無理数の整数部分と小数部分の求め方です。
無理数の分数処理というと有理化を思い浮かべるとおもいます。
分母が1つの場合は中学でもやっているので慣れていると思いますが、2つ以上の場合でも分母は有理化はできます。
ここでは係数比較、無理数の相等条件の使い方を例題の中で説明しておきます。
先ずは有理化と小数部分の表し方から見ていきましょう。
無理数の有理化と整数部分と小数部分の求め方
例題をあげて説明していきます。
\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{3}-\sqrt{2}}\) の小数部分を \(a\) とするとき、
\(\displaystyle \frac{1}{a^2+6a+8}\) の値をもとめよ。
\( a\) を求めたいところですが、
実数は「整数部分」+「小数部分」でできているというのは良いですよね?
例えば
\(\hspace{10pt} \sqrt{2}=1.41421356\cdots\)
となるので、
\(\hspace{10pt} \sqrt{2}=\color{red}{1}\,+\,0.\color{navy}{41421356\cdots}\)
のように整数部分が「1」で残りが小数部分となります。
この場合、小数部分は\( \sqrt{2}-1\) です。
だから問題の\(\,a\,\)は全体から整数部分を引けば良いというのはわかります。
しかし、
\(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{1}{\sqrt{3}-\sqrt{2}}\)
をそのまま小数にするのは非常にやっかいです。
分母に無理数を残したままでは計算がややこしいので分母を有理化します。
無理数の有理化
\(\sqrt{\,a\,}-\sqrt{\,b\,}\)のルートをなくしたいときは、
\(\sqrt{\,a\,}+\sqrt{\,b\,}\)のように片方の符号が違う数をかければ、
\(\color{red}{(\sqrt{\,a\,}-\sqrt{\,b\,})(\sqrt{\,a\,}+\sqrt{\,b\,})=a-b}\)
となりますので、
分母と分子の両方にかければ「1」をかけているのと同じことなので値は変わらず、
分母の有理化ができます。
\(\hspace{10pt} \sqrt{3}-\sqrt{2}\)のルートをなくしたいときは、
\(\hspace{10pt} \sqrt{3}+\sqrt{2}\)
をかければ良いので
\(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{1}{\sqrt{3}-\sqrt{2}}\\
\displaystyle=\frac{\color{red}{\sqrt{3}+\sqrt{2}}}{(\sqrt{3}-\sqrt{2})(\color{red}{\sqrt{3}+\sqrt{2}})}\\
\displaystyle=\frac{\sqrt{3}+\sqrt{2}}{3-2}\\
\displaystyle=\frac{\sqrt{3}+\sqrt{2}}{1}\\
=\sqrt{3}+\sqrt{2}\)
(中学生でもわかるようにていねいにやっています。)
ここで
\(\begin{eqnarray}
\sqrt{3}&=&1.732\cdots \\
\sqrt{2}&=&1.414\cdots\end{eqnarray}\)
なので
\(\hspace{10pt} \sqrt{3}+\sqrt{2}\\
=1.732\cdots+1.414\cdots\\
=3.1\cdots\)
これから整数部分は「\(\,\color{blue}{3}\,\)」とわかります。
よって、小数部分は
\(\hspace{10pt}\color{red}{a=\sqrt{3}+\sqrt{2}-\color{blue}{3}}\)
となります。
さて、\(\,a\,\)はわかりました。
このあと求値式に代入しますか?
ちなみに代入すると
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{1}{a^2+6a+8}\\
=\displaystyle \frac{1}{(\sqrt{3}+\sqrt{2}-3)^2+6(\sqrt{3}+\sqrt{2}-3)+8}\)
という気が遠くなるような計算が待っています。
せめて分母だけでも取り出して計算するとしても
\( (\sqrt{3}+\sqrt{2}-3)^2+6(\sqrt{3}+\sqrt{2}-3)+8\)
これでもやりたくはありません。
ところがです。
ちょっと工夫すると計算が楽になる方法があるのです。
これが数学の良いところ!
\(\hspace{10pt}a=\sqrt{3}+\sqrt{2}-3\)
において無理数部分だけを残して移項します。
\(\hspace{10pt} a+3=\sqrt{3}+\sqrt{2}\)
この両辺を2乗して\(\,a^2\,\)をつくり出してみようと試みると、
(\(\,a^2\,\)だけでも計算から省きたい)
\(\begin{eqnarray} (a+3)^2&=&(\sqrt{3}+\sqrt{2})^2\\
\hspace{7pt}a^2+6a+9&=&5+2\sqrt{6}\end{eqnarray}\)
すると、\( \color{red}{a^2+6a}\,\)までが求値式と同じだと気がつきます。
これは「たまたま」こうなったというより、
問題作成者が意図している場合が多いです。
これは中学生向けの式変形でも触れています。
答えを求めましょう。
\(\hspace{10pt} a^2+6a+9=5+2\sqrt{6}\)
から
\(\hspace{10pt} a^2+6a=2\sqrt{6}-4\)
と変形して求値式に代入すると、
\(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{1}{a^2+6a+8}\\
\displaystyle=\frac{1}{(2\sqrt{6}-4)+8}\\
\displaystyle=\frac{1}{2\sqrt{6}+4}\\
\displaystyle=\frac{1}{2(\sqrt{6}+2)}\\
\displaystyle=\frac{(\sqrt{6}-2)}{2(\sqrt{6}+2)(\sqrt{6}-2)}\\
\displaystyle=\frac{\sqrt{6}-2}{2(6-4)}\\
\displaystyle=\frac{\sqrt{6}-2}{4} ・・・(答)\)
くどいようですが、自分で計算してみないとわからないこと多いですよ。
ところで、与式を見ながらだと、
\(\hspace{10pt} a^2+6a+9=5+2\sqrt{6}\)
の定数項を移項するとき、左辺の定数を与式の\(\,8\,\)に合わせて
\(\begin{eqnarray}a^2+6a+9&=&5+2\sqrt{6}\\
a^2+6a+9\color{red}{-1}&=&\color{red}{-1}+5+2\sqrt{6}\\
a^2+6a-8&=&4+2\sqrt{6}\end{eqnarray}\)
とすれば分母そのままになりますが、
大した差にはなりませんので\(\,2\,\)乗した後は、
思いついた計算方法で突っ走っても構いません。
無理数の相等条件
無理数の相等条件とは、
\(a\,,\,b\,,\,c\,,\,d\,\)を有理数、\(\sqrt{\,x\,}\,\)は無理数としたとき
\(\hspace{10pt}\color{red}{a}\,+\,\color{blue}{b}\sqrt{x}\,=\,\color{red}{c}\,+\,\color{blue}{d}\sqrt{x} \\ \\
\Leftrightarrow \hspace{10pt}\color{red}{a\,=\,c}\hspace{6pt} ,\hspace{6pt}\color{blue}{b\,=\,d}\)
これは
\(\hspace{10pt} a+b\sqrt{x}=c+d\sqrt{x}\\ \\
\Leftrightarrow \hspace{10pt} (a-c)+(b-d)\sqrt{x}=0\)
と移項して改めて文字を書き換えれば、
\( \color{red}{a}+\color{blue}{b}\sqrt{x}=0 \Leftrightarrow \hspace{10pt}\color{red}{a}=\color{blue}{b}=0\)
これを使った問題を解いてみましょう。
\(\displaystyle \frac{2-3\sqrt{2}}{4+2\sqrt{2}}=a+b\sqrt{2}\)
を満たす有理数 \( a\,,\,b\) を求めよ。
無理数の相等条件を使いますがその前に左辺の処理をどうするか2通り方法があります。
1つは左辺を有理化する方法です。
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{2-3\sqrt{2}}{4+2\sqrt{2}}\\ \\
=\displaystyle \frac{2-3\sqrt{2}}{2(2+\sqrt{2})}\\ \\
=\displaystyle \frac{(2-3\sqrt{2})(2-\sqrt{2})}{2(2+\sqrt{2})(2-\sqrt{2})}\\ \\
=\displaystyle \frac{4-8\sqrt{2}+6}{2(4-2)}\\ \\
=\displaystyle \frac{10-8\sqrt{2}}{4}\\ \\
=\displaystyle \frac{5-4\sqrt{2}}{2}\\ \\
=\displaystyle \frac{5}{2}-2\sqrt{2}\)
このあと相等条件から定数が決まりますね。
これはすぐに思いつくと思います。
もう一つは左辺の分母をなくす方法です。
有理化の説明ページですが、こちらで解いていきます。
\( \displaystyle \frac{2-3\sqrt{2}}{4+2\sqrt{2}}=a+b\sqrt{2}\)
この左辺の分母の\(\,4+2\sqrt{2}\,\)を両辺にかけて分母をなくします。
\( 2-3\sqrt{2}=(a+b\sqrt{2})(4+2\sqrt{2})\)
この右辺を展開して有理数部分と無理数部分を分けると、
\(\hspace{10pt} (a+b\sqrt{2})(4+2\sqrt{2})\\
=4a+2a\sqrt{2}+4b\sqrt{2}+4b\\
=(4a+4b)+(2a+4b)\sqrt{2}\)
つまり、
\( \color{red}{2}-\color{blue}{3}\sqrt{2}=(\color{red}{4a+4b})+(\color{blue}{2a+4b})\sqrt{2}\)
に相等条件を使えば良いということになります。
\( \begin{cases} 4a+4b=2 \\
2a+4b=-3 \end{cases}\)
を解いて
\(\hspace{10pt} a=\displaystyle \frac{5}{2} \hspace{10pt} , \hspace{10pt} b=-2\)
どちらでも良いです。
自分が計算ミスしにくい方を選んでください。
先に見ておくのは条件式と与式変形どちらからでも良いのですが、
どちらが早いかは多少の慣れが必要ですので確認しておいてくださいね。
数学の力をつけるために大切なのは、自分で手を動かしてやって見ることです。
数学\(\,Ⅱ\,\)になると数の範囲が広くなりもっと利用範囲が増えますが、
数学\(\,Ⅰ\,\)が基本になることは間違いありません。