2次方程式の2解が三角関数で表されているときの問題の解き方です。
解と係数の関係を使うことになりますがその形から2倍角の公式をつなげて使うことが多いです。
倍角の公式は覚えるか、加法定理からその場で導くかになりますので、加法定理そのものは覚えておく必要があります。

ここはとりわけ新しいことをするわけではありません。
三角関数で表された解を2次方程式の解と係数の関係に利用するだけです。

「解と係数の関係」と「倍角の公式」を確認しておきます。

2次方程式の解と係数の関係

 【解と係数の関係】

 \( a\neq 0\) とする。
 \( ax^2+bx+c=0\) の2解を \( \alpha\,,\,\beta\) とすると

 \( \begin{cases}
\displaystyle \alpha+\beta=-\frac{b}{a} \\ \\
\displaystyle \alpha\beta=\frac{c}{a}
\end{cases}\)

解と係数の関係は3次方程式にもあります。
⇒ 解と係数の関係 2次方程式と3次方程式

確認ができたら早速問題を解いてみましょう。

例題

 2次方程式 \( 2x^2-\sqrt{3} x+k=0\) の2解が
 \( \sin\theta\,,\,\cos\theta (0≦ \theta ≦\pi)\) であるとき、
 \( k\) の値,および \( \cos 2\theta\) の値を求めよ。

「2次方程式の2解が」と問題にあったら、「解と係数の関係」に気が向くでしょう。
それで良いですよ。解の公式は後回しで良いです。

 \(2x^2-\sqrt{3}x+k=0\) の2解が
 \(\sin\theta , \cos\theta (0≦ \theta≦\pi)\) なので、
解と係数の関係より、

 \( \begin{cases}
\hspace{7pt}\sin\theta+\cos\theta=\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \\ \\
\hspace{7pt}\sin\theta\cos\theta=\displaystyle \frac{k}{2}
\end{cases}\)

条件はこれだけです。
上の式を両辺2乗すると、

 \( (\sin\theta+\cos\theta)^2=\displaystyle \frac{3}{4}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt}\sin^2\theta+2\sin\theta\cos\theta +\cos^2\theta=\displaystyle \frac{3}{4}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} 1+2\sin\theta\cos\theta=\displaystyle \frac{3}{4}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} 2\sin\theta\cos\theta=\displaystyle \frac{3}{4}-1\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} 2\sin\theta\cos\theta=-\displaystyle \frac{1}{4}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} \sin\theta\cos\theta=-\displaystyle \frac{1}{8}\)

この2乗するところがポイントになります。
これに下の式を代入すると、

 \( \sin\theta\cos\theta=\displaystyle \frac{k}{2}\)

だから

 \( \displaystyle \frac{k}{2}=-\displaystyle \frac{1}{8}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} \underline{k=-\displaystyle \frac{1}{4}}\)

となります。

 \( (\sin\theta+\cos\theta)^2=\displaystyle \frac{3}{4}\)

を展開した途中の

 \( 1+2\sin\theta\cos\theta=\displaystyle \frac{3}{4}\)

が出たところで、下の式を代入して

 \( 1+2\times \displaystyle \frac{k}{2}=\displaystyle \frac{3}{4}\)

から \( k\) を求めても良いですよ。

 \( \underline{k=-\displaystyle \frac{1}{4}}\)

次に \( \cos 2\theta\) の値です。

加法定理と倍角の公式の導き方

倍角(2倍角)の公式の導き方について触れておきます。
 加法定理

 \( \sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha \cos\beta+\cos\alpha \sin\beta\) ・・・①

において、\( \beta=\color{red}{\alpha}\) を代入すると、

 \( \sin(\alpha+\color{red}{\alpha})=\sin\alpha \cos\color{red}{\alpha}+\cos\alpha \sin\color{red}{\alpha}\\ \\
\Leftrightarrow  \sin 2\alpha =2\sin\alpha\cos\alpha ・・・②\)

コサインの倍角は3通りの使い方

同様に加法定理

 \( \cos(\alpha+\beta)=\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta\) ・・・③

から

 \( \cos(\alpha+\alpha)=\cos\alpha\cos\alpha-\sin\alpha\sin\alpha\\ \\
\Leftrightarrow  \cos2\alpha=\cos^2\alpha-\sin^2\alpha ・・・④\)

これを \( \sin\alpha\) と \( \cos\alpha\) のどちらか一方で表すことができます。

 \( \color{red}{\sin\alpha }\) だけで表すと

 \( \cos2\alpha=\color{red}{\cos^2\alpha}-\sin^2\alpha\\ \\
   = (\color{red}{1-\sin^2\alpha})-\sin^2\alpha\\ \\
   =1-2\sin^2\alpha  ・・・⑤\)

 \( \color{red}{\cos\alpha}\) だけで表すと

 \( \cos2\alpha=\cos^2\alpha-\color{red}{\sin^2\alpha}\\ \\
   = \cos^2\alpha-(\color{red}{1-\cos^2\alpha})\\ \\
   =2\cos^2\alpha-1 ・・・⑥\)

これらが \( \sin\,,\,\cos\) の倍角の公式です。

覚えなくても加法定理さえあればそれほど時間を必要とせず導けるでしょう。
 \( \cos\) の倍角は3通りの使い方があるので導いた方が使い道多いです。

 \( \tan2\alpha\) についても

 \( \tan(\alpha+\beta)=\displaystyle \frac{\tan\alpha+\tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta}\)

に \(\beta=\alpha\) を代入するだけで簡単に導けます。

では \( \cos 2\theta\) を求めましょう。

 \( \cos(\theta+\theta)=\cos\theta\cos\theta-\sin\theta\sin\theta\)

 \( \color{red}{\cos2\theta=\cos^2\theta-\sin^2\theta }\) ・・・④

 \( \color{red}{\cos2\theta=1-2\sin^2\theta }\) ・・・⑤

 \( \color{red}{\cos2\theta=2\cos^2\theta-1 }\) ・・・⑥

のどれかを使います。

⑤と⑥を使う場合は \( \sin\theta\,,\,\cos\theta\) の値を具体的に求める必要が出てくるので④を利用してみましょう。

因数分解して、

 \( \cos2\theta = \cos^2\theta-\sin^2\theta= (\cos\theta+\sin\theta)(\cos\theta-\sin\theta)\)

とすれば、\( (\cos\theta+\sin\theta)\) は解と係数の関係そのまま使えます。

問題は \( (\cos\theta-\sin\theta)\) ですが、何度もやってきたでしょう。
2乗します。

 \( (\cos\theta-\sin\theta)^2\\ \\
=1-2\sin\theta\cos\theta\\ \\
=1-2\times \displaystyle \frac{k}{2}\\ \\
=1-2\times \left(-\displaystyle \frac{1}{8}\right)\\ \\
=1+\displaystyle \frac{1}{4}=\displaystyle \frac{5}{4}\)

ここで平方根をとりますが \( 0≦ \theta ≦\pi\) であることと、

 \( \sin\theta\cos\theta=\displaystyle \frac{k}{2}=-\displaystyle \frac{1}{8}< 0\)

であることから \( \sin\,,\,\cos\) のどちらかが「-」なので \( \theta\) は第2象限と分かります。

 \( \sin\theta >0\,,\,\cos\theta < 0\)

だから、\( (\cos\theta-\sin\theta)< 0\) となるので、
 
 \( (\cos\theta-\sin\theta)=-\displaystyle \frac{\sqrt{5}}{2}\)

したがって、

 \( (\sin\theta+\cos\theta)=\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}\)

だったので

 \( \cos 2\theta=(\cos\theta+\sin\theta)(\cos\theta-\sin\theta)\\ \\
=\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}\times \left(-\displaystyle \frac{\sqrt{5}}{2}\right)=\underline{-\displaystyle \frac{\sqrt{15}}{4}}\) 

 \( \cos\) の倍角の公式は使い方がいろいろあります。
半角の公式も \(\cos\) の倍角からです。

覚えにくいときは公式を覚える必要はありませんが、使い方を覚えておきましょう。

ところで、\(\displaystyle k=-\frac{1}{4}\) とわかった時点で

 \( 2x^2-\sqrt{3}x-\displaystyle \frac{1}{4}=0\)

と2次方程式が定まったときにこの2次方程式を解くと、

 \( 2x^2-\sqrt{3}x-\displaystyle \frac{1}{4}=0\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} 8x^2-4\sqrt{3}x-1=0\)

これに解の公式を使って

 \( x=\displaystyle \frac{2\sqrt{3}\pm \sqrt{(2\sqrt{3})^2-8\times (-1)}}{8}\\ \\
=\displaystyle \frac{2\sqrt{3}\pm \sqrt{12+8}}{8}\\ \\
=\displaystyle \frac{2\sqrt{3}\pm \sqrt{20}}{8}\\ \\
=\displaystyle \frac{2\sqrt{3}\pm 2\sqrt{5}}{8}\\ \\
=\displaystyle \frac{\sqrt{3}\pm \sqrt{5}}{4}\)

となり \(\sin\theta>0\,,\,\cos\theta< 0\) から

 \( \sin\theta=\displaystyle \frac{\sqrt{3}+ \sqrt{5}}{4}\,,\,\cos\theta=\displaystyle \frac{\sqrt{3}- \sqrt{5}}{4}\)

と求めることができるので、公式に代入して

 \( \cos 2\theta=2\cos^2\theta-1\\ \\
=2\left(\displaystyle \frac{\sqrt{3}- \sqrt{5}}{4}\right)^2-1\\ \\
=2\left(\displaystyle \frac{3-2\sqrt{15}+5}{16}\right)-1\\ \\
=\displaystyle \frac{8-2\sqrt{15}}{8}-1\\ \\
=\displaystyle \frac{4-\sqrt{15}}{4}-1\\ \\
=\displaystyle \frac{4-\sqrt{15}-4}{4}\\ \\
=\displaystyle \frac{-\sqrt{15}}{4}\)

などのように別の2倍角の形でも求めることもできます。
しかし、これはいくら何でも2倍角を限定しすぎでしょう。

⇒ 三角関数の2倍角と3倍角の公式と三角方程式、不等式の解き方

3倍角の公式までを導いておきますが、

⇒ 三角関数の加法定理と計算問題の解き方

何より、加法定理を使いこなすことを優先しましょう。