等差中項と等比中項の公式を利用するちょっとした応用問題で一般項や和の公式を使いこなすための練習をしておきましょう。やはり基本となるのは規則性を見るということです。等差数列と等比数列の基本的なことは教科書の問題を繰り返せばおおよそはできるようになるでしょう。
規則性を見つけることは数列の基本
例題をあげて説明していきますが、
「規則性を見つけるまで具体的に項を並べて書き出す」
というのは数列の問題では特に基本的な作業になります。
数学の問題が全部教科書にある公式通りにあてはめるだけであれば苦労はしないのですが、
その前のひと作業をするかどうかで大きく差が出てきます。
数列の問題に限らず時間の許す限り、書き出すクセをつけると数学の成績は大きく変わる可能性がありますよ。
100以下の自然数の中で、4で割って3余るものは何個あるか。
またそれらの和を求めよ。
基本通り具体的に数列を書き出すと、
「4で割って3余る数」は100までで
\(\hspace{10pt}3\,,\,7\,,\,11\,,\,15\,,\,\cdots\,,\,99\)
( \(99=4\times24+3\) )
となり、これは等差数列です。
この\(\,99\,\)の探し方は\(\,100\,\)前後で具体的に書き出せば良いだけですよ。
例えば、
\(\,100\,\)は\(\,4\,\)で割るとあまり\(\,0\,\)
\(\,99\,\)は\(\,4\,\)で割るとあまり\(\,\color{red}{3}\,\)
とすぐに見つかります。
一般項 \(a_n\) は
\(\begin{eqnarray}
a_n&=&3+4(n-1)\\
&=&4n-1 (\,≦\,100)
\end{eqnarray}\)
となります。
\(4n-1=99\)
より
\(n=25\) のときの\(\,99\,\)が100以下の自然数では最大です。
※
\( 4n-1≦100 ⇔ n ≦25.25\)
となりますが、
\(n\) は自然数なので \(n=25\) までです。
個数は\(\,n=1 ~ 25\,\)まであるので\(\,25\,\)個ですね。
※注意
\(\,25-1=24\,\)としないようにして下さい!
\(\,m\,\)から\(\,n\,\)までの整数は\(\,(\,n-m\color{red}{+1}\,)\,\)個あるのは確認しておいて下さいね。
引き算は間隔の数です。
例えばですが、
「3~8までの整数は何個か?」
6個ですから間違えないようにしましょう。
そして、和\(\,S_n\,\)は初項3,公差4の等差数列の初項から第25項までの和なので、
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
S_n&=&3+7+11+\cdots +95+99\\
&=&(3+99)\times \frac{25}{2}\\
&=&102\times \frac{25}{2}\\
&=&51\times 25\\
&=&\underline{ 1275 }
\end{eqnarray}\)
当然ですが和の公式にダイレクトに入れても結果は同じで、
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
S_n&=&\displaystyle \frac{25}{2}\times \{2\times 3+4(25-1)\}\\
&=&\displaystyle \frac{25}{2}\times (6+4\times24)\\
&=&1275
\end{eqnarray}\)
剰余から「4で割って3余る数」を
\(\hspace{10pt}0\,<\,4n+3\,≦\,100\)
と表した場合、(\(\,n\,≧\,0\,\)の整数)
\( n\) は\(\,0\,\)から\(\,24\,\)までとなります。
このとき「24個」としないようにして下さい。
\(\,24-0\color{red}{+1}=25\,\)です。
例えば、3~10までの整数は\(\,10-3=7\,\)個ではありません。
\(3\,,\,4\,,\,5\,,\,6\,,\,7\,,\,8\,,\,9\,,\,10\,\)
の8個です。
引き算は間隔の数を数えているので端っこの1つを加えなければなりません。
整数\(\,a\,\)から\(\,b\,\)までの個数は\(\,(\,\color{red}{b-a+1}\,)\,\)です。
高校生にいうのも何ですが、くれぐれも注意しておいて下さい。
等差中項と等比中項の公式
これも例題の中で使い方といっしょに説明します。
\( 1\,,\,a\,,\,b\) がこの順で等差数列になり、
\( 1\,,\,b^2\,,\,a^2\) がこの順で等比数列になるとき、
実数 \( a\,,\,b\) の値を求めよ。
等差中項
「\( 1\,,\,a\,,\,b\)がこの順に等差数列である」
⇔「 \( a\) が \( 1\,,\,b\) の等差中項である」
といい、このとき
\(\hspace{10pt} \color{red}{2a=1+b}\) ・・・①
となります。
もちろん
\(\hspace{10pt}\displaystyle \color{red}{a=\frac{1+b}{2}}\)
も同じ意味です。
3つの項が順番に等差数列なら、
「両端の項を足すと真ん中の項の2倍になる」
ということです。
理由は簡単で、
「 \( 1\,,\,a\,,\,b\) が等差数列」
なので、公差を \( d\) とすると
\( \color{red}{a}=\color{red}{1+d} , b=1+2d\)
と表せて、
\( 1+b=1+(1+2d)=2(\color{red}{1+d})=2\color{red}{a}\)
となるからです。
一般的に、
「 \( a\,,\,b\,,\,c\) が順に等差数列 」⇔「 \( 2b=a+c\) 」
が言えます。
この\(\,b\,\)が等差中項です。
等比中項
次に
「 \( 1\,,\,b^2\,,\,a^2\) がこの順に等比数列 」
⇔「 \( b^2\) が \( 1,a^2\) の等比中項である 」
といい、
\( \color{red}{(b^2)^2=1\times a^2}\) ・・・②
という関係式が成り立ちます。
これも理由は簡単で、公比を \(r\) とすると、
\( b^2=1\times r\)
\( a^2=1\times r^2\)
となり、
\( (b^2)^2=(1\times r)^2=r^2=1\times a^2\)
であることが示せます。
一般的に、
「 \( a\,,\,b\,,\,c\) が等比数列である。」
⇔「 \( b^2=a\times c\) が成り立つ。」
となります。
このときの\(\,b\,\)が等比中項です。
3つの項が順に等比数列なら、
「両端の項をかけると真ん中の項の2乗になる」
ということですね。
例題では①,②が条件となります。
②の \( b^4=a^2\) から条件を絞りましょう。
\(\hspace{10pt}b^4-a^2=(b^2-a)(b^2+a)=0\)
から
\(a=b^2\) または \(a=-b^2\)
場合分けですね。
ⅰ) \(\,a=b^2\,\)のとき\(\,a\,>\,0\,\)で
①の\(\,\color{red}{2a}=\color{red}{1+b}\,\)より
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
\color{red}{2a}&=&2\,b^2\\
\color{red}{1+b}&=&2\,b^2\\
2b^2-b-1&=&0\\
(2b+1)(b-1)&=&0 \\
b&=&-\frac{1}{2}\,,\,1
\end{eqnarray}\)
よって
\(\displaystyle b=-\frac{1}{2}\) のとき \(\displaystyle a=\frac{1}{4}\)
\( b=1\) のとき \(a=1\)
ⅱ)\( a=-b^2\) のとき\(\, a\,<\,0\) で①より
\(\hspace{10pt}-2b^2-b-1=0 \\
\Leftrightarrow \hspace{6pt}2b^2+b+1=0\)
この実数解は存在しないので「解なし。」
ⅰ)ⅱ)より
\(\displaystyle a=\frac{1}{4}\,,\,b=-\frac{1}{2}\) または \( a=1\,,\,b=1\) ・・・(答)
等差中項、等比中項を知らない場合(別解)
この問題ですが、問題に「等差数列」「等比数列」とあります。
基本通りやれば、初項と公差、公比を求める、なのでその方針でもできるということを示しておきます。
別解となりますが定理に添ってやるだけなので同じことです。
「 \( 1\,,\,a\,,\,b\)が順に等差数列 」
であることから公差を \( d\) とすると、
\(\hspace{10pt}a=1+d\)
\(\hspace{10pt}b=1+2d\)
とおけます。
また「\(\,1\,,\,b^2\,,\,a^2\,\)が順に等比数列 」
であることからこの公比を\(\,r\,\)とすると、
\(\hspace{10pt}b^2=r\)
\(\hspace{10pt}a^2=r^2\)
とおけます。
ここで等差数列の\( \,a\,,\,b\,\)を等比数列の\(\,a\,,\,b\,\)に代入すると、
\(\hspace{10pt}b^2=(1+2d)^2=r\)
\(\hspace{10pt}a^2=(1+d)^2=r^2\)
これらを
\(\begin{cases}
\hspace{7pt}r=(1+2d)^2 \\ \\
\hspace{7pt}r^2=(1+d)^2 \\
\end{cases}\)
の連立方程式とみて\(\,r\,\)を消去すると、
\(\hspace{10pt} \{(1+2d)^2\}^2=(1+d)^2 \\
\Leftrightarrow \hspace{4pt}(1+2d)^4=(1+d)^2\)
(これは前の解答の②の関係式 \(b^4=a^2\) になります。)
展開すると
\(\hspace{10pt} 1+8d+24d^2+32d^3+16d^4=1+2d+d^2 \\
\Leftrightarrow \hspace{4pt}16d^4+32d^3+23d^2+6d=0 \\
\Leftrightarrow \hspace{4pt}d(16d^3+32d^2+23d+6)=0\)
この方程式を解くには因数定理を利用します。
\(\hspace{10pt} d(16d^3+32d^2+23d+6)=0 \\
\Leftrightarrow \hspace{4pt}d(4d+3)(\color{red}{4d^2+5d+2})=0 \)
ここで\(\, \color{red}{4d^2+5d+2}=0\,\)は実数解を持たないので、
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
d(4d+3)&=&0\hspace{5pt}\\
d&=&0\,,\,-\frac{3}{4}
\end{eqnarray}\)
\( d=0\) のとき、
\(\hspace{10pt} a=1+d=1\\
\hspace{10pt} b=1+2d=1\)
このとき
\( \{1\,,\,a\,,\,b\}\,=\,\{1\,,\,1\,,\,1\}\) は初項1、公差0の等差数列。
\( \{1\,,\,b^2\,,\,a^2\}\,=\,\{1\,,\,1\,,\,1\}\) は初項1、公比1の等比数列。
\(\displaystyle d=-\frac{3}{4}\) のとき、
\(\hspace{10pt}\displaystyle a=1+d=\frac{1}{4}\\
\displaystyle \hspace{10pt}b=1+2d=-\frac{1}{2}\)
このとき
\(\displaystyle\{1\,,\,a\,,\,b\}\,=\, \left\{1\,,\,\frac{1}{4}\,,\,-\frac{1}{2}\right\}\)は初項1、公差\(\displaystyle \,-\frac{3}{4}\,\)の等差数列。
\(\displaystyle\{1\,,\,b^2\,,\,a^2\}=\left\{1\,,\,\frac{1}{4}\,,\,\frac{1}{16}\right\}\)は初項1、公比\(\displaystyle \,\frac{1}{4}\,\) の等比数列。
となり確かに条件を満たします。
\(\displaystyle a=\frac{1}{4} , b=-\frac{1}{2}\)
または
\(a=1 , b=1\)
で答えは同じになります。
このように基本通りでも解けるのですが、あまり次数は上げたくありません。
できれば等差中項、等比中項くらいは使えると良いですね。
ただし、この問題で迷うようなら
からやり直して、基本はしっかり身につけておきましょう。
「要点」では数列が一通り見渡せます。
その後は数学全部を見直すと良いですよ。数列はそれくらい重宝します。