多項定理と二項定理を展開したときの各項の係数を決める方法です。
多項定理の一般項は公式としては覚えにくいです。
定理なので覚えている場合はそのまま使って構いませんが、覚えていない場合あきらめるにはもったいないので二項定理を使って係数を求める方法を示しておきます。
多項定理といっても3項までの展開式なのでそれほど時間はかかりません。

多項定理と一般項

 【定理】

 \( (a+b+c)^n\) を展開したとき、\( a^p\,b^q\,c^r\) の項の係数は、
 \(\hspace{10pt}\displaystyle \color{red}{\frac{n!}{\,p!\,q!\,r!\,}}\)

ただし、\(\,p\,,\,q\,,\,r\,,\,n\,\,\)は\( p+q+r=n\) を満たす整数。

 \( (a+b+c)^n\) の一般項は \(\displaystyle \frac{n!}{p!q!r!}\cdot a^pb^qc^r\) です。

これは、二項展開と同じく \( (a+b+c)^n\) を展開したとき、
1つひとつの項の次数は\(\,n\,\) 次で、
 \( a\) と \( b\) と \( c\) が全部で\(\,n\,\)個並んでいる中で、
同じものを \( p,q,r\) 個含む順列と同じなので、

 \( a^pb^qc^r\) の係数は \(\displaystyle \frac{n!}{p!q!r!}\) であることが分かります。

もし、不安なら

⇒ 場合の数 順列と組み合わせの違いと並べ方問題の解き方

を見直しておいてください。

多項定理を利用する係数決定問題

例題1

 \( (a+b+c)^7\) を展開したとき \( a^3b^2c^2\) の係数を求めよ。

定理を覚えていた場合、
 \( n=7 , p=3 , q=2 , r=2\) であり、
展開する前(かっこの中)の各項の係数が1であることから

 \(\begin{eqnarray} \displaystyle
\frac{7!}{3!2!2!}&=&\displaystyle \frac{7\cdot 6\cdot 5\cdot 4\cdot 3\cdot 2\cdot1}{3\cdot 2\cdot1\cdot 2\cdot\ 1\cdot 2\cdot1}\\
&=&\underline{ 210 }
\end{eqnarray}\)

とすぐに答が求まります。

2項定理を利用する解き方

2項定理を利用して求めることもできます。
整式を展開する場合はこちらの方法でもかかる時間に大した差はありません。

ポイントは \( (a+b+c)^7\) を展開するとき

 \(\hspace{10pt} \left\{\color{red}{(a+b)}+c\right\}^7\)

を展開することを考えます。
このとき \( \color{red}{(a+b)}=\color{red}{t}\) とおいてみましょう。
すると、\( (\color{red}{t}+c)^7\) となり2項展開そのままでしょう?

 \( c^2\) となる項は
 \(\hspace{10pt} _7\mathrm{C}_2\cdot t^5c^2=\,_7\mathrm{C}_2\cdot \color{blue}{(a+b)^5}\,c^2\)

さらに、\(\color{blue}{(a+b)^5}\) の展開から出てくる
 \( a^3b^2\) の項は二項定理から \( _5\mathrm{C}_2\cdot a^3b^2\) なので、
全体で求める係数は、

 \(\begin{eqnarray}\displaystyle
_7\mathrm{C}_2\times\, _5\mathrm{C}_2&=& \frac{7\cdot 6}{2\cdot 1}\times \frac{5\cdot 4}{2\cdot 1}\\
&=&\underline{ 210 }
\end{eqnarray}\)

つまり、それぞれの文字の次数をそろえるように、
 2項定理を2回使えば同じ
だということです。

これを使って多項定理を導くのが通常の証明となります。

ちょっとややこしい問題もおまけしておきます。

整式ではない式(分数混じり)の展開に多項定理を使う問題

例題2

 \(\displaystyle \left(x^3+x-\frac{1}{x}\right)^9\)

を展開したときの \( x\) の係数を求めよ。

多項定理でみたときの
 \(\hspace{10pt} (a+b+c)^n , p+q+r=n\)
において、
 \(\hspace{10pt} a=x^3\,,\,b=x\,,\,c=(-x)^{-1}\,,\,n=9\)
であるから、
 \(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{n!}{\,p!q!r!\,}\cdot a^p\,b^q\,c^r\)

これから係数部分を除いて、\(a^p\,b^q\,c^r\) の部分だけを考えると

 \(\hspace{10pt}(x^3)^p\,(x)^q\,(-x)^{-r}\\
=x^{3p}\cdot x^q\cdot (-1)^{-r}(x)^{-r}\\
=(-1)^{-r}\cdot x^{(\,3p+q-r\,)}\)

ここで \( (-1)^{-r}\) は係数で、
 \( x\) の1次の項の係数を求めるので指数だけに着目すると

 \(\hspace{10pt} 3p+q-r=1\) ・・・①

また、\(n=9\)だから

 \(\hspace{10pt} p+q+r=9\) ・・・②

文字が3つで式2つなので求まらないように見えますが、
 「 \( \color{red}{p\,,\,q\,,\,r}\) は\(\,0\,\)以上の整数 」
という条件があります。

①②から

 \(\hspace{10pt} 4p+2q=10\\
\Leftrightarrow \hspace{10pt} 2p+q=5 ・・・③\) 

③を満たす整数の1つの組に対し、\(\,r\,\)も1つだけ決まります。

①②③を満たす\(\,0\,\)以上の整数の組 \( (p\,,\,q\,,\,r)\) は、

 \((p\,,\,q\,,\,r)=(1,3,5)\,,\,(2,1,6)\,,\,(0,5,4)\)

の3組あります。

ところで\(\,\displaystyle \color{red}{(a)^{-1}=\frac{1}{a}}\,\)であることから

 \(\begin{eqnarray}\displaystyle
(-1)^{-r}&=&\left\{(-1)^{-1}\right\}^r\\
&=&\left(\frac{1}{-1}\right)^r\\
&=&(-1)^r
\end{eqnarray}\)

なのでそれぞれの係数は \(\displaystyle \frac{n1}{\,p!q!r!\,}\cdot (-1)^r\) なので

 \( (p,q,r)=(1,3,5)\) のとき係数は

 \(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{9!}{1!3!5!}\cdot (-1)^5\\
\displaystyle =-\frac{9\cdot 8\cdot 7\cdot 6\cdot 5\cdot 4\cdot 3\cdot 2}{3\cdot 2\cdot 5\cdot 4\cdot 3\cdot 2}\\
=-504\)

 \( (p,q,r)=(2,1,6)\) のとき係数は

 \(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{9!}{2!1!6!}\cdot (-1)^6\\
\displaystyle =\frac{9\cdot 8\cdot 7\cdot 6\cdot 5\cdot 4\cdot 3\cdot 2}{2\cdot 6\cdot 5\cdot 4\cdot 3\cdot 2}\\
=252\)

 \( (p,q,r)=(0,5,4)\) のとき係数は

 \(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{9!}{0!5!4!}\cdot (-1)^4\\
\displaystyle =\frac{9\cdot 8\cdot 7\cdot 6\cdot 5\cdot 4\cdot 3\cdot 2}{5\cdot 4\cdot 3\cdot 2\cdot 4\cdot 3\cdot 2}\\
=126\)

 \( x\) の一次の項はこの3つなので係数はこの和となります。

 \( -504+252+126=\underline{ -126 }\)

\(\,0\,\)以上の整数の組を見つけるまでが結構たいへんです。

多項定理が共通テストで出ることはマレだとは思いますが、誘導付きで出される可能性はあります。
また、本試験対策として、高校数学のひとつの知識として覚えておいても良いのではないでしょうか。
ということで、入れて見ました。 

2項定理ができていれば十分です。

⇒ 二項定理(公式)の一般項や2項展開係数の求め方

苦手な単元は1つひとつ無くしていきましょう。

⇒ 式と証明の要点

一気に全部の単元がよくなる、なんてことはあり得ません。