漸化式が分数になっていて、逆数をとってもうまく階差数列に持って行けないタイプの問題解説です。
これは簡単には解けませんが、誘導がつくのが普通なので心配しなくて良いです。
ここでは誘導なしでも変形できることが目的なので一般的な解法を示しますが、数字は具体的にしておきます。
逆数をとっても糸口が見つからない漸化式
分数タイプで逆数を取ると階差数列になるものがありました。
しかし、分数のタイプでも逆数をとっても上手くいかないものもあるのです。
数列 \(\{a_n\}\) が次の関係を満たしている。
\( a_1=1\hspace{7pt},\hspace{7pt}a_{n+1}=\displaystyle \frac{a_n+2}{a_n}\)
この数列 \( \{a_n\}\) の一般項を求めよ。
この問題は逆数をとっても上手くいきません。
ちなみにそのまま変形しようとしても
\(\hspace{10pt} a_{n+1}=\displaystyle \frac{a_n+2}{a_n}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} a_{n+1}=1+\displaystyle \frac{2}{a_n}\)
ここからどう変形するか難しいです。
ただ、この漸化式は普通は誘導付きで出題されます。
例えば、
数列 \(\{a_n\}\) が次の関係を満たしている。
\( a_1=1\hspace{7pt},\hspace{7pt}a_{n+1}=\displaystyle \frac{a_n+2}{a_n}\)
(1) \(\displaystyle b_n=\frac{a_n-2}{a_n+1}\) とおくとき、\( b_n\) と \(b_{n+1}\) の関係式を表せ。
(2)数列 \( \{a_n\}\) の一般項 \(a_n\) を求めよ。
この誘導無しが例題7になるのですが、
\(\hspace{10pt}\displaystyle \color{red}{b_n=\frac{a_n-2}{a_n+1}}\)
を見つける方法を今から示します。
分数タイプでも特性方程式が使える漸化式
やり方は簡単ですが2次方程式が出てきますので、
解の数によって場合を分けて説明します。
\(\hspace{10pt} a_{n+1}=\displaystyle \frac{a_n+2}{a_n}\)
において \( \color{red}{a_{n+1}=a_n=t}\) とおきます。
\(\hspace{10pt} t=\displaystyle \frac{t+2}{t}\\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} t^2=t+2\\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} t^2-t-2=0\\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (t+1)(t-2)=0\\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} t=-1\,,\,2\)
2項間漸化式で特性方程式を解いて\(\,\alpha\,\)を求めたときと似てるでしょう?
この\(\,\color{red}{t=-1\,,\,2}\,\)を用いて、
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
b_n&=&\frac{a_n-(\color{red}{-1})}{a_n-\color{red}{2}}\\
&=&\frac{a_n+1}{a_n-2}\end{eqnarray}\)
または
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
b_n&=&\frac{a_n-\color{red}{2}}{a_n-(\color{red}{-1})}\\
&=&\frac{a_n-2}{a_n+1}\end{eqnarray}\)
とおきます。
これが誘導になる部分です。
どちらが分母でどちらが分子でも結果としての数列 \(\{a_n\}\) は変わりません。
この誘導した形を利用して\(\,b_n\,\)の漸化式をつくります。
\(b_n\) と \( b_{n+1}\) の関係式をつくりたいのです。
\(\hspace{10pt} b_n=\displaystyle \frac{a_n+1}{a_n-2}\)
とおくと
\(\hspace{10pt}b_{n+1}=\displaystyle \frac{a_{n+1}+1}{a_{n+1}-2}\)
これにをもとの漸化式
\(\hspace{10pt}\displaystyle \color{red}{a_{n+1}=\frac{a_n+2}{a_n}}\)
を代入します。
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
b_{n+1}&=&\frac{(\color{red}{a_{n+1}})+1}{(\color{red}{a_{n+1}})-2}\\
&=&\frac{\,\left(\displaystyle \color{red}{\frac{a_n+2}{a_n}}\right)+1\,}{\,\left(\displaystyle \color{red}{\frac{a_n+2}{a_n}}\right)-2\,}\\
&=&\frac{a_n+2+a_n}{a_n+2-2a_n}\\
&=&\frac{2a_n+2}{-a_n+2}\\
&=&\frac{2(a_n+1)}{-(a_n-2)}\\
&=&-2\cdot\frac{a_n+1}{a_n-2}\\
&=&-2b_n\end{eqnarray}\)
後半の変形が分かりづらいかもしれないけど、
\(\hspace{10pt}\displaystyle\color{red}{ b_n=\frac{a_n+1}{a_n-2}}\)
の形をつくりたいので何となく分かるでしょう?
強引に変形してもできるようになっていますから自分でもやって見てください。
\(\hspace{10pt} b_{n+1}=-2b_n\)
を解きましょう。等比数列です。
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
b_n&=&b_1\cdot (-2)^{n-1}\\
&=&\frac{a_1+1}{a_1-2}\cdot (-2)^{n-1}\\
&=&\frac{1+1}{1-2}\cdot (-2)^{n-1}\\
&=&-2\cdot (-2)^{n-1}\\
&=&(-2)^n\end{eqnarray}\)
これから数列\(\,\{a_n\}\,\)の一般項\(\,a_n\,\)を求めましょう。
\(\hspace{10pt} b_n=\displaystyle \frac{a_n+1}{a_n-2}\)
なので
\(\hspace{10pt} (-2)^n=\displaystyle \frac{a_n+1}{a_n-2}\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (-2)^n(a_n-2)=(a_n+1)\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (-2)^n a_n-2 (-2)^n=a_n+1\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (-2)^n a_n-a_n= 1 + 2 (-2)^n\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} \{(-2)^n-1\}a_n=1-(-2)\cdot (-2)^n\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} \{ (-2)^n-1 \}a_n=1-(-2)^{n+1}\)
\( ∴ \hspace{7pt} \underline{\underline{ a_n=\displaystyle \frac{1-(-2)^{n+1}}{(-2)^n-1} }}\)
この問題では\(\,a_n\,\)を求めることより\(\,b_n\,\)の関係式をつくることが目標です。
なのでちょっと練習してみましょう。
誘導がつくけど良く出るタイプの漸化式
数列 \( \{a_n\}\) が
\( a_1=4\hspace{7pt},\hspace{7pt} a_{n+1}=\displaystyle \frac{4a_n+3}{a_n+2}\)
を満たすとき数列 \( \{a_n\}\) の一般項 \( a_n\) を求めよ。
誘導までをやっておきますので\(\,a_n\,\)は自分で計算してみてください。
\( a_n=a_{n+1}=t\)
とおくと
\(\hspace{10pt} t=\displaystyle \frac{4t+3}{t+2}\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} t(t+2)=4t+3\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} t^2+2t-4t-3=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} t^2-2t-3=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} (t-3)(t+1)=0\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} t=3\,,\,-1\)
この\(\, t=3\,,\,-1\,\)から
\(\hspace{10pt}\displaystyle \underline{ \color{red}{b_n=\frac{a_n-3}{a_n+1}} }\)
とおくと
\(\hspace{10pt}\displaystyle a_{n+1}=\frac{4a_n+3}{a_n+2}\)
なので(問題にある漸化式です。)
\(\begin{eqnarray} \displaystyle
b_{n+1}&=&\displaystyle \frac{a_{n+1}-3}{a_{n+1}+1}\\
&=& \frac{\displaystyle \color{red}{\frac{4a_n+3}{a_n+2}}-3}{\displaystyle \color{red}{\frac{4a_n+3}{a_n+2}}+1}\\
&=& \frac{4a_n+3-3(a_n+2)}{4a_n+3+a_n+2}\\
&=& \frac{a_n-3}{5a_n+5}\\
&=& \frac{a_n-3}{5(a_n+1)}\\
&=& \frac{1}{5}\,b_n\end{eqnarray}\)
なので等比数列として\(\,b_n\,\)が求まります。
\(\hspace{10pt} t=3\,,\,-1\)
から
\(\hspace{10pt}\displaystyle \underline{ \color{red}{b_n=\frac{a_n+1}{a_n-3}} }\)
と分母分子の\(\,t\,\)を入れかえても公比は変わりますが、同じように
\( b_{n+1}=5b_n\)
と求めることはできますよ。
これが誘導されている形の出所です。
\(\hspace{10pt} a_n=\displaystyle \frac{3\cdot 5^n-1}{5^n-1}\)
となるか確かめて見てください。
ここで1つ追加しておきます。
\(\,t\,\)の方程式の解が重解
のときです。
\(\,t\,\)が重解で\( \,\alpha\, \)だとすると
\(\hspace{10pt} b_n=\displaystyle \frac{1}{a_n-\alpha}\)
とおけば、と誘導される形になります。
いずれにしても普通の大学入試では誘導されないことはないと思うので気にする必要はありません。
このタイプが誘導無しでできるようになるくらいなら漸化式はほぼ大丈夫です。
普通の2項間、3項間漸化式ができるようになる方が先ですけどね。
⇒ 漸化式の解き方パターン一覧と一般項の求め方まとめ(階差数列、分数、累乗など)
2項間漸化式の特性方程式と等比数列が大きなポイントですね。