三角関数の加法定理の説明と計算問題の解き方の説明をします。
加法定理は覚えておいてください。行列を使えない人にとっては試験会場で公式を導くことは時間の無駄になります。
2倍角や3倍角、半角の公式は加法定理を覚えてさえいれば試験会場でも何とかなります。
加法定理
確率にも加法定理はありますが、ここでいう加法定理は三角関数の加法定理です。
覚え方は何でも良いです。
下ネタでも何でも口に出さなければ良いのでとにかく加法定理だけは覚えましょう。
2倍角や3倍角の公式や半角の公式は加法定理から導けるので覚えなくても大丈夫です。
覚えることが多いという人は \( (\alpha-\beta)\) は後回しでも良いですよ。
【三角関数の加法定理】
\( \large{\color{red}{\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta}}\) ・・・①
\( \large{\color{red}{\cos(\alpha+\beta)=\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta}}\) ・・・②
先ずはこの2つを必ず覚えて下さい。
「サイン」の覚え方は「咲いたコスモス、コスモス咲いた」が有名です。
「幸子小林、小林幸子」と覚えている高校生も多いですが、
ホント、何でも良いです。
\(\sin\) と \( \cos\) しか出てこないんだから何とかなります。
「コサイン」は、、、お任せします。
とにかく見る頻度を高めて一度覚えると忘れるヒマがないくらい問題に出てきますので、一度は覚える時間を作ると良いですね。
自宅のトイレに貼っておくと少なくとも1日1回は見ることになるので良いかもしれません。
コサインの右辺の第2項の符号がマイナス「-」であることを間違えないようにしましょう。
加法定理の \( \beta\) の符号を変えて見ます。
\( \color{red}{\sin(\alpha-\beta)=\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta}\) ・・・③
\( \color{red}{\cos(\alpha-\beta)=\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta}\) ・・・④
これは \( \sin(\alpha+\beta)\) の \( \beta\) を \( \color{red}{-\beta}\) と換えただけです。
\( \sin(\alpha\color{red}{-\beta})\\ \\
=\sin\left\{\alpha\color{red}{+(-\beta})\right\}\\ \\
=\sin\alpha\cos(\color{red}{-\beta})+\cos\alpha\sin(\color{red}{-\beta})\)
ここで
\(\color{red}{\sin(-\theta)=-\sin\theta} , \color{red}{\cos(-\theta)=\cos\theta}\)
なので
\( \color{red}{\sin(\alpha-\beta)=\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta}\) ・・・③
同様に
\( \color{red}{\cos(\alpha-\beta)}\\ \\
=\cos\left\{\alpha\color{red}{+(-\beta})\right\}\\ \\
=\cos\alpha\cos(\color{red}{-\beta})-\sin\alpha\sin(\color{red}{-\beta})\\ \\
=\color{red}{\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta} ・・・④\)
この符号の入れ換えに大した時間はかかりませんので①②を覚えておきましょう。
「タンジェント」についても触れておきます。
タンジェントの加法定理
\(\displaystyle \tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\)
です。
これに \( \sin\,,\,\cos\) の加法定理①②をあてはめます。
\(\tan(\alpha+\beta)\\ \\
\displaystyle=\frac{\sin(\alpha+\beta)}{\cos(\alpha+\beta)}\\ \\
\displaystyle=\frac{\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta}{\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta} ・・・⑤\)
このままでも使えなくはないですがちょっと変形しておきましょう。
コツが必要ですが \( \tan\) の関係式にしたいのでだいたい思いつくことです。
⑤の分子、分母のすべての項を \( \cos\alpha\cos\beta\) で割ります。
\( \color{red}{\tan(\alpha+\beta)}\\ \\
\displaystyle=\frac{\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta}{\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta}\\ \\ \\
\displaystyle=\frac{\hspace{7pt}\frac{\sin\alpha\cos\beta}{\cos\alpha\cos\beta}\hspace{7pt}+\hspace{7pt}\frac{\cos\alpha\sin\beta}{\cos\alpha\cos\beta}\hspace{7pt}}{\hspace{7pt}\frac{\cos\alpha\cos\beta}{\cos\alpha\cos\beta}\hspace{7pt}-\hspace{7pt}\frac{\sin\alpha\sin\beta}{\cos\alpha\cos\beta}\hspace{7pt}}\\ \\ \\
\displaystyle=\hspace{7pt}\color{red}{\frac{\hspace{7pt}\tan\alpha\hspace{7pt}+\hspace{7pt}\tan\beta\hspace{7pt}}{\hspace{7pt}1-\tan\alpha\tan\beta}\hspace{7pt}} ・・・⑥\)
これがタンジェントの加法定理です。
覚えられる感じですか?
では、覚えましょう。その方が答まではやいです。
符号も換えておきましょう。
\( \tan(\alpha-\beta)\\ \\
=\tan\left\{\alpha+(-\beta)\right\}\\ \\
\displaystyle =\hspace{7pt}\displaystyle \frac{\hspace{7pt}\tan\alpha\hspace{7pt}+\hspace{7pt}\tan(-\beta)\hspace{7pt}}{\hspace{7pt}1-\tan\alpha\tan(-\beta)\hspace{7pt}}\)
ここで
\( \tan(-\theta)=-\tan\theta\)
なので
\(\displaystyle \color{red}{\tan(\alpha-\beta)=\hspace{7pt}\frac{\hspace{7pt}\tan\alpha\hspace{7pt}-\hspace{7pt}\tan\beta\hspace{7pt}}{\hspace{7pt}1+\tan\alpha\tan\beta}\hspace{7pt}} ・・・⑦\)
分母分子の中にある符号が変わるだけですよ。
倍角、半角などの公式は別に説明するのでここまでは何が何でも覚えて下さい。
でないと三角関数を捨てることになりますよ。
ちょっと練習問題を解いておきましょう。
加法定理の計算問題
\( \alpha\,,\,\beta\) は第2象限の角で
\(\displaystyle\sin\alpha=\frac{1}{3}\hspace{7pt},\hspace{7pt}\cos\beta=-\frac{1}{5}\)
であるとき、\( \sin(\alpha-\beta)\) を求めよ。
\( \alpha\,,\,\beta\) を具体的に求めることはできませんので、加法定理を利用します。
\( \alpha\,,\,\beta\) ともに第2象限であることから、
\( \sin\alpha > 0 , \sin\beta >0 , \cos\alpha < 0 , \cos\beta< 0\)
です。
\(\displaystyle\sin\alpha=\frac{1}{3}\) から
\(\displaystyle\cos\alpha=-\sqrt{1-\left(\frac{1}{3}\right)^2}=-\frac{2\sqrt{2}}{3}\)
また
\(\displaystyle\cos\beta=-\frac{1}{5}\) から
\(\displaystyle \sin\beta=\sqrt{1-\left(-\frac{1}{5}\right)^2}=\frac{2\sqrt{6}}{5}\)
後は加法定理に代入するだけです。
③より、
\( \sin(\alpha-\beta)=\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta\\ \\
=\displaystyle \frac{1}{3}\times \left(-\displaystyle \frac{1}{5}\right)-\displaystyle \frac{2\sqrt{6}}{5}\times \left(\displaystyle \frac{-2\sqrt{2}}{3}\right)\\ \\
=\displaystyle \frac{-1+8\sqrt{3}}{15}\)
加法定理の使い道はいろいろとあるのでこれだけで通用するわけではありません。
しかし、ここができないと先はありません。
倍角の公式は短時間で導けます。
⇒ 三角関数の2倍角と3倍角の公式と三角方程式、不等式の解き方
倍角の公式は覚えるか、導くかですが、導き方を説明しています。
覚えられるなら覚えた方が結果を得るまで早いです。
比較的時間の少ない共通テストや私立大学入試などでは活躍しますよ。
三角関数の単元は共通テストの必須単元になっていますね。