の基本定理」から、因数定理までの問題を取り上げて解き方、定理の使い方を説明しますので見ておいてください。
分かりにくいところは商と余りのおきかただと思いますが、分かってしまえば難しいことはありませんよ。

割り算の基本定理

整式の除法です。

 【定理】

 \( f\,,\,g\) を \( x\) の整式とする。
 \(f\) を \( g\) で割ったときの商を \( Q\)、余りを \( R\) とすれば、
 「 \( f=gQ+R\) , \( R\) は \(g\) より低次 」
が成り立つ。

普通の数で行う割り算同様に、整式の割り算でも基本定理が成り立ちます。
例えば、
 25を3で割ったときの商は8、余りは1です。
このとき \( 25=3\times 8+1\) が成り立ちます。
余りの1は割る数の3より小さいです。

整式の除法だと、
例えば、
 \( x^4+3\) を \( x^2-x\) で割ったとき、
 商は \( x^2+x+1\) , 余りは \( x+3\) です。
このとき

 \( x^4+3=(x^2-x)(x^2+x+1)+(x+3)\)

となり余りの \( x+3\) は、割る式 \( x^2-x\) より低次です。

整式の割り算はできるものとして省略します。

⇒ 高次式の割り算のやり方と値を求める方法

割り算をするとき、余りとの関係を
 \( 25\div 3=8…1\)
と算数時代の悪い習慣が残っている人がいますが、割り算の基本が分からなくなるのでやめましょう。

剰余の定理(余りの定理)

 【定理】

 整式 \( P(x)\) を一次式 \( x-\alpha\) で割り算したときの余りは、
 \( x=\alpha\) のときの整式の値 \( P(\alpha)\) に等しい。

これは簡単に証明できます。

(証明)
 整式 \( P(x)\) を \( x-\alpha\) で割り算したときの
 商を \( Q(x)\) , 余りを \( R\) とすると \( R\) は定数となり、

 \( P(x)=(x-\alpha)Q(x)+R\) ・・・①

が成り立ち、これは任意の \( x\) に対して成り立つ。

 ①に \( x=\alpha\) を代入すれば

 \( P(\alpha)=0\cdot Q(x)+R=R\)
(証明終わり)

一次式で割った場合、余りは0次以下、つまり定数であることがポイントです。

整式 \( P(x)\) を一次式 \( ax+b\) で割ったときの余り \( R\) は

 \(\displaystyle P\left(-\frac{b}{a}\right)\)

となります。
もちろん \( a\neq 0\) ですよ。

 \( \color{red}{ax+b=0}\) となる値を代入するということです。

因数定理と整方程式の解

 【定理】

 整式 \( P(x)\) が \( x-\alpha\) で割り切れる

 \( \Leftrightarrow \hspace{10pt} P(\alpha)=0\)

割り切れる、つまり余りが0のときに使える便利な定理です。

同値関係にあることから、

 \( x=\alpha\) を代入して値が0なら \(\color{red}{ x-\alpha}\) で割り切れる

ということなので因数分解に応用されます。

 【定理】

 \( P(x)\) を \( x\) の整式とすると、

 \( x=\alpha\) が方程式 \( P(x)=0\) の解である
 \( \Leftrightarrow \hspace{10pt} P(x)\) は \(\color{red}{ x-\alpha}\) で割り切れる
 \( \Leftrightarrow \hspace{10pt} P(x)\) は \(\color{red}{ x-\alpha}\) を因数にもつ

例えば、\( x^3+2y^3-3xy^2\) を

 \( P(x)=x^3+2y^3-3xy^2\)

と \( x\) の整式と見たとき、

 \( P(y)=y^3+2y^3-3y^3=0\)

なので \( x^3+2y^3-3xy^2\) は \( x-y\) で割り切れることが分かります。

因数分解すると

 \( x^3+2y^3-3xy^2=(x-y)(x^2+xy-2y^2)\)

ですが、\( (x-y)\) を因数にもつことがすぐに分かるということです。

整式に使う場合はもっと簡単なのでバンバン使って下さい。

剰余の定理と因数定理の問題と解き方

さて実践です。

例題1

(1)
 整式 \(3x^3-ax^2+x-6\) が
 \(x-2\) で割り切れるとき、\( a\) の値を求めよ。

(2)
 \( x\) の整式 \( x^3+6x^2+px+q\) が
 \( x^2+3x+2\) で割り切れるための条件を求めよ。

実際に割り算しても良いですが定理を利用した解き方で進めます。

(1)は \(x-2\) で割り切れることから剰余の定理より、
 \( P(x)=3x^3-ax^2+x-6\) とおくと \(P(2)=0\) が成り立ちます。

よって、
 \( P(2)=24-4a+2-6=20-4a=0 \)
から \( \underline{a=5}\)

これは基本定理なので必ず覚えておきましょう。
もちろん割算も出来なければならないので、実際に割り算して確認してみてください。

(2)は割算の原理から始めましょう。
 
 \( P(x)=x^3+6x^2+px+q\) とおき、
「 \( x^2+3x+2\) で割り切れる」ことから

 \( P(x)=x^3+6x^2+px+q=\underline{(x^2+3x+2)}Q(x)\) (余りが0)

となり、\( x^2+3x+2=(x+1)(x+2)\) と因数分解出来るので

 \( P(x)=x^3+6x^2+px+q=\underline{(x+1)(x+2)}Q(x)\)

 \( \color{red}{P(-1)=0\,,\,P(-2)=0}\) であることから

 \( P(-1)=-1+6-p+q=0 \hspace{5pt}\Leftrightarrow \hspace{5pt} p-q=5 \)  ・・・①

 \( P(-2)=-8+24-2p+q=0 \hspace{5pt}\Leftrightarrow \hspace{5pt} 2p-q=16\) ・・・②

①②から \( \underline{p=11\,,\,q=6}\)

(1)(2)ともに「割り切れる」ことから、「余りが0」です。

例題2

 整式 \( f(x)\) を \( x-2\) で割ると余りは7となり、
 \( x+1\) で割るとあまりは1になる。
 \( f(x)\) を \( (x-2)(x+1)\) で割ったときの余りを求めよ。

整式の余りの問題では条件を検討することより、割算の原理から進めます。
 『2次式で割ったあまりは1次式以下』(高々1次ともいう)
なので、

 \(f(x)\) を2次式 \( (x-2)(x+1)\) で割ったときのあまりは \( ax+b\) とおけます。

このとき商を \( Q(x)\) とすると、

 \( f(x)=(x-2)(x+1) Q(x)\color{red}{+ax+b}\)

であり、条件(剰余の定理)より、
\( \color{red}{f(2)=7\,,\,f(-1)=1}\) なので、

 \( f(2)=2a+b=7\)
 \( f(-1)=-a+b=1\)

から \( a=2\,,\,b=3\) となり求める余りは \( \underline{2x+3}\)

二次式で割った余りが一次以下で

 \( f(x)=(x-2)(x+1)Q(x)\color{red}{+ax+b}\)

とおけるかどうかだけの問題です。

3次式で割ったときは、余りは2次以下で \( ax^2+bx+c\) とおくことになりますが、
1次式になっても定数になっても良いのです。
もちろん割り切れて、余りが0でもかまいません。

⇒ 整式の因数分解とタスキガケ練習問題

因数定理を使うと因数分解も楽になりますよ。

⇒ 複素数と方程式の要点

高次方程式は因数定理が使えないと厳しくなります。