共役複素数の計算公式も具体的な複素数をあてはめれば簡単ですので定理として紹介しておきます。
相等条件を利用する問題が多いので例題の中で解き方を確認しておきましょう。
複素数の計算は定義として存在しますので、普通に計算しても四則演算で困ることはありません。
このページでは複素数平面まで掘り下げては解説はしませんので、
複素数の計算の基本だけを確認して下さい。
複素数の四則演算
複素数の加減乗除の計算規則は次のように定められます。
(1)
\( \color{green}{(a+bi)+(c+di)=(a+c)+(b+d)i}\)
(2)
\( \color{green}{(a+bi)-(c+di)=(a-c)+(b-d)i}\)
(3)
\( \color{green}{(a+bi)(c+di)=(ac-bd)+(ad+bc)i}\)
(4)
\(\displaystyle \color{green}{\frac{a+bi}{c+di}=\frac{(a+bi)(c-di)}{(c+di)(c-di)}=\frac{ac+bd}{c^2+d^2}+\frac{bc-ad}{c^2+d^2}i}\)
実際の計算では、
「実数の場合と同様に計算し、\( i^2\) が現れたら \(\color{red}{ i^2=-1}\) として置きかえる」
というだけなので気にせず計算しても大丈夫です。
注意する点があります。
\( (\sqrt{2}i)(\sqrt{3}i)=\sqrt{2}\cdot \sqrt{3}\cdot i^2=-\sqrt{2} \sqrt{3}=-\sqrt{6}\)
これは正しい計算ですが、
\( \sqrt{2}i=\sqrt{-2} , \sqrt{3}i=\sqrt{-3}\)
だからといって、
\( \sqrt{2}i \sqrt{3}i=\sqrt{-2}\sqrt{-3}=\sqrt{(-2)(-3)}=\sqrt{6}\)
とするのは間違いです。
つまり、実数計算において成り立つ\(\,\sqrt{a} \,\sqrt{b}=\sqrt{a\,b}\)は、
\( a < 0 , b < 0\) のとき \( \sqrt{a}\,\sqrt{b}=\sqrt{a\,b}\)
は(虚数では)成立しないということです。
計算規則が成り立つからといって、実数の計算規則とは違う点もありますので、
「形で覚えている」人は注意が必要です。
「計算をすすめて、\(i^2=-1\) として置きかえる」
の順で計算するのですよ。
複素数の四則と共役複素数の定理
複素数の加減乗除と共役について次の定理(公式)があります。
【定理】
(1)
\( \overline{\alpha+ \beta}=\overline{\alpha}+\overline{\beta} \)
(2)
\( \overline{\alpha- \beta}=\overline{\alpha}-\overline{\beta} \)
(3)
\( \overline{\alpha \beta}=\overline{\alpha}\,\,\overline{\beta}\)
(4)
\(\displaystyle \overline{\left(\frac{\alpha }{\beta}\right)}=\frac{\bar{\alpha}}{\bar{\beta}} , \beta\neq 0\)
しかし、これは形で覚えるのは難しいですし、覚えても意味がありません。
\( \alpha=a+bi , \beta=c+di\)
として左辺と右辺を計算して、同じ結果になることを確認すれば証明になりますし、実際の計算問題をやった方がすっきりします。
四則の計算をすすめた後で共役複素数を求めても、
共役複素数を加減乗除しても同じことだということです。
複素数の相等条件と練習問題
複素数の相等条件の定義を確認して、練習問題を解いておきましょう。
[定義]
\( a,b,c,d\) を実数とするとき
\( \color{green}{a+bi=c+di} \hspace{10pt}\Leftrightarrow \hspace{10pt} \color{green}{a=c}\,,\,\color{green}{b=d}\)
とくに
\( \color{green}{a+bi=0} \hspace{10pt}\Leftrightarrow \hspace{10pt} \color{green}{a=0} , \color{green}{b=0}\)
2つの複素数が等しくなるのは、実数部分、虚数部分のそれぞれが等しいときだということです。
\(\displaystyle \frac{a+3i}{1+5i}=1+bi\)
【複素数の相等条件】
\( a,b,c,d\) を実数とすると、
\( a+bi=c+di \hspace{10pt} \Leftrightarrow \hspace{10pt} a=c\,,\,b=d\)
を使いますが、
『 \( a+bi=0\) のとき、\( a=b=0\) 』
も移項すれば同じことですのどちらを使っても構いません。
いずれにしても、
2つの複素数の実部と虚部は加減において打ち消し合うことはなく、
それぞれ同じ値になると言うことです。
例えば、
\( a+bi=5+3i\) なら、実部、虚部は両辺で等しく \( a=5,b=3\)
となると言うことです。
\( (a-5)+(b-3)i=0\) としても実部、虚部ともに0で同じ。
この相等条件さえ忘れなければ問題は簡単です。
左辺をあれやこれや変形するよりも、
いつも通り「方程式を見たら分母をなくす。」の方が早いでしょう。
(これはこのサイトを初めて見る人は「いつも通り」ではないかもしれませんが)
左辺の分母、分子に \( 1-5i\) をかけても良いですけど、
分子の展開は残りますので、
最初から両辺に \( 1+5i\) をかけて分母をなくした計算の方が早いです。
場合によるところもあるので、どちらでも出来るようになっておくと良いでしょう。
両辺に \( 1+5i\) を乗じて、相等条件を使いましょう。
\(\displaystyle \frac{a+3i}{1+5i}=1+bi\)
の両辺に \( 1+5i\) をかけると、
\( a+3i=(1+bi)(1+5i)=1+(5+b)i+5bi^2\)
ここで \( i^2=-1\) なので
\( \color{red}{a}+\color{blue}{3}i=(\color{red}{1-5b})+(\color{blue}{5+b})i\)
複素数の相等条件より、
\( \color{red}{a}=\color{red}{1-5b}\)
\( \color{blue}{3}=\color{blue}{5+b}\)
よって
\( a=11 , b=-2\)
他のところでも繰り返していますが、
人の計算見て自分で計算した気にならないことですよ。
無理数の場合も同様の条件が成り立ちます。
割り算の基本定理は高次式でよく利用されますので十分に復習しておきましょう。