ベクトル方程式によって表される三角形の面積比の問題は良くありますが、最初にやるべきことはとりわけ特別なことではありません。
ベクトルをあつかう際の基本通りで良いことを問題の解き方を見ながら確認しておきましょう。
処理が終われば面積比については中学の図形の知識があれば十分です。

ベクトル方程式とは

ベクトル方程式とは、ベクトルで図形を表した方程式のことです。
当たり前のことをいっているので分かりにくいかもしれませんね。

例えば、
中心が原点で半径 \(r\) の円を座標系で表すと

 \( x^2+y^2=r^2\)

となりますよね。
これをベクトル方程式で表すと、
原点中心で半径 \( r\) の円周上の点Pとを結ぶベクトルを \( \overrightarrow{OP}\) とすると

 \( \color{red}{|\overrightarrow{OP}|=r}\)

とベクトルを用いて、
中心と円周上の点との距離が一定」、
という円の定義に基づいたベクトルの関係式で表せるのです。

このような方程式をベクトル方程式といいます。

ただ、「ベクトル方程式とは何か?」を考えるより、
ベクトル方程式があって、何が言えるか?の方が大切ですよ。
はっきり言ってベクトル方程式なんて言葉は後回しでもいいくらいです。

ベクトル方程式を1からやるのは長くなるので、
ちょっとした有名問題を取り上げて説明します。

例題

 平面上の異なる4点A,B,C,Pは
 \( 2\overrightarrow{PA}+3\overrightarrow {PB} +4\overrightarrow{PC}=\overrightarrow{0}\)
 をみたしている。このとき、△ABCと△PBCの面積比を求めよ。

実は、
 正の数 \( k , l , m\) において
 \( \color{red}{k}\overrightarrow{PA}+\color{red}{l}\overrightarrow {PB} +\color{red}{m}\overrightarrow{PC}=\overrightarrow{0}\)
 が成り立つとき、

 \( \triangle PBC:\triangle PAC:\triangle PAB=\color{red}{k:l:m}\)

になると分かっているので、

 \( \triangle ABC=\triangle PBC+ \triangle PAC+ \triangle PAB\)

より

 \( \triangle ABC:\triangle PBC\\ \\
=(2+3+4):2=9:2\)

と答えだけならすぐに出せます。

ですが、ベクトルの基本的な処理方法に沿っていけば、知らなくても答えが出せるということを示しておきます。

ベクトルをあつかうときの基本

平面ベクトルをあつかうときの基本は、
 「始点を1つにする
 「2つの独立なベクトルで表す
をできるだけ徹底することです。

 \( 2\overrightarrow{PA}+3\overrightarrow {PB} +4\overrightarrow{PC}=\overrightarrow{0}\)

は始点はそろっているように見えますが、3つのベクトルで成り立っています。

ちょっとわかりにくいかもしれません。
△ABCと△PBCの面積比較なので「△ABCがあって」どこかに「点Pがある」と考えると、
始点をAとして \(\overrightarrow{AB}\) と \( \overrightarrow{AC}\) の2つで表せば良いのではないかと考えたわけです。

△の位置関係からAを始点に換えます。

 \( 2\overrightarrow{PA}+3\overrightarrow {PB} +4\overrightarrow{PC}=\overrightarrow{0}\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{10pt} -2\overrightarrow{AP}
+3(\overrightarrow {AB}- \overrightarrow{AP})
+4(\overrightarrow{AC}-\overrightarrow{AP})=\overrightarrow{0}\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{10pt} -9\overrightarrow{AP}
+3\overrightarrow {AB}
+4\overrightarrow{AC}=\overrightarrow{0}\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{10pt} 9\overrightarrow{AP}
=3\overrightarrow {AB}+4\overrightarrow{AC}\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{10pt} \overrightarrow{AP}
=\displaystyle \frac{3}{9}\overrightarrow {AB}+\displaystyle \frac{4}{9}\overrightarrow{AC}\)

(ベクトルでは約分せず分母を同じにしておくと比があつかいやすくなります。)

APを延長してBCとの交点Qまでを考えれば

 \( \overrightarrow{AP}
=\displaystyle \frac{7}{9}\left( \displaystyle \frac{3}{7}\overrightarrow {AB}+\displaystyle \frac{4}{7}\overrightarrow{AC}\right)
=\displaystyle \frac{7}{9} \overrightarrow{AQ}\)

と変形できて

 \( AP:PQ=7:2\)

底辺は共通しているので
△ABC:△PBC=9:2
と答えは同じように出てきます。

上のベクトル方程式の変形をメンドウだと思う人はベクトルは捨てても良いです。
始点をそろえるという作業がメンドウに感じるならベクトルは無理です。

2つのベクトルの終点を結ぶ直線上にあるとき

 \( \overrightarrow{AP}
=\displaystyle \frac{3}{9}\overrightarrow {AB}+\displaystyle \frac{4}{9}\overrightarrow{AC}\hspace{10pt}\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{10pt} \overrightarrow{AP}
=\displaystyle \frac{7}{9}\left( \displaystyle \frac{3}{7}\overrightarrow {AB}+\displaystyle \frac{4}{7}\overrightarrow{AC}\right)\)

の変形が難しいと感じるかもしれませんが、

 \( \overrightarrow{AP}
=\displaystyle \frac{3}{9}\overrightarrow {AB}+\displaystyle \frac{4}{9}\overrightarrow{AC}\)

点QはAPの延長にあるから

 \( \overrightarrow{AQ}=k\overrightarrow{AP}
=k\left(\displaystyle \frac{3}{9}\overrightarrow {AB}+\displaystyle \frac{4}{9}\overrightarrow{AC}\right)\)

とおいてQはBC上の点(2つのベクトルの終点を結ぶ直線上の点)だから

 \(\displaystyle \frac{3}{9}k+\frac{4}{9}k=1\) より \(\displaystyle k=\frac{9}{7}\) と出せば、

 \( \overrightarrow{AQ}=\displaystyle \frac{9}{7}\overrightarrow{AP}\\ \\
=\displaystyle \frac{9}{7}\left(\displaystyle \frac{3}{9}\overrightarrow {AB}+\displaystyle \frac{4}{9}\overrightarrow{AC}\right)\\ \\
=\displaystyle \frac{3}{7}\overrightarrow {AB}+\displaystyle \frac{4}{7}\overrightarrow{AC}\)

であり

 \( \overrightarrow{AQ}=\displaystyle \frac{9}{7}\overrightarrow{AP}\\ \\
\hspace{10pt}
\Leftrightarrow \hspace{10pt} \overrightarrow{AP}=\displaystyle \frac{7}{9}\overrightarrow{AQ}\)

となることだけを考えれば、

 \( \overrightarrow{AP}
=\displaystyle \frac{7}{9}\left( \displaystyle \frac{3}{7}\overrightarrow {AB}+\displaystyle \frac{4}{7}\overrightarrow{AC}\right)\)

とすることはそれほど難しいことではない、
と思うのですが、難しいですか?
ここができない高校生が多いのは事実です。

2つのベクトルの終点を結ぶ直線上の点Pにおいて、

 \( \overrightarrow {AP}= \color{red}{s}\overrightarrow {AB}+ \color{red}{t}\overrightarrow {AC}\)

の係数の関係 \( \color{red}{s+t=1}\) がうまく使えていないだけなのでしっかり復習しておきましょう。

さて、最初に書いた

 \( k\overrightarrow{PA}+l\overrightarrow {PB} +m\overrightarrow{PC}=\overrightarrow{0}\)

が成り立つとき、

 \( \triangle PBC:\triangle PAC:\triangle PAB=k:l:m\)

を確認してみます。

 \( \triangle ABC=9\) のとき \( \triangle PBC=2\) でした。

 \( BQ:QC=4:3 \hspace{10pt} \Leftrightarrow \hspace{10pt} \triangle ABQ:\triangle ACQ=4:3\)

なので、

 \( \triangle ACQ=\displaystyle \frac{3}{7}\times 9=\displaystyle \frac{27}{7}\)

 \( \triangle ABQ=\displaystyle \frac{4}{7}\times 9=\displaystyle \frac{36}{7}\)

であり、

 \( \triangle PAC=\triangle ACQ \times \displaystyle \frac{7}{9}=\displaystyle \frac{27}{7}\times \displaystyle \frac{7}{9}=3\)

 \( \triangle PAB=\triangle ABQ \times \displaystyle \frac{7}{9}=\displaystyle \frac{36}{7}\times \displaystyle \frac{7}{9}=4\)

となり、

 \( 2\overrightarrow{PA}+3\overrightarrow {PB} +4\overrightarrow{PC}=\overrightarrow{0}\)

を満たすとき、確かに

 \( \triangle PBC:\triangle PAC:\triangle PAB=2:3:4\)

となっていますね。

係数の値と三角形の位置がどう対応するのかですが、

Pで三角形を三分割したとき

 \( \overrightarrow{PA}\) の係数は、Aを含んでいない三角形
 \( \overrightarrow{PB}\) の係数は、Bを含んでいない三角形
 \( \overrightarrow{PC}\) の係数は、Cを含んでいない三角形

に対応します。図で確認して下さい。

この関係式は覚えておく必要はないけど、
ベクトルを使えるようになりたければ導けるようにはなっておいた方が良いかもしれませんよ。

ベクトルも基本が大切です。

⇒ ベクトルの基本 平面図形と内分点への利用

つまずいたら、基本からやり直すことが結局は近道になります。

⇒ 空間ベクトルで同一平面上にある条件問題を解く方法

ベクトルの終点について空間の要点を1つおさえておきましょう。