分数の形をした漸化式もいくつかありますが逆数を取ると上手くいくパターンの解説です。
よく見る形の分数型漸化式で最初の処理を間違わなければ基本通りに答までたどり着けるので難しい形ではありません。
2項間漸化式の復習として見ておいても良いでしょう。
漸化式の逆数を取るとは?
分数型の漸化式といってもいくつかあるので、
逆数を取るパターンがイメージしにくいかもしれないので例題を先にあげておきます。
次の漸化式を満たす数列 \( \{a_n\}\) の一般項を求めよ。
\( a_1\hspace{7pt},\hspace{7pt} a_{n+1}=\displaystyle \frac{a_n}{a_n+1}\hspace{7pt}(n≧ 1)\)
この問題はタイトルでも最初に
「逆数を取る」
といっているので分かるかもしれませんが、知っていないとなかなか思いつかない漸化式です。
問題集ではよく見かける頻出パターンではありますが、
多数ある漸化式の1つとして書いてあるので意識がそれほど向いていないのでしょう。
忘れている人は多いです。
一般項を推測するのも良いですが、
できない場合を想定して一般的な解法パターンを示しておきます。
\(\hspace{10pt} a_{n+1}=\displaystyle \frac{a_n}{a_n+1}\)
この問題のように「分母にも分子にも数列」があるとき、
分子が単項のときは、『逆数』をとります。
\(\hspace{10pt} a_1\hspace{7pt},\hspace{7pt} a_{n+1}=\displaystyle \frac{a_n}{a_n+1}\hspace{7pt}(n≧ 1)\)
の分子が \( a_n\) の1つの項だけだということです。
両辺の逆数をとる(分母と分子を入れかえる)と、
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
\frac{1}{a_{n+1}}&=&\frac{a_n+1}{a_n}\\
&=&\frac{a_n}{a_n}+\frac{1}{a_n}\\
&=&1+\frac{1}{a_n}\end{eqnarray}\)
すなわち
\(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=1+\frac{1}{a_n}\) ・・・①
となります。
ここで、
\(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{1}{a_n}=b_n\)
とおくと
\(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=b_{n+1}\)
となります。
添え字は、変化するところをそっくりそのまま変化させれば良いのですよ。
①の \(\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=1+\frac{1}{a_n}\) を
\( b_n\,,\,b_{n+1}\,\)で表すと、\( b_{n+1}=1+b_n ・・・②\)
これは2項間ではありますが、特性方程式を解く必要はありません。
②は、\( b_n\,,\,b_{n+1}\) の係数が1なので
\( \hspace{10pt}b_{n+1}-b_n=1\)
と移項すると、\( b_{n+1}-b_n\,\)が階差であることに気がつきます。
つまり、
数列\(\,\{b_n\}\,\)は、階差を\(\,1\,\)とする数列であることから、
\(\,\color{red}{\,n\,≧\,2\,}\)において
\(\hspace{10pt} \displaystyle b_n=b_1+\sum_{k=1}^{n-1} 1\)
また
\(\hspace{10pt}\displaystyle b_1=\frac{1}{a_1}=\frac{1}{1}=1\)
なので
\(\begin{eqnarray} \displaystyle
b_n&=&b_1+\sum_{k=1}^{n-1} 1\\
&=&1+(n-1)\\
&=&n
\end{eqnarray}\)
階差数列については
⇒ 階差数列の公式と一般項を求める問題の解き方
を参考にして下さい。
このとき
\(\displaystyle \frac{1}{a_n}=b_n \Leftrightarrow a_n=\frac{1}{b_n}\)
より
\(\displaystyle a_n=\frac{1}{n}\) ・・・③
これはまだ \( \color{red}{n≧ 2}\) でしか言えてません。
\(\,n=1\,\)のとき
\( a_1=\displaystyle \frac{1}{1}=1\)
で一致するので、\( n≧ 1\) において③は成り立ちます。
よって、
\(\hspace{10pt} \underline{ a_n=\displaystyle \frac{1}{n}\hspace{7pt} (n≧ 1) }\)
部分的に逆数がとれる漸化式
\( a_1=\displaystyle \frac{1}{2}\hspace{7pt},\hspace{7pt}\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=\displaystyle \frac{1}{3a_n}+1\hspace{7pt} (\,n ≧ 1)\)
のとき数列 \(\{a_n\}\) の一般項を求めよ。
これはダイレクトな問題ですよね。
\(\hspace{10pt} \displaystyle \frac{1}{a_n}=b_n\)
とおけば
\(\hspace{10pt} b_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{3}\,b_n+1\)
となるので例題1と同じように一般項が求まります。
この一般項を求めるとき
\(\hspace{10pt} b_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{3}\,b_n+1\)
これと1つずらした
\(\hspace{10pt} b_{n}=\displaystyle \frac{1}{3}\,b_{n-1}+1\)
この差を取って
\( b_{n+1}- b_{n}=\displaystyle \frac{1}{3}\,(b_{n}-b_{n-1})\)
と階差を利用する解き方もありますが、特性方程式を使ってでも係数比較でもいいので
\( b_{n+1}-\alpha=\displaystyle \frac{1}{3}\,(b_n-\alpha)\)
の形を取るのが得策です。
計算はおまかせしようと考えましたが、
少しやっかいな計算が残りましたので答まで出しておきます。
\(\hspace{10pt} b_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{3}\,b_n+1\\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} b_{n+1}-\displaystyle \frac{3}{2}=\displaystyle \frac{1}{3}\,\left(b_n-\displaystyle \frac{3}{2}\right)\)
と変形できるのでさらに
\(\hspace{10pt} b_n-\displaystyle \frac{3}{2}=c_n\)
とおくと
\( c_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{3}\,c_n\)
これは初項 \( \color{red}{c_1}\) と公比 \(\color{blue}{ r}\) が
\(\begin{eqnarray} \displaystyle
\color{red}{c_1}&=&b_1- \frac{3}{2}\\
&=& \frac{1}{a_1}- \frac{3}{2}\\
&=&2- \frac{3}{2}= \frac{1}{2}
\end{eqnarray}\)
\(\hspace{10pt} \color{blue}{r}=\displaystyle \frac{1}{3}\)
の等比数列で、
\(\hspace{6pt}\displaystyle c_n=\left( \frac{1}{2}\right)\cdot \left( \frac{1}{3}\right)^{n-1}\)
これを戻すのが少しやっかいな分数なのです。
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
b_n-\frac{3}{2}&=&c_n\\
b_n&=&c_n+\frac{3}{2}\\
&=&\left(\frac{1}{2}\right)\cdot \left(\frac{1}{3}\right)^{n-1}+\frac{3}{2}\\
&=&\frac{1}{2\cdot 3^{n-1}}+\frac{3}{2}\\
&=&\frac{1+3^n}{2\cdot 3^{n-1}}
\end{eqnarray}\)
この通分ができれば問題ありません。
\(\hspace{10pt} a_n=\displaystyle \frac{1}{b_n}=\displaystyle \frac{2\cdot 3^{n-1}}{3^n+1}\)
ちなみに、
\(\hspace{10pt} a_{n+1}=\displaystyle \frac{pa_n+q}{ra_n+s}\\
\hspace{7pt}(r\neq 0\,,\,ps-qr\neq 0)\)
タイプの漸化式の解き方を覚えようとする人がいますが、数学\(\,\mathrm{Ⅲ}\,\)が必要無い人は覚えなくて良いです。
そもそもこのタイプの漸化式には誘導がつくのが普通なので「数学苦手」の段階の人が手を出すにははやいです。
このタイプで、\( q=0\) の場合が今回取り上げた問題ですがこれで十分です。
他のパターンにどのようなものがあるかはここでは書いていませんが、
『3項間漸化式』(2次の特性方程式から連立するタイプ)
『指数型漸化式』(対数をとるタイプ)
『連立型漸化式』(2つの数列が連立方程式とされているタイプ)
など良くでるものもあるので数学Ⅲまで進む人はチェックしたほうが良いですよ。
⇒ 漸化式の解き方パターン一覧と一般項の求め方まとめ(階差数列、分数、累乗など)
センター試験では、\( a_n \rightarrow b_n \rightarrow c_n\) と二段階、三段階の置き換えタイプの漸化式をよく見かけました。
これは過去問から傾向を見ておくと良いでしょう。
⇒ 2項間漸化式から一般項を求める問題の解き方の基本パターン
ここは基本になるので必ず覚えておきましょう。