ベクトルと図形(幾何)の知識の利用法は先に説明しましたが、
線型独立(一次独立)性や係数の「一意性」の利用法がイマイチわからない人が多いのではないでしょうか。
ベクトルで s:1-s や t:1-t とおいて求める問題のことです。
線型性という言葉はどうでも良いですが使い方は非常に大切で覚えておくとベクトルは難しくありませんよ。


ベクトルの線型性

ベクトルの線型性という言葉にはあまりなじみがない人が多いと思います。

教科書でも大々的にあつかってはいませんので、
慣れていない人も多いでしょう。

でも安心して下さい。
意味は知らなくて構いません。w

そのそも線型性という言葉自体、
あまり登場しませんから知らなくていい言葉なんです。

では何故使うか?
私が楽だからです。w
後々説明がいらないようにここで簡単に説明します。

線型性という言葉はベクトルだけに使われる言葉ではありません。
定義を見るとものすごくややこしいです。
だからベクトルの線型性を簡単に説明すると、

 \(k (\vec{a}+\vec{b})= k\,\vec{a}+k\,\vec{b}\)

のように「和の実数倍」が「別々に実数倍したものの和」になる。

ということ。としておいて良いです。

ベクトルにおいては線型性という言葉ではなく、
あるひとつのベクトルを、線型独立な2つのベクトルで表したとき、

例えば、
 \( \overrightarrow{AP} = 3\overrightarrow{AB} + 2\overrightarrow{AC}\)
が示す点Pはただ1つに定まる
ということ。

逆に点Pを
 ベクトル \(\overrightarrow{AP} = s\overrightarrow{AB} + t\overrightarrow{AC}\)
と表したとき、
 \(s\) および \(t\) はただ1つの組でしか表せないという、
係数の一意性」の方がはるかに重要だと思えます。

ということでここからは教科書にある方法で説明します。

ベクトル係数の一意性を利用する

もう一度問題を見てみます。

例題
 △ABCにおいて、辺ABを3:2に内分する点をD、辺ACを2:1に内分する点をEとし、線分BE、CDの交点をPとする。
また、線分APの延長がBCと交わる点をQとする。
このとき、 \( \overrightarrow{AP}\) を \( \overrightarrow{AB} , \overrightarrow{AC}\) で表せ。
また、AP:PQ を求めよ。

別のところで説明しましたが、
メネラウスの定理ですぐにでてくるのですが、
ベクトル \( \overrightarrow{AP}\) を使って求めてみましょう。

 QはAPの延長上にあるので \( \overrightarrow{AP} = t \overrightarrow{AP}\) とおけます。

ここで

⇒ ベクトルと図形 幾何の定理の利用法

で求めたように
 \( \displaystyle \overrightarrow{AP} = \frac{1}{3}\overrightarrow{AB}+\frac{4}{9}\overrightarrow{AC}\)
から
 \( \displaystyle \overrightarrow{AQ}\\ \\
\displaystyle = t\,(\frac{1}{3}\overrightarrow{AB}+\frac{4}{9}\overrightarrow{AC})\\ \\
\displaystyle = \frac{1}{3}t\overrightarrow{AB}+\frac{4}{9}t\overrightarrow{AC} \)

となりますが、点Qは,の終点を結ぶ直線上にあるので、
 \(\displaystyle \frac{1}{3}t+\frac{4}{9}t=1\) ・・・☆
これから
 \( \displaystyle t=\frac{9}{7}\)

つまり、AP:AQ=7:9 であり、
 AP:PQ=7:2

図を書いて確認してください。
(下に図はありますが自分で線分比を書き込んで確認してください。)

 \( \overrightarrow{AP} , \overrightarrow{AQ}\) ともに
 \(\vec{a} , \vec{b}\) を用いて、一通りにしか表すことは出来ません。

これが線型独立なベクトルによる係数の一意性です。

☆:
2つのベクトル \( \vec{a} , \vec{b}\) の終点を結んだ直線上の点を表すベクトル \( \vec{p}\) を、
 \( \vec{p} =\color{red}{ s}\,\vec{a}+\color{red}{ t}\,\vec{b}\) とすると、
 \(\Large{\color{red}{\hspace{7pt} s+t = 1}} \)
となります。

空間では、3つのベクトルの終点を通る平面上にあるベクトル \( \vec{p}\) を、
 \( \vec{p} =\color{red}{ s}\,\vec{a}+\color{red}{ t}\,\vec{b}+\color{red}{ u}\,\vec{c}\)
としたとき、
 \( \Large{\color{red}{\hspace{7pt}s+t+u=1}}\)
となりますが、これらの事実はよく使われます。
覚えておいて下さい。

さて、ベクトルの線型性を使った方法も示しておきます。

1つのベクトルを二通りに表す

先程説明したように、
平面上の1つのベクトル \( \vec{u}\) は、
線型独立なベクトル  \( \vec{a} , \vec{b}\) を用いて、
 \( \vec{u} = s\vec{a}+t\vec{b}\)
と表せますが、
これを満たす \( s , t\) の組はたった一通りしかない。

ということです。
(定理です。「係数の一意性」といいますが日本語より事実を覚えて。)

簡単に言うと、 \( \vec{u}\) を

 \( \vec{u} = \color{red}{ s}\,\vec{a}+\color{blue}{ t}\,\vec{b}\)

 \( \vec{u} = \color{red}{ m}\,\vec{a}+\color{blue}{ n}\,\vec{b}\)

と二通りに表したとすると、
 \( \color{red}{ s=m} , \color{blue}{ t=n}\) となるという、
「恒等式」や「複素数の相等条件」と同じようなものです。

この定理を利用します。

 BP : PE =\((1-t) : t\)
 DP : PC =\((1-s) : s\)

とすると、
ベクトルと平面図形5

 \(\displaystyle \overrightarrow{AP} = t\overrightarrow{AB}+(1-t)\frac{2}{3}\overrightarrow{AC}\) ・・・②

 \(\displaystyle \overrightarrow{AP} = \frac{3}{5}s\overrightarrow{AB}+(1-s)\overrightarrow{AC}\) ・・・③

と二通りに表せますが、
このベクトルは同じものを表すので
 \(\displaystyle t=\frac{3}{5}s , \frac{2}{3}(1-t)=(1-s)\)
の両方程式を満たすことから \( s\,,\,t \) が求まります。

②または③に \( s \,,\, t \) を戻せば \( \overrightarrow{AP}\) は求まります。

どちらでも同じになることを確認してみて下さい。
(一意性の確認)

この後は、

⇒ ベクトルと図形 幾何の定理の利用法

で示したように \( \overrightarrow{AQ}\) を求めて、AP:QP は求まります。

この2つの文字を利用した問題は随分前からずっと出題されています。
定理だから使いなさいよ。
ということでしょう。

それと、

終点を結んだ直線、平面上の点のベクトルの係数の和が1になる

ことも同じくらいの頻度で聞かれますので要チェックですよ。

まとめ

ベクトルと幾何は切り離せない関係があります。
幾何にたよらなくても解ける、
というようになるにはある程度訓練が必要でしょう。

先ずは

2つのベクトル線型独立の条件
(成分表示の場合の条件は別途紹介します。)

係数の一意性

だけでも覚えておくとベクトルが少しは理解できますよ。

厳密な数学が勉強したい人は大学で深く勉強するとして、

⇒ ベクトルの基本 平行と3点が一直線上にある条件

センターで少しでもいいから点数を増やしたいという人は、
この基本からにして下さい。