命題の証明はセンター試験ではでていませんが、真偽を問う問題はでます。共通テストになっても必修科目なので出続けるでしょう。
そもそも命題とは何なのか?真なのか偽なのかの判断はどうすればいいのか?反例のあげ方はどうすれば良いのか?
十分理解が出来ていない人もいると思いますのでここでも例題をあげて説明しておきます。
論理(命題)と集合は必須項目
論理、集合分野は、代数ばかりに気をとられて問題演習に取り組んでいる人には取っつきにくい分野です。
ですが、数学Ⅰの必修分野となっていますのでセンター試験、共通テストではもれなく出てくると考えておいて良いでしょう。
なので少しずつでも言語としての数学になじんで欲しいところです。
命題とは
先ずは命題とは何なのかです。
「命題」とは、
《正しいか、正しくないかがはっきりと決まる式や文章のこと。》
です。
命題では、正しいことを「真(しん)」、正しくないことを「偽(ぎ)」といいます。
つまり、
中学生の頃に覚えた「仮定」と「結論」があり、
その真偽を問うことになるわけです。
例えば、
「\(\,P\,\)ならば\(\,Q\,\)である。」(\(P\hspace{4pt}⇒\hspace{4pt}Q\))
が正しいときは「真」、正しくないときは「偽」ということですね。
真偽を問う例題
具体例でみてみましょう。
ただし、\(\hspace{4pt}a\hspace{4pt},\hspace{4pt}b\hspace{4pt}は自然数とする。\)
(1)\(\,a\,\)が奇数かつ\(\,b\,\)が奇数ならば、\(\hspace{4pt}a^2\,+\,b^2\hspace{4pt}\)が偶数。
(2)\(a^2\,+\,b^2\hspace{4pt}\)が偶数ならば、\(\,a\,\)が奇数かつ\(\,b\,\)が奇数。
(3)\(a^2\,+\,b^2\hspace{4pt}\)が奇数ならば、\(\,a\,\)が奇数または\(\,b\,\)が奇数。
ここでは命題が
真のときはそれを証明し、
偽のときは反例をあげろ、
といっています。
「偽」の場合の反例はいくつか具体的に試すと見つかります。
この具体的に探すというのが大きなポイントになりますよ。
最初っから真なのか偽なのかが判断つくなら苦労はしていないはずです。
自分で探してみるということが解決の糸口になるのです。
反例が見つかりにくいときは真の可能性が高くなり、証明することになります。
しかし、反例を見つけにくく(気づきにくく)してある問題もあるので注意が必要です。
(1)具体的にいくつか試すと、
( \(\,a\hspace{4pt},\hspace{4pt}b\hspace{4pt}\)ともに奇数をいくつか試す)
\(a=1\hspace{4pt},\hspace{4pt}b=1\hspace{4pt}\)のとき、
\(\hspace{10pt}a^2\,+\,b^2\,=\,1\,+\,1\,=\,2\) 真
\(a=3\hspace{4pt},\hspace{4pt}b=5\hspace{4pt}\)のとき、
\(\hspace{10pt}a^2\,+\,b^2\,=\,9\,+\,25\,=\,34\) 真
\(a=3\hspace{4pt},\hspace{4pt}b=3\hspace{4pt}\)のとき、
\(\hspace{10pt}a^2\,+\,b^2\,=\,9\,+\,9\,=\,18\) 真
ここまでは正しいので、一般的に正しいように見える。
ということで一般的に真であることを証明しましょう。
「\(\,a\,\)が奇数かつ\(\,b\,\)が奇数 」
( \(a\,,\,b\hspace{4pt}\)は自然数)
を一般的に表すと、
\(m\,,\,n\hspace{4pt}\)を\(\,0\,\)以上の整数として、
\(\hspace{10pt}\color{red}{a\,=\,2\,m\,+\,1}\)
\(\hspace{10pt}\color{red}{b\,\,=\,2\,n\,+\,1}\)
と表せます。
(整数なのか自然数なのかで\(\,m,n\,\)の条件は変わりますのできっちり明記した方がいいですね。)
『 証明)\(m\,,\,n\,\)を\(\,0\,\)以上の整数として、
\(\,a\,=\,2m\,+\,1\hspace{4pt},\hspace{4pt}b\,=\,2n\,+\,1\,\)
と表すと、
\(\hspace{10pt}a^2\,+\,b^2\\
=\,(\,2m\,+\,1\,)^2\,+\,(\,2n\,+1\,)^2 \\
=\,4m^2\,+\,4m\,+\,1\,+\,4n^2\,+\,4n\,+\,1\\
=\,4m^2\,+\,4m\,+\,4n^2\,+\,4n\,+\,2\\
=\,2\,(\,2m^2\,+\,2m\,+\,2n^2\,+\,2n\,+\,1\,)\)
これは偶数であることを示す。
よってこの命題は正しい。(証明終わり)』
と代数の力を借りて処理できます。
最近は余り見かけませんが参考書などによって、
「証明終わり」を「Q.E.D.」と書くことがあります。
これはラテン語の、quot erat demonstrandum から来ています。
(2)
命題「\(\hspace{4pt}a^2+b^2\hspace{4pt}\)が偶数ならば、\(\,a\,\)が奇数かつ\(\,b\,\)が奇数。」
これは(1)の「逆」ですが、
正しいとは限らないことの説明は不要ですね。
真偽が一致するのは、「命題」と「対偶」です。
反例を具体的に探しましょう。
\(a^2\,+\,b^2\hspace{4pt}\)が偶数になる\(\,a\,,\,b\,\)
をいくつか探していくとすぐに、
\( a=2\,,\,b=2 \)
という反例が見つかります。
よって、
\(\,a\,\)が奇数かつ\(\,b\,\)が奇数に反します。
\(a=2\,,\,b=2\hspace{4pt}\)のとき、
\(\hspace{10pt}a^2+b^2=4+4=8\)
で偶数ですが、
\(a\,,\,b\,\)は奇数ではない。
よってこの命題は正しくない。
反例:\(\,a\,=\,b\,=\,2\,\)。
1つでも成り立たないものがあれば「偽」であり、
反例は1つでいいですよ。
命題の「真」とは、
仮定の条件下で「常に」結論が成立することを意味します。
(3)
命題「\(\hspace{4pt}a^2+b^2\hspace{4pt}\)が奇数ならば,\(\,a\,\)が奇数または\(\,b\,\)が奇数。」
これもいくつか試して見ると良いですが、いろいろなケースが考えられます。
「\(\,a\,\)が奇数または\(\,b\,\)が奇数」\)
という数学の表現がどういう意味かは別の記事にも書きましたが、
数学の「または」は排他的ではありません。
⇒ 数学1A 命題と逆に使う「かつ」と「または」と日常生活の違い
例えば、
ファミリーレストランで「ライス」または「パン」と書いてあれば、
どちらか一方のみの意味ですが、
数学で「または」とあれば「どちらも」の場合もありなんです。
つまり、
「\(\,a\,\)が奇数または\(\,b\,\)が奇数」
は「両方奇数」の場合もありなんです。
だから
「\(\,a\,\)が奇数 、\(\,b\,\)が偶数 」
「\(\,a\,\)が偶数、\(\,b\,\)が奇数 」
「\(\,a\,\)が奇数、\(\,b\,\)が奇数 」
の3つが考えられますが、
この3つは、どれか1つが成り立てば「または」なんです。
試してみます。
①
「 \(\,a\,\)が奇数、\(\,b\,\)が偶数 」の場合、
\(\hspace{4pt}a=1 \,,\, b=2\hspace{4pt}\hspace{4pt}\)のとき
\(\hspace{10pt}a^2\,+\,b^2\,=\,1+4\,=\,5\)
\(\hspace{4pt}a=3 \,,\, b=4\hspace{4pt}\)のとき
\(\hspace{10pt}a^2\,+\,b^2\,=\,9+16\,=\,25 \)
で命題は成り立ちそうです。
②
「\(\,a\,\)が偶数、\(\,b\,\)が奇数 」の場合、
これは①で\(\,a\,,\,b\,\)が入れ替わるだけなので同様。
③
「\(\,a\,\)が奇数、\(\,b\,\)が奇数 」の場合、
((1)からも分かるけど一応見ておきましょう)
\(\hspace{4pt}a=1\,,\,b=1\hspace{4pt}\)のとき
\(\hspace{10pt}a^2\,+\,b^2\,=\,1+1\,=\,2\)
で奇数になってない。
\(\hspace{4pt}a=3\,,\,b=5\hspace{4pt}\)のとき
\(\hspace{10pt}a^2\,+\,b^2\,=\,9+25\,=\,34\)
で奇数になってない。
よってこの場合は、命題は正しくないといえます。
しかし、①と②は成り立っていて、
「\(\,a\,\)が奇数、または\(\,b\,\)が奇数 」
は満たしていますので、この命題は正しいのです。
「または」は、「両方」でなくて良いのです。
先程も書きましたが、命題と対偶は真偽が一致しますので証明は「対偶」を使うと良いです。
この命題の対偶は、
「\(\,a\,\)が偶数かつ\(\,b\,\)が偶数ならば、
\(\,a^2\,+\,b^2\,\)が偶数である。」
です。
「かつ」の否定は「または」
「ある」の否定は「すべて」
であることは忘れないで下さいね。
この対偶の証明は(1)と同様に、
\(\hspace{10pt} a\,=\,2m \,,\, b\,=\,2n\)
と置けば証明は容易でしょう。
まとめ
命題の証明では、
先ずは集合や命題の用語の定義をしっかり理解しておくことが重要になります。
しかし、真偽の判断は具体的に調べると分かり易いです。
難しいと思う前に具体的に調べまくりましょう。
(これがまとめになるのか?笑)
対偶を証明する間接的な証明方法(背理法なども含めて)
もあることは意識しておきましょうね。
命題・逆・裏・対偶の関係や対偶法や背理法は
要点で簡単にですが説明ししてあります。