分数の式の値など、代入して値を求める問題は求値問題といわれマーク式ではほとんどがそうです。
答が点数のすべてになる問題形式だと正確な計算が必要ですし、条件を代入するタイミングや処理の仕方で答を出すまでの時間に差が出る問題が多いので、制限時間のある入試では大きなポイントとなります。
式の値の中でも分数の式の値の計算をいやがる高校生は多いです。
しかし、処理の仕方によっては分数から離れることもできます。
分数式の値を条件式を先に使って求める解き方
分数の処理と条件の代入のタイミングで大きく変わります。
0でない実数 \( a\,,\,b\,,\,c\) が \( a+b+c=0\) をみたすとき、
次の式の値を求めよ。
\(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{a^2}{bc}+\frac{b^2}{ac}+\frac{c^2}{ab}\)
先ずは普通に処理してみましょう。
条件式 \( a+b+c=0\) などがあるときに与式の値を求めるには、
求値式(与式)
\(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{a^2}{bc}+\frac{b^2}{ac}+\frac{c^2}{ab}\)
を
\(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{a^2}{bc}+\frac{b^2}{ac}+\frac{c^2}{ab}\color{red}{=k}\)
とおいたとすれば2つの方程式ができるので
\( \begin{cases}
\hspace{10pt} a+b+c=0\\ \\
\hspace{10pt} \displaystyle \frac{a^2}{bc}+\displaystyle \frac{b^2}{ac}+\displaystyle \frac{c^2}{ab}=k\\
\end{cases}\)
(連立方程式となるので)
一文字消去を基本とすれば良いでしょう。
条件式\(\hspace{4pt}a+b+c=0\hspace{4pt}\)
より
\(\hspace{10pt} c=-(a+b)\)
を求値式に代入すると、
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{a^2}{bc}+\displaystyle \frac{b^2}{ac}+\displaystyle \frac{c^2}{ab}\\ \\
=\displaystyle \frac{-a^2}{b(a+b)}+\displaystyle \frac{-b^2}{a(a+b)}+\displaystyle \frac{(a+b)^2}{ab}\)
ここで止まるかもしれませんが、
分数処理の基本は通分して分子だけの処理に集中することです。
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{-a^2}{b(a+b)}+\displaystyle \frac{-b^2}{a(a+b)}+\displaystyle \frac{(a+b)^2}{ab}\\ \\
=\displaystyle \frac{-a^3}{ab(a+b)}+\displaystyle \frac{-b^3}{ab(a+b)}+\displaystyle \frac{(a+b)^3}{ab(a+b)}\\ \\
=\displaystyle \frac{\color{red}{-a^3-b^3+(a+b)^3}}{ab(a+b)}\\ \\
=\displaystyle \frac{\color{red}{-a^3-b^3+a^3+3a^2b+3ab^2+b^3}}{ab(a+b)}\\ \\
=\displaystyle \frac{\color{red}{3a^2b+3ab^2}}{ab(a+b)}\\ \\
=\displaystyle \frac{\color{red}{3ab(a+b)}}{ab(a+b)}=\underline{ 3 }\)
このように、地道に、確実に計算すれば答えは出ます。
記述の場合、上の様な計算過程をすべて書く必要はありませんよ。
ここでは目で追えるように細かく書いているだけです。
実際には自分で計算しなくてはならないので、見ているだけではダメです。
これは条件を先に利用した場合です。
次は分数を処理するときの基本通り進めてみます。
分数式への基本作業の後に条件式を使う解き方
分数を処理するときの基本は通分して分子だけの計算に集中する、です。
私のような凡人には分母も分子も同時に考えることは難しいので、分子と分母は分けて処理する方がはやいです。
もちろん、分母を無視するわけではありません。
求値式を通分してしまいましょう。
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{a^2}{bc}+\displaystyle \frac{b^2}{ac}+\displaystyle \frac{c^2}{ab}\\ \\
=\displaystyle \frac{a^3+b^3+c^3}{abc}\)
ここで公式が使えますが条件式から文字を減らす方向に行きましょう。
前の解き方と違うのは、
「条件式 ⇒ 通分」
だったのを
「通分 ⇒ 条件式」
としているだけです。
\(\hspace{10pt} a+b+c=0 \\
\Leftrightarrow \hspace{10pt} c=-(a+b)\)
なので
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{a^3+b^3+c^3}{abc}\\ \\
=\displaystyle \frac{a^3+b^3-(a+b)^3}{-ab(a+b)}\\ \\
=\displaystyle \frac{a^3+b^3-a^3-3a^2b-3ab^2-b^3}{-ab(a+b)}\\ \\
=\displaystyle \frac{3ab(a+b)}{ab(a+b)}=\underline{ 3 }\)
どちらが向いているか自分で選んでください。
次の公式を利用する解法が1番すっきりします。
その前に、
「分母に「-」マイナス符号はOK?」
(答)にはNGです。
分数の前か、分子にまわしておきましょう。
\(\hspace{10pt} -\displaystyle \frac{1}{5}\hspace{10pt}, \hspace{10pt} \displaystyle \frac{-1}{5}\)
処理段階での分母のマイナスは減点対象とはなりません。
公式利用する方法
(当サイトでは)当然ですが通分は先にします。
\( \hspace{10pt}\displaystyle \frac{a^2}{bc}+\displaystyle \frac{b^2}{ac}+\displaystyle \frac{c^2}{ab}\\ \\
=\displaystyle \frac{a^3+b^3+c^3}{abc}\)
ここで
\(\hspace{4pt} a^3+b^3+c^3-3abc\\
=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\)
という因数分解公式を忘れていなければ、
\(\hspace{4pt} a^3+b^3+c^3\\
=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)+3abc\)
として分子に入れると
\(\hspace{4pt} \displaystyle \frac{a^3+b^3+c^3}{abc}\\ \\
=\displaystyle \frac{\color{red}{(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)}+3abc}{abc}\)
ここで\(\hspace{4pt}a+b+c=0\hspace{4pt}\)から分子の
\(\hspace{10pt} \color{red}{(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)}\)
部分が\(\,\color{red}{0}\,\)となることから、
\(\hspace{4pt} \displaystyle \frac{a^3+b^3+c^3}{abc}\\ \\
=\displaystyle \frac{\color{red}{(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)+3abc}}{abc}\\ \\
=\displaystyle \frac{\color{red}{3abc}}{abc}=\underline{3}\)
このように余計な時間をかけずに済ますことも出来ます。
公式を覚えていない場合は一文字消去していけば同じ答はでますよ。
「答えが出ればいい」ではなく、
「もっと別の(楽な)方法ないか?」が数学の進歩、
つまりは数学の得点力の向上につながるかもしれない。
ちなみに、
\(\hspace{10pt}a+b+c=0\)
を満たす\(\hspace{4pt} a\,,\,b\,,\,c\hspace{4pt}\)を
\(\hspace{10pt} a=1\,,\,b=1\,,\,c=-2\hspace{4pt}\)
として
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{a^2}{bc}+\displaystyle \frac{b^2}{ac}+\displaystyle \frac{c^2}{ab}\)
に代入すると
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{1}{-2}+\displaystyle \frac{1}{-2}+\displaystyle \frac{4}{1}\\ \\
=-1+4=3\)
と求めることはできますが、必要十分ではありませんので記述では使えません。
逆にマークではありか?
誰がどうやって解いたか、どうやって確かめるのですか?w
悪あがきしても良いじゃないですか。
⇒ 式と証明の要点
あきらめる?悪あがきする?
もちろんあがく!