等比数列の一般項と和の公式の確認問題と解き方のポイントです。
一般項は表せるけど和の公式を覚えていない、求められないという人は少し気をつけましょう。
等差数列では和の公式は規則性から簡単に求まるので良いですが、等比数列の場合公式を覚えていないと時間をつぶしてしまいます。

数列がわからないという人にはいくつかパターンがあります。
もちろんややこしい問題も数列の問題には多いですが、基本的な所でいくつか抜け落ちがあるんです。

ちょっと確認して等比数列の説明に入ります。

数列が苦手になる原因を確認

数列が苦手になる原因は、等差数列も同じですが、
規則性を見ようとせず計算で済まそうとする勉強をしていることです。

これはこれで強力な計算力があればできないこともありません。
しかし、等比数列には計算力にプラスするものがあるのです。

等差数列と違って等比数列の和の公式は覚えていなければ使えません。
実際にその場で導くことはできますが、それができれば覚える方がはやいけどね。笑

等比数列の公式を覚えるのは等差数列と同時期なので使い分けできる前に訳がわからなくなっていることも原因です。
数列でつまづく人はここが第1のポイントになっていますので気をつけておくと良いです。

さらに、数列は問題のパターンが多いです。
逆に言えば基本公式とパターンをいくつか覚えてしまえば何とかなるのですが、
そのパターンの多くが等比数列の基本がもとになっています。
等比数列でつまづいたままなので後々の数列がやりづらい大きな原因になっているのです。

ということで、等比数列はちょっとだけ念入りに基本確認をしておいてください。

等比数列の一般項と例題

例題で等比数列の一般項を説明しておきます。
和を求めますが公式は使いません。

例題

第3項が\(\,12\,\),第4項が\(\,-24\,\)である等比数列の第5項から第9項までの和を求めよ。

等差数列では「初項」と「公差」を先ず求めておくというのが問題に関係なくやっておきたい手順でしたが、
等比数列では「初項」と「公比」です。

問題に「等比数列」とありますので等差数列同様、初項、公比は、
問題に聞かれなくても求めておきましょう。

等比数列は、初項 \( a\) 、公比 \(r\) とすると
 \( a\,,\,ar \,,\,ar^2\,,\,ar^3\,,\,\cdots,\,ar^{n-1},\,\cdots \)

第 \( n\) 項までには、公比は \((n-1)\) 回、
初項 \( a\) にかけられることになるので一般項 \(a_n\) は、
 \(\hspace{10pt} \color{red}{a_n =a\cdot r^{n-1}}\)
となることは等差数列同様の規則性です。

問題を解く前に、初項,公比を出しておきましょう。

「第3項が\(\,12\,\),第4項が\(\,-24\,\)」より
 \(\hspace{10pt} a_3=ar^2=12 ・・・①\)
 \(\hspace{10pt} a_4=ar^3=-24 ・・・②\)

②÷① から \( r=-2\) 、
さらに①か②より \(a=3\) です。

これから、「第5項から第9項までの和」は、
 \(\hspace{10pt} a_5+a_6+a_7+a_8+a_9 \\ \\
=3 \cdot (-2)^4+3 \cdot (-2)^5+3 \cdot (-2)^6+3 \cdot (-2)^7+3 \cdot (-2)^8 \\ \\
=3 \cdot (-2)^4 \cdot (1-2+4-8+16)\\ \\
=48\times (11)\\
=528\)

これがわかりにくい人は(今は良いですけどいつかは理解できるように。笑)
 \(\begin{eqnarray}
a_5&=&48\\
a_6&=&-96\\
a_7&=&192\\
a_8&=&-384\\
a_9&=&768
\end{eqnarray}\)
と具体的に各項を出して

 \(\hspace{10pt} 48-96+192-384+768\\
=528\)

と、算数じみた計算で出せますが、等比数列の和にも触れておきましょう。

等比数列の和と公式

初項 \(a\) ,公比 \( r\) とする等比数列の和 \(S_n\) の公式を導くには少し工夫が必要です。
しかし、出てくる結果としての公式より、
求め方を覚えておくと等比数列では無い場合でも使えるので、
数列でちょっと難易度が上がる問題でも対応できるようになれます。

等比数列の和の公式の導き方

等比数列において
 \( S_n=a+ar+ar^2+\cdot \cdot \cdot +ar^{n-2}+ar^{n-1}\)  ・・・①
です。
これの両辺に \( r\) をかけます。
 \( rS_n=ar+ar^2+\cdot \cdot \cdot +ar^{n-2}+ar^{n-1}+ar^n\)  ・・・②

ここで②-①を計算して次数の等しい部分どうしを引き算します。
このとき下のように項を1つずらせて書くのがコツで、これが後々使える「技法」となります。
 \(\hspace{26pt}S_n=a+ar+ar^2+\cdot \cdot \cdot +ar^{n-2}+ar^{n-1}\\
\underline{\hspace{22pt}rS_n=\hspace{16pt}ar+ar^2+\cdot \cdot \cdot +ar^{n-2}+ar^{n-1}+ar^n}\\
(1-r)S_n=a\hspace{140pt}-ar^n\)

よって、①-②より、
 \(\hspace{10pt} (1-r)S_n=a(1-r^n)\) ・・・③

ここで単純に両辺を \((1-r)\) で割ってはダメです。
 \(\color{red}{1-r=0 の場合は割れません}\)ので場合分けですね。

 \( r=1\) のとき全ての項が\(\,a\,\)になるので①に戻って、

 \(\begin{eqnarray}
S_n&=&a+ar+ar^2+\cdots +ar^{n-2}+ar^{n-1} \\
&=&a+a+a+ \cdots +a+a\\
&=&a\,n\end{eqnarray}\)
( \(a\) が \( n\) 個ある。)

この場合分けがあるから等比数列の和をややこしくしています。
たしかに大切なことなのですがこれで数列を捨てたくはないので、
公比が1でなければ通用するので下の公式を覚えておく、からで良いですよ。

\(r\,\neq\,1\)のとき③の両辺を\(\,(1-r)\,\)で割って

 \(\hspace{10pt}\displaystyle \color{red}{S_n}=\frac{a-ar^n}{1-r}=\color{red}{\frac{a(1-r^n)}{1-r}}\)

\(r\) が1より大きい場合は

 \(\hspace{10pt}\displaystyle \color{red}{S_n=\frac{a(r^n-1)}{r-1}}\)

と分母が正になるようにした方が符号の扱いが容易な場合が多いです。

さて、等比数列の和の公式を利用すると、
「第5項から第9項までの和」はどうなるか?

公式 \(\displaystyle S_n=\frac{a(r^n-1)}{r-1}\) は、
初項から第\(n\)項までの和です。

具体的に書くと、
 \( S_n=a+ar+ar^2+\cdots +ar^{n-2}+ar^{n-1}\)
です。
しかし、「第5項から第9項までの和」は、
 \( S=ar^4+ar^5+ar^6+ar^7+ar^8\)

これは
 「初項から第9項までの和から、初項から第4項までを除いたもの
 \(\hspace{10pt}S=S_9-S_4\)
となっています。

よって求める和 \( S\) は、\(S_9-S_4\) ということです。

 \(\begin{eqnarray}\displaystyle
S&=& \frac{3\{1-(-2)^9\}}{1-(-2)}-\displaystyle \frac{3\{1-(-2)^4\}}{1-(-2)}\\
&=&(1+512)-(1-16)\\
&=&513+15\\
&=&\underline{ 528 }
\end{eqnarray}\)

見方によっては、
 第\(\,5\,\)項を初項とし、第\(\,9\,\)項までの\(\,5\,\)項の和
と見ることもできますね。

等差数列も等比数列も、一般項および初項からの和の公式は覚えているのが普通です。
しかし、導き方、および初項からではない和、を求めるときにも使えるように十分な基礎練習をしっかりしておくと良いですね。

数列は規則性のある数を扱う最も数学的な要素が大きい単元ですので、
公式に頼るのではなく、
 規則性を見抜き公式を利用する
というのを練習しておけば他の単元でもやるべきことが見えてくると思います。

試す、具体的に書き出す、それを基本にして下さい。

規則性と等比数列の例題

ここまで来れば、少しは数列の基本は見えてきたと思います。
「規則性を見る」、ですよね。

1つ例題で見てみましょう。

例題2

数列\(\,2\,,\,22\,,\,222\,,\,\cdots\,\)がある。
この数列の第 \( n\) 項 \( a_n\) を求めよ。
また初項から第 \( n\) 項までの和 \( S_n\) を求めよ。

数列\(\,2\,,\,22\,,\,222\,,\,\cdots\,\)はどんな規則性かを見るわけですが、いろいろな見方ができます。

①初項が\(\,2\,\)で、第2項は\(\,11\,\)倍されている、第3項は、、、ちがう。(×)

②初項は\(\,2\,\)で、第2項は初項を\(\,10\,\)倍して\(\,2\,\)を足している、第3項は第2項を\(\,10\,\)倍して\(\,2\,\)を足している、、、これはいけそう。
これを並べて見ると、
 \(2\,,\,2\times 10+2\,,\,(2\times 10+2)\times 10+2\,,\,\cdots\)
だけど前の項にかけてさらに足すという、この規則性は式では表しにくい気がする。(△)

③初項は\(\,2\,\)で、第2項は初項に\(\,20\,\)を足している、第3項は第2項に\(\,200\,\)を足している、、、これはいけそう。
これを並べて見ると、
 \(2\,,\,2+20\,,\,2+20+200\,,\,\cdots \)
これは足すだけの規則性なので一番単純な気がしますのでこれで行きます。

 初項  \(\,2\,\)
 第2項 \(\,2+20\,\)
 第3項 \(\,2+20+200\,\)
 第4項 \(\,2+20+200+2000\,\)
 \(\hspace{10pt}\cdots\)
となっています。

表現を変えると
 \( a_1=2\)
 \( a_2=a_1+20\)
 \( a_3=a_2+200\)
 \( a_4=a_3+2000\)
 ・・・
となっていることがわかります。

足されていく
 \(20\,,\,200\,,\,2000\,,\,20000\,\cdots\)
というのは、
 \( 2\times10^1\,,\,2\times10^2\,,\,2\times10^3\,,\,2\times10^4\,,\,\cdots\)
となっているので、
第 \(n\) 項である一般項 \(a_n\) を \( n\) を用いて表せば

 \( a_n=2+2\times 10^1+2\times 10^2+\cdots+2\times 10^{n-1}\)

数列がわからないという人にとってはここまでたどり着ければたいしたものです。
馬鹿にしているのではありません。
ここまでがたいへんなのです。

書き出すか、書き出さないか、の大きな違いによって苦手にさせられてきたのですからね。
後はちょっとした計算力をつければ解決します。

つまり、
第 \(n\) 項 \(a_n\) 自体が
 「初項\(\,2\,\)、公比\(\,10\,\)の等比数列の第 \(n\) 項までの和」
となります。
和が一般項になっているのでややこしく感じますね。

ではこの和を等比数列の和の公式で計算してみましょう。
 \(\hspace{10pt}\displaystyle a_n=\frac{2(10^n-1)}{10-1}=\frac{2(10^n-1)}{9}\)  ・・・①

さらに、\(S_n\) はこの数列 \( a_n\) の和です。

 \(\hspace{10pt} S_n=2+22+222+2222+\cdots\)

となりますが、\( a_n\) はすべての項を代表しているということから、
 \(\begin{eqnarray} \displaystyle
S_n&=&\sum_{k=1}^n a_k \\
&=&a_1+a_2+a_3+\cdot \cdot \cdot +a_n
\end{eqnarray}\)

ここからは1つひとつに等比数列の和が入ってきますが、丁寧にやれば大丈夫、できます。

 \(\begin{eqnarray}\displaystyle
S_n&=&\frac{2(10^1-1)}{9}+\frac{2(10^2-1)}{9}+ \cdot \cdot \cdot +\frac{2(10^n-1)}{9}\\
&=&\left(\frac{2\cdot10^1}{9}+ \frac{2\cdot10^2}{9}+\cdots +\frac{2\cdot10^n}{9}\right)-\left(\frac{2}{9}+ \frac{2}{9}+ \cdots+\frac{2}{9}\right)
\end{eqnarray}\)
(上式を展開したときの「+部分の和」と「-部分の和」で分けてあります。)

前半部分は初項\(\,\displaystyle\frac{20}{9}\,\) ,公比 \(\,10\,\) の等比数列の和となっています。
後半は\(\displaystyle \,\frac{2}{9}\,\) が \(\, n\,\) 個。

よって、
 \(\hspace{10pt}\displaystyle S_n=\frac{\frac{20}{9}(10^n-1)}{10-1}-\frac{2}{9}n\)

ここまでたどり着ければ、きっと計算力もついてますよ。
一気に答えにはたどり着くことはできません。
1つひとつ、時間はかかりますが処理してください。

 \(\,S_n\,\)を見てすぐに\(\,\displaystyle \frac{2}{9}\,\)でくくった人は分数処理に慣れている人ですね。

 \(\begin{eqnarray}\displaystyle
S_n&=&\frac{2}{9}\{(10^1-1)+(10^2-1)+\cdots +(10^n-1)\}\\ \\
&=&\frac{2}{9}\{(10^1+10^2+\cdots +10^n)-(1-1-\cdots -1)\}
\end{eqnarray}\)

「和」(シグマ)については別のところで説明します。

⇒ 数列のシグマ(Σ)の意味と公式と計算方法

意味と使い方を知っているなら必要ありません。

等差数列、等比数列の基本はできた。
という人は

⇒ 等差中項と等比中項とは?

もおさえておいてください。基本ではありますが良くでます。

⇒ 数列(一般項から数学的帰納法まで)の要点

数列は割と項目が多いので結構時間をかけて対策することになりますよ。