階差数列の公式を導き方から確認しておきます。
階差数列を表す漸化式の形は決まっているので見抜くのは簡単ですが、
一般項を求める問題でポイントになるのは公式です。
ただ、公式がなくても階差数列の一般項は求めることができますので公式がすべてではありません。

漸化式とは

 数列 \(\{a_n\}\) が
 \( a_1\,,\,a_2\,,\,a_3\,,\,\cdots \,,\,a_{n-1}\,,\,a_n\)

となっているとき、
 \( a_{n-1}\) と \( a_n\) の関係を表した式を漸化式といいます。

分かり易い例でいうと、
公差が3の等差数列の場合、次の項は前の項より3増えるので
 \( a_n=a_{n-1}+3\)

公比が2の等比数列の場合、次の項は前の項の2倍になるので
 \( a_n=2a_{n-1}\)

のように表された式のことです。

漸化式の解き方は別に詳しく説明しますので今は漸化式という言葉だけでも知っておいてください。

階差数列と一般項

階差数列とは、
 
 数列 \( \{a_n\}\) 
 \( a_1\,,\,a_2\,,\,a_3\,,\,\cdots \,,\,a_{n-2}\,,\,a_{n-1}\,,\,a_n\)

の各項の差
 \( (a_2-a_1)\,,\,(a_3-a_2)\,,\,\cdots \,,\,(a_{n-1}-a_{n-2})\,,\,(a_n-a_{n-1})\)

のことをいいます。
 この階差を \( b_n\) と表すと
 \( b_1\,,\,b_2\,,\,\cdots\,,\,b_{n-2}\,,\,b_{n-1}\)

となりますが、注意するのは2つの項の差を取ったものなので項数が \( \color{red}{n-1}\) 項しかないということです。
階差は2つ以上の項がないと存在しないので \( n≧ 2\) で定義されます。

階差数列の定義

 【定義】(階差数列の定義)

 数列 \(\{a_n\}\) に対して、

 \( b_n=a_{n+1}-a_n \hspace{7pt}(n=1\,,\,2\,,\,\cdots)\)

で定まる数列 \(\{b_n\}\) を\( \{a_n\}\) の階差数列という。

1つひとつの関係式を見てみると
 \( b_1=a_2-a_1\)
 \( b_2=a_3-a_2\)
 \( b_3=a_4-a_3\)
 \( \cdots \)
 \( b_{n-2}=a_{n-1}-a_{n-2}\)
 \( b_{n-1}=a_n-a_{n-1}\)

ちょっと見方を変えてみます。

 \( a_2 = a_1 + b_1\)
 \( a_3 = a_2 + b_2\)
 \( a_4 = a_3 + b_3\)
 \( \cdots\)
 \( a_{n-2} = a_{n-3} +b_{n-3}\)
 \( \underline{\color{red}{a_{n-1}}}= a_{n-2} +b_{n-2}\)
 \( a_n = \underline{\color{red}{a_{n-1}}} + b_{n-1}\)

と移項すると
 \( a_{n-1} = a_{n-2} +b_{n-2}\)

なので \( a_{n}\) に代入すると

 \( a_n=\underline{\color{red}{a_{n-1}}} + b_{n-1}\\ \\
= (\underline{ \color{red}{a_{n-2} +b_{n-2}}})+ b_{n-1}\\ \\
= a_{n-2} +b_{n-2}+ b_{n-1}\)

さらに、
 \( a_{n-2} = a_{n-3} +b_{n-3}\)

なので \( a_{n}\) の \( a_{n-2}\) に代入すると

 \( a_n=\underline{\color{red}{a_{n-2}}} +b_{n-2}+ b_{n-1}\\ \\
= (\underline{\color{red}{a_{n-3} +b_{n-3}}})+b_{n-2}+ b_{n-1}\\ \\
=a_{n-3} +b_{n-3}+b_{n-2}+ b_{n-1}\)

これを繰り返すと最終的に
 \( a_n=a_1+b_1+b_2+\cdots +b_{n-2}+b_{n-1}\) ・・・①

となり、\( \displaystyle \Sigma\) を使って表すと階差数列の定理(公式)が出来上がります。

階差数列によるもとの数列の復元定理

 【定理】(階差数列による数列の復元)

  \( \displaystyle a_n=a_1 + \sum_{k=1}^{n-1} b_k \hspace{15pt} (n=2\,,\,3\,,\,\cdots)\)

 ( \( \Sigma\) は「和」ですよ。)

⇒ 数列のシグマ(Σ)の意味と公式と計算方法

証明は簡単で、上で並べた両辺を足せば終わります。

 \( b_k=a_{k+1}-a_k\) なので

 \( \displaystyle \sum_{k=1}^{n-1} b_k=\sum_{k=1}^{n-1} (a_{k+1}-a_k)\)

右辺を具体的に書き出すと

 \(\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1} b_k=(a_2-a_1)+(a_3-a_2)+\cdots +(a_{n-1}-a_{n-2})+(a_{n}-a_{n-1})\\ \\
  =-a_1+\underline{(a_2-a_2)+(a_3-a_3)+\cdots -a_{n-2} +(a_{n-1}-a_{n-1})}+a_{n}\\ \\
  =-a_1+a_n\)

つまり

 \( \displaystyle \sum_{k=1}^{n-1} b_k=-a_1+a_n\\ \\
\displaystyle\Leftrightarrow  a_n=a_1+\sum_{k=1}^{n-1} b_k (n\,≧\,2)\)

例題を解いておきましょう。

例題

 \( a_1=2\,,\hspace{7pt}a_{k+1}-a_k=k+3\\ \\
\hspace{10pt}(k=1\,,\,2\,,\,3\,,\,\cdots)\)

で定義される数列 \(\{a_k\}\) がある。

(1)一般項 \( a_k\) を求めよ。

(2)初項から第 \( n\) 項までの和を求めよ。

(1)
階差数列の公式を利用するとはやいです。

 \( k\,≧\,2\) として

 \( \displaystyle a_k=a_1+\sum_{m=1}^{k-1}(m+3)\\ \\
\displaystyle =2+ \sum_{m=1}^{k-1}m+\sum_{m=1}^{k-1} 3\\ \\
=2+\displaystyle \frac{1}{2}(k-1)k+3(k-1)\\ \\
=2+\displaystyle \frac{1}{2}k^2-\displaystyle \frac{1}{2}k+3k-3\\ \\
=\displaystyle \frac{1}{2}(k^2+5k-2)\)

ただし、これが言えるのはまだ \( k\,≧\,2\) のときだけです。

 \( k=1\) とすると

 \( a_1=\displaystyle \frac{1}{2}(1^2+5-2)=2\)

で条件にある \(a_1=2\) に一致します。

よって

 \( \underline{a_k=\displaystyle \frac{1}{2}(k^2+5k-2) \hspace{10pt} (k≧ 1)}\)

この問題は一致しましたが、一致しない場合もあるので \( k=1\) のときを調べ忘れないように注意してください。大減点されますよ。

(2)
これは単なるおまけです。
シグマのページを参考にして下さい。
⇒ シグマ(Σ)の計算公式が使える数列の和の求め方

(1)で求めた数列

 \( \displaystyle a_k=\displaystyle \frac{1}{2}(k^2+5k-2)\hspace{10pt}(k≧ 1) \)

の第 \(n\) 項までの「和」です。

数列 \( \{a_k\}\) はどのような数列か分かりません。
ずら~と書き出して行ってもおそらくは推測不可能でしょう。

ここは、\( \Sigma\) の計算公式を何も考えず利用した方が早いです。

 \( \displaystyle S_n= \sum_{k=1}^n a_k\\ \\
\displaystyle =\sum_{k=1}^n \displaystyle \frac{1}{2}(k^2+5k-2)\\ \\
=\displaystyle \frac{1}{2}\left( \sum_{k=1}^n k^2 + 5\sum_{k=1}^n k – \sum_{k=1}^n 2\right)\\ \\
=\displaystyle \frac{1}{2}\left\{ \displaystyle \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+\displaystyle \frac{5}{2}n(n+1)-2n\right\}\\ \\
=\displaystyle \frac{1}{2}\left\{\displaystyle \frac{ n(n+1)(2n+1)+15n(n+1)-12}{6}\right\}\\ \\
=\displaystyle \frac{1}{12}\left\{ n(n+1)(2n+1)+15n(n+1)-12n\right\}\\ \\
=\displaystyle \frac{1}{12}n\left\{ (n+1)(2n+1)+15(n+1)-12\right\}\\ \\
=\displaystyle \frac{1}{12}n(2n^2+3n+1+15n+15-12)\\ \\
=\displaystyle \frac{1}{12}n(2n^2+18n+4)\\ \\
=\displaystyle \frac{1}{6}n(n^2+9n+2)\)

この \( \Sigma\) の計算公式や \(\Sigma\) で表現された数列の和の計算は、時間がかかります。
センターで時間が足りなくなっていたのもこの計算処理に手間取ることが多いからとも言えます。

もちろん、他にも時間的に余裕のなくなる分野はありますが、ここは特に練習量を多くしておくと良いでしょう。
コツは、分母を真っ先に外に出すことです。

階差を使ってもとの数列の一般項を求めることは良くありますが、和を求めることに階差を使うことも良くあります。
公式として覚えるのも1つの方法ですが、具体的に書き出して見るというのはほとんどの場合で有効になりますよ。

⇒ シグマ(Σ)の計算公式が使えない数列と複雑な和の計算方法

このような場合がそうです。