関数の中に定積分が項として部分的にある関数の求める問題と求め方のポイント、解き方を説明します。
高校生が特に苦手にしている項目です。
定積分全体が関数という場合は、微分積分法の基本定理で変数の変換によって簡単に求まります。
しかし、今回のケースでは明らかな違いがありますので確認しておきましょう。
関数の中の定積分は定数
「関数の中に定積分」といっても分かりにくいので早速問題です。
次の式を満たす関数 \( f(x)\) を求めよ。
\(\hspace{10pt} \displaystyle f(x)=x^2+2\int_0^1 f(x)dx\)
全体が定積分になっている
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_a^xf(t)dt=x^3-3x+2\)
の\( \,f(x)\,\)を求める問題とは違います。
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_0^1 f(x)dx\)
は定数だということをしっかり意識しておきましょう。
定積分
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_0^1 f(x)dx\hspace{10pt}(=F(1)-F(0)\,)\)
は定数なので、
\(\hspace{10pt}\displaystyle \underline{\int_0^1 f(x)dx=\color{red}{a}}\) ・・・①
と置いてしまいましょう。
すると、
\(\begin{eqnarray}\displaystyle f(x)&=&x^2+2\underline{\int_0^1 f(x)dx}\\
&=&x^2+2\,\underline{\color{red}{a}}
\end{eqnarray}\)
となり、\( f(x)\) は2次関数になります。
この定積分の部分を定数として置き換えてしまうというのがポイントです。
関数 \( f(x)\) が2次関数と分かったところで①の
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_0^1 f(x)dx=a\)
にもう一度戻します。
ここが思いつきにくい?ところなので「何を定数としたか」思い出してください。
\(\hspace{10pt}\displaystyle \int_0^1 \color{red}{f(x)}dx=a\\ \\
\displaystyle \hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} \int_0^1 (\color{red}{x^2+2a})dx=a
\)
左辺は
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_0^1 (x^2+2a)dx\\ \\
\displaystyle =\left[ \frac{1}{3}x^3+2ax\right]_0^1\\ \\
\displaystyle =\frac{1}{3}+2a\)
これが右辺の \( a\) と等しくなるので
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{1}{3}+2a=a\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} a=-\displaystyle \frac{1}{3}\)
よって
\(\begin{eqnarray} f(x)&=&x^2+2a\\
&=&x^2+2\left(-\displaystyle \frac{1}{3}\right)\\
&=&\underline{x^2-\displaystyle \frac{2}{3}}
\end{eqnarray}\)
①と置きかえた後、①ではなく
\( \displaystyle f(x)=x^2+2\int_0^1 f(x)dx\)
に戻したとすると
\(\hspace{10pt}\displaystyle x^2+2a=x^2+2\int_0^1 (x^2+2a)dx\\
\displaystyle \hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} x^2+2a=x^2+2\left[ \frac{1}{3}x^3+2ax\right]_0^1\\
\displaystyle \hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} x^2+2a=x^2+2\left(\displaystyle \frac{1}{3}+2a\right)\\
\displaystyle \hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} x^2+2a=x^2+4a+\displaystyle \frac{2}{3}\)
と計算を進めて(計算は右辺だけでも良いです。)
\(\displaystyle 2a=4a+\frac{2}{3}\) より \(\displaystyle a=-\frac{1}{3}\)
でも良いですね。
問題集などの解答でよく見かけるのは①の両辺を入れ換えて
\(\begin{eqnarray} \displaystyle
a&=&\int_0^1 (x^2+2a)dx\\
&=&\left[ \frac{1}{3}x^3+2ax\right]_0^1\\
&=& \frac{1}{3}+2a
\end{eqnarray}\)
と要領よく右辺だけを変形して定数を決めていく方法ですね。
覚えてしまって良いくらいの要領のいい計算です。
次は少しだけ応用してみましょう。
(応用ってほどではありませんが)
定数と変数の見極め
関数 \(f(x)\) が等式
\(\hspace{10pt} \displaystyle f(x)=x^2+\int_0^1xf(\,t\,)\,dt+\int_0^2f(\,t\,)\,dt\)
をみたすとき、\( f(x)\) を求めよ。
考え方は例題1と同じです。
定積分部分を文字を使って定数で置きかえます。
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_0^1 f(t)dt\hspace{7pt},\hspace{7pt}\int_0^2 f(t)dt\)
が定数になる、ということが分かっていれば難しくはありません。
注意するのは積分変数が\(\,t\,\)のとき\(\,x\,\)は定数扱いです。
\(\begin{eqnarray} \displaystyle f(x)&=&x^2+\hspace{5pt}\int_0^1 \color{red}{x}f(\,t\,)\,dt+\int_0^2f(\,t\,)\,dt\\
&=&x^2+\hspace{5pt}\color{red}{x}\int_0^1f(\,t\,)\,dt+\int_0^2f(\,t\,)\,dt
\end{eqnarray}\)
ここで
\( \hspace{10pt}\displaystyle \int_0^1 f(t)dt\hspace{7pt},\hspace{7pt}\int_0^2 f(t)dt\)
は定数なので
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_0^1 f(t)dt=a\hspace{7pt},\hspace{7pt}\int_0^2 f(t)dt=b\)
とおくと関数 \( f(x)\) は
\(\hspace{10pt} f(x)=x^2+ax+b\)
という2次関数で表すことができました。
\( f(x)=x^2+ax+b\)
部分的に\(\,t\,\)で積分するので\(\,x\,\)を\(\,\color{red}{t}\,\)に置き換え
\( f(t)=\color{red}{t^2}+a\color{red}{t}+b\)
これから
\( \displaystyle f(x)=x^2+\int_0^1 x(t^2+at+b)dt + \int_0^2 (t^2+at+b)dt \) ・・・②
として、\(\,t\,\)を積分変数として定積分を計算すれば係数比較ででますが、
\(\hspace{10pt}\displaystyle \int_0^1 f(t)dt =a\)
\(\hspace{10pt} \displaystyle \int_0^2 f(t)dt =b\)
を計算した方がすっきりしていて早いです。
\( \displaystyle a=\int_0^1 f(t)dt\\
\displaystyle = \int_0^1 (t^2+at+b)dt\\
\displaystyle = \left[\frac{1}{3}t^3+\frac{1}{2}at^2+bt\right]_0^1\\
\displaystyle =\frac{1}{3}+\frac{1}{2}a+b\)
\( \displaystyle b=\int_0^2 f(t)dt\\
\displaystyle = \int_0^2 (t^2+at+b)dt\\
\displaystyle = \left[\frac{1}{3}t^3+\frac{1}{2}at^2+bt\right]_0^2\\
\displaystyle =\frac{8}{3}+2a+2b\)
この2つの関係式から \(a\,,\,b\) を求めると
\(\hspace{10pt} \begin{cases}
\hspace{7pt} a=\displaystyle \frac{1}{3}+\displaystyle \frac{1}{2}a+b \\
\hspace{7pt} b=\displaystyle \frac{8}{3}+2a+2b \\
\end{cases}\)
\(\hspace{10pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt}
\begin{cases}
\hspace{7pt} 6a=2+3a+6b \\
\hspace{7pt} 3b=8+6a+6b \\
\end{cases}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt}
\begin{cases}
\hspace{7pt} 3a-6b=2 \\
\hspace{7pt} -6a-3b=8 \\
\end{cases}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} a=-\displaystyle \frac{14}{15}\,,\,b=-\displaystyle \frac{4}{5}\)
よって求める関数 \( f(x)\) は、
\( \underline{ f(x)=x^2-\displaystyle \frac{14}{15}x-\displaystyle \frac{4}{5} }\)
定数になる \( a\,,\,b\) に気がつくかどうかです。
定積分を計算せずに関数を求めようなんて考えないでください。
微分積分法の基本定理だけで答がでる問題の方がすくないし、定積分するのが普通ですからね。
恒等式として係数比較する方法
②を係数比較する方もやっておきます。
\( \displaystyle f(x)=x^2+\int_0^1 x(t^2+at+b)dt + \int_0^2 (t^2+at+b)dt \)
と
\( f(x)=x^2+ax+b\)
の係数比較です。
②を具体的に定積分します。
\(\begin{eqnarray} \displaystyle f(x)&=&x^2+\int_0^1 x(t^2+at+b)dt + \int_0^2 (t^2+at+b)dt\\
&=& x^2+x\int_0^1 (t^2+at+b)dt + \int_0^2 (t^2+at+b)dt\\
&=&x^2+x\left[ \frac{1}{3}t^3+\frac{1}{2}at^2+bt \right]_0^1+\left[ \frac{1}{3}t^3+\frac{1}{2}at^2+bt \right]_0^2\\
&=&x^2+\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{2}a+b\right)x+\left(\frac{8}{3}+2a+2b\right)
\end{eqnarray}\)
これと
\( f(x)=x^2+ax+b\)
の係数を比較して同じ答が出てきます。
答が大事なのではありません。
「定積分の部分を定数で置く」
ということが大きなポイントです。
違いをしっかり見ておきましょう。
ここまで微分と積分が理解できたら次は簡単です。
きっと、面積を求める定積分は簡単に感じるようになっていますよ。
微分と積分は逆演算なので切り離せない、というのは忘れないように全体を見渡しておくと良いです。