定積分だけで成り立っている関数とその極値や定数を求めるという問題の解き方です。
本来なら「値」である定積分が関数に変わるので少し分かりにくいです。
微分積分の基本的な定理を理解していれば問題はありませんが、この次に説明する定積分が部分的にある問題との違いを理解するためにしっかり見ておきましょう。
極値については言うまでもありません、増減表です。
定積分した値と関数の係数を決定する方法
2つ定理を確認しておきましょう。
1つは微分積分の基本定理です。
【定理】
\( \displaystyle \frac{d}{dx}\int_a^x f(t)dt=f(x)\)
微分積分学の基本定理と呼ばれるものですね。
積分区間の\(\,x\,\)は定数として\(\,t\,\)で積分されますが、
\(\,x\,\)で微分することによって\(\,x\,\)の関数に戻していることになります。
もう一つは
【定理】(公式)
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_a^a f(x)dx=0\)
積分区間の下端と上端が同じ場合、定積分の値は「0」になるという公式です。
⇒ 数学Ⅱ(整関数)の定積分の公式(定義と定理と計算問題で使える公式)
使いどころが分かりにくい定理ですが、この問題では使います。笑
思い出したら問題は簡単に終わります。
微分積分の基本定理を利用する方法
次の式を満たす関数\(\,f(x)\,\)、および定数\(\,a\,\)の値を求めよ。
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_a^xf(t)dt=x^3-3x+2\)
左辺の定積分は\(\,t\,\)が積分変数だということには気がついてください。
この場合は\(\,x\,\)は定数とみなされます。
定積分した左辺は\(\,x\,\)で表されますが、
\(\,x\,\)で微分することで\(\,x\,\)の関数になります。
これさえ理解していれば、
この問題では両辺を\(\,x\,\)で微分すれば\(\,f(x)\,\)が求まります。
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_a^xf(t)dt=x^3-3x+2\)
の両辺を \( x\) で微分すると
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{d}{dx}\int_a^xf(t)dt=\frac{d}{dx}(x^3-3x+2)\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt}\underline{ f(x)=3x^2-3 }\)
普通に定積分で求める方法
定理を使えばすぐに終わるこの関数ですが、定積分すれば出てきます。
\(\,f(t)\,\)の不定積分の1つを\(\, F(t)\,\)とすれば
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_a^xf(t)dt=F(x)-F(a)\)
これから
\(\hspace{10pt} F(x)-F(a)=x^3-3x+2\)
この両辺を\(\,x\,\)で微分すれば、
( \( F\,'(x)=f(x)\,,\,F’\,(a)=0\) なので)
\(\hspace{10pt} f(x)=3x^2-3\)
分からなくなったら定義、定理に戻るんですよ。
必要無いかもしれませんが一応説明しておくと
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{d}{dx}(x^3-3x+2)\)
は表記方法が違うだけで
\(\hspace{10pt} (x^3-3x+2)’\)
と同じことです。
この\(\,f(x)\,\)を使うのかと思えば違うんですね。
\(\hspace{10pt}\displaystyle \color{red}{\int_a^a f(x)dx=0}\)
を使います。
与えられた関係式
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_a^xf(t)dt=x^3-3x+2\)
に \( x=a\) を代入すると
(左辺と右辺の両方に \( x\) はあります。)
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_a^a f(t)dt=a^3-3a+2\)
ここで左辺が
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_a^a f(t)dt=0\)
となることを利用すると
\(\hspace{10pt} a^3-3a+2=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (a-1)(a^2+a-2)=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (a-1)(a-1)(a+2)=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (a-1)^2(a+2)=0
\)
よって
\( \underline{ a=1\,,\,-2 }\)
またまた
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_a^a f(t)dt=0\)
この定理に気がつかなかったとしたら、
\(\hspace{10pt} f(x)=3x^2-3\)
からどうすれば?
\(\hspace{10pt} f(t)=3t^2-3\)
なので
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_a^x f(t)dt\\ \\
\displaystyle =\int_a^x (3t^2-3)dt\\ \\
\displaystyle =\left[t^3-3t\right]_a^x\\ \\
=(x^3-3x)-(a^3-3a)\)
と普通に定積分して、これと右辺が等しくなるので
\(\hspace{10pt} (x^3-3x)-(a^3-3a)=x^3-3x+2\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} -a^3+3a=2\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} a^3-3a+2=0\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} (a-1)^2(a+2)=0\)
から同じ答が出ます。
\( \,a=1\,,\,-2\,\)ともに代入して、
左辺を積分して右辺になるかを確認してみると良いです。
定積分で出てくる関数と極値の求め方
次は求めた関数の極値まで求めて見ましょう。
\( f(x)=x(1-x)\) に対して、
\(\hspace{10pt} \displaystyle F(x)=\int_0^x f(\,t\,)\,dt\)
とおく。
関数 \( F(x)\) の極大値を求めよ。
う~ん、\( \,f(x)\,\)?
積分変数は\(\,t\,\)で?
関数\(\,F(x)\,\)の極大値?
と悩むヒマがあったら記号の意味するとおり積分してしまいましょう。
変数 \(x\) を \( \color{red}{t}\) に置きかえるだけなので
\(\hspace{10pt} f(x)=x(1-x)\)
なら
\(\hspace{10pt} f(\,\color{red}{t}\,)=\color{red}{t}(1-\color{red}{t})\)
です。
積分すると、
\(\displaystyle \displaystyle F(x)=\int_0^x f(\,t\,)\,dt \\
\displaystyle =\int _0^x t(1-t)\,dt\\
\displaystyle =\int _0^x (t-t^2)\,dt\\
\displaystyle =\left[\frac{1}{2}t^2-\frac{1}{3}t^3\right]_0^x\\
\displaystyle =\frac{1}{2}x^2-\frac{1}{3}x^3\)
これで\(\,x\,\)の関数になりました。
この「関数\(\,F(x)\,\)についての極値」を求めれば良いので、
微分しますが元に戻るだけです。
\(\hspace{10pt} \displaystyle F\,'(x)=f(x)\\
\displaystyle =\left(\frac{1}{2}x^2-\frac{1}{3}x^3\right)’\\
=x-x^2\\
=x(1-x)\)
これから増減表を書きます。
\(\hspace{10pt} F\,'(x)=f(x)=x(1-x)=0\)
から変化するとすれば\(\,x=0\,,\,1\,\)です。
増減表は
\(\,\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|} \hline
x & \cdots & 0 & \cdots & 1 & \cdots \\ \hline
f’(x) & – & 0 & + & 0 & – \\ \hline
f(x) & \searrow & 0 & \nearrow & \displaystyle \frac{1}{6} & \searrow \\ \hline
\end{array}\,\)
よって
\( x=1\) のとき極大値 \(\displaystyle \underline{ \frac{1}{6} }\)
\(\color{red}{x}\) や \(\color{red}{t}\) や \( \color{red}{a}\) が混じる場合、
何が定数かを、何が変数かをしっかり見極めましょう。
確認ですが、定積分
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_a^b f(x)dx\)
の「上端 \( b\) 」,「下端 \( a\) 」は定数です。
\(\,dx\,\)の\(\,x\,\)は「積分変数」と呼ばれ、\(\,x\,\)で積分することになります。
\(\,f(x)\,\)を「被積分関数」と呼び、
区間\(\,a\,≦\,x\,≦\,b\,\)を「積分区間」と呼びます。
ここでは\(\,F(x)\,\)を求めました。
しかし極値を求めるだけなので解法で見せたとおり必要ありませんよね。
\(\hspace{10pt} \displaystyle F(x)=\int_0^x f(t)dt\)
なので
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{d}{dx}F(x)=\frac{d}{dx}\int_0^x f(t)dt\\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} F\,'(x)=f(x)=x(1-x)\)
とすれば即座に増減表が書けます。
本当は\(\,F(x)\,\)は求める必要はない問題なのですが、
ここで時間がかかっても良いから変数と定数の見極めをして欲しいので求めておきました。
ここまでは定積分の変数についての基本確認です。
次は関数の一部の項が定積分となっている関数の求め方を見てみましょう。
これ、分からない人が多いんですよね。
いっていることが分からない、かもしれませんが、
問題を見たら、「わからない問題だ」と分かります。笑
何度もいう必要はないでしょうが、微分と積分は逆演算なので切り離せるものではありませんよ。
少なくともこの単元は全体を見通しながら復習しましょう。