2直線のなす角を求める方法はいくつかあります。
三角関数を使って求めるのも1つの方法ですが、タンジェントの加法定理を使うのでややこしく感じて、使えないまま過ごしている人が多いです。
解法に限定がないならベクトルの方がなじみがあるかもしれませんが、三角関数を使うと割と楽ですよ。

直線のなす角の注意点

2直線のなす角で少し注意することがあるのでお伝えしておきます。
直線どうしが交わるとき、垂直以外の場合、
片方が鋭角で、もう一方を見ると必ず鈍角になっています。

単に「なす角」と聞かれたときは、鋭角で答えるようにして下さい。
もちろん、「 \( x\) 軸の正の方向となす角」などの指定がある場合は別ですよ。

例題を見てから最後に公式としてまとめておきます。

例題1

2直線

 \(\hspace{10pt} 3x-y+1\,=0\, , \,x-2y+4\,=0\)

のなす角 \( \theta\) を求めよ。

「2直線のなす角」を求めるときは、ベクトルも大いに活躍してくれますが、
ベクトルを使った求め方はベクトルのところで詳しく説明することにします。
(後半でちょっとだけ説明しておきます。)

ここでは「傾き」に注目し、三角関数の利用を考えます。

 \( 3x-y+1\,=0  \Leftrightarrow   y=\color{red}{3}x+1\)

 \(\displaystyle x-2y+4\,=0  \Leftrightarrow  y=\color{red}{\frac{1}{2}}x+2\)

となるので、

「傾きが \(\color{red}{3}\) と \(\displaystyle\color{red}{\frac{1}{2}}\) の2直線のなす角 \( \theta\) 」

を出せばいいわけです。(図参照)

直線のなす角は平行移動しても変わらない

ところで、

「直線は平行移動しても傾きは変わらない」ということはわかっていると思います。
中学数学の1次関数数で「平行」とあれば「傾きが等しい」と一次関数でやりましたよね。

これを利用して、交点を原点に持ってきます。

つまり、両直線の切片を0にするのです。
それでも2直線のなす角 \( \theta\) は同じです。

そして、\( x\) 軸となす角を図のように \( \theta_1 , \theta_2\) とすると、

求める \( \theta\) との関係式は、

 \( \color{red}{\theta=\theta_1-\theta_2}\)

となります。

 \( x\) 軸とのなす角は、\( x\) 軸の右方向とのなす角であることに注意しておいてください。

それぞれ傾きは \( \color{red}{\tan}\) で表されるので、

 \( \tan\theta_1\) が傾き \( 3\) と等しく \( \tan\theta_1=3\)

 \( \tan\theta_2\) が傾き \(\displaystyle \frac{1}{2}\) と等しく \(\displaystyle \tan\theta_2=\frac{1}{2}\)

であり、

  \( \color{red}{\tan\theta=\tan(\theta_1-\theta_2)}\)

ここは先の計算を考えなくて良いので、図で良く確認しておいてください。

 \(\theta=\theta_1-\theta_2\) です。

図を書かないと確認しづらいですよ。

加法定理を利用してなす角を求める

これからは計算処理です。

 \( \tan\) の加法定理を利用すると、

 \( \tan\theta=\tan(\theta_1-\theta_2)\\ \\
=\displaystyle \frac{\tan\theta_1-\tan\theta_2}{1+tan\theta_1\tan\theta_2}\\ \\
=\displaystyle \frac{3-\displaystyle \frac{1}{2}}{1+3\cdot\displaystyle \frac{1}{2}}=\displaystyle \frac{\displaystyle \frac{5}{2}}{\displaystyle \frac{5}{2}}=1\)

より鋭角で \( \tan\theta=1\) を満たすのは

 \( \underline{\theta=\displaystyle \frac{\pi}{4}}\)

「2直線のなす角」には \( tan\) の加法定理をよく使いますので覚えておきましょう。

 \( \tan\) の加法定理を確認しておきます。

 \( \tan(\alpha+\beta)\\ \\
=\displaystyle \frac{\sin(\alpha+\beta)}{\cos(\alpha+\beta)}\\ \\
=\displaystyle \frac{\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta}{\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta}\\ \\
=\displaystyle \frac{\tan\alpha+\tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta}\)

 \( \tan(\alpha-\beta)\\ \\
=\tan\{\alpha+(-\beta)\}\\ \\
=\displaystyle \frac{\tan\alpha+\tan(-\beta)}{1-\tan\alpha\tan(-\beta)}\\ \\
=\displaystyle \frac{\tan\alpha-\tan\beta}{1+\tan\alpha\tan\beta}\)

まとめると

[タンジェントの加法定理]

 \(\displaystyle \color{red}{\tan(\alpha+\beta)=\frac{\tan\alpha+\tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta}}\)

 \(\displaystyle \color{red}{\tan(\alpha-\beta)=\frac{\tan\alpha-\tan\beta}{1+\tan\alpha\tan\beta}}\)

です。

このタンジェントを使った2直線の角度の問題は、
角度の位置関係よりタンジェントの加法定理に目が向きがちになります。
それはそれで良いのですが、大切なのは直線のなす角度を図示するかどうかですよ。
タンジェントの加法定理はおまけの計算だと思って下さい。

ここまでを繰り返して見ておけば大丈夫ですが、
最初に触れたベクトルでの解き方を少しだけ説明しておきます。

ベクトルを使ってなす角を求める

ベクトルを利用するなら方向ベクトルのなす角を求めればいいので、
方向ベクトルの内積をとれば良いだけです。
2直線 \( 3x-y+1\,=\,0 , x-2y+4\,=\,0\) の方向ベクトルは
 \( \vec{a}=(\,1\,,\,3\,)\) と \( \vec{b}=(\,2\,,\,1\,)\) と取れるので、

 \( |\vec{a}|=\sqrt{10}\, , \,|\vec{b}|=\sqrt{5}\)

だから

 \( \vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}|\cdot|\vec{b}|\cos\theta\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} 1\cdot2+3\cdot 1\,=\sqrt{10}\sqrt{5}\cos\theta\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} 5\,=5\sqrt{2}\cos\theta\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} \cos\theta=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} \theta=\displaystyle \frac{\pi}{4}\)

もちろん

 \( \cos\theta=\displaystyle \frac{1\cdot2+3\cdot1}{\sqrt{10}\cdot\sqrt{5}}\\ \\
=\displaystyle \frac{5}{5\sqrt{2}}=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\)

と計算出来る人はしてかまいませんよ。

ここでは直線の傾きとタンジェントの加法定理を利用する解き方を覚えて下さい。
直線の位置関係とタンジェントの加法定理利用です。

タンジェントの加法定理の導き方は

⇒ 三角関数の加法定理と計算問題の解き方

でも詳しく説明しています。

⇒ 三角関数と加法定理の要点

三角関数の総点検です。
加法定理と合成は外せません。